↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の彼女をお前にやるから、お前の彼女を俺にくれ  作者: 糸音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/55

『私の彼氏をあなたにあげるから、あなたの彼氏を私に頂戴』

 

 会場が凍ったのが分かった。

 時を止めたかのような静寂の後、少しずつ会場がざわつきだす。


 なんでそれを。なんで今。


 理解を拒んだように固まる俺の横で、財全会長も不可解そうに眉をしかめたまま、呆然と固まってしまっている。


 そしてそれは、舞台の上も同じようで、


「…………」

「…………」


 質問を受けた結心も、それを傍らで見守っていた城ケ崎さんも、目を見開いたまま固まってしまっている。

 生まれたひびを広げるように、司会が続けた。


「一時期は同じ一般家庭出身の、唐草君とお付き合いされていたのですよね?」

「……は、はい」

「誰から見ても仲睦まじい様子だった二人でしたが、突然縁が切れ、驚いた生徒も少なくなかったように思います。後ろめたい部分が無ければ、この場で理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

「それは――」


 何やってんだあの司会。そんなの今聞くことじゃないだろ。

 それに質問の仕方が最悪だった。まるで結心が玉の輿を狙って、一般家庭出身の俺を切ったみたいな聞き方だった。


 一時期はそんな悪評すら実際に流れたんだ。弁明したところで、この場にいる全員が信じるかなんてわからない。


 それに、


「……」


 結心の視線が、一瞬だけモニターに向いた。

 会場を見渡して、誰かを探しているように見える。


「……財全会長。今日は、お婆さんは会場に?」

「……いや、わからない」


 結心はお婆さんのことを考えて、財全会長の恋人交換に乗じているんだ。本当のことをこの場で話して、今回の件がお婆さんにバレることを避けているのかもしれない。


 こんな場で、こんな形でカミングアウトされて、体を悪くされたとしたらたまったもんじゃないだろう。


 かといって、本当のことを話したとしても、嘘でごまかしたとしても、適当にはぐらかしても、沈黙を貫いても、何もかもが悪手であり、結心の心象や立場を悪くするのは確実だ。


 結心の視点で、何をどうしようとも詰んでいる。


 いてもたってもいられず、俺は反射的に席を立ち、一度呼吸を整えてから、




「――財全会長。皆の前で全部打ち明けていいですか」




 横で固まる財全会長に尋ねた。


 困惑したように、俺と舞台を交互に見る財全会長に、俺は声を震わせながら肩を掴んだ。


「結心の方からどう弁明しても、意味ないことは分かるでしょ⁉ 玉の輿狙いだって言われても、それを否定する後ろ盾なんて結心には無いんだから‼ 結心以外の誰かがちゃんと説明しなきゃ、この場で結心を守ることなんてできやしないだろ?!」


 俺が殴るように言葉をぶつけると、財全会長が一瞬怯んだように体を震わせた後、眉をしかめ、何かを考え始めた。


「お願いします! 皆の前で説明させてください!」


 俺が頭を下げると、財全会長も覚悟を決めたように頷き、決死の表情で立ち上がった。




「――ああ、言え‼ 俺も一緒に説明する‼」




 二人で頷きあって、舞台の方へ駆け出そうと、ドアへ駆け出す。


 入り口のドアを開けたとき、鈴が鳴るようにか弱い声が、俺たちの足を反射的に止めさせた。




「――全部、私のせい」




 その声に思わず足を止めた俺たちは、真っ白な頭のまま、ゆっくりと舞台の方を振り返る。


 舞台の上では、その場で立ち上がり、結心を守るように皆の矢面に立つ、城ケ崎さんの姿があった。




「……私がお願いしたの。『私の彼氏をあなたにあげるから、あなたの彼氏を私に頂戴』って」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。