if traveler
7/28 更新
三年目更新です。よかったらお読みください。
超能力というものはとても身近である。
だってよく聞くでしょう? やれ人が空を飛んだとか、火を噴いたとか、瞬間移動した……なんて、よくあることなのだ。
タイムトラベラー。というものがこの世界には存在している。時間旅行者、時空飛行者、タイムジャンプ、etc、etc、etc。
私、天野恭子もこの類いである。そこかしらでジャンプジャンプジャンプ。
あっちにいったりこっちにいったりジャンプジャンプジャンプ。
うさぎみたいに飛び回る。
とはいえ、私はあんなに可愛くはない。可愛いというか、アレは姿形が卑怯だ。あんな体つきで、あの顔で、あの耳だったらみんな好きになるに決まってる。
いや、好きじゃない人もいるかもしれないから知らないけど。
ああ、話題ジャンプ。また道が逸れた。私の悪い癖で、これはどうもすいません。
てへ!
とかジャンプに合わせてキャラ設定も作り込まなきゃいけないのでどうにも統合が難しい。
オリジナルのキャラクターがどこに行ったか忘れてしまった。
「あれ? なんの話をしていたのかしら?」
「うん? タイムジャンプができなくて困ってるって話じゃなかったっけ? 違う? 違った?」
「ああ、そうだったかも。いえ、そうね、きっとそうだわ。ありがとう坂城クン。ごめんなさいね、おほほ。いろいろと頭の中で整理し切れていないみたいなのよね」
「おーい、帰ってこーい。キャラクターが安定してないぞー」
「ぶっちゃけ面倒なのよね。無口キャラで外では通してるけど、実際は話を聞いていなかったりで返答を渋ってたりするから」
「そういうこと平然と言っちゃう辺りやっぱ電波入っちゃってるよね、天野さん」
「そう言わないで。こんなにタイムジャンプで疲れたことってそうないのよ。だって普通の時空に目が重なることなんてないんだから」
私の言葉に坂城クンは、そうかい、と頷いてコーヒーを一口すすった。次に彼は苦い顔をしたので次の台詞はブラックなんかチャレンジすることなかった、だ。
「ブラックなんかチャレンジすることなかった」
「まぁ、あなたはそう言うでしょうね」
「ふうん? 俺じゃなかったら?」
「砂糖を入れすぎたって言うわ」
「おシュガーさんはよっつっきゃ入れてないけど?」
「十分甘ったるいわ、そんなコーヒー」
そうかなぁ。なんて呟かれても私は返答しない。
「それで?」
「それでとは?」
「ことの顛末だよ。君は何しにタイムジャンプなんてしてるわけ?」
「あら意外。こっちの坂城クンは真摯に私の妄想かもしれない話につきあってる」
「酷いなぁ。俺自身はこういう性格なの」
「こういうとは? 俺自身とは?」
「この世界の俺、坂城陽海は純粋なんだよバカヤロー。そのパラレルワールドだか平行世界だかよくわかんない世界の俺と違ってな。ラリってるかもしれない人をそのまま放置できるほど冷たくないんだよ」
「いえいえ、そんなことないわよ。あっちの世界のあなたもそこまで冷たくはないわ。ただちょっと……」
「ちょっと?」
言いかけて、なんだかどうでもよくなった。
「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。とりあえず、まずは状況把握が大切」
「そんなことって……」
坂城クンは涙目になる。
まるでいじられた弟のような態度で可愛い。
「いい? 今現在の状況は、浅倉陽子が鍵なの。並行世界じゃ望月鷲。パラレルワールドだとジズ・フライマ。とはいえ、今この世界では浅倉陽子が目となってるのよ」
「目っていうのは?」
「察しが悪いわね」
「鈍感ってことか」
「なによ、鋭感ね」
「あん?」
「話を戻すわ。目っていうのはリモコンなの。世界っていうのは、テレビみたいなものよ。たくさんのチャンネルが集まって出来ている。けど普通の人間が見ているのはひとつのチャンネルだけ。多くの人は共通のひとつのチャンネルだけ見ているのね」
