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ONS 告白

7/28 一年記念更新です。よかったらお読みください。

 ぱ、と目が覚めた。唐突に目が覚めた。眠っていたのか知らないけど目が覚めた。


 窓の外を見れば、ぱつぱつと雨が降っている。


 なんとなく、ドブネズミみたいな空だな、と思った。窓は透明な雫でいっぱいで、垂れてくる水があみだくじみたいに上から下へと落ちていった。


「ここは……どこだろう?」


「ここ? あんた何言ってんの? 寝てんの? 目ぇ覚めてんの? それとも頭が活動してないの?」


 ぼんやりと眺めていると、頭の上に声が降ってきた。見上げれば、綺麗系女子一名。高校生みたいな雰囲気と、幼顔がとても可愛い。


 しかも結構巨乳。


「うん? お前――誰だ?」


「誰だ? 誰だときましたか……私を忘れるとはいい度胸ね。一回シメるよ? いいの? それでも良いの? ここでうん、って頷いた方があとあと面倒にならなくて済むよ?」


「マジで? じゃあ、『うん』誰だお前?」


「うし。一回シメる」


「いたたたっ! おまっ、ちょーいてえって!!」


 言うが早いか、いいや、手の方が先に出てたね。女は後ろから俺の首を腕で固定して締め始めた。


 なんてばか力だ。苦しくてたまらないぞ。


 何分か。いや、何秒もやってないだろうけど、体感時間的には三十分くらいな気がした。なんかヘロヘロ。


「どう? コレで思い出した?」


「いやいや、いいや。なんにも思い出さないから。つか、こんなことやったことないだろ? やってもいないことをこれみよがしに『どう? コレで思い出した?』(ニコッ)とか聞くんじゃありませんって」


