↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の彼女をお前にやるから、お前の彼女を俺にくれ  作者: 糸音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/55

奪われた青春と、許嫁からのメッセージ

 

「……??????」


 何を言われたか分からずに、固まる俺。

 聞き間違いでなければ、俺は今、人類史上最低の等価交換の申し出を受けたような気がするのだが。


「……すいません、今、なんとおっしゃいました?」

「俺の彼女をお前にやるから、お前の彼女を俺にくれ。だ」


 聞こえなかったから聞き返したわけじゃないんだよなあ。

 真顔で宣言するように復唱する会長に、心の中で首を傾げた。


「突然の話で申し訳なかったね」


 準備万端だったとしても許されないだろ。


「いやいやいや⁉ ダメに決まっているでしょう⁈ 何がどうなればそんな頼みごとをするに至るのですか⁈」

「そうだな、やはり説明が必要だった」


 説明すれば了承を得られるみたいな態度が気になるが、話を聞かないことには始まらなそうだ。

 すまし顔をぶん殴りたい衝動を必死で抑えながら、俺は会長の言葉に耳を傾けた。


「まず、俺には幼い頃から婚約を約束された存在――許嫁がいるのだが」

「弁明の余地なくアウトじゃないですか」

「焦るな。最後まで聞いてくれ」


 出だしでオチといて黙って聞けは勝手が過ぎる。


「家と家との取り決めで決められた、いわば政略結婚というやつだ。彼女と互いに恋愛感情は無い」

「……はあ」

「家族からは、彼女より良いご令嬢が見つかったら、縁談を反故にしていいと言われている。俺は夢原結心さんを、婚約者として迎え入れたい。――そういうわけだ」

「ちょっと待て⁉ 口ぶり的に、俺と結心との関係は知ってるんですよね⁈」

「ああ。早急に別れてくれ」

「了承するわけないでしょそんな横暴⁉ 第一、人の色恋沙汰に割って入る権利なんて、あんたには無いはずだろうが⁈」

「俺に権利は無いが、君には義務があるだろう」

「はあっ⁈」


 取り乱して言葉が荒れる俺に、財全会長は淡々とした口調で告げた。


「『一般特待生』としての義務だ。3年間本校の生徒たちと活発に交流し、良好な関係を築きながら、優秀な成績を維持すること。君がこの申し出を飲めないのなら、君と俺は良好な関係ではいられなくなるな。もちろん、夢原氏もだ」

「っ⁈」


 なんでこんな横暴が通ると思ったのか。

 その根拠を理解した俺は、怒りを滲ませて財全会長を睨んだ。


「……そういう権力の使い方しちゃいます? 会長のこと、軽蔑しましたけど」

「理不尽な手段だということは理解している。……が、すまない。俺にも事情がある」

「俺の事情は考慮してくれないんでしょ。いい御身分ですね。結心もそういうの嫌いだと思いますが」

「ああ。マイナスからのスタートになることは理解している。信頼は積み上げていく」


 どうやら引く気は一切ないらしい。


「その代わりと言っては何だが、俺の許嫁を君に紹介しよう。老舗ゲームメーカーの跡取り令嬢だ。大企業との令嬢と関係を持つことは、君にとって滅多にない機会だろう」

「生憎、進学には興味があっても、出世には興味がないんで」

「では、これを機に世界を広げてみると良い。悪い話にはしない」


 これ以上何を話しても押し問答だろう。

 そう察したのか、財全会長が小さく咳払いしてから向かい直った。


「夢原氏には、後で俺から話をする。一先ず、俺の要求を飲むかどうか、ここで決めてくれ」

「……」

「沈黙は了承の意とみなすが、良いか?」


 んだよこれ。なんだよこの理不尽。

 怒りで歯を食いしばる俺に、「了承だな」と、財全会長は勝手に頷いた。


「俺の元許嫁にも、報告を入れておく」

「……このまま黙ってはおきませんからね」


 俺個人の問題で済むならいいが、結心も大学の推薦枠を目的に、不亜高に来た身だ。

 俺がもめたことで結心の『一般特待生』の権限を取り消されるのは絶対に無しだ。


 俺は生徒会室のドアを乱暴に閉めて、生徒会室を後にすると、廊下には既に結心が待機していた。


「勇星……? 何かあった?」


 俺の様子を見て、結心が心配そうに寄って来るも、俺も頭が真っ白で、何も気の利いた言い回しが思いつかなかった。


「……ごめん。ただ、結心は何があっても自分の将来のことを優先して」

「? それってどういう……」

「夢原氏。入ってくれ」


 結心が首をかしげるも、遮る形で生徒会室から財全会長の声が聞こえてきた。

 俺の方を振り返りながら、生徒会室に消えていく彼女の姿を、未練がましく見送ってから、俺は力のない足取りで、寮までの道を死んだように歩いた。




 ♢ ♢ ♢




 寮に帰るまでに30分かかった。いつもの3倍だ。

 それだけ歩幅が狭かったってことだろう。部屋に帰って、暗くなった窓の景色を見て、初めて夜になったと認識した。外を歩いてきたはずなんだけどな。


 制服のまま、そのままベッドに倒れこむ。支給されたとはいえ、一着30万の制服だ。いつもならしわにならないように丁重に扱うのだけれど、そんな余裕もない。




 え? 終わり? 俺の青春。こんなNTR未満の何かで終了?


 もう結心と放課後勉強したり、お弁当作って互いに持ち寄ったり、買い物したり、映画行ったり、夜電話しあったり……


 そういうこと、何一つできないってこと?


 怒りと悔しさでベッドに拳を叩きつけるも、ボフッとむなしい音を立てるばかりだ。畜生この低反発マットめ。こんな時まで優しく受け止めんな。

 あの野郎、結心にも同じ話をしたんだろうか。

 そして、結心はその話をどう思ったのだろうか。


 纏まらない思考が頭の中をグルグル回って、無駄に時間が溶けていく。


 ベッドの上で部屋の天井を仰いで一時間ぐらい経過したときだ。


「――⁈」


 俺のスマホから着信音が鳴り響いて、反射的に飛びついた。


「……知らない番号かよ」


 結心かと思って手に取ったけど、未登録の番号からだったから、大きなため息とともにスマホをベッドに放る。回線の業者か? こんな時にかけてくるなっての。



 とりあえず、明日からどうすればいいんだ。俺。


 なんてことを考えようとした矢先、今度はスマホからショートメッセージの着信音が聞こえてきた。


 このタイミングってことは、さっきの番号からか?


 正直今は他のことを考えたくないから、確認するのも面倒だけど、間髪入れずにメッセージが来る辺り、何か用件がある可能性もある。


 そして、そのメッセージの内容に、俺は思わず息を止めて、目を見開いた。




『唐草君のスマホでOK? 私、元許嫁。今後のことで話がある。今日会える?』




 元許嫁ってことは、財全会長の元カノってこと⁈


 俺は一瞬固まった後、すぐさまメッセージに返信して、大図書館の前で落ち合う約束をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。