表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/92

055 討伐対象の調査


 軍用の馬は凄い。これまで馬車での移動は、荷物満載の商人の馬車がほとんどだったからこの速度には驚いた。そして驚く速度のわりに乗り心地は快適だ。というのも乗る前に気付いたがこの馬車サスペンションらしきものがついてる。そういえば、リゲルと一緒に乗った要人用の馬車も快適だったな。あれは車輪周辺も飾り立てられてて気づかなかったけど同じようなサスペンションがついてたのかも。


 目的地イザールの町へは野営一回で到着した。早速俺たちは魔族からの被害を確認するために町の町長の家に向かう。突然知らない人が来て迷惑な魔族について教えてくれって言っても、一つの町の町長が面会してくれるわけないけど、そこは王からの依頼だ。御者をしてくれてた騎士はしっかり王からの書簡を持っており、それを屋敷の執事へ渡すとほとんど待たされることもなく応接室へ案内された。


 町の町長の家と言っても、先日王宮を見た後だからそれほど豪華さに驚くことは無かったが、それでも元の世界だったらちょっとした社長の家って感じの規模はある。そもそも執事なんて元の世界で雇ってる家なんて少なくとも俺の身の回りには居なかった。


「ようこそいらっしゃいました。王からの使者さま。ご用件は拝読いたしました。この町に出没する魔族についてでしたね」


 意外と素朴な人が出てきた。ちょっとした中小企業の社長さんって感じの人で痩せて苦労してきたことを感じさせる風貌だ。この魔街道沿いの町って、何ヵ所か依頼を受けて立ち寄ったけど、他の街道の町と比べるとちょっと暗い雰囲気があるんだよね。魔物や魔物の森から取れる貴重な品を求めて、商人が集まる街であり活気はあるんだけど、やっぱり貴重な品を手に入れるには危険が伴い、それなりに犠牲者もでてるだろうから、そういうのがこのなんとなく暗い雰囲気の原因なのかも。


「はい。その魔族をなんとかするように王に頼まれて来ました。知ってることを教えてもらえますか?」


 今回の依頼は道中の馬車での話し合いで俺が中心に行うことになった。一応魔王だし今後その肩書が必要なこともあるかもしれないから、自信が無さすぎる俺に経験を積ませようとアーニャとロナの意見が合致。

 滅茶苦茶なスキルを持ってるのに控えめすぎる。悪いことじゃないがそれだと魔王の肩書が軽くなるし、変にチャレンジ精神を刺激して敵を増やすかもしれない、ある程度自信をつける、自分の力を理解し使いこなして知らしめることで無駄な争いだって避けられるんだ……とのことだ。

 俺、この人間と魔族の協力体制が成立したら魔王なんて返上していいし、そもそも魔王の肩書で人から狙われるようなことがあるなら、今すぐにでも捨てたいよ。


「その魔族は、もともとこの町の住人だったベイガードという男です。正確に言うと、魔族の母親とこの町の男との間に生まれたのがベイガードです」

「魔族と人間って、子供が作れるんだ」


 まぁロナが俺に求婚してきたくらいだし、作れるんだろうとは思ったけどそういう存在が身近になってきて改めて感心する。


「ね、実例もあるんだから、問題なくロナと結婚できるよ」

「いや、問題は結婚する意志が俺に芽生えていないことだぞ」

「ブー」


 ブーってあなた、俺よりはるかに年上ですよね。可愛いけど。


「それで、なぜ元この町の住人だった男がこの町に危害を加えるように? その魔族の母親はどんな魔族だったんですか?」


 俺は魔族の討伐とは関係なく興味がわいてきた。


「いや母親は生きてる間、魔族であることを誰にも言わず、誰にも知られないようにして生活をしていたようで、母親が死んだことを知ったベイガードが暴れるまでその親子が魔族だったなんて誰も知らなかったんですよ」


 この家族の情報はこんな感じだった。

 ベイガードの父親はこの町出身の魔物ハンターでそれなりに腕が良かった。ある時狩りに行ったと思ったら綺麗な女を連れてきて一緒に暮らすようになった。二人は仲睦まじく暮らし、数年後にベイガードが生まれた。しかし女と暮らすようになって男は体調を壊すことが多くなった。ベイガードは15になりとても優秀だったため王都の騎士学校へ入学し家を離れた。

 そしてある日ベイガードが家に戻ると、両親は既に死んでいた。実際には先に父親が死に、その後母親が後を追うように死んですでに埋葬されていたとのこと。ベイガードへはすぐに手紙が送られたが何かの手違いで手紙は届かず、いつまでも戻らないため埋葬されたらしい。


「それはショックですね。里帰りしたら両親死んでたとか」

「まぁそうだと思いますが、その後が大変でした」


 両親の死を知ったベイガードは、連絡が届かなかったことに納得がいかず関係者に食って掛かったらしい、そして喧嘩になりその異常な力を見せることになった。とにかく強い、殴れば相手が一撃で気を失うほどの力を持ち、相手の攻撃は全くあたらない。と言うか透きとおっていた。なので喧嘩と言っても一方的だ。ベイガードへは攻撃が当たらないのだから。ひとしきり暴れたベイガードは今度は両親の墓を荒らしその遺体を確認してから魔物の森へと姿を消していった。それが5年前の出来事らしい。


「バンパイアかな」

「バンパイア? 資料で見たことあるかも、人間の血を吸ったりする魔族だよね」

「そう」

「そんな魔族もいるんだ。元の世界で言う吸血鬼だね」


 アーニャもそういう知識はあるんだ。ファンタジー的なものとかあまり興味なさそうに見えた。


「多分母親がその系統の魔族だったんじゃないかな」

「で、被害はどんなかんじなんですか?」


 町長は少し悩んでから答える。


「被害は討伐に来た騎士団が怪我をしてるくらいですかね」

「え? 町には被害が無いんですか?」

「町の者が近づくと消えるんですよ。ベイガードはただ母親の墓の前に立ってるだけです。自分から危害を加えてくることはありません。ただ魔族であることが分かってからは、騎士団が繰り返し討伐に来るようになり、その都度、数人の騎士が怪我をする程度の被害がでています」


 どういうこと? 墓参りにくるベイガードに対して、騎士団が何度も討伐しようとしては負けてるって話なの? それって別に危険な魔族って感じじゃなくない?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