学院祭の企画
「学院祭の出し物……? 何でもいいって言われても……」
「すいません、何でもいいは語弊がありました。出し物の種類は問わないので、一番注目を集められる企画にしてください」
「いや、出し物を決めるのは分かってるんだけど、優先順位ってやつが……」
「ヘイ策士。家同士の親睦を深めるって話だったよね。お茶会の回数をこなして、ご令嬢たちと仲良くなった方が良いんじゃないの?」
そう。俺もそう思ってた。
出し物の内容を決めるのは、普通は学院祭の約1か月くらい前からだ。それまでまだ時間的に余裕があるんだから、うまく他の生徒たちと仲良くする機会を増やす方が良いんじゃないか?
そんな考えを見透かしてか、狭間はやれやれと首を横に振る。
「今までお茶会をしてこなかった城ケ崎さんが急に誘いをして、ミスコンに出場することになれば、その魂胆は見え見えじゃないですか。出し物を決める体で、先に親睦を深めるための理由付けをしろって話です」
あ、確かに。一致団結するための動機を先に用意してしまえば、お茶会に誘っても『出し物成功の為の話し合い』とかで、会う動機をセッティングできるわけか。
流石『お茶会相談所』管理人。性根は腐っているが、こういうところには気が回る。
「でも、私と宇都君は同じクラスだけど、同士とは別のクラスだよね。クラスで出し物は分かれているはずだけど」
不亜高には各学年にA~D組の4つクラスがあって、俺がA組、城ケ崎さんと狭間がB組だ。
「別に合同で出し物をしてはいけない決まりなんてありません。唐草君の無駄に広い人望を活かして、僕たちのクラスを巻き込んでください。一応理数系クラスなので、最低限の繋がりはありますし」
「結構無茶ぶりするなあお前」
「無茶ぶりに無茶ぶりで返しているだけですが」
A~B組は理数クラス。結心のいるCとD組は文系クラスだから、理数系で団結して何かやろう、という提案はできなくはないかもしれない。
「票を取れる企画って言うのは?」
「しょぼい企画ではそもそも人が集まらないですし、目立つ出し物は学院祭でも目に留まります。その企画を成功させれば、立役者となった人物の名もクラス外へ広まるでしょう」
そっか、出し物の表彰は学院祭最後にあるから、途中のミスコンには大きく影響はないけど、良い企画を組めば、準備段階でも企画の立役者に注目が集まる。
注目が集まる=交流のチャンスが増えるわけか。
「オッケー。方向性は分かった。俺は皆との人脈を生かして、出し物の企画の立ち上げと、理数クラスの纏め上げ。準備をする中で、城ケ崎さんと皆の間を取り持てばいいわけね」
「そういうことです。ともかく、準備期間のことは唐草君に任せます。僕は僕で学院祭前後は忙しくなるので」
「なんかあるの?」
「それはまた後程、それとは別に、城ケ崎さんにも、してもらわなければならないことがあります」
「……何? 人のことをじろじろ見て」
狭間が城ケ崎さんの頭からつま先までをじっくりと眺めた後、足元に置いてあった高そうな紙袋を差し出した。
受け取った城ケ崎さんが中身を確認すると、「げ」と苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「早速今から準備してください。……何嫌そうな顔してるんです? 一人でできないなら手伝いましょうか?」
「い、いい……! 自分でやる……!」
狭間からもらった紙袋を抱えながら、羞恥を全面に出した真っ赤な顔で物陰に引っ込んでしまった。
何を渡されたんだ?
気になって向かおうとする俺の肩を、狭間が掴んで制す。
「変なもん渡してないだろうな?」
「さあどうでしょう」
俺が懐疑的な眼差しを向けると、狭間はそれをひらりと躱すような余裕の笑みで返してきた。
そして、10分くらい経った頃だ。
「……」
「え? 城ケ崎さん? なんか雰囲気が……」
「……私、変じゃない? 同士……」
物陰から現れたのは、メイクをしっかり整えて、きちんとした制服姿に身なりを整えた城ケ崎さんだった。




