034 ハーレム展開は困る
突然の申し出に混乱する。アマンダも同じみたいだ。もしかしたらそういうことかもって途中で思ったけど、いきなり結婚の申し出が来るとは思わなかった。でもそんなの受けられないでしょ。俺、この旅の中でもうアマンダのことが好きになってるし、できればずっと一緒に居たいと思ってる。ロッサーナが可愛いからってここでOKなんてしたら、どんだけ軽い人間なんだよ。ラノベのハーレム展開じゃねーんだぞ。
それにここまでのやり取りでアマンダだって俺に結構好意があると感じてる。この関係を維持してさらに進展させようとしてる時に、下手な返答はできない。
「そんな急に結婚を申し込まれても困るよ。俺は君のことを知らないし、結婚ってそんないきなり決めるようなもんじゃないと思うな」
よし、若い子に諭すように柔らかく断る流れでいこう! この子のキャラクターが分からないから警戒は怠らないようにするぞ。
「私は構いません。人間の結婚の概念は理解してますから、双方の合意が無ければ結婚が難しいことも理解しています。ですが私たち魔族は長命です。人間との時間の感覚が違いすぎるのです。人間は寿命が短くすぐに死んでしまいます。あなたがお兄様よりも強い人であっても、寿命には逆らえないでしょ?」
「まぁそうだね」
「なので私は貴方を逃すと次のチャンスが何百年先になるかもしれないのです。もちろんこれからお互いを理解し、お互いに好意を持てたら子供を作るという流れで良いので、お試しということでしばらくご一緒させてください」
おいおい、話が飛んだぞ。結婚って話だったのに、子作りの話になってるぞ。人間の結婚の感覚を理解してるんじゃなかったのか? いやもしかしたらこの世界の結婚の感覚と俺の感覚自体が違うのかも。しかしこれってお互い好意をもてたら行為しましょうってことだよな。なんておいしい! これが元の世界なら泣いて喜ぶような美少女だし。
思わずロッサーナをじっくり見てしまう。
じーーーー
うお!
すぐ近くにアマンダの顔があった。俺の表情を観察するようにのぞき込んでる。やばい俺、嬉しそうな顔してたかも。
「ケインってもしかして、こういう子が好みなのかな? 細くて女の子っぽくて可愛いよね、ロッサーナちゃんって」
ハハ……
もしかして微妙に怒ってる? ちょっと不機嫌な顔に見えるんだけど。でもそれってやきもち焼いてもらえてるってこと? アマンダは俺のことどう思ってるんだろな。なんとなく好意的なのは感じてるけど、お互いそういう感情について話したことは無いんだよな。一緒に行動するようになってもう結構時間が経つし、そろそろ気持ちを伝えてもいいかも。もしアマンダにそういう気がさっぱり無かったとしたら、一緒に居る時間が長くなるほど、俺のダメージが大きくなりそうだしな。俺としてはたとえアマンダが俺のことを好きじゃなかったとしても、同じ世界から来た者同士として助け合っていくだろうし。よし、近いうちにその辺りはっきりさせるかな。告白を躊躇するような年齢でもないしな。
「えっと、ロッサーナさん? とりあえず今すぐ結婚とか俺は考えられない。ごめんね」
「なに! 妹を断るのか! 僕の目から見てもかなり可愛いと思うんだが、やっぱり君はアマンダとすでに付き合ってるとかなのか?」
いやいや、リゲル君、告白しようと思ったところで気まずくなるようなこと言うんじゃないよ。もしここでアマンダに嫌そうな顔とかされたら、さすがに告白なんてしにくくなるじゃないか。
恐る恐るアマンダを見ると、ちょっと顔を赤くしていた。
「付き合ってなんてないわ。でも、ずっと一緒に居るし、ケインって優しいし、一緒に居ても変なことしてこないし、その実質付き合ってるみたいな感じというか、でもプラトニックだし……」
こ、この反応は! もしかして俺の想像以上にアマンダって俺のこと気にしてた? 好意的以上の感情で俺を見てくれてたりする?
