↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/92

078 自由になる


 王宮には食堂が3つあった。王族用、使用人用、騎士用だ。俺達は使用人用の食堂に集合した。この場所はアーニャ一家がよく使ってた場で気楽でいいらしい。メンバーは俺、アーニャ、ロナ、マクシムさん、サユリさん、リゲル、メイガスだ。


「王宮の食事はさすがに美味いね。僕が行ったどの食堂や酒場より上品で美味だ。だけど少し刺激がたりないかな。美味しさはさすがだけど、洗練され過ぎで面白みがないなー。僕は町の食堂のそれぞれの店が工夫を凝らした刺激的な味が好きなのかもしれない」


 そんなことを言いながらもしっかり食事を楽しむリゲル。


「いや実に美味い。ワシはここの料理が気に入ったぞ」


 メイガスは満足そうだ。骸骨のような顔で首も頸骨が見えてるのに口に入った食べ物はちゃんと消えていく。いったいどうなってんだろう。


「食べながらでいいから聞いてくれ。これからのことを話す」


 視線がマクシムさんに集まる。


「まぁ難しい話じゃない。結果報告だ。知っての通り王国は方針転換することになった。魔族と友好的に接し協力していくことになる。まぁ問題は山ほどあるがなんとかなるだろう。一番大切なのは約束が守られるか見守ることだ。そして魔族との橋渡しも必要だろう」

「なので私たちは、王国を支援します」

「リゲルたちにはこの王都へ残ってもらう。と言っても好きに過ごしてくれ。リゲルがいるだけで王国は下手な真似はできないだろう。身体能力が俺より上で、ロナより魔力が強いって伝えてるからな」

「えー、僕は向かってこられてもいいんだけどな。手加減して相手するよ」

「そんな調子で楽しんでてお兄様はケンジに負けたんでしょ」

「う、妹よ。それはケンジが想定外すぎる力を持ってたからであって」

「節度をもって行動してください。やっと人間と交流する場を拡げられそうなんですから」

「そ、そうだね。手遅れになってない魔族を助けないとね」


 リゲル、時々目的を忘れてるよな。楽しむことが最優先なタイプだ。生きる気力を失うほど無気力化する魔族を助けたい。人間と交わり混血してもいいから滅びるのは防ぎたいってのがリゲルとロナの考えだけど、相変わらず焦った様子はない。でもちょっと気になる。メイガスって子孫残せるの?


「あのー聞きたいんですけど、メイガスって結婚できるんですか? いや結婚というか子孫を残せるんですか?」


 好奇心でアホな質問をしてしまった。でも気になる。人間と交流して混血って言っても、まんま死神のメイガスがどうやって子作りするのか想像もできない。女性に魔力を注いだら妊娠したりするの?


「お主が出会ったデリーヌも子を産んでいたであろう。魔族はもともと人間だからな。人と子をなすことなど普通にできるぞ」

「え、でもメイガスって骨だし、あの……どうやって?」


 さらにアホな質問かも。でも気になる!


「ああ、この姿で子作りするのを想像したのか? ファハハハハ」


 席についていたメイガスが笑いながらフワっと浮き上がり椅子の後ろへ移動するとその姿が黒い霧に包まれてぼやけてくる。そして数秒でその霧が固まり形となる。そこに現れたのは40代に見える鼻ひげを蓄えた陽気そうな身なりのいいのオジサンだった。


「え? 人間に化ければ人間と子供が作れるの?」

「何を言っておる。ワシはこの姿が本来の姿じゃ」

「え? じゃぁなんで死神に化けたみたいな姿してるの?」

「んー、趣味みたいなもんじゃ。ワシのようにほぼ魔力体の魔族は姿かたちを変えられるからの」

「へ?」


 なんてこった、そんな軽い感じで死神ルックしてたんだ。ただの悪戯好きなおじさんじゃねーか。


「ケンジ。魔族がもともと人間だったことは知ってるだろ。魔素を過剰に吸収する特異体質から生まれたのが魔族だ。その中で魔素を吸収しすぎてメイガスのように体の構成成分がほとんど魔素となった魔族は基本形態があっても、自由に姿を変えられる。異形の姿をしている魔族は、まぁ人間で言うと変な服を好む者と似たようなもんだ」

「おいおい、マクシム、その言い方は酷いではないか! ファハハハハ」


 鼻ひげ陽気オジサンが楽し気に笑っている。異形の姿をした魔族たちは実は全員趣味やファッション

? となるとロナの羽も? 俺はロナに視線を向ける。


「私は実体があるからメイガスみたいに自由には姿を変えられないですよ」

「その羽は? 羽じゃなくてもいいってこと?」

「ああ、それは変えられますよ。この羽は私の髪の色が珍しいからそれに合わせて同じ色の羽にしたら可愛いかなーって。あ、でもケンジの好みがあったら変えてもいいですよ」


 はー、なんとも気の抜ける話だな。魔界で見かけた魔族の異形に驚いてた自分があほらしくなる。


「馬鹿話はそれくらいにして、今後の話だ」


 マクシムさんが脱線した話を元に戻す。すんません、馬鹿話はじめたの俺です。


「さっき言ったように王都にはリゲルとメイガスとロナに残ってもらう。そして俺とサユリは友好的な魔族を王国へ連れてくる。そしてイザールの町を中心に魔街道沿いの町へ魔族を配置し、まずは魔物討伐の役目を担ってもらう。魔街道の町はどの町も俺とサユリの顔が利くからな。説得には苦労しないだろう。そうやって魔族が人間に協力する姿を見せていくことで徐々に王国の意識を変えていく」


