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066 王都へ向けて出発


 翌朝、贅沢野営のアレコレをロナの収納へ詰め込み撤収準備を進める。しかしその収納魔法が不安定で少々手間取ってる。ロナが見事に二日酔いで異空間収納の魔法陣が突然消える。それが意外に危ない。真ん中が真っ黒な魔法陣に入れるだけなんだけど、長い物や大きい物を入れる時、異空間に入った部分から重量が消える。だけどさっきテーブルが半分以上入ったタイミングで魔法陣が消えてしまい、ほとんど入ってたテーブルが突然出現して落下。斜めに落ちちゃって、それなりに丈夫なテーブルなのに足が折れてしまった。あれが足にでも落ちたらと思ったらぞっとする。


「うう、ごめんなさい」


 頭を押さえながら謝るロナ。かなり酷い二日酔いのようで怒る気にもならない。ロナはデリーヌさんのフェロモンやら色気にやられたわけじゃないから完全に自業自得。好き嫌い多いのになんで酒なんか飲んだんだ。きっとデリーヌさんに無理やり飲まされたんだろうけど。


「うう、酷いわ、私の一番大切なものを奪うなんて、シクシクシク」


 片付けの横でシクシク泣いてるのはデリーヌさんだ。俺は何も奪ってない。ちょっと鬱陶しい。こっちは俺が色気とフェロモンを0にした。フェロモンがコントロールできるのはなんとなくしっくりくるけど素の色気も抑え込めたのは驚いた。

 もちろん理由は昨夜のあれを朝繰り返させないためだ。サキュバス成分を消し去り、酔いつぶれてた冒険者たちは性欲0にしておいた。

 おかげで朝はあっさりしたもんだった。目を覚ましたデリーヌさんと冒険者たちは落ち着いたもんだった。今のデリーヌさんは俺から見た感じでは綺麗なちょっと年上の女性でしかない。ここに居る男はベイガード以外性欲を消し去ってるから全員そういう客観的な感想になってるんじゃないかな。


「昨日は飲み過ぎた。いやー申し訳ない」

「デリーヌ、あれ? デリーヌってこんな感じだったっけ?」

「飲み過ぎて疲れちまったかな。デリーヌ、またな」


 昨日の夕方にすれ違った時とはテンションがやや低めの挨拶で冒険者たちが帰っていく。首をかしげる冒険者のつぶやきが聞こえてきた。


「デリーヌってもっとこう色気とかちょっとヤラシイ感じとか凄くなかったっけ?」


 うん、それ俺が封じた。

 そしてデリーヌは聴力がかなり高いのか、それが聞こえてかなりショックを受けてる。俺たちは先を急ぎたいからね。朝から面倒なお色気騒動は困るの。


「イザールの町を出る時には元に戻しますからそれまでは我慢してください。あとお酒は飲まない方がいいと思いますよ。フェロモン駄々洩れするんじゃないですか?」

「知ってる。でも久しぶりのお酒で」

「まぁ、気を付けてくださいよ。下手するとベイガードに歳の離れた兄妹できちゃいますよ」


 軽い冗談のつもりだったが、ベイガードが引きつった顔してる。これは過去にもお酒でやらかしたことがあるって感じか? 深入りしないでおこう。

 片付けが一段落してイザールの町へと戻りながらレクターの件についてロナとデリーヌさんに報告する。レクターを消滅させたことについてはやっぱり言いにくかったけど、そもそも説得できなきゃ討伐って話だったしそこはありのままに話した。


「さきに逝く、ワシの分も楽しんでくれ……か、まったくいつまで彼氏面してるんだろうね」


 そう言うデリーヌさんに悲しみの色はない。あっさり受け止めてる。すごくあっさりだ。


「私よりずっと重症だったからね。納得のいく終わり方ができたんならそれで良かったんじゃない?」


 同族で近い状況にあったデリーヌさんがそう言うならそうなのかもな。俺としては、求められてやったことではあるけど、相手の価値観や人生をちゃんと理解したわけではなく求められるままにやってしまったって感じで、結果としては尊厳死なんだけど、これで良かったのかって疑問が何度もよぎるんだよな。


