022 討伐任務を受けてランクを上げよう
「そうか、アルドラへ行くか。まぁそうなるだろうとは思っていた」
俺たちはギルドへ戻ると、ゴルドさんともう一度会い、リゲルに聞いた話とアルドラへ行くこと、そしてその準備として冒険者ランクをCに上げるため依頼をこなすことを伝えた。
「しかし魔族の町まで行くのに、ランク制限があるとはしらなかったな。当然と言えば当然か、魔物の巣窟を抜けるんだ。中途半端な護衛は使えないか。」
「それで聞きたいんですが、ランクを早く上げるのにいい依頼とかってあります?」
「そりゃ討伐任務さ。ここより北には魔物の住むエリアと近い村がいくつもある。そういう村からくる討伐依頼を達成していくのが一番速いだろう。この町から依頼を受けるなら俺も少しは協力できるぞ」
討伐任務が評価してもらいやすくランクを上げやすい。より強い魔物を倒すほど評価されやすい。そういうことみたいだ。となれば俺たちがやることは決まった。まずは掲示板に行って丁度いい依頼を探すことだ。
それに俺たちはまだ魔物と戦ったことが一度もない。ここで経験を積むってのはいい選択だったかもしれないな。ここまでの旅は逃走の色合いが強かったけど、ついに討伐のための戦闘を経験することになるんだな。俺も気持ちを切り替えて頑張ろう。
盗賊相手には持てなかった殺す覚悟が必要な時がきた。
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「どれにする? 結構いろいろあるんだね」
「魔狼ってのが一番報酬が安いから、簡単ってことなのかな」
「ゴブリンも同じくらい安いよ」
「このトロール数体ってのもいいかも。数が少ない方が俺のスキルで対処しやすい。数で押されるのは難しくなると思うし」
「ケインのスキルって凄いんだけど、スキルで対処できない状況に、ケイン自身が対応できるようになる必要はあるわね。この町で依頼をこなしながら訓練もしましょ」
「そうだね、生活魔法だってまだ使えないし、訓練もしたいね」
「しかし依頼はどれを選んだらいいのかわかんないなー」
俺とアマンダは、魔物と戦った経験も無ければ、どの魔物がどのくらい強いかって知識もない。アマンダがこの世界でかなりとびぬけて強いってのは分かってるから、普通な魔物なら倒せるだろうけどね。
他のパーティーに一時的に入って活動するって手もあるけど、やっぱり事情が事情だけに普段の会話まで気を使って疲れるだろうと考えて、二人で依頼を受けることにしている。
「お困りですか?」
掲示板の前で悩んでたら、受付の女性が近づいてきた。小柄で眼鏡をかけた知的な女性だ。
「あ、はい。討伐任務を受けたいんですが、今まで護衛任務しか経験なくて……」
そう伝えると、受付は少し近づいてきて小声で言う。
「ゴルドさんにあなたたちをよろしくって言われたんです。親戚なんでしょ? 実力はあるけど経験がないから依頼選びを手伝ってやれって。私はアンよ。よろしくね」
あ、ゴルドさんそんな気遣いをしてくれる人だったんだ。すっごくありがたいかも! でもこれもアマンダの両親のお陰だな。俺ってこの旅でアマンダ家族に世話になってばかりだな。
「それにあなたたちって、ちょっと噂になってた幽霊剣士を倒したメンバーなんでしょ。期待してるわよ。この町って、この国で一番西の果てじゃない? ここしか頼るところが無い村が結構あって依頼が多いんだ。だからじゃんじゃん依頼を受けて達成しちゃってね!」
ということで俺たちは無い知恵で依頼を選ぶのはあきらめ、アンに選んでもらったトロール3~4匹の討伐という依頼を受けることになった。選ばれた理由は、幽霊剣士が元々Bランク冒険者であり、それを倒せたメンバーならCランクが倒せるトロールなら大丈夫だろうという判断と、二人組であることから敵の数が少ない討伐がいいだろうって理由だ。俺たちが気にしてたポイントをしっかり考慮してくれた選択だった。
「じゃぁ、村に行ったら村長へこの書類を渡してね。達成したらサインをもらって帰ってきたら報酬の受け取りね。あ、ごめん、そのくらいはさすがに知ってるわよね」
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俺たちは次の日の朝、トロールが出没するという村へ向かった。歩いても行ける距離だけど、作物を運ぶ馬車へ乗せてもらってる。
このエルナトまでには王都から数本の枝分かれしした街道があり、それぞれ栄えた場所があるが、北側の街道、通称「魔街道」は魔物の影響で寂れた場所となっているらしい。よって村へは移動用の定期馬車などない。そして荷馬車は護衛を雇っていない。北側へ行くほど盗賊が少なくなるからだ。大きな街がなく農村が多いうえに魔物がでるかもしれない。盗賊にとってはリスクが多く美味しい獲物が居ないってのが理由だ。
魔物が出没するリスクが無いわけじゃないが、それも村よりさらに北でのことが多く、基本エルナトまでの道のりで護衛をやとうことはないとのこと。移動のために荷馬車に乗り込む冒険者は村人にとっては無料で護衛が得られたようなもので、冒険者も無料で馬車移動できるんだから、お互いにちょうどいいってことだな。
「よろしくたのむよ。うちの村に出てくるトロールを倒してくれるんだろ」
馬車の主である白髪のお爺さんが期待した目を向けてくる。
「はい、その依頼で村へ向かってます」
「助かるねー。しかし二人で大丈夫かい? あいつらはちょっとの怪我じゃすぐに治っちまう。俺たちだって村の戦えるもので、なんとかこれまで追い返してきたんだけどね。どうしても止めが刺せるまでにはいけてないんだ」
「へー、そうなんですね。どうやったら死ぬんですか?」
「おいおい! 大丈夫かい? 倒した経験ないのか?」
「あ、はい。トロールどころか魔物と戦うのは今回が初めてです」
アマンダ! 素直だな。そこはオブラートに包んで安心させといた方がいいんじゃないのか?
