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俺の彼女をお前にやるから、お前の彼女を俺にくれ  作者: 糸音


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予選開幕

 

「え?! いや、なんで急にそんなことを?!」


 突然質問されて、俺も焦って声を上ずらせた。

 質問に質問を返した俺に、文系クラスの皆が顔を見合わせてから続ける。


「……最初は正直、結心さんが財前家に取り入る為に、あなたを捨てたのかと思っていました。少なくとも、私たちの周囲ではそう思われていました」


 ……確かに、恋人交換直後はそんな噂が出回っていたな。余計なことをして噂が変に広がらないように、俺も慎重に行動を起こしたから、弁明もできていない。


「だけど、一緒に出し物の準備をしていく中で、結心さんはそんな人ではなさそうだと、皆で話していたのです。……そう思っていたら先日、あなたたち、お化け屋敷で仲睦まじげに話していたではありませんか」


 入る時にちょっとだけ会話したけど、そりゃ当然見られているか。変に不仲を演じるのもと思って自然体で接したけど、他の人から見れば確かに不思議か。


「思えば、付き合い始めた当初の、財全会長との態度にも違和感がありましたし、何か事情があるのではないですか? 何か理由があるのなら、私たちも相談に乗りますが」


 理系・文系クラス問わず、皆が俺の様子を伺う、というよりは心配するような視線で見つめてくる。


 結心は結心の方で、しっかりと信頼を積み重ねていたみたいだ。


 今の空気だったら、あの日起こったことをそのまま話しても、信頼を得られそうな雰囲気もある。


 だけど、


「……ごめん。ちょいと訳あり。それ以上は今言えないや」


 結心なりの考えで、恋人を演じることに決めたんだ。俺の方から相談もなしに解決を図るのは良くないな。

 皆の心配するような視線が強くなったので、俺は慌てて補足する。


「でも、俺も結心も、引け目を感じるようなことは何一つしてないから。それだけは安心してほしい」


 俺が付け加えると、皆怪訝そうな顔で互いを見合わせた後、「お前がそういうなら仕方ない」と、表情を明るくしてくれた。


 深堀りしたい気持ちを、敢えて抑えてくれるあたり、みんな本当に人が良い。

 妙な誤解が解けた。今はそれだけで十分だ。




 俺が安堵の息を漏らしたと同時、ホールの照明が緩やかに暗くなっていった。




「会場にお越しいただいた紳士淑女の皆様方! 本日はお忙しい中、不亜九条高等学院の生誕を祝う催しにお集まりいただき、誠にありがとうございます!」




 幕の下りた舞台の上に、司会の生徒が現れた。

 談笑をしていた会場が静まり、スポットライトで照らされた生徒に視線が集まる。


「次世代の英傑を育むことを目的に設立された本校。そこに通うご令嬢たちも、見るも麗しき花ばかり。そんな美しき花の中から、ミス不亜高――本校を代表する今年の顔を、会場の皆さまで決めていこうと思います! 麗しき花たちを、どうぞ温かい拍手でお迎えいただければと思います! それでは、Aグループの皆さま! どうぞご入場ください!」


 司会の案内で舞台の袖から、煌びやかなドレスに身を包んだご令嬢たちが、続々と壇上へ歩いてくる。皆気品の溢れる足取りで、会場の皆に微笑みながら手を振った。


 その中に、城ケ崎さんの姿もあった。




「「「城ケ崎さーん‼」」」




 理系クラスの皆が応援うちわを手に、元気よくコールすると、城ケ崎さんが一瞬驚きながらも、嬉しそうに口角を上げながら、上品に手を振って返した。

 文系クラスの皆も、自分のクラスの出場者を同じようにコールして応援する。


「これはこれは、素晴らしい声援ですね! それでは、早速一人一人に意気込みを聞いてまいりましょう! それではエントリーナンバー1番――」


 司会の生徒が、一人一人の企業紹介と、簡単な質疑応答を順番にして回る。


 一人一人に温かな拍手が送られる中、城ケ崎さんの番がやってきた。


 会場の方への挨拶を優雅にこなし、質疑応答への返答も流暢だ。


「――それでは、普段から自社タイトルの他にもゲームをされるのですね? どのようなゲームが好きなのでしょうか?」

「アクションからパズル、アドベンチャーなど、面白いものなら何でも好きです。でも、パーティーゲームだけは、まだあまり遊んだことが無くて」

「ほう。その理由は?」

「最近まで人と話すことが苦手で、あまり他の方々と一緒に遊ぶ機会が無かったのです。でも、学院祭の出し物を企画するにあたって、多くの方々とご友人になることができました。一度皆で集まって、楽しく遊んでみたいです」

「ラーメン街の出し物ですね! 評判の声が多く上がっておりますが、ご友人たちとの結束あってのものだということでしょうか?」

「ええ。友人たちとの努力の結晶です」


 他の参加者は、質問に丁寧に受け答えるだけだったけど、城ケ崎さんは上手く話を広げて、自分主体の会話に持っていけている。人脈のアピールもさりげなくできていて、聞いている方の好感度は高い。


「それでは、最後に意気込みをどうぞ!」

「そんな素敵な友人と企画した出し物――『不亜高出張ラーメン街~ご当地ラーメン食べ比べ祭り~』は元気に営業中です! 替え玉沢山用意してお待ちしておりますね!」


 最後に出し物の宣伝をして、綺麗にオチが付いた。


 明るい笑い声が会場に満ちて、和やかな雰囲気で城ケ崎さんのターンが終わる。いい意味で他と浮いた紹介の時間となった。


「どうかな?」

「身内びいき無しでも、いけたでしょ。後はクイズ大会次第」


 俺がクラスメイトに尋ねると、皆も手ごたえありといった様子で、誇らしそうに頷いた。文系クラスの皆も、複雑そうな笑みを浮かべながらも、それを後押しするように頷く。


 計13名の紹介が終わり、そのまま舞台の幕が上がって、クイズバラエティのような、セットが現れた。


 暗かった会場が徐々に明るくなり、参加者がエントリーナンバーが記載された台へと着席する。


「それでは今年度より初の試みとなります、『ミスコン 早押しクイズ大会』‼ 参加者の中で、最も知識に長けたご令嬢はどなたでしょうか?! クイズの腕で決定していきましょう!」


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