「そうか、付き合ってるわけじゃないんだな。じゃぁ妹にもチャンスがあるな。僕はね、僕に勝てる者が現れたら、是非その者に妹を頼みたいと昔から考えてたんだ。ケイン、どうかな、魔族は結婚にはこだわらない。もし君がアマンダに好意を持っていたとしてもかまわない。将来的に二人目の嫁としてでもいいからもらい受けてもらえないだろうか」
いやいやいや、まだアマンダとハッキリもしてないのに、話がややこしくなるじゃないか。そりゃそうなれば男としてはとんでもなく嬉しく美味しい状況だよ。元の世界じゃ考えられないような状況だ。この世界に来てしばらく経つけど、まさかのハーレム展開ってやつだ。でもアマンダってそういうのダメな気がする。体育会系というか脳筋っていうか、まっすぐだもんな。ここでそんな申し出を嬉しそうにしてたり、受けたりしようものなら、きっと呆れられてしまうと思う。
「リゲル、ちょっと待って。そんな妹を簡単に差し出しちゃだめでしょ。無理だよそんなの。そんなことより今は魔界への案内だよ。俺たちはアマンダの両親と合流するためにここまで来たんだ。今はそんなことを考えてる場合じゃないんだよ」
俺の表情を観察してる気配が気になる。
「ええ、私たちは先を急いでるから」
同調してきた。
「そうか、まぁロッサーナ、僕たちにはいくらでも時間がある。ロッサーナが嫌いなタイプって感じではなさそうだし、一緒に居てロッサーナの魅力を見せつければ、そのうち襲いかかってくるかもしれない。気長に頑張りなさい」
「はい、お兄様。私、このチャンスをなんとかしてみせます。ケインさん、私のことは気楽にロナと呼んでください。魔界まで御一緒させていただきます。その先も御一緒できるよう頑張りますのでよろしくお願いします」
うん、いろいろややこしくなってきたぞ。とりあえずこの場は収まりそうだけど今後どうなるんだ? まさか俺がこんな色事で悩むようなことになるなんて予想外だ。強いってのがモテる要素なのは分かってるけど、その強さが努力で身に着けたものじゃないからな。自分がその要素でモテる日が来るなんて想像してなかった。兄より強い人と結婚したい……ロッサーナ、いやロナはこれまでそういう相手に恵まれなかったのかもしれないけど、今もなんかすっごい熱い視線を感じる。これが好みじゃない子なら鬱陶しいだけなんだけど、こんな美少女に熱い視線を向けられながら、アプローチを躱しつつ旅するのって案外しんどいかも。
「まぁ魔界までよろしくね、ロナさん」
俺は引きつった表情で返事をした。
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その夜、布団に入った俺はこれまでのことを整理した。
まずは、これまでのことだ。
ここまで結構慌ただしく過ごしてきたけど、この異世界に転生してきたことを不幸だとは思っていない。牢に入れられた時にはかなり焦ったけど、スキルに助けられアマンダに出会え、正直この世界を悪くないって思ってる。だって元の世界じゃもう先が見えてたしな。情報化社会って凄く便利だけど、その分夢のない世界だったんだなって今では思う。どんなことだって検索すれば大抵知ることができて、自分の未来だっておおよそこういう人生になるんだろうなって分かってしまう。それって安心できる良い面もあれば、将来の未知数な要素を失ってるって面もあると思う。そういう面ではこの世界に来てからの俺は、以前より何倍も緊張したりワクワクしたり、嬉しかったり怖かったり、あらゆる面で刺激的な毎日を送ってる。知らないことばかりで全てが刺激的なんだ。この先どうなるのかすら分からないけど、元の世界へ帰れるって状況になった時、帰る選択を選ぶかどうかも分からないくらいこの世界を楽しいと思ってる。その点については戻れるかどうかも分からないんだからあまり考えても仕方ないけど。
そして次に今後のことだ。
はっきり言って俺には目的がない。この世界で生きていけるように自分を鍛えることは必要だけど、なんのためにと言われると俺自身の目標がない。だから現状アマンダの目的が俺の目的となってる。それはそれでいい。だけど、アマンダと両親が合流した後はどうだろう。その時にはどう生きていくのか自分で考えないといけないかも。もしかしたらアマンダと離れる必要が出てくるかもしれないし。嫌だけど。
予想としては、魔族と人間の関係を改善させるための動きに巻き込まれていくかなって思ってる。まぁ俺としてはアマンダに協力したいからそれが次の目標になってもいいかな。
アマンダとの関係はリゲルとロナの登場で、なんとなくこのままじゃダメな気がしてきた。というのもこのままアマンダの前でロナに求婚を繰り返されちゃ困る。アマンダには早く俺の気持ちを伝えよう。これまで一緒に居て、今ではお互いのことがかなり理解しあえてると思うし、ずっと同じ部屋で寝泊まりしてるんだ。希望的観測だけど、悪くなく思ってもらえてると思う……たぶん。
そしてスキルだ。意外とスキルについてが一番分かってないかも。