 マクシムさんの説明はシンプルで分かりやすかった。やることは結構地道だ。国王が決めたこととは言え、それが浸透するには当然時間がかかるだろう。特に魔族絶対悪と考える層の意識を変えるためには魔族の協力する姿を見せていくしかないんだろう。それでもいろいろ起こるんだろうな。

 あとマクシムさんの説明の中には俺とアーニャの役割が無かった。


「えっと、俺はどうなるんでしょうか?」

「ケンジは自由だ。ハッキリ言ってケンジは巻き込まれた被害者だ。召喚されたのもハヤトに巻き込まれただけ、王宮を脱獄したのもアーニャに巻き込まれただけ、魔王になったのも成り行きでなっただけだ。今後お前の力が必要になる時、手伝ってくれると助かるが、強制はしない。流れで色々やらせて申し訳ないと思ってる」


 おおおおお! ついに自由だ!


「じゃぁ、魔王の肩書もリゲルに返していいですか?」

「それはそのままでいい。顔が知れ渡ってるわけじゃないんだ。持ってても困ることはない」

「でも、魔族代表のリゲルが魔王の方が都合がいいんじゃないですか?」

「そんなことは無い、元魔王のリゲルが代表であり、そのリゲルを倒した現魔王が人間だってだけで、王国の民は魔族に対する警戒心が和らぐ。魔族は絶対に敵わない相手じゃない、魔王より強い人間がいる。そういう話を流していくつもりだ。まぁ魔王としてなにかしろとは言わないし、どこへ行こうと自由だ。だから気にしなければいい」


 そうか、俺は知名度が無いからな。ただの冒険者として旅する中では自分で名乗らない限り魔王だとバレることは無いだろう。そういうことなら放置でいいか。


「私は? お父さん、私はどうなるの?」

「お前も好きにしていいぞ。5年も王宮に閉じ込めてたのは今考えれば間違いだった。悪かったと思ってる。お前はむしろ世界を見て回った方がいいだろう。ケンジと一緒に自由にするといい」

「やった!」

「お前たちなら冒険者としてどこでもやっていけるだろ」

「お兄様! 私は? 私も自由にしていいの?」

「え? ロナは僕と一緒に王都周辺で待機だよ」

「そんなー、私はケンジと結婚したいんです。ケンジの子を産みたいんです。のんびりしてたらケンジの寿命がつきてしまいます」


 おいおい、なんつーことを皆さんの前で言いますか、この娘は。いや100歳近いんだったか。


「なに! ケンジはアーニャとできてるんじゃないのか! ロナと二股か!」


 驚くマクシムさん。


「いや、二股とかしてませんし!」

「あなた、この子たちはまだ何も……」

「お母さん!」

「なんだ? まだ何もないのか? ケンジは奥手か? それともアーニャの魅力が足りないのか? 親の贔屓目線なしでも、アーニャは魅力的だと思うんだがな」


 十分すぎるほど魅力的です。


「あなた、誰もが貴方みたいに積極的じゃないんですよ」


 積極的だったんだね、マクシムさん!


「そうか、ロナだって俺が独身だったらほっとけない魅力があるし、ケンジはよく我慢できるな」

「あなた、そういう目でロナをみてたんですか? ロリコンですか?」

「いや……俺はお前一筋だ」


 サユリさんがマクシムさんの袖をつかんで、いやあれは袖ごと肉を掴んでいる。かなりの力で握ってるように見えるが、マクシムさんは表情を変えない。さすがだ。これが夫婦か。


「まぁとにかくロナはしばらく王都に居てくれ。お前たち二人が王都で気楽に遊んでてくれるだけでも魔族が危険な存在じゃないと認識させることができるんだ。暇つぶしにギルドで依頼を受けてくれてもいい。リゲルは美女を捕まえて王都で結婚でもしたらどうだ?」

「それもいいかもしれないね。僕の求める女性がいればね」

「私はケンジと旅にでたいのに」

「ロナ、ケンジの寿命はそんなすぐにはつきませんよ。王都に居てもらうのは1年もないでしょうから、ちょっとだけ我慢してください」

「ああ、頼む。魔族のためだぞ」

「ううう……」


 ロナが渋々納得し解散となった。魔王の肩書は返せなかったけど自由にはなった。でもいざ解放されると悩むな。何からやったらいいんだ。その辺りはアーニャと相談だ。二人で自由にって言われたしね。両親公認で一緒に行動できる。あれ、もしかしてロナを引き留めたのはあえて二人にしてくれる配慮だったりする? もし深い仲になるのを望まないなら二人で自由にしろ的なことは言わないよね? これは関係を進めるチャンス!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。