生後1日目 4
「そんなぁ!じゃあ、俺はこれからどうすればいいのさ!」
「知らん!勇者と魔王の血を受け継いでいるんだ。⋯⋯なんとかなるだろ。ともかく、どちらの陣営にも捕まったり、正体をバレたりするんじゃねえぞ!達者でな!そんじゃ!!」
ソプニキは長々と話している間、ちゃっかり転移魔法を唱えていたようだ。俺が飛び掛ってしがみつこうとした瞬間に、彼の体は消え、俺は彼が腰掛けていた岩に顔面を強打したのだった。
「いってぇー!あいつ、マジで俺を置いていきやがって!」
擦れて赤くなってしまったであろう額を手でスリスリしながら、俺は涙目を浮かべる。もう結構遠くへと行ってしまったソプニキの気配。従者である歌姫同級生の声も聞こえなくなった。
太陽は1番高くなったところから下ろうとしている。
目の前を流れる、嘘みたいにやたら綺麗な川。聞こえるのはそこからぬきせせらぎだけ。
そんな風に思いながら、恨めしい岩に背を預けてぼんやりしようとした時。
ゴゴゴゴゴ。
大地が揺れる。午後のゴゴゴ。
座ったまま、俺は辺りをキョロキョロ。魔力カスみたいのがいっぱいになった、きったねえ川が事もあろうに激流へと変わる。その波しぶきが顔や体に飛んできたりして地獄。
さらには、川岸の石が互いにゴツゴツとぶつかり合う音が不気味で非常に怖い。川から上がった先にある木々も激しく揺れ、羽休めしていた鳥達が一斉に高い空の向こうへと一目散に逃げていく。
長い年月を掛けて、自然に石が積まれ、草が生え、土が多い尽くした堤防部分。高さは俺の背丈3つ分、横幅は両腕広げた2つ分。先ほどの揺れは、こいつが現れた時のもの。
お鍋のマークが入った岩が真横に転がることなくずれ、それを合図として、その周辺に魔紋。
魔術が働いた時に現れる光を帯びた紋様が空中に浮かび上がり、それが数秒後に収まり、突如として川べりに洞窟が現れたのだ。
真っ暗で中がどうなっているのか分からない。
しかし、魔獣を捕らえるような罠があるわけでもなさそう。でも、どんな危険があるか分からない。
俺はひとつ、深くゆっくりと呼吸をした。
そして腰に巻いた赤ちゃんくるみ布の端を縛り直し、気を引き締める。
さらに足元に落ちていた細い木の枝を右手に装備して、洞窟に足を踏み入れることにした。