「俺たちは魔物の討伐は初めてですが、ギルドに実力を認められてトロール討伐を勧められましたから安心してください。特にこのアマンダは総合力Bもあるんですよ。Cランクで倒せるというトロールなんてきっと余裕ですよ」
俺の意図を察したのか、アマンダがギルドカードを見せる。
「ん? あんたかなり変わってるね。冒険者ランクがDで総合力がBの人なんて初めて見たよ。これまでどうしてたんだい? 依頼を受けず修業ばかりしてたとかかい?」
「そうなんです。5年も外に出られず修業だけしてました」
「はー、変わった人だね。って、あんた筋力Aなのかい?」
ギルドカードの裏が見えたのかお爺さんが驚く。
「こりゃたまげた、そんな可愛らしい見た目で怪力なのかい。まったく人は見かけによらんな。うちの村の力自慢がB判定じゃったのに、あんたはいったいどんな鍛え方をしたんだい?」
アマンダのカードを見せたことで、俺たちに対するお爺さんの不安感はぬぐえたみたいだ。
怪力と言われた時、ちょっとおアマンダが苦い顔をしてたが、強さに拘るアマンダでも怪力と言われるのは女子的に嫌なのか? 俺はそれを言わないことにしとこう。大丈夫、アマンダは怪力でも素敵だよ。
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村へは日暮れ前に着いた。なんのトラブルもない移動だった。俺たちは村長の家に向かうと状況を教えてもらう。
村長の話ではトロールはこの村からさらに数キロ北にある畑に出没して人を襲ってくるらしい。幸いトロールは足が遅いからこれまで犠牲者が出たことはない。さらには村の者で討伐隊を組んで戦ったが、トロールに止めを刺すまでにはいかず、次に現れた時には傷が全て治ってしまっておりどうにもならない。現在まで確認できているトロールは3体。それはこれまでに付けた傷の治った痕で判別してるらしく確実な数だといえる。なんとかその3匹を倒してほしい。
とのことだった。体の傷で個体を判別するとか、クジラとかイルカみたいで面白いな。
「今日はワシの家で休んでください」
村には宿がなく、俺たちは遠慮なく村長の家に泊まった。
「一応作戦立てとこっか。と言っても私が前衛でケインが後衛なのはいつもと同じね。トロールはタフで傷程度じゃ倒れないし、次の日には治ってるって話で、切断した手足はさすがに生えてこない。そして確実に倒すためには、首をはねるか、心臓を貫く必要があるってことね。深手を与えても時間さえたてば回復するから止めは確実に刺した方がよさそうね」
「村長さんが色々知っててよかったね。今度町に戻ったらそういう魔物のことをまとめた本とかないか探そうかな」
「それ必要よね。ほんと私たちってそういう知識、不足してるよね」
「だね……作戦に関してはいつも通りでいいけど、今回は人相手じゃないし害獣駆除みたいなもんだから、盗賊を殺すのと違って遠慮なくやれるね。俺は試してみたいことがあるから、これまでより積極的に動いてみるよ」
「試したいことって? なんか新しいスキルが増えたの?」
「いや、いつもの体調操作で筋力を下げるやつだけど、ちょっと対象を変える」
「対象?」
「うん、普段はね、骨格筋を対象としてスキルを使ってたんだ。筋力って指定したら、心臓や呼吸の筋力まで含まれて、スキルを使った時点で人を殺しちゃうんじゃないかって不安があってね。使うのに抵抗があったんだよね。でも今回は魔物相手だし、いい機会だからスキルを使いこなせるように色々試してみるよ」
「そうね、ケインのスキルって便利すぎて、どう使うのがベストなのか分かりにくいもんね」
しかし、もし筋力と指定して骨格筋だけじゃなく心筋や呼吸筋や内臓の平滑筋まで低下させたらどうなる? このスキルって怖すぎない? 複数同時に狙えないとか、5秒ほどのクールタイムとか弱点があるっちゃあるけど、魔力とか回数制限とかないもんな。念じるだけで相手が殺せるようになったりしたら、ちょっと自分が恐ろしくなってくるな。




