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069 追われる中でスキルが進化?


「アーニャ! 大丈夫か?」


 俺は逃げ足を緩めアーニャに近づく。


 身体強化スキルによるオレンジ色の光を纏って、ブンブンブンブと器用に棒を振り回しながら走ってるアーニャ、とても大丈夫そうだ。


「30人は倒したかな! まだまだいけるよ! 100人切り目指しちゃおっかな!」


 本当に無双してるよこの娘。一番大変なポジションなのに楽しそうだな。前方は俺とオーリンさんとで騎馬と傭兵を20人くらいは倒してるから50人くらいは倒したってことか。と言ってもまだ150人くらい敵がいるってことか。先が長いな。でももう前方に関してはオーリンさんに任せといて良さそうだし、ロナに足止めもしてもらえる。もしかしてなんとかなる? いやなんとかしなきゃ殺されそうだけど、ベストな形でなんとかなる? 一人も殺さず逃げ切れる?


「前方に回り込む足がある奴はもう少なそうだし、オーリンさんがなんとかしてくれてる。ロナが足止めもしてくれるし、ここからは一緒にやろう!」

「わかった! 私の正面以外の人を無力化して!」

「了解!」


( 筋力 1 )


 アーニャは疲れた様子など微塵も見せず、ロナの足止めによってパラパラに襲いかかってくる騎士や傭兵を棒で殴り倒してる。魔獣と戦ってる時と全然違うな。豪快な攻撃じゃなくて繊細だ。なんか楽しそうに戦ってるのに、やってることは精密。

 剣を中心に槍も混じる相手に、その武器を弾いてから膝や脛を強打。ほとんどその一撃で足を止められ離脱していく。武器を弾く時は棒の中央を持ちその両側を器用に使って対処する。そんで相手の体勢が崩れたらいつのまにか棒を長く持ちかえて足を払う。その動きの滑らかさが凄い。短く持ったり長く持ったりがもはや俺から見てもはや手品だ。


( 筋力 1 )


 俺はクールタイム数えながら極力最短時間で一人ずつ無力化だ。しかしこれって俺は念じてるだけだから敵から見ると、何もしないで逃げてるだけに見えるだろうな。一応、無力化して突然倒れる人が後ろから走ってくる人を巻き込むように狙ってたりするんだけどね。


「魔王を狙え! あいつには接近戦の技能は無い! 無力化できるのも一人ずつだ。連続では使えない!囲んで攻撃しろ! 女はつかず離れず対応しろ! 倒そうとしなくていい!」


 最前列からかなり下がった場所から大声がする。兵士の奥から突き出たハルバートが見える。ロドスだ。あいつはもう俺のスキルの欠点を見抜いたみたいだ。


( 筋力 1 )


 アーニャへの攻撃が緩むがアーニャが移動しようとすると攻め、対応すると引くという動きになる。逃げ始めてこれまでの時間でもう対策が練られた。ロドスも騎士団長だけあってオーリンさんみたいに有能なのか。敵が有能だと迷惑だな!


( 筋力 1 )


 中央をアーニャが押さえてくれてるが、左右が押し上げてきた。くっそアーニャをフォローしてるつもりが俺が集中的に狙われることになった。


 ズドゴドド


 タイミングよくロナが土魔法で壁をつくり、数人の兵士がそれにぶち当たり右側が下がった。


( 筋力 1 )


 左側の一番まえを無力化してこけさせる。が、さすがにそれに慣れてきたのか後ろの兵士が引っかかってこけない。次々前に出始めた。


「ケンジ、どうする? 攻撃魔法。あと攻撃されても大丈夫だよ。たぶんこの兵士たちなら100回くらいは消し飛ばすと思うから」

「攻撃魔法はやめてくれ。まだいける。あと、消し飛ばすのも困る!」


 結構大変になってきたけど、まだ死人出さずになんとかなる可能性があるなら頑張りたい。つか追いつかれるのも追いついた人が消し飛ぶのも嫌だ。俺にロナが使った防御魔法は、防御と言いながら金属の矢じりも一瞬で消滅させるほどの超高圧電流みたいなやつだ。

 剣や槍で攻撃されたら、たぶんその電圧で攻撃してきた人が直接防御魔法に触れなくても死ぬんじゃないか? 絶対に近づく前に無力化しないと!


( 筋力 1 )


 アーニャがジグザグに走り左右にも対応してくれるが、その範囲は限られてる。徐々に左右へ広がり俺を左右から囲む形ができつつある。


「ケンジ、私けっこう疲れてきたよ。足止めより飛ぶことが消耗するんだよね」


 マジか! すっげー助かってたのにここで足止めの土壁がなくなるのは痛い。けど直接的な戦闘ができないロナがここで飛べなくなるのはもっと困る。


「もういいから温存して!」

「大丈夫?」


 なんとかする!


( 筋力 1 )


 くっそ、もう無力化した人に誰も巻き込まれない。前後に重ならないように走って、左右に広がり巻き込まれ対策がしっかりされてる感じだ。騎士団ってやっぱしっかり訓練されてるんだな。


( 筋力 1 )


 とにかく一番前に居る人辺りを狙って無力化!


 ドサササドサ


 あれ……今、4人くらいまとめて倒れなかった? 巻き込まれたようには見えなかったけど。今度はあの先頭の人を狙って!


