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041 リゲルと別行動、3人で魔界へ


 シャウラの町に着いた。護衛任務はここまでだ。ここから魔族の町との交流は主に商隊の行き来で行われているらしい。商隊は毎日出ているわけではないためまずは冒険者ギルドへ向かい確認する。

 この町はかなり大きな町みたいだ。主な産業は魔族との交易で得られる人間社会ではレアな物の販売とのこと。定番なのは魔道具に使う魔石だ。魔法使いの杖に埋め込まれているのは見たことがある。そういえばリゲルもロナもそういうの使ってないな。


「そういうのって、魔力の少ない人間の工夫だから」


 とのことらしい。確かにリゲルもロナも魔力余ってるよね。人間の凄く魔力の多い人で20から30ってところなのにその5倍くらいあるもんね。


 残念ながら、明日や明後日に出発するような商隊はなかった。だけどリゲルに対して指名依頼があった。


「リゲルさん、ルーマルクの村から応援要請です。魔物の背後に魔族がいるとのことでかなり苦戦してるらしいです。引き受けてくれませんか?」


 この国ではミラ・カーフ王国よりずいぶん魔物の駆除が進んでいるらしい。一部の魔族が協力してくれていることが大きく、特にここ10年は過去に魔物に奪われた土地をほとんど取り返すほどまでになっているとのこと。しかし今回のように強い魔族が魔物を背後で操り始めたりすると苦戦することもあるらしい。


「この国と魔族って上手くやってるって言っても、僕たちが居た魔界の中心と関係がある魔族と上手くやってるだけだからね。魔族ってハッキリと国があって連絡網が整備されてるわけじゃないから、僕たちが会ったことのない魔族も沢山いるし、何を考えてるかも知らないんだ」


「じゃぁどうするの?」


「まぁまずは会ってみて人間と争わないようにお願いかな。それでだめなら倒す。それでもだめなら消滅させるかな」


「同族なのにいいの?」


「んー同族といってもね、基本魔族は強い者の言うこと聞くのが当たり前だし、人間ほど命を大切にって感じでもないよ。あまり長く生きすぎると死に場所を求めてたりもするしね。戦って死ねたら本望ってのも居るから、いろいろだね。実は人間と争ってる魔族は娯楽でやってる奴が多いんだよね。仲良くしたい僕としては困った奴らなんだよ」


「そか、で、リゲルどうするの?」


 うーん、と少しだけ考え、リゲルは依頼を受けることを決めた。


「僕は応援にいってくるよ。遠い場所じゃなさそうだし、解決したらすぐに追いかけるから先に行っててくれない? ロナが居れば魔物はほとんど寄り付かないから問題ないはずだよ」


 俺もアーニャもそれに反対しない。リゲルたちと一緒に行動して魔族ってのに対する印象が随分とかわった。今では恐怖の対象でも敵という認識でもなく普通に交流できる相手だと思ってる。でも人間に魔物をけしかけて楽しむような魔族も居るらしく、それを止めてくれるって言うなら止める理由もない。俺たちも行くべきかちょっと考えたが、それはリゲルが断ってきた。


