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次の日、テスト期間も終わりいつも通りの授業が終わり、帰り支度をする。
カバンを持ち、さあ帰ろうとしたところ、先生に呼び止められた。
「上天支音ちょっといいか?」
「はい。大丈夫ですけど?」
この先生はいつもむっすりした表情をしているため、あまり感情が読み取れない。しかし、今日はいつもよりも視線が怖いような気がする。
「先生ーー! 支音を連れようとして、どうしたんですか?」
カレンが2人の間に割って入ってきた。
「そのお話、私も参加出来ますか?」
カレンがこちらに向かって、アイコンタクトをする。おそらく、支音の不安そうな表情を見て助けに来たのだろう。
「水野カレンか」
少し、黙って支音に対して聞く。
「上天。水野はどうなんだ?」
この質問だけでなんとなく理解できた。おそらく、未練に対しての話だ。
支音は首を横に振る。
「そうか。それだと、今日の話に参加するのは厳しい」
「えーー、なんで?」
「上天のためだ」
支音のためと聞くと、カレンも納得したようで、追及をやめる。
帰り際にジェスチャーで軽いエールを貰った。
先生に連れられてきたのは、生徒相談室と書かれた場所だった。中はこじんまりとしており、物が雑多に置かれている。埃も被っており、普段はあまり使っていないとわかる。
机を境に向かい合わせの椅子に座り、話始める。
「上天。うちのクラスの人数は把握してるか?」
「えっと……」
指を折りながら数える。
「女子が私を含めて、1、2……7人で。男子が、1、2……6人ですよね? こう考えると思ったよりも少ないクラスですね」
答えを聞いて先生は深くため息をつく。
「えっ? 間違えてましたか?」
「ああ、女子がもう1人いる」
絶望した表情を浮かべる支音に「仕方ない」と声をかける。
「なにせ、彼女は初日に一度登校した以来一度もクラスに顔を出していない」
初日について思い出そうとするが、いきなり倒れて終わったためよく思い出すことができない。
「未練を解決したのが5人。残りは8人だな。そして、今一番問題になるのが彼女だ。もし、彼女の未練が学校生活を楽しむだった時、このままだと未練解決が難しくなる」
支音は真剣に頷く。
「と言うことで、プリントを届けてくれないか?」
数枚重なったプリントを渡される。一番上の用紙のみ見たが特別な物ではなく、普段から授業などで配られている物のようだった。
「届けるだけ?」
先生は頭を抱えてため息をつく。
「ついでに少しぐらいは話をしてこい。白玉結奈に言われたんだ。だから、こうしてお膳立てしていると言うわけだ」
「結奈ちゃんに?」
「本来なら生徒の自主性に任せるところなんだが、手を貸して欲しいと頼まれてしまった。まあ、とりあえず行ってこい」
そう言って、相談室から追い出されてしまった。
1人でどう話そうかと思考を巡らせながら、とぼとぼと歩き進める。
教えられた部屋に着き、チャイムを鳴らす。
特に返答がなく、不思議に思っていると、静かに扉が開く。ほんの少し隙間を開けて、顔は出さずに中から声だけがかかる。
「何しに来た?」
「プリントを届けに来たんだよ」
そう言って、開いてる扉の方にずれて、隙間からプリントを手渡そうとする。
突然扉が開かれる。横にずれていたため、開かれた扉と正面衝突することはなかった。
しかし、支音は驚いて、後ろに倒れる。その拍子にプリントも手放し辺りに散らばる。
「いっっ」
何が起きたのか、目の前に視線を移すと、その顔は見知った人物だった。
「え? なんで?」
彼女は答えない。そのまま、支音に向かって突進してくる。その手元には刃物が握られていた。
「未練のため。死ね」
力強い声だった。
抵抗する間もなく、支音の腹部にはその凶器が刺さっていた。
何故か痛みはなかった。
だが、脳は理解を拒んだ。
ゆっくりと視界がぼやけ、力なく倒れる。
「支音!」
遠くから誰かの声だけが聞こえてきた。




