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ぶれいぶすとーりー!2 ~佐藤唯は勇者です~  作者: なつみん
4:清帝国編
34/40

8:湯治 番外編

この度はぶれいぶすとーりー!2 ~佐藤唯は勇者です~ 8:湯治 番外編を読んでいただきありがとうございます。

 アンティーノギルドにて、一行にアーサーが会いに行ったその翌朝。

「はーはっはっはっ!諸君今日は集まってくれてありがとう」

 アーサー王が治めるブリティンの賢人達が、円卓と呼ばれる質実剛健な一室にて一堂に会する。


 アーサーが国を起こし、一代で大国とまで押し上げたここブリティン王国。

 ギルドという組織を根幹とし、それを生業に他国とのコネクションを作りあげてきた。


 建国当時、ブリティンなどという歴史浅く急速に発展している国が直轄する、ギルドなどという怪しい組織を自国に置くということは、土地をブリティンに明け渡すような行為なのではと、問題視されていた。

 しかし、基本荒くれものが集まるギルドは、他国にとってはよい掃き溜めもとい捌け口となり治安の維持に貢献する等、ウィンウィンな関係性を作り上げた。


 時は流れ、ほぼギルドという組織が浸透した今では、ギルドとブリティン間で情報のやり取りのみを残し、管理は完全に国営となり公的機関になっている。

 初期投資分と少しの利益分を回収した後は、仕組みやノウハウだけを残し、すべてを他の国々に委ねたのだ。


 御歳50間近の若い王が作った新進気鋭の国なだけに、やはり国自体も若くまだまだ国営にはなにかと金がかかるお年頃。

 ならばギルドなどという、他国からの体のいい集金機関をみすみす手放してしまって、大丈夫だったのだろうか?


 もちろん全く全然これっぽっちも、よくはなかった。


 そして、アーサー自体は国政に初めの5年位はその辣腕を振るっていたが、それ以降はたいして口を挟んではいない。

 後人育成とかなにかとアーサーはアーサーで、国をほたってでもやるべき事があったのだ。

 ならば他に誰がこの若き国を育て守り立てていたか。


 それはこの円卓に座る数名程度が中心となり、この大国を動かしていた。

 中でも、もう一生とれなさそうな深い眉間のシワと濃い隈から疲労が滲み出ている女がいた。


「…アーサー…、あなたがやるべき事があるのはわかります。そしてあなたの悲願も重々理解し尊重しております…!しかし、しかし!くる日もくる日も政治国営軍事!何をするにも金は有っても足りないのです!」

 冷静さを装おうとしていたが、アーサーの建てた国を受け継ぎ今日まで守ってきた彼女は今、あー!っと、久方ぶりに顔を見せた放蕩王に発狂している。


 彼女の名は、『鉄血の才女』サラ・クリストファー。

 鉄血と略され呼ばれる事が多い彼女は、政治に国営、軍事に資金繰り。

 現在このブリティンの実質的支配者であるのと同時に、世界一の苦労人であった。

 この国が未だに豊かで強い国として、発展しており更に育ち盛りな余裕を残すのも、大体は彼女の功績。


「はーはっはっはっ!君には、君たちには苦労をかける!しかし、こればかりはどうしようもないのだ。考えてみたまえ、私はいずれ死ぬよ。もちろん君もだ。はやく後人を見つける育成するなどしたまえ」

「それが!できたら!苦労は!してません!」


 鉄血が言うのもその通りだった。

 彼女の1,2割でも仕事ができれば、それはもう優秀の域をスキップで越えるようなもの。

 そんな人材がホイホイと路傍の石のように転がっているはずもなく、そして見つけた貴重な原石達に仕事を仕込み、後人育成も抜かりなく進めている。


 アーサーから受け継いだ当時を見れば、鉄血のしていた仕事はほとんど彼女が育てた後人に譲渡していた。

 その結果が、彼女が見初めたこの円卓に集まるものたちだ。

 それでも彼女にしかできない仕事は日に日に増える。


「はーはっはっはっ!君が死んだら国が傾くだろうな!まさに傾国の美女かな?あとついでにいい人を見つけなさい」

「あーーー!!!」

 アーサーから国政を任されたのが若干12,3歳の頃。その頃から今まで20数年、仕事仕事仕事の気づけば四十路手前。

 血のように赤い彼女の代名詞とも言える髪をかきむしる。


「さて、このくらいにして。そろそろカードが揃う、そして時が満ちるのを待つのみ」

 世界を救うという妄執に取り付かれ、勇者にはけして成れなかった王の悲願。

 そして彼のカリスマが声音を代えたことで、円卓一同に緊張を走らせる。

 カードは唯たち一行のこと。そして、アーサーやライトニング、鉄血や円卓の一員。ギルド組織の強い冒険者。

 時とは魔王の復活そして、カードの調整。


「責めてでるぞ」


 今が好機と見た王の静な一言に、心踊らぬ者など一人としていなかった。


「疑わしきは罰する。時があれば詰める事もできただろうが、そうもいかんでな。ノーザン・アルド、サース・アルドそして、清現国王リューエン皇帝…。まずはこの辺りから詰めてゆく」