彼は黒い大きな瞳で私を見つめる。
注意深く、聞き漏らさぬように、慎重に。
「だから一つのチャンネルの中でそのルールに従って生きてるけれど、時たまおかしなことが起きるでしょう? この世界で」
「うん、まぁ。そりゃあ」
「それがチャンネル外のことなの。そのチャンネルでは普通だけど、こっちのチャンネルでは不可解で、不思議なこととして認識される。知らないものはわからないと頭で理解されるの。で、なぜこのチャンネル外のことが起きるかといえば」
「いえば?」
「それはね、目の存在によるものなの」
「君が何を言っているのかよくわからない」
「でしょうね。これもチャンネル外のことだもの。わからなくて当然よ」
「はいはい、続きを」
「ええ、もちろん。で、目というものはリモコンと言えるのね。これはあるスイッチということよ」
スイッチという言葉に坂城クンは眉をひそめる。なんだそりゃ、みたいな顔だ。
「ある値が代入されると、それに応じて答えを返す。デジタルと同じね。彼女の中で何かが起きると世界のチャンネルが自動的に変わる。厳密に言うと、望月鷲の未来視と、浅倉陽子の念動力、ジズ・フライマの憑依能力の合体技ね」
「………………は?」
「この三つの力がいい塩梅に働いて別チャンネルにいる自分に意識させているの」
「さっぱりだ……」
「あの子の中には三人格の能力が入っていて、ある瞬間にそのボタンが一斉に働く、これがスイッチ。で、スイッチが入ると自動的に別の人格にあるチャンネルの世界に飛ぶわけ」
「それと君にどんな関係が?」
「タイムトラベラーはね、他のチャンネルに介入できる力を持っているの。だから、別チャンネルにあわせられる。でもね、彼女は私の能力とは決定的に違うのよ」
「違いがさっぱりだよ」
「ようするにね、彼女は平行世界やパラレルワールドを引き寄せ破壊しかねないの。このままでは浅倉陽子の世界、望月鷲の世界、ジズ・フライマの世界が滅びてしまう」
「うん? ん? 他の世界は別の誰かが人格として目覚めるんだろ? 何か問題があるのか?」
「おおアリなの。別世界で目覚める人格は本来の人格とは限らないから。それで別チャンネルの能力を使われると世界のバランスが崩れてしまう。まるで」
そう、まるで。
「まるで太極が混ざり合うかのように混沌になるの。それだけは避けなくてはいけない」
「どうして君が?」
「私は時空飛行者。それが私の責任であり、義務なの」
「義務って……天野さんは自由気ままにタイムジャンプしているだけだろ? 世界が壊れて壊れることあるわけ? もう行かなきゃ良いじゃん? そうだろ?」
「いえね、坂城クン。私は自由気ままになりふり構わず理由もなくジャンプをしている訳じゃないのよ」
そうなのか、と言わんばかりに坂城クンは目を見開いた。
コーヒーはもう、とっくに冷めている。
「タイムトラベラーっていうのは私だけじゃないの。そりゃ普通に旅行感覚でしてる人もただのジャンプ中毒のやつもいるけど、特に酷いのは結社ね。ホントウに厄介で困るわ」
「結社?」
コクリ、と私は頷いてみせる。
と同時に冷め切った彼のコーヒーに口をつけた。喉が少し渇いた。喋り疲れて水が欲しかったのだ。
ごくりと喉を通り過ぎる感覚と、味に私は顔を歪めてしまう。砂糖の甘みの強い渋い液体を睨みつける。
とどのつまり。
「マズいわね、これ」
「うん。だと思う。俺はもういらないから、あげる」
「いらないわ」
私はそう言い切ってて手近にあったミルクを四つ分だばだば入れることにした。
if traveler
書くのが二年ぶり? で書いててちょっと面白かったです。
キャラが喋る喋る……。
夏カフェはホントにキャラが楽しくて困っちゃいます。
ほか作品もできればよろしくお願いします!