( 筋力 1 )


 一人だけ倒れた。いつも通りだ。さっきの4人は偶然こけた? いやそんな偶然あるか? さっきと何が違う? さっきはなんとなく前に居る人辺りをねら……って、「辺り」か! いや、もしかしたら空間か? 一定の範囲を指定か? 置き型のスキル設置みたいな感じ? ゲームでもそういうのあるよな。 それとも指定した相手を中心としての範囲? おっとクールタイムはとっくに終わってる。試すしかない。あの人辺りに!


( 筋力 1 )

 

 3人同時に倒れた! 巻き込まれたんじゃなく同時にだ! あの人辺りって念じるとそうなるんだ! 効果範囲は狙った相手を中心としての一定範囲だ。うおおおお効率爆上げだ!


「アーニャ! 俺のスキル熟練度が上がったみたい! なんかまとめて数人無力化できる。いけるぞ! 逃げ切れるぞ!」

「すごいじゃん、こんな土壇場で成長するなんて!」

「スキル使いまくってたから、熟練度上がったのかも!」


( あの人辺りに 筋力 1 )


 今度は2人倒れた。

 あの人「辺り」とイメージしてスキルを使うだけで、どうやらその人から半径3m程度の範囲に効果が出るみたいだ。となるとさらに効率良くやるためには、一番前の人じゃなくてその3mくらい奥の人を狙うといいはずだ。


「アーニャ、中央だけに集中して、範囲で無力化できるようになったみたいだけど、慣れてないから巻き込みそうで怖い!」

「わかった!」


 かなり激しくジグザクに走ってたからか、アーニャの息が少しだけ乱れてるように見える。こりゃ本格的に疲れる前に勝負付けないとヤバイか?


( 向こうの人辺りに 筋力 1 )


 今度は、考えた通り、先頭で追って足ってる人の少し奥の人を狙う。ちゃんとその人辺りと念じる。


 バタドサドタバタ


 よっしゃ! 一気に6人くらい倒れたぞ! これすげーかも。

 つか範囲で無力化し始めて一気に敵の圧力が減ってきたぞ。そりゃそうか。複数がまとめて倒れりゃそうなだろうし、ポツポツ倒れるのには対処できてた連中も、また引っかかったりするよな。


「ほんとだ、同時に倒れてる、凄いねそれ!」


( あの人辺りに 筋力 1 )


 何度も繰り返しスキルを使ってたらついには追ってくる人がまばらになってきた。もしかしてもう逃げなくても対応できる感じ?


「凄いよケンジ! 一気に敵が減ったね。これもう決まりでしょ! 私が無双してたつもりだったのにいつの間にかケンジ無双になってたよ」


 無双? 一度も敵と接触せずただただ無力化してただけだぞ。いやで無双かも。俺もうかなりの数倒してるな。とにかく俺達が無事で死人もださないで終れるなら言うことは無い。スキルボードで熟練度上がってどうなってるのか見てみたいけど、そんなのは後だ。


「ぐぬぬぬぬ、貴様! 本当に人間なのか! 貴様こそ魔族なのではないのか!」


 もう回り込む者もいなくなり、後方の敵をアーニャとオーリンさんが対応しつつ、俺がまとめて無力化を繰り返してしばらく、残り20人ほどの騎士に囲まれたロドスが俺を睨んで言う。

 そして足を逃げるのをやめて足を止めた俺たちから距離を置いている。ロドスを囲む騎士たちは、それぞれが距離を取るようにしているところを見ると、俺のスキルの効果範囲を見抜いての対処なんだろう。ロドスが指示をしたのか騎士それぞれが優秀なのかわからないけどこうされるとまた一人ずつしか無力化できない。


「ロドス団長、無意味なことはやめよう! わかったであろう。この者たちには敵わない。殺さぬように手加減されてこれなのだ」

「ふん、引き下がれるわけがなかろう。これで失敗すれば俺は王命に逆らった逆賊だ。魔王討伐の成果なくして俺の立場はもうない!」


 その目はまだあきらめていない様子だ。


「だが、このまま戦っても無駄なことも分かった。さてどうしたものか」


 追い詰められた状況なのに意外と冷静なロドス。街道に俺たち4人とロドスたち20人ほどが向き合う。

 降参してくれないかな。俺としては目的さえ達成できれば、この一件は無かったことにしてもいい。愛国心からのちょっとした暴走ってことで片付けてもいい。

 戦闘は一時中断の形となり、考えるロドスの次の言葉を待つ。


 アーニャとオーリンさんがいつでも対応できるように、俺とロドスの間に立ち、俺は少し離れて後ろから様子を見る。離れとかないとロナの過激な防御魔法に誰かを巻き込むのが怖い。ロナはその俺の横にいる。まぁロナは自分の魔法だから巻き込まれないのかな?

 その時、騎手を失った軍馬が右手の草原で嘶く。


 ヒヒィィィィィン


 数人がそれに目を向け、誰もがそれにつられる。俺もついついそっちを見る。


 ガサ!


 俺の背後から音がした。



エアコン壊れました。修理に来るのが5日も先。デスクトップPCしかないので他の部屋へも行けない。扇風機で暑さをしのぎつつ頑張ってます。

体調管理で体温コントロールできたらいいのに。よし、そのうち体温操作を作品の中でやってみよう。


あと、自分のペースがやっとわかってきました。今日より投稿を基本、金土日の週3日と決めます。これまで何度か毎日更新を目指しましたが続けられずに凹むことを繰り返したので反省を込めてここに宣言します。


ここまで読んでくれた方、これからもよろしくお願いします。物語は魔族と王国の和解と共存の形が整ったところで大きなひと段落となります。そこからの展開も数通り考えてますがまずは今の流れを綺麗にまとめられるように頑張ります。

これからもよろしくお願いします。

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