「僕一人なら、飛んだり歩いたりを繰り返して短時間で移動できる。助けに行くならちょっとでも早い方がいい」


 まぁその通りだ。どんな状況か分からないけど、リゲルは魔族でもかなり強いみたいだから心配ないか。

 そんなこんなでリゲルは早速出発した。嫌そうな顔一つせず依頼を快諾したリゲル。


「リゲルって凄くいい奴なのかも。最初の女好きで偉そうな態度が印象悪くしてたけど」


「そうね、ケンジに対しても実力を認めた後は対等に接してる感じだし、極端ではあるけど悪人じゃないのはこの数日でわかったわ。盗賊も殺さなかったしね」


 心が折れそうなほどの実力を見せつけてたけどね。そんな俺たちと違ってロナは不満顔だ。どうしたんだろう。寂しいのかな。


「助けに行くのはいいんですが、アーニャの案内を私に押し付けて逃げられた気がします。お兄様、きっと追いかけてきませんよ。そのまま遊びに行ってしまうと思います」


 ありえる。いや、そう言われるとそうとしか思えなくなってきた。


「でも、私はお父さんたちに会わせてもらえればそれで十分だから、ロナよろしくね」


「はい、そこはちゃんと案内します。だけどケンジにはちょっと迷惑かけるかも」


「え? なんで?」


「もう少ししたら話しますね、魔界に行けば分かることですから」








 シャウラから魔族の町までの移動距離は普通だと二日の距離だ。だけど魔物の森で止まることのリスクを考え商隊だと野営なしで丸一日移動するハードな道のりとなる。だけど俺達はロナが居るおかげで魔物に襲われるリスクがほとんどないらしい。

 ロナによると、強大な魔力を持つ者には魔物は近づいてこない。魔物は知性が低い傾向にあるが、魔力には敏感とのこと。

 ということで、慌てず移動して野営をしようということになり、買い出しに出かけた。ロナが俺の料理を食べたいってのが本当のところなんだろうけど、道中の正に魔除けをしてくれるんだからそのくらいい安いもんだ。俺は二人にどんなものが食べてみたいかを聞きつつ食材を購入し、ロナの魔法収納に放り込んでいく。

 魔法収納面白い。手に食材をもって黒い空間に差し入れると完全に食材が見えなくなった時点で手から感触も消える。引き抜いた手にはなんの変化も無い。それだけなんだけどその不思議な感覚が面白くて何度もさせてもらった。いくら入れても重くなることも疲れることもないってことだから多めに買ってしまった。魔界では食材のお店などないらしいから、人間界の食材はアーニャの両親へいいお土産になるかもしれない。


 そして夜。俺たちは3人一緒の部屋だ。

 買い物の途中からロナが独りぼっちは嫌だって言いだして、アーニャが受け入れた。皆で一緒の方が楽しいだろうと。俺も嫌ではないかな。綺麗な女性が同室で嫌なわけがない。アーニャと俺は付き合ってるわけじゃないし、変なこともしていないからな。何か邪魔されるってことにもならないし、実は告白してからちょっと二人っきりになると恥ずかしい気分になるってのもあるから、3人で過ごすのは気が紛れていいかもしれないとも思った。

 ベッドが3つある部屋を探すのに少し苦労したけど、よくよく考えると元の世界でもこんな状況経験がない。今は風呂上りの美少女二人が机を挟んで椅子に座りお茶を飲みながら談笑してる。女性の多い職場だから女性に慣れてるつもりだけど、こういう宿の一室だと全然違う。なんだろ30にもなってちょっと状況にドキドキしてる自分がいる。

 冷静に考えると片方は98歳の凄く年上なんだけど、見た目が10代後半なんだからしかたないよね。そのロナの食事は問題なく味付け無しの料理を出してもらうことができた。昨日に比べたら明らかに元気になってるから、魔族でも魔界を離れると栄養摂取が重要ってのがわかった。

 アーニャとロナは意外と気が合うのか楽し気だ。アーニャは両親のことを聞き、ロナは俺のことや元の世界のことを聞いている。

 俺はそんな様子を見ながら日課の筋トレと生活魔法の練習だ。ちなみに剣術の訓練は夕食の前に空き地でやった。毎日はできないけど、この世界で生きていくためには必要だろうと頑張ってるつもりだ。反応速度強化も、スキルの熟練度が上がり負担軽減がされたおかげか、限度が分かってきたおかげか、片頭痛に悩まされることもなくなった。

 生活魔法についても、ちょっと魔法陣が安定してきた。ロナにも見てもらえ、そのくらい安定すればもう水くらいなら出せるはずって言ってもらえた。魔法陣の小ささは笑われたけど、俺のトイレ事情が改善する日が近いと思うと嬉しくなる。トイレを済ませた後、バケツを借りて水を貰うのって恥ずかしい。何回やっても恥ずかしい。この恥ずかしさを無くすために訓練の最優度は生活魔法にすべきだったかもしれない。魔界に行って落ち着いたら、ロナに指導してもらおうかな。





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