021 両親の情報、再会への道
草原をしばらく歩き、人目の届かない場所まで進むとちょいどいい岩を見つけ、それにリゲルが座る。俺たちも同じように適当な場所へと腰を下ろす。
「ところで君は誰なんだい?」
おっと、ここまで空気だったのに、急に質問が来た。
「アマンダとここまで一緒に旅してきた、仲間です」
できれば仲間以上になりたいですけどね、今は仲間もしくはアマンダの寝相ファンってところか。
「そうか、仲間か。あまりに不釣り合いだから付き人か何かかと思ったよ」
そう言って笑うリゲル。
なんだとう! まぁ見た目の格差はあるだろうけど失礼な奴だ! でもこの魔族はアマンダの両親について知ってるんだ。機嫌を損ねちゃまずい。ムカつくけど情報のためだ、我慢。それにどうムキになっても勝てる相手じゃない。相手は本物の魔族で規格外の力を持つ男だ。
「いやー、アマンダにはいつも世話になって……」
「で、アマンダ、君はマクシムとサユリの娘ってことで間違いないんだね」
うおい!
俺が話しはじめたことには全く興味なしといった感じにアマンダへ話しかけ始める。
まぁ話が進むならそれでいいけどね。
「はい、そうです。二人の娘です」
「この国じゃ、君の両親は裏切者ってなってるらしいからね。あの場では話せなかったからここまで来てもらった。いやー話には聞いてたけど本当に綺麗だね。人間にしとくのが惜しいよ」
綺麗だってことには同意するけど、人間にしといてくれ。魔族にする方法があるのかは知らないけど。
「マクシムに聞いてたんだよ。うちの娘は綺麗だって」
「お父さんと親しくしてたんですか?」
「もちろんだとも。今でも魔界に帰った時は毎回顔を合わせてるよ」
「元気にしてるんですか?」
「もちろんだとも、元気すぎて魔界が困ってるくらいだ」
さすがアマンダのお父さん、魔界が困る元気ってなんなんだ? ゴルドさんが言ってた、魔界を変えるためには魔界で一番強くなれば良いっていう、力こそ全てを実践するための修業、あれのことか?
「よかった……」
アマンダ、凄く安心した様子だ。両親の無事が確認できたんだから当たり前か。
「アマンダ、居場所が分かったんだから、アルドラ皇国へ行く?」
「そうね、行きましょ。急ぐ必要はなさそうだけど、このエルナトで用事があるわけじゃなし」
今後の方針が決まった。
アルドラへ向かおう。そこから魔族領へ行き、そこからリゲルの言う魔界へ向かう。そして両親と合流だ。でも、そしたらアマンダとの二人っきりの旅も終わりか、それはそれで寂しいな。
「ちょっと待ちたまえ、魔族領へは限定した者しか行けないぞ」
方針が決まったとたんに、壁が現れた!
リゲルが言うには、魔族領の町には一部の商人とそれを護衛するCランク以上の護衛のみ行くことができるとのことだ。魔族領へ続く街道はそれなりに整備しているが、魔物が多いエリアを通過するために戦闘になる頻度が多い。町の魔族は友好的だが魔物はそんなのとは関係なく、しかも魔物もエリア深くなるほど強力になるため、最低でもCランク以上でないと依頼を受けられないらしい。
「アマンダはその実力がありそうだが、そっちのはその実力がないだろ? 実際二人のランクは?」
「私たちはDです。今のランクじゃ護衛任務で行くことはできないってことなんですね。じゃぁ自分達だけで行くのはどうなんですか? 許可とか必要なんですか?」
「それはやめといた方がいいな。魔族の町までの街道には通行許可も検問もないけど、ランクDが二人で魔物の多いエリアを抜けるのは難しいだろう」
そういえばギルドカード、ほとんど見てないな。俺が懐からギルドカードを取り出して眺めていると、とアマンダも取り出してリゲルへ見せる。
「私は冒険者ランクはDですが、総合力はBです。それにこの総合力、魔力のDが足を引っ張ってるだけで、接近戦に特化してる私はその分野ではAでもおかしくないと思うのですが、それでも難しいでしょうか?」
「ほう、さすがマクシムとサユリの娘だ。物理特化なんだね。うん、でもね、それでも厳しいと思うよ。魔物にも魔法を多用する者だっているし、実体を持たない者もいる。そういう者に物理特化で対抗するのは簡単じゃないよ?」
「でもお父さんやお母さんは魔界まで行けたんですよね?」
「はは、彼らは別物だよ、あれは魔族からみても化け物クラスだからね。実体が無かろうが魔法だろうが、精神力でぶった切る規格外な二人と同じことができるかい?」
「それは、やったことが無いので分かりません」
実体がないって、幽霊的な魔物ってことだよね、しかも魔法も含めて精神力でぶった切るんだ。なんだかファンタジーな世界なのに、上をいくファンタジーな両親だな。魔族から化け物って言われるとかどんだけ? そんでそれを、できない、じゃなくてやったことが無いから分かりません……ってアマンダ。あなたも今後、化け物化していくのでしょうか?
