宿敵との再会
波乱の二日目が明けて、学院祭3日目。
雨は降らないけど、光が陰る曇り空。
少し浮かない天気だけど、相変わらずラーメン街は絶好調だ。
気を付けるべきは、真賀花先輩の妨害か。
一応昨日のやり取りを狭間に伝えると、向こうも「ほどほどでいいでしょう」と落ち着いた回答だ。
「警戒されている以上、向こうも大胆な手は打って来ないでしょうし。まあ、こっちの方でも警戒はしておきますが」
狭間も犯人の目星は大体ついていたみたいで、今は実行犯を絞り出している段階らしい。
学院祭の運営をしながら、クラスの出し物も手伝って、その上で犯人探しなのだから、狭間もかなりのハードスケジュールだ。
なんだかんだで俺たちの目的には協力的だから、頭が上がらない。……いや、頭を下げるのは無しだな。狭間だし。形にしない感謝でとどめておこう。うん。
それよりも、狭間の言う通り、過剰に妨害を気にしてパフォーマンスを落とすことになってはいけない。
証拠もないので、昨日の出来事は、城ケ崎さんと狭間と俺だけの秘密だ。
そして、午前の営業を終えて、いよいよミスコンの本戦だ。
「勇星。俺たちの分まで、城ケ崎さんを応援してくれよ」
「私たちも、画面越しに城ケ崎さんを応援していますわ!」
ミスコンの本戦は、ラーメン街や、学校の各所に設置されているモニターで放映がある。
。
確か審査項目は『お茶会』だったか。舞台上でテーブルを囲み、徹子の部屋みたいな形式で、インタビュアーが本戦出場者に質問をして回る。
茶会の作法、受け答えの内容、人柄。あらゆる面を考慮して、今年のミス不亜高に相応しい生徒を、皆の投票で選ぶわけだ。
そんな大事な本戦は、会場にいない方々も投票権があるらしく、票を集計するタイミングでQRコードを映し、そこのフォームから投票できるそうだ。ここにいる皆も投票できるってこと。
とはいえ、現地で応援したいクラスメイトは多いから、シフトを組むときは大分揉めた。最後はじゃんけんで決めたっけか。
「じゃあ、店番よろしく。城ケ崎さんの優勝を、現地で見届けてくるからさ」
♢ ♢ ♢
ミスコン本戦の30分前。既に会場は満席だ。
なんだかんだで昨日の早押し大会が盛り上がったから、予選の後は、校内はミスコンの話題で持ちきりだった。予選で敗れた令嬢たちも、見せ場がしっかりとあったし、顔も売れたから、出場者の大体は得をしたと言ってもいいだろう。
内外大好評のうちに終わった予選。その本戦ともなれば、期待は高まるってもんだし、なにより自分の学校の顔を決める催しだ。見届けたい気持ちもあるのだろう。
クラスの皆で、応援のうちわを手に集まる。昨日と同じ、応援の布陣は完璧だ。
クラスの皆で、緊張を紛らわすように、談笑をしていた時だった。
「すまない。前の方を失礼するよ」
聞き馴染みのない、でも忘れるはずのない声に、俺の思考が思わず止まった。
クラスメイトの視線が声の主に集まると、端の席に座っていたクラスメイトが驚きの声を上げる。
「財全会長?! どうしたんですか、こんなところに?!」
驚く皆に、手を振って返しながら、客席の間を歩いて、こっちに向かってくる。
……さて、本戦の前にトイレにでも行っておくか。急に便意を催してきた。
すっと音を立てずに立ち去ろうとする俺。そこに、
「すまない、唐草君。君に用があるんだ」
「……なんでしょーか」
うーん。やっぱりこのタイミングは俺だよね。
逃げる前に、しっかり呼び止められる。皆がいる手前シカトをぶっこくわけにもいかない。
営業スマイルを作って、にこやかに対応する俺に、財前会長が続けた。
「よかったら、一緒に本戦を見ないか。……君と、話したいことがあってね」




