068 追われる戦闘2
馬車を捨てて逃げながら振り返る。騎士団はすでに俺たちを追走している。
ロドス団長って人、判断はや! 遭遇は予想外だったのかもしれないけど、最初っからオーリンさんもまとめて討伐するつもりだったな。騎士団長仲間なのに躊躇無すぎ!
「と、とにかく逃げよう。俺、さすがにこれは無理、逃げる以外なにも思いつかない」
「回り込んでるのもすでにいますから私が先に行きましょう」
そう言うとオーリンさんが走る速度を上げる。置いていかれるみたいですっごく心細い。と言ってもアーニャは俺の後ろだ。殿の役目をやってくれてるんだろう。
( 筋力 8 自然回復 8 )
長距離走るならこの操作で長持ちするはず。同じようにオーリンさんにもスキルを使う。
( 筋力 6 自然回復 8 )
筋力アップは控えめ。スキルの負担軽減がある俺と違って筋力8まで上げるときっとすぐおかしくなる。
「お、これは!」
「筋力と然回復能力を高めました。だけど無理やり筋力高めてるんで、無茶すると普段より早く筋肉痛になるかもしれません。気を付けてくださいね!」
「わかった!」
さらに加速していくオーリンさん。足はや! この世界に来て俺もそれなりに体力ついてきたと思うけど、根本的に走り方が違う気がする。あの動きは陸上競技とかで見るようなスプリンターの動きだ。つっても陸上に詳しいわけじゃないからたぶんだけど。
「私は攻撃しちゃダメなら飛んでるねー」
俺の斜め上をロナが飛んでる。まったく焦った様子無し。まぁ本気出せばまとめて消し炭にできるんだから焦る必要ないか。
「だけど、いざとなったら魔法使うよ? ケンジに死なれるわけにはいかないから」
「そうならないように頑張る!」
「あ、もしものために防御魔法だけはいい?」
「助かる! お願い!」
そんなのも使えるんだ。俺だって死にたくない。できるだけ強いのお願いしたい。
「じゃぁ……」
ロナが俺に手を向けると、バチ……という音が足元から聞こえた。走りながら下を見ると追従するように俺を中心とした3mほどの魔法陣があった。
「バチって言ってるけど、これなに? 電撃系の防御魔法?」
「そう、その魔法陣の範囲に入ろうとすると武器でも敵でも消し飛ばしてくれるはずよ」
「怖! 俺は大丈夫なの?」
「対象者には影響ないから心配しないで。アーニャもいる?」
ロナが俺の後ろを走るアーニャに声をかけた。
「いらない! そんなのあったら戦えないじゃない」
この状況で戦いたいんかい! 戦い好きなのはいいけど、さすがにこの状況でそれはちょっと頭痛い子だぞ、アーニャ! 親の顔が見てみたい! いや親はもっと酷いかも!
「ロナ、これ収納してて!」
そう言ってアーニャがロナに出刃包丁、いや出刃包丁のような槍の先端を外して投げる。
「きゃ!」
思いっきり運動神経の悪い子の動きで慌てたロナだが、なんとか異空間収納で直接受けた。
「危ないじゃない!」
「はは、ごめーん」
そんなアーニャは先端を失いタダの棒となった槍を持ち逃げ足を緩める。わざと追いつかれるつもりらしい。殿役なんだろうけど、さすがに200人相手に一人で戦うなんてないよな。無茶すぎ。俺もアーニャが戦う相手にスキルが届く範囲に留まる。アーニャが簡単に負けるわけないと思うけど、これって絶対長期戦になるだろうし、俺がスキルで無力化できる相手はどんどん無力化していかないときりがない。敵は後ろからだけじゃないしね。左右を走る騎馬もいつ向かってくるか分からないし、前を見るとすでに回り込んだ騎馬とオーリンさんが戦ってた。
そしてあっさり馬上の騎士を落とし馬を奪うオーリンさん。やっぱ強いな! あ、俺の分も馬を確保してくれたら! って俺、1人で馬にのれる? いやちょっと乗れるけど、この状況で乗りこなせる自信ないな! チクショウ! 何かこれ、魔族の村から魔王城に向かった時と似てるな! 今度はおってくるのが魔物じゃなくて人間だけど。
バシュゥ!
