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麻耶が消えた後に残った水晶玉を手に持って支音は職員室に向かった。
職員室に入り、担任の先生の元に行く。
「上天か」
支音が何を言うまでもなく、手元の水晶を見て言う。
「無事に終わったんだな。それは先生が預かっておく」
「お願いします」
それ以上に会話もせず、水晶を渡してすぐに職員室から出ていった。
床を見つめて廊下を歩いていると、前から声をかけられた。
「支音ちゃん?」
顔を上げると、結奈が水晶を持って立っていた。
「なんか、元気ないみたいだね。ちょっと待ってて、先生に水晶渡したら一緒に部屋まで帰ろう」
「うん、分かった」
足早に結奈は職員室に入って行った。少しの間、ぼんやりと廊下の壁に寄りかかっていると、結奈が出てきた。
「お待たせ。そしたら、帰ろっか」
2人は並んで歩く。沈黙が続いていたが、結奈がそれを破った。
「何かあったの?」
「たいしたことじゃないんだよ。ただ、仲良くなった友達が居なくなるのは辛いなって」
「そっか」
結奈は深くは聞かず、ただ側を歩いている。そんな気まずい空気感に耐えられず、支音は慌てて謝る。
「ご、ごめんね。たいした話でもないのに、急に相談しちゃって。初めて会った時に色々と教えてくれたのが結奈ちゃんだったから、つい」
結奈は答えず黙りこくっている。不安になりちらりと横目で確認すると、何やら考えているような真剣な表情をしていた。
「支音ちゃん!」
突如名前を呼ばれて、ビクッとする。目線を合わせられて、手を強く握られる。
「支音ちゃんには支援者は向いてないんじゃないかな?」
予想だにしてない言葉に返答を迷う。その間に続けて結奈は言う。
「そもそも、支援者になる動機も私たちと比べると薄いじゃん」
「それはそうだけど、辞めたいって言って辞めれるものなの?」
「私にもわからないでも、私のクラスは順調に進んで、もうひとクラス引き受けても大丈夫だよ」
「そ、そうなんだ」
「支音ちゃんが無理だと思うなら、今から先生に相談しに行く?」
「いや、ちょっと待って」
咄嗟に断った。入学してすぐの頃なら、二つ返事でお願いしていたかも知れない。何故かわからないが嫌だと感じた。
「できるところまで自分でやりきりたいと思ってる。だから……」
結奈は嫌な顔一つもせず答える。
「分かった。でも、辛くなったらすぐ言ってね。いつでも待ってるから」
そのまま、軽い雑談をしながら2人は部屋に向かって歩いていった。