 アーサーには自身の死までの先読みの力がある。

 そしてその先読みに引っ掛からない人物というのも存在している。


 例えば不死者たるリューエン皇帝や輪廻の輪から少し外れているアリア、そして先日死にかけ、死をねじ曲げられた唯もこのカテゴリーに片足を突っ込みかけている。

 そして人形たるノーザン・アルドやサース・アルドもまた先読みに引っ掛かっていない。

 後は人外の魔物や魔王など。


 アーサーが死ぬまで約6ヶ月の期間で、この三者が動くことはないと思われる。

 しかし、そのあとどう動くかわからないものを後の世に残す事もまた、アーサーにとっての世界平和に遠い。


 疑わしきは罰するなどと、大のために小を切るような事をしてしまうのも、アーサーの主義から外れている。

 しかしある程度の確率を持って、この3名を怪しいと天秤に掛けている。

 秤にかけたなら、あとはすぱっと決断できる事も王の器なのだろう。


「リューエン皇帝にはカードを贈った。あとはノーザン・アルドは私とライトニングで向かおう。あとは『鉄血の才女』サラ・クリストファーに一任する」

「我らが王に誓って」

 先刻までの乱れた姿が嘘であったかのように、恭しく胸に手を宛て誓う。



 ところ時が流れ、もうじき唯達が清とグンタマの国境を越える頃。

 鉄血は仕事に追われていた。


 もうすぐ四十路の若い頃の張りや潤いが落ちてきておると自覚し始めた頃、その若い頃も今以上に仕事をしていたわけだが。

 もともと彼女は優秀な軍人として登用して貰う予定だった。


 そう志したのは今から数え30年ぐらい前。

 当時まだ4,5歳位で普通の農家の娘で苦しいというほどでもないが、けして裕福な暮らしという訳でもなかった。

 まだこの国がまとまりきる前、小さな土地の領主にアーサーが家督をついだ時のこと。

 彼もまだまだ若く、20にすらまだ成っていなかった。


 その時の彼の演説を今でも、昨日の事のように思い出せる。

 世界は今から暗澹な時代がやって来ると。

 そして寄る辺となる、民衆を照らす光となる国が必要だと。

 その基盤をここから作ると、5年のうちに国を起こし10年後には世界に轟く大国に育てると。


 みんながこんな辺境伯が何ができるのだと彼を疑い、眉唾だと信じなかった。

 中にはその酔狂に酔ったように盲信するだけのバカもいたが、それすらも少数だった。


 しかし、中には本気で彼を自身の王だと忠誠を誓う大馬鹿者もいた。

 そしてその大馬鹿者の1人、サラ・クリストファーの早すぎる人生の転機だった。


 雷でも落ちたかの様に強い衝撃を受け、この人ならできるそしてやりとげてしまう。

 この人になら自身の一生を全てを捧げてもいいとそう強く思った。

 このときははまだ、お近づきに成りたいぐらいで軍人になりたとは考えていなかった。


 それからの彼は早かった。

 金を使い、道を整えた。

 頭を使い、法を整えた。

 口を使い、民を整えた。


 それが終わると、今度は金の流れを整える準備を始めた。

 足を使い、人脈を広げた。

 手を使い、物を作った。

 体を使い、土地を広げた。


 革新的だった。

 彼が行うことのすべてが、次のための布石。

 常に先だけを見つめ続けていた。


 そしてある程度の基盤を作ると今度は人間を育て始める。

 優秀な人材を人脈を使い国内外から集めた。

 所謂学校を作り、生徒を集める。


 入学には、パッと見は一見脈絡が無いようなテストを受けさせられ、才能を測るものだった。

 学校の一期生として、7才の頃サラ・クリストファーは入学を無事に果たす。


 それから少し時が流れサラ・クリストファー9才になる頃、5年以内という宣言道理、アーサーは国を起こした。

 建国の儀にて、2度目の転機が訪れる。

 ギルドの前身組織たる騎士団の一糸乱れぬ整った動きを見て、あれを手足のように自由に動かしたいとそう思った。


 そしてその頃、彼女は才女と呼ばれるぐらいには頭角を表していた。

 知らないものから見れば天才、知る人から見れば努力の天才。

 10才を迎えるすこし前、彼女の望みは叶うが叶いすぎた。

 アーサーの付き人に選ばれた。


 それからはアーサーに連れ回される毎日だった。

 ライトニングともこの頃に知り合い、もうかれこれ30年近い付き合いとなる。

 目まぐるしい毎日は、膨大な量の経験と知識をサラが消化しきる前に次から次へと、容赦なく叩き込んできた。

 それでも負けじと今日までやってこれているのだから、努力の天才も頷ける。


 13才に成るか成らないかの時には、アーサー王はサラ・クリストファーに『鉄血の才女』という新たな名を与える。

 そして、そのままほぼ全裁量権を彼女に委ねた。


 結果彼女は、軍人に成り騎士を動かすどころか、国を貰ってしまったのだ。

 すんなりとアーサー王の実質的後退ができたのも、振り回された2,3年のうちの根回しと『鉄血』の若干12,3とは思えない手腕によるものだった。



 そして今、『鉄血の才女』サラ・クリストファーは改めて思う。

「今日という日までアーサーに着いてこれて本当によかった」

 この部屋の窓から覗く眼下の町並みは美しく豊かで、民も幸福である。

 そんなふとした瞬間に、我が王に栄光あれとそう思う。


 コンコンとノックが響く。

「失礼します。おはようございます。本日のご予定ですが…」

「…わかってるよ。わかってますよ」

『鉄血』の山積み仕事の消化のための一日が始まる。

あとがきです。どうもなつみんです。

たいして書くことがないのでもうすぐに次回予告。

作中で出たアルドさん達のことを書くか迷いまいまい。

番外編 2とか、番外編 アルドみたいにサブタイつけてね?

次回本筋か番外編かで迷ってますがお会いいたしましょう


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