「ははは、さすがだよ。やったことが無いか。まぁあの二人の娘なんだから修業すればできそうだね。でも現状としては、ランクを上げて護衛として魔族の町に向かうか、僕の案内を受けて向かうかだけどどうする? アマンダだけなら連れていってあげてもいいよ?」
え? 俺は連れていってくれないの?
「僕はね、男と旅をする趣味はないんだ。しかも力を持たない男に興味もない、君のランクは? そのカード、総合力やステータスが表示されてないみたいだけど、隠してるのかな?」
ちょっと馬鹿にした顔で俺に言うリゲル。う、力を持たないか、この魔族から見ればそうだろうな。そういえば俺のステータスってどうなんだ? 魔力が扱えなかったから見れてないだけで隠してるわけじゃない。魔法陣を出せるようになった今なら見れるのかも。
カードを持つ手に魔法陣を出すときのように魔力を集中する。アマンダの半分ほどしかない俺の寂しい魔力でも反応してくれるかな。
ケイン
冒険者
ランク D
総合力 D
筋力 D
反応 B
体力 D
魔力 E
出た! そしてランク通りの総合力だ。ランクの説明ではCが最も人口の多い、平均的な冒険者っていってたから、その他の判定もCが平均と考えると、魔力の低さが凄く足を引っ張ってるな。筋力も体力も平均以下か。筋トレしてるとは言え、1週間もたってないからな。いくらスキルで効率よくやってるって言ってもそんな急には変化しないか。それに元々が低かったんだろう。看護師なんてそんな筋力つくような仕事じゃないし、定期的に鍛えるような運動なんてしてなかったからな。患者さんには適度な運動が大切ですよっていいながら、医療関係者自身は交代勤務で不規則な生活、定期的な運動なんてなかなかできない生活なんだよな。反応速度だけはちょっと良いみたいだ。ドッチボールとか得意だったからかな。
「低いね君のステータス、アマンダ、組む相手は実力が近い人がいいと思うぞ。これじゃぁ強い相手と戦う時に、君がこいつを守って戦うことになるからね。もうリスクでしかないよ。リスク」
リスク扱い! 俺、存在がアマンダのリスクなの?
「いえ、ケインは強いですよ。心配の必要はありません。私たちはこの町でランクを上げてからアルドラへ渡ります。色々教えていただき、ありがとうございました!」
あれ? アマンダ怒ってる? 俺を馬鹿にされて怒ってくれてる? そうだったら嬉しいな。でもいいのかな、この魔族に連れていってもらえばすぐにでも両親に会えそうなのに。それに俺が強い? そうか? いつも守ってもらってばっかりなのに?
「いいの? 早く両親に会いたいんじゃないの?」
「ううん、いいの。ちょっとは心配してたけど、聞いた様子だとまったく心配しなくて良さそうだし、きっとお父さんとか毎日戦えて、大喜びしてるんじゃないかな。それに私はケインと別行動するつもりはないよ。だってこの世界で前の世界のことまで分かってくれる人なんて居ないんだよ? 何も隠さず話せる相手なんて絶対に居ないんだから、一緒に居るに決まってるじゃない」
おお、嬉しい! そうだよな。前の世界のことまで隠さず話せる相手なんて、そこを隠して旅してる俺たちにはお互いしかいないもんな。でもいつかは、俺だから一緒に居たいって思ってもらいたいかも。
「そうか、君たちは自分たちで行くか。まぁいい。魔族の町を目指すならまた会うこともあるだろうから、君たちのやりたいようになるといいよ。それに僕は一応用事があってこの町に来てるしね。でもアマンダ、僕を頼りたいときは遠慮なく言ってくれ、あの二人の娘だ。悪いようにはしないからさ。それに僕は美しい娘が大好きなんだ。君とは是非仲良くしたいな」
俺はこんなチャラい魔族とアマンダが仲良くなったら嫌だな!
「そっちの君は、せいぜい死なないようにね。まぁ死んでくれても好都合だけど」
そう言うとリゲルは「用があるから先に行く」とアマンダへウインクし町へ戻っていった。
クッソ似合うからムカつく。偽ジョージクルーニーめ!
「よし、依頼こなしてランク上げしよっか」
それしかないね、アマンダは俺と一緒に行くことを選んでくれたんだ。総合力Bのアマンダと違い、Dの俺は苦労するかもしれないけど、さっさとランク上げて魔族の町を目指すぞ。




