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支音は布団に顔を埋める。
「彼女のために死ぬ?」
自分だけに聞こえるように呟く。
「それなら――」
支音の言葉が扉が開く音によって遮られる。また、誰かが入ってきたと支音は理解した。しかし、体勢を変えずそのままでいる。
「生きてたんだ」
その声は支音を刺した張本人である優の声だった。
「ごめん」
支音は力なく呟いた。
「なにがごめんなの? それなら私のために死んでくれるの?」
口は開くが言葉を出せない。
「まっ、そうだよね。自分が一番可愛いもんね」
「そうじゃなくて……」
やっと、声を出すことができる。
「なに?」
顔を上げて、優の顔を真っ直ぐ見据える。
「そのお願い。最後でもいいかな?」
「は?」
先ほどまでの威圧的な態度から一変、間抜けな声だった。
「支援者として、他のクラスメイトの未練を叶えてからでもいいかな?」
「本気で言ってるの?」
「それで、あなたの未練が解消されるなら」
力強い声で支音は言い切った。
「え? どうして?」
優は頭を抱えている。
「そんなに、未練解決に対して覚悟があったの?」
その言葉に支音は俯く。
「確かに、初めて学校に来たときはそんな覚悟は無かった。でも、みんなと一緒に生活しているうちに考えが変わった。正直なところ、私より結奈ちゃんや綾華ちゃんの方がいいとは思うんだ。でも」
支音は深く息を吸って、顔を上げる。そして、はっきりと言い切る。
「私に与えられたこの役目。最後までやり切りたい!」
その場で頭を下げて続ける。
「だから、お願いします。死ぬなら他のみんなの未練を解決してからにしてください」
「そ、そんなこと言って、時間稼ぎなんじゃないの?」
動揺しているのか、その声は震えている。
「支援者はクラスメイト全員の未練を解決しないと、解決出来なかった生徒の死に引っ張られる。つまり、あなたの未練を解決できないってことは死ぬってこと」
「そんなの知らない」
優は支音の言葉を否定するように、必死に首を横に振る。
「支援者以外の人には教えられてない」
「なんで、なんで、なんで! そんな覚悟があるなら、なんであんなことをしたの! どうして……」
言葉に詰まる優に、支音は返しが思いつかない。その代わりに支援者としての行動をすることにした。
「いつ、未練を思い出したの?」
「えーっと、初日に姿を見たときかな?」
あまり、要領の得ない答え方だったが、黙って頷く。
しばらくして、優は自分の頭を掻きむしって、指を突きさし、宣言するように言う。
「支援者なんか、できるわけない! 思い出させてやる。私に何をしてきたか!」