「えへへへー」


「綺麗な顔で笑ってんじゃねえよ。このぐうたら使め――って、あれ? 天使?」


「うん? そうだよ。ホレ、てんしてんし。『私、天使。ほら私すっごい可愛い天使ちゃん!』」


 あー、そのネタは見たことあるかも知んない。見てるだけでなんかすっごいムカついてきたもん。


 絶対見たよ、そのネタは。


「えーっと。なんか思い出してきた……かも?」


「えー、何それ。私今めっちゃハイテンションで自己紹介したのにこのあとの私どうすればいいわけ? ありえなくない?」


「んー、そういうのも見た気がするなぁ。お前こんなところで何やってるわけ? てか、ここどこ?」


「ここ? 学校だよ」


「あん? 学校? 学校ってどういうこと?」


「どうしたの? 何かわからないこととかある? 今なら三割引きくらいで教えてあげるよ?」


 せこっ。


「あの……さぁ」


「なに?」


「俺って何だっけ?」


 瞬間。俺が天使と呼んだ子は顔から感情を引いたような面になった。能面よりは人間らしく。人間よりは機械に近く。機械よりは暖かい。そんな顔だ。


 なんなんだこの気持ち。すっごい虚しい。まるで胸に穴が空いたみたいだ。


 胸の窓から感情という感情が流れ出てしまって、冷たくなってしまうんじゃないかっていう気にすらなってしまう。


 と、そこで少女は笑い出した。


 声は女の子らしく高い。高すぎるくらいに綺麗で、聞いていて、なんだか心安らぐ気がした。


「うーむ。どうしたものか」


 気がつくと、天使は椅子に座っていた。


「ここって学校……か?」


「え? そうだよ、さっきも言ったでしょ。学校。参ったか、ばーか」


 何がばーか、だ。意味わかんねぇよ。


 てか、ばーか、って。地味に腹立つな。


「で、どうなんだよ。俺ってなんだっけ?」


「いやー、ないわー。面白いわー。記憶喪失? いや、マジありえない。あんた面白すぎ!」


「あー? そうか?」


「まぁ、その話はおいといて。あんたは望月鷲。大学生で四月生まれで成績は優秀な方。男。身長はそこまで高くない。幼馴染がいて、カノジョまでいる。そんなとこかな?」


 へえ、俺は望月鷲で、カノジョまでいるのか。ここは学校で、ああ、大学ってやつ? で、身長はそこまで高くないのね。


「いや、身長のこととか別にどうでもよくね?」


「いいでしょ、別に。減るもんじゃないしさ」


 まぁ、そうかもしれないけど。


「で、お前は?」


 天使はため息をついていった。


「私は天使。本名は浅倉陽子。天使の方はあだ名ね。ちなみに、私があんたのカノジョだから。よっろしくぅ~」


 へぇ、そうなのかぁ。


「え? お前、俺のカノジョなの? 俺に首絞めやってきた暴力女が? 俺の? カノジョなわけ?」


「ああ~? なんか文句あるわけ? シメるよ? シメちゃうよ? 首ギューして一発昇天ものだかんね?」


「ああ、やめて。やめてくださいおねがいします」


 天使、こと浅倉は机に足を出し、俺に顔を近づけドスの声を出して睨んだ。こんなに睨んでるってことはホントに俺のカノジョなんだろう。


 そう考えると、心の底から、胸の内から何か温かいものが溢れて……、


「え? 幼馴染もいんの?」


「……いるよ。てか、厳密にいえば私も幼馴染。正直にいえば、私の妹なんだけどね。晴海。浅倉晴海。いっこ年下だからここにはいないけど」


 ある意味両手に花?


 ワクワク気分で聞いてみる。


「晴海ちゃんって、今――」


「今は高校生。高校三年生で、私の大事な妹なんだぞっ!」


 いや、そんなにはっちゃけた姉キャラ出してんじゃねぇよ、このタコ。


「あー、今ゼッタイ『いや、そんなにはっちゃけた姉キャラ出してんじゃねぇよ、このかわい子ちゃん(はーと)』とか考えてたでしょ? もう。しょうがないなぁ」


「え、何が? 何がしょうがないの? 何でそんなに自画自賛してんの? 可愛いかも知んないけど、お前、それ自分で言っちゃったら人気ガタ落ちじゃね?」


「そんな人気なんてあってもないでしょ。まったくもう」


 いや、フフン。とか笑ってんなよ。『まったくもう』じゃねえよ。訳わかんねえよ。日本語しゃべれよ。


「で、このあとは?」


「うん? あとは由衣人誘って……ああ、来た来た。遅いよ、由衣人」


「……陽子、お前ははしゃぎすぎだ。声が大きすぎる」


 この人は、んと、さっき言ってた由衣人さんだ。確か年上の人。由衣人さんは俺の方を向いた。


「やあ、望月君。いつも妹がお世話になってるね」


「ああ、いえ」


「暴力は振るわれるかい?」


「ええ、まぁ、多少」


 最後の方は声だったけど、しっかりと由衣人さんは聞いてくれて笑っていた。


「いや、それはすまない。少々オテンバが過ぎてね。何かあったら気兼ねなく僕に相談してくれ」


「兄さん、うるさいよ」


「おっと、こわいこわい。で、そろそろ行くのか?」


「あー、うん。でも天野さんも誘ってたから」


「天野?」


「うん。天野恭子さん。彼女面白くてね。なかなか電波なんだけど、可愛いとこがあって。なんていうか、こう……猫っぽい? 感じの人」


「ふうん。そうなんだ」


 と、俺が言う前にコツリ、と地面がなった。ヒールの音のようだ。


「遅れたかしら」


「いや、そんなことはないさ。僕もさっき来たところだからね。はじめまして、天野さん。僕は浅倉由衣人だ」


「……はじめまして。天野恭子です」


 ぺこ、と二人して会釈していた。なんだかその姿が面白くて微笑んでしまう。理由は分からない。


 いや、わからなくたっていい。なんとなく、可笑しい気がしただけなんだから。


「さてと、これからどうするんだっけ? 天使さん」


「アリクアムに行こう。晴海もそこでバイトしてるし!」


 なんて安易な考えなんだろうなぁ。


 そんなこんなで、俺たちは晴海の元へ向かうことになった。





















「いらっしゃいま――あ、鷲先輩。それに、お兄ちゃん、お姉ちゃんと天野さん」


「よう、晴海ちゃん。元気か?」


「はい! あたし元気ですっ!!」


 晴海の声はアリクアムの店内に響いた。アリクアムの内装はそこまでこ洒落ている訳ではなく、地味とも捉えられるけど、こういったところは趣があるって行ったほうが正しいかもしれない。


 店内の殆どが木で作られている。メニューでさえも木だ。


 なんとなく、かっこいいと感じてしまった。


「なあに、晴海。やっぱり鷲が気になるの?」


「ふえ!?」


「何が『ふえ!?』、よ。萌えキャラぶってんじゃないの」


「えー、お姉ちゃん酷い。お兄ちゃんも何か言ってよ」


「んー、そうだな。正直でいた方が結構気持ちは伝えやすいと思うぞ。なぁ、望月君」


「え、なんでそこで俺に回ってくるんですか?」


「何って、当人だろ。君の責任だ。実際、この前告白されただろう? 晴海に」


「い、いやー」


 浅倉の目線が痛い。


「まぁ、いいけど」


 じゃあ、いいって目をしろよ。それ睨んでるっていうんだからな?