うお! すぐ近く、顔の高さで大きな音がした。なんだ? 音の方向を見ると騎馬が並走していて俺に向けて弓を構えている。
「くそ! 魔王め! 防御魔法がつかえるのか!」
今の音は弓をロナの防御魔法が消し飛ばした音か! 本当に消し飛ばすのね、これ人が人が近づいたらどうなるの、やっぱり消し飛ばしちゃう? 怖! 人が近距離で消し飛ぶ姿、見たくない! つか人間殺したくない。絶対近づかれないように無力化するぞ!
( 筋力 3 )
俺に矢を向ける馬上の騎士が、突然の脱力でふらつき、思わず弓を手放し馬にしがみつく。おし! 上手くいった。
( 筋力 3 )
今度は馬にスキルを使う。一瞬よろめき大きく減速する。俺と並走してたから転倒せずに済んだな。全力疾走だったら派手に転倒だったろう。
( 筋力 2 )
馬はゆっくり歩く程度にまで減速、これで走る俺にもまったく追いつけないだろう。走りながら気を使うの疲れる! なんで殺されそうなのにこっちは殺さないようにこんな気をつかってんだろ。
「さすがです、魔王!」
オーリンさんは反対側の騎馬に対応してくれてる。つかいつの間にか槍持ってるし! 騎馬戦も得意なのね。本当に有能オジサンだな。
正面に足を止めて待ち構える騎士には遠慮なく無力化だ。
( 筋力 1 )
鍛えられた騎士たちだ。止まった馬からの落馬程度じゃ死なない……とおもう。死なないでくれ。
俺は俺のことで精一杯やってると、背後からは派手に金属がぶつかる音が聞こえてくる。アーニャが多数の騎士を相手に戦ってる。
アーニャの戦う歩兵を無力化するつもりだったけどそっちまで手が回らない。すっごい気になるけど余裕がない。
「ロナ、アーニャは大丈夫? 危なくない?」
3mほど斜め上を飛ぶロナに聞く。
「んー、楽しそうに戦ってるね」
うん、心配だけど大丈夫そうだ。
「楽しそうじゃなくなってきたら教えてね!」
「わかった」
「一応、アーニャが本当にピンチの時は助けてね」
「どうしよっかなー」
「うそん、そこ悩むところ?」
「私をお嫁さんにしてくれるなら……」
この状況で交換条件!
「ここでロナを無力化して置いていこうか?」
「アーニャが危ない時には全力で守らせてもらいます! かよわい女の子をこんな男軍団に無力化して放り込もうとするなんて……ケンジのいじわる」
「いやいや、ロナが悪いんだろ! そんなことより、人が死なない程度の威力で魔法つかえないの?」
「えーと、できなくはないけど、間違うといっぱい死ぬけどいい?」
「ダメ! いや、本当にやばくなったらお願いするかも。だけど今はダメ」
俺はスキルの効果範囲に入ってきた騎馬を無力化しながらアーニャとの距離も考えながら走る。結構頭がいっぱいいっぱいだ。周りを警戒し続け、1人ずつ無力化するのに神経が擦り減る。
あ! あれならいけるかも!
「ロナ、前にリゲルが風魔法で荒した街道を修理した土を操る魔法、あれで足止めしてよ!」
「えーと、あまり得意じゃないけどどうしたらいい?」
「近づいてくる敵の前に壁を作って一度に相手にする敵の数を減らしたい。そうすればアーニャと二人で無力化しやすくなる。突出した集団の前に壁を作ってくれない?」
「苦手だから飛びながらだと、馬車くらいのサイズが限界かな。何回もやると結構つかれるかも」
「じゃぁ馬くらいのサイズでいい! 敵が密集してるところの直前に作って」
「わかった!」
回り込む騎馬や足の速い傭兵に対処する。時々とんでくる飛び道具がロナの防御魔法で消し飛ばされる音にビビリながらも俺は頑張ってると思う。そのおかげか敵はほとんど後方だけになった。ここからは、ロドスが諦めるまで敵を無力化していくか、ロドス本人を無力化して捕らえるかでなんとかなるんじゃないか?
ズドガドド
なんとか先が見えてきたところで、敵が一番密集していた中央、街道の真ん中、走る兵士たちの直前に突然地面が盛り上がり土壁となった。追撃が大きく減速する。




