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俺の彼女をお前にやるから、お前の彼女を俺にくれ  作者: 糸音


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不穏な動き

 学院祭1日目、俺たちの出し物は最後まで行列が途切れることなく、ひっきりなしに生徒たちが来場し続けた。


「1日目の記録は882杯! 上々の結果じゃないか?」


 閉店時間になり、俺が皆の前で結果報告をすると、皆が満足そうに頷いた。各学年大体140名が3学年。生徒たち全員が食べたとして520杯。

 財前会長のおばあ様みたいに、一部の来賓の方は今日からも来てたけど、それを踏まえても数が合わないのは、昼と夕方、2回来てくれた生徒たちがいたからだ。


 味を複数用意したことで、リピーターを同日で上手く確保できた形だ。


「明日以降は1000杯目標な。来賓の方が一気に来るから、行列は今日の比じゃないぞ」

「どんとこい。ラーメン合宿のおかげで今日は余裕あったよ。子どもたちに比べたらオーダー取るのも楽だったし」

「そうですわね! 明日もゲストの方々をおもてなししてみせますわ!」


 中々の混雑だったけど、皆まだ余裕がありそうだ。本当に皆逞しくなった。


 狭間の報告によると、他の飲食関係の出し物を計画していたクラスは、閑古鳥が鳴くほどではないけれども、例年に比べて大分客数を落としたらしい。飲食関係の需要は俺たちがかっさらったことになる。


 ここまでは嬉しいニュース。なんだけど、念のため確認したいことが一つ。


「解散前に、店舗の清掃、あとは食材、備品の確認をしよう。最後の締めまで頑張って行こう」

「「「はーい」」」


 あまり考えたくは無いけど、お化け屋敷の細工が気になる。

 嫌な予感が外れるように願いながら、俺は皆と店周りのチェックを行った。




 ♢ ♢ ♢




 店舗の機材や、食材類に異常は無し。

 安堵した俺の元に、備品を確認しにいった生徒たちから報告が上がった。


「紙エプロンと割りばしが足りない?」


 俺が向かったのは、Aクラスの教室。学院祭期間中は、割りばしやナプキン、紙エプロンなんかの備品類は、A・Bクラス間で保管することになっている。限界まで出し物に敷地を割いた結果だ。


 確かに、今日消費した分を加味しても、在庫の減り方が異常だ。

 概算だけど、段ボールの数にして、割りばしが3箱、紙エプロンが5箱ほど足りない。


「割りばし買いに走ればいいけど、紙エプロンは?」

「追加で発注はできるけど、明日の営業に間に合うかどうか……」


 紙エプロンや割りばしは、ネット通販で揃えたものだ。早くても到着は1日2日かかる。


「紙エプロンが無いのはまずいですね。フォーマルな服装で来られる方が多いので、服が汚れる心配をされる方もいますし、準備が無いと思われるのも印象が悪いです」


 狭間の言う通り、紙エプロンが無いのは困る。ドレスやスーツで来られるゲストが明日以降は増えるはず。

 それを分かっていて用意が無いのは準備不足と思われても仕方ない。


 今の在庫だと、半日持つかどうかだ。


「誰かの家で用意できない? 無理なら、他のクラスの生徒にも協力を依頼しよう」

「そうですね。用意できそうな生徒に心当たりがあるので、その人を頼ってみましょうか」


 残りの備品はとりあえず、男子寮の俺の部屋で管理することにした。出し入れが面倒だけど、自由に出入りができる教室よりは安全だろう。


 店舗の戸締りを徹底させた後、俺は狭間の案内で、文系クラスの方へと向かった。




 ♢ ♢ ♢




 お化け屋敷の方へと向かうと、文系クラスも何やら集まって会議をしていた。


「え、勇星? どうしたの?」


 何やら深刻な表情で話している皆に近寄ると、結心が俺たちに気が付いた。

 俺は状況を簡潔に説明する。


「というわけで、至急紙エプロンが必要なんだ。誰か仕入れの伝手を持っている人はいないかな?」


 俺が尋ねると、一人の女子生徒が「少しお待ちください」とスマホを取り出して、誰かと連絡を取り出した。

 暫くやり取りを続けた後、スマホをしまって俺たちに微笑んだ。


「私の会社で保管している在庫があるそうです。明日の朝に届くよう手配をしましたので」

「ありがとう紫陽花(あじさい)さん!」

「困った時こそ助け合わないといけませんわ。あなたのおかげで、こちらも怪我人を出さずにすみましたし」


 そうか。確か昨年カフェテリアをやったときに、紫陽花さんの家がケーキの他にも、テーブルや備品類を用意してくれたっけ。狭間の言ってた心当たりとはこの人か。


 スカートの裾を上げて、綺麗に会釈する紫陽花さんが今はヒーローに見える。


「それにしても、こんな遅くまで文系クラスは何を話してたの? 明日の仕込み?」

「……勇星には話してもいいか。実は、あの後もトラブルがあって」


 あの配線が切られていたこと以外にも何かあったってことか。


「壁型のモニターの映像に乱れが出ちゃって。勇星たちが来た後、空間が歪む密室の演出が使えなくなっちゃったんだ」

「おかげで目玉の一つを飛ばして案内することになったのです。今皆で原因を突き止めているところでして……。モニターに異常はないのですが……」


 あの空間が不気味に歪む部屋か。確かにすごい迫力だったし、あれが体験できないのは、ホラー好きの人からするともったいなく感じるだろう。俺はもう勘弁だけど。


 皆で頭を抱える中、俺の横で話を聞いていた城ケ崎さんが前に出る。


「あの映像データって、パソコンか何かで管理してる?」

「え? ええ……」

「パソコン見せて。私、何か分かるかも」




 ♢ ♢ ♢




 文系クラス皆が見守る中、お化け屋敷の舞台裏で、城ケ崎さんがパソコンを調べる。

 どうやら演出に使うパソコンや、各種電源はここにつながっているらしい。


「……セキュリティソフトが無効化されてるね。それに、ファイルをじわじわ壊すウイルスが仕込まれている」

「「「ええ⁈」」」

「「「はあっ⁈」」」


 城ケ崎さんの報告に、見守っていた皆が悲鳴に近い声を上げた。


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