生後1日目 2
魔王城は、魔王と共に生まれ、共に育つ。魔王の命潰えし時、否応なく崩れ去ると言われる。
今まで脈々と受け継がれてきた歴史。しかし、今回は微妙。ちょいと例外らしいが。それでも、魔王が倒された判定が下されたらしい。
魔王様。つまりは俺のお父上様が成長するのに合わせて、オートマチックに増改築がなされてきた築20数年の巨大な魔王のお城。
歴代の魔王城と同じく、魔王の散りざまをきっかけとして、轟音を上げながら崩れ落ち始めた。
人間に攻め込まれないように、切り立った岩盤の上に施工された魔王城。当然、普通ならば無事では済まない高さ。
魔王城の裏手に流れる川。今はものすごい色をしている河川。その脇にある岩場に着地する間に、赤子だった俺が15歳の少年サイズまで成長してしまっていたのだから尚更。
そんな状況をノーダメで切り抜ける為に、瞬間的に、さらに消費した魔力量を考えると、売れば100年は遊んで暮らせる程のお高い特注ローブをちょっと汚したくらいで済んだのは、さすがは大司教様と言わざるを得ない。
とはいえ、流石に魔乳酸が体中に溜まっているような状態。なので俺は赤ちゃんらしからぬ落ち着きぶりを発揮。目の前で一緒になって座り込んで大人しくしている。
そんな彼の功績と名誉を称え、俺はアニキと呼ぶことにした。
「ソプーロスのアニキ。今の話は本当なのかい?」
「ゼェゼェ⋯⋯。あ、あぁ。本当だ。お前は、魔王セイドリアンと女勇者アナスタシアの間に生まれたご長男だよ」
「戦争があったんだよね?」
「ああ、人間と魔族の。大陸戦争と呼ばれることにだろうよ。⋯⋯見ろ、この川の色と跡形もなく崩壊したお前の実家が何よりの証拠さ」
そういったソプニキは視線を前へ移す。川岸の小石やせせらぎに揺れる水草から察するに、普段は淡水魚が群れをなすこともある清らかな川なのは分かる。
しかし、今は紫が混じったような鈍色。人間軍。もとい正大陸軍と名乗っていた人間の軍勢は、川の上流から下るように魔王城へと侵攻してきたという。
その間に起きた数え切れぬ戦いの名残り。血や油や死んだ魔力の成分が混ざり合うと、こんな色になるのだという。
戦争は自然も殺すんだ。
「どうして戦争をしていた人間軍チームと魔王軍チームのトップ同士の間に子供が生まれるんだよ。国王軍が魔王城に攻め入って、女勇者が命からがら魔王の玉座までたどり着いた末の最終決戦なわけなのに」
「それは俺にも分からん。玉座の間で何があったのか、知るのは当事者2人だけだ」
「その当事者2人が見当たらないんじゃ、どうしようもないよなあ」
「まっ、唯一俺が知っているのは、時に愛は全てを超越するということだけなんだぜ」
そう言った瞬間。瞬間的に強く吹いた川風がソプーロスのアニキのその煌びやかな髪の毛を靡かせた。
そして、キラリと真っ白な歯を光らせて、100点満点の笑顔を見せられたのだ。