「あんたが暗い顔してどうすんのよ。結果として魔族を討伐したんだから目標達成でしょ。あいつの願いを聞き届けた上での事だし、変に抱え込む必要ないと思うよ」


 俺の顔を覗き込みながらそう言ってくれるデリーヌさんは色気もフェロモンも消してるけど、優しい母親の顔で重い気持ちを軽くしてくれた。


「私も気にしなくていいと思います、イチチ」


 ロナが両手でコメカミを押さえながら言う。


「話しましたよね、魔族の状況を。レクターみたいな人はもっと沢山いますし、魔界の奥に行けばもう座ったまま100年以上動かない人とかもいますよ。たぶんケンジが想像してるよりずっとずっと魔族の無気力化は重症なんです。レクターが終わる選択をしたのは、それに比べると随分とマシだと思います」

「その動かなくなってる人ってどうなるの」

「動かず、何も考えず、ただ寿命が来て滅びるまで待ってるんだと思います」

「そか……それもきついな」


 魔族の二人に問題ない気にするなと言われ少し気が楽になる。まだその価値観が理解しきれないけど今回の件を重荷とする必要はないようだ。いいことしたとも思えないけどな。


「で、この後はどうしますか?」


 オーリンさんが問いかけてくる。オーリンさんは昨夜早い段階で冷静になるよう体調操作してたから酔い潰れたりしてない。いたって普通の状態だ。


「まだ午前中だし、町でご飯食べたら出発する? あの馬車なら明日の昼には帰り着くんじゃない?」


 アーニャは早く戻りたそうだ。圧倒的に強いとは言え、両親を敵地の真ん中に置いてきたようなもんだからな。


「そうだね。報告は早い方がいいよね」

「では、私は先に町に戻って王都へ連絡しておきます。吉報は早い方がいい」

「お願いします」

「報告を済ませた後、町の正門で待っていますね」

「わかりました」


 オーリンさんは一足先に町へ走っていった。



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 町に着き早めの昼食をとった後、俺達が町の正門へ行くと、軍用馬車の御者台に乗ったオーリンさんが待っていた。この快適馬車、王国と魔族の問題が解決したらご褒美に一台もらえないかな。アーニャの冒険者としてこの世界をあちこち旅したいってのに俺も一緒に行きたいからその足に丁度良いよね。あ、でも自前の馬車もってちゃ護衛任務が受けにくくなったりするかな。それに魔族の問題が本当に解決になれば王国が元の世界に帰る方法をあっさり教えてくれたりするかもしれないな。まぁそん時はそん時だ。その時考えよう。今のところ、アーニャと旅するってのが魅力的すぎてすぐに帰りたい! って感じじゃないしな。


「世話になったな」

「ごめんなさいね、私のせいで」


 ベイガードとデリーヌさんが見送りに来てくれている。と言っても食事も一緒だった。二人は仲のいいどこにでもいる親子だった。サキュバス成分はまだ封じられてるからトラブルは無いが、デリーヌさんの姿を見て驚いてる人は大勢いた。だけど軽い挨拶があるだけで事情を詳しく聞こうとしてくる人は居なかったところを見ると、やっぱりこの町の人ってデリーヌさんを魔族って知ったうえで受け入れてたんだろう。王国の魔族と交流する町第一号はこのイザールの町になるような気がする。


「いや、色々まとめて解決したみたいで良かったです。この先こっちの計画通りに行けばきっとこの町が魔族との交流拠点になるだろうと思います。なのでその時は色々よろしくお願いしますね」

「そうなると魔族にはありがたいですね」

「俺にできることがあれば言ってくれ」


 この二人はこの町でなら問題なく暮らせるだろう。そもそも武力的にこの二人をどうこうできそうな人が居なさそうだし、冒険者たちに大人気だもんね。デリーヌさん。

 

「では、行きましょう」


 オーリンさんが馬にムチを入れ、馬車が進み始める。俺たちは二人に見送られ王都へ向かった。

 あ、サキュバス成分元に戻すの忘れた。まぁいっか。俺のスキル時間指定しなかったら1日くらいで効果切れるはずだし。



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