2日目終了
「城ケ崎さん! お疲れ!」
俺が控室の方へ向かうと、ちょうど部屋の中から出てきた城ケ崎さんと出くわした。
城ケ崎さんは少し目を丸めた後、安心したように笑って、俺の方に駆け寄ってくる。
「バッチリ勝ったよ。同士」
「バッチリ見てたよ。決勝進出おめでとう。……クイズの途中、何かを気にしてたみたいだけど、何かあった?」
Vサインする城ケ崎さんに、同じくピースで返してから、俺はミスコン中に気になっていたことを尋ねた。
俺の質問に、城ケ崎さんは真剣な表情になってから答える。
「クイズ大会のボタン、一部を除いて遅延があったの。具体的には30Fくらい。あ、60FPS基準ね」
「30Fってことは……約0.5秒?!」
驚きのあまり声を上げると、城ケ崎さんが難しそうな顔で頷いた。
早押し大会で0.5秒の反応差なんて、下手をすれば、勝負が成り立たなくなる。
「もしかして、やたら早押しに負けていたのって――」
「うん。7番の令嬢のボタンは普通だった。それ以外のボタンの反応が悪かった」
もしかして、クイズの時やたら辺りを気にしてたのって、他の参加者のボタンの反応速度を確かめていたからか?
それで遅延を測れる城ケ崎さんにも驚きだが、明らかな仕掛けに、俺は言葉を失った。
7番以外のボタンの反応が悪かったってことは、
「仕組んだのは7番のご令嬢?」
「……それは分からないよ。ともかく、司会の人に伝えてボタンを調整してもらってる。それに、Bグループの方でも何か問題があったみたいだしね」
「結心のグループで?!」
「うん。一部参加者のヒールがぐらつくように細工されていたみたい。結心さんが早めに気が付いて報告したから、修繕が間に合ったみたいだけど、そのまま出ていたら危なかったね」
最初は舞台を歩くんだ。そんな場所でヒールが折れたりしたら、下手すりゃ舞台下に顔から倒れこむことになる。
危険な仕掛けに呆然とするも、じわじわと怒りが湧いてきた。
「……ともかく、私たちにできることは警戒以外にはないね。私は少し休憩してから、出し物の方に戻るから。同士は結心の勝利を見届けてきなよ」
「……オッケー。ともかく予選突破お疲れ様。俺もBグループの予選を見てから、出し物の方に戻るよ」
怒ったところで、何ができるわけでもない。
念のため狭間にチャットで報告してから、俺は城ケ崎さんと拳を突き合わせて会場に戻った。
会場に戻ると、Bグループの予選がちょうど始まった。
Bグループの予選は、城ケ崎さんや結心の気づきがあってか、何か問題が起こることもなく、平和に進行した。
クイズ大会で結心の得意ジャンルが中々出て来ずにハラハラしたけれど、各ジャンルに混ざっている簡単な問題にヤマを張った結心が、早押しで勝つことで、1位を奪取。
お手付きは多かったけど、1回休みのペナルティをある程度割り切った結心の戦法がしっかりはまった結果だ。得意ジャンルの『B級グルメ』が出題される前に1位を勝ち取ったことを、司会も驚いた様子で褒めていた。
スピーチも家柄とかの垣根を越えて、皆と凄い出し物を作れたエピソードを上手く話せていたこともあり、総合1位は結心になり、無事に決勝進出。城ケ崎さんと決勝でぶつかることになった。
結心の勝利を見届けて、俺はラーメン街に合流。城ケ崎さんの宣伝効果もあり、ミスコン予選終了後は、現場は火の車だった。
2日目が終わり、結果は1200杯と大健闘。
1日目を大きく上回る記録を打ち立て、皆嬉しそうに疲れた姿が印象に残った。
そして、材料が入った冷蔵庫に鍵をかけ、俺の部屋に明日分の備品を積み終えて、皆が解散した後のこと。
「……城ケ崎さん?」
返ろうとした俺の視界の端に、少し険しい表情でミスコン会場へと向かう城ケ崎さんの様子が目に入った。
こんな時間に、何か用事だろうか。
呼び止めようと思ったけど、なぜだか妙な胸騒ぎがして、俺は城ケ崎さんに気が付かれないように、その後を離れて付いて行くことにした。