「っと、天野も何か話せよ」


「なぜ?」


「え、だって、寂しいだろ?」


「寂しい? 寂しいとは……なに?」


「いや、そういう電波なやりとりはするつもりないんだけど……なんつーか、キャラが出てこないだろ? そんな感じ」


「いいのよ。私は本編通したってほとんど喋っていないんだし。ああ、それじゃあこの流れで言うわ。時と場所を選ばずに言うわ。あなたの状況なんてかえりみないわ。そして謝らない。私はあなたのことが好きよ」


 えー……。なにその流れ。


 ちょっと俺には理解できない。


「本当に好きなら、時と場所は選ぶと思う」


「なによ。時と場所を選ばない電波な女がいてもいいじゃない。別に個性的でもないかもしれないけど、ちょっとしたキャラ立てにはなるんじゃないの? そして私はあなたを愛している」


「だから、なんで最後に告白を持ってくるんだよ」


「しつこいわね。照れてるのよ、ばか。いい加減女の気持ちを考えなさいよ、ばか。そして私はあなたがいとおしい」


「…………」


「謝らないわよ。こういう状況を作り出したあなたに全責任があるんだし。作中で私があなたに惚れる要素というか、決定的瞬間が微塵もなかったけど、そういうのを全部無視して言うわ。天野恭子は望月鷲が好きなのよ。どう? 私のキャラ」


 どう? っていわれても俺には対処できなさそうな女であることは間違いなしだよ。


「どうすんだよこの流れ」


「大丈夫。今からまた私は無口&電波キャラに戻るから。それじゃ、私、あなたのこと………………コーヒーとサンドウィッチください」


 突っ込めねえ。


 つーか、作中ってなんだよ。これが話だとしたら完全にここだけが作中じゃねえか。他にも作品あるのかよ。


「天野さんは、結構電波だね」


 と、ここで由衣人さんが声を挟んでくれたので、俺は安心して涙を流すことができた。


「うーん」


「あん? どうした、浅倉」


「なんというべきか。こういう人の彼氏に彼女のいる眼の前で堂々と告白されるのはどうしたものかって考えちゃって」


 そりゃ考えるだろ。ギャグでオチればいいけどそうもいかそうだしよ。てか、これがギャグになってんのか?


「じゃ、今から鷲に堂々と告白タイムをすることに決めた」


「……お前、頭大丈夫か?」


「うん。大丈夫大丈夫。全然嫉妬なんかしてない。むしろ好戦的? 迎え撃つってか、打ちのめすってか?」


 お前の頭を打ちのめしてやろうか。


「どうせだったら演劇風に告白しようかな? よっこいせ、っと」


 浅倉はカウンター席の後ろに下がった。


「私、あんたのことが好き! ずっと、これからも、好きであり続ける!」


「あ……ああ。ありがとう?」


「返答が疑問形でも構わない! あんたがいれば、私は百人力……いえ、天使力悪魔にだって負けないわ!!」


「あ、悪魔にも。そりゃ強いな。いやいや、天使力ってなんだよ。数字じゃないのかよ」


「そのツッコミもかっこいい! これからも、私の彼氏でい続けて……あんたが死んでしまっても。私が死んでしまっても!! 記憶の中に、私がいて、あんたがいて、そして、そして……」


 浅倉はお嬢様のようにおじぎをして、最後には天野と同じく『どう?』と言ってにっこり笑った。いや、天野は笑わなかったけど。


 でも、その姿は――その笑顔はとても印象深くて、なんだか知らないけど、頭の中で波を立てて沈んでいった。


「ああ。ありがとう」


「うん。じゃ、最後は晴海ね」


「え!? あたしも?」


 もち! と、浅倉は親指を立てた。


 この光景にも情景にも状態にも疑問どころか疑問しか持てないけど、とても嬉しい。


 暖かい気持ちでいっぱいだ。


「じゃ、じゃあ。鷲先輩」


「うん?」


 晴海は息をスー、と静かに吸った。そうして。


「わたしの心は束の間もあなたを離れたことがなく、この世はおろか、あの世までも。ただひたすらにあなたのことを愛し続け、ただひたすら……私は幼馴染を演じてきた。それも今日まで……! あたしはあなたを愛しています。」



ONSオリジナル・ノベル・ストーリー 告白


なんか、久しぶりに書いた気がします。

これもifです。

でも、書いてて楽しかった。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。


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