主人公、魔法を覚える
「やりました!」
「お、どうしたジーナ?」
小部屋で休憩しているとジーナが興奮した表情で大声を上げた。
「魔法使いを習得しました!」
「お、まじか」
慌ててステータスを確認する。
名前:ソラLV10 種族:魔人族 性別:男
ジョブ:調律者LV10 勇者LV5 魔人LV10
使い魔:ジーナ レイナ
装備:銅のショートソード 革のジャケット 鉄のガントレット 革のブーツ
白兎のアミュレット
アビリティ:【エンゲージ】【ラーニング】【サモン】
【バースト・ソウル】【成長速度上昇LV1】【成長値上昇LV1】
スキル:《全属性耐性LV1》《全状態異状耐性LV1》
《解析》《身体強化LV1》《ジョブチェンジ》《エーテル吸収》
《エーテル消費量減少LV1》
《ストライク》《ショック・アタック》
魔法:なし
名前:ジーナLV8 種族:悪魔族 性別:女
ジョブ:魔法使いLV2
主人:ソラ
装備:スタッフ 上質な皮のコート 上質な革のグローブ 上質な革のブーツ
アビリティ:【低レベル魔法取得可能】【魔法効果小上昇】
スキル:《雷属性》《魅了無効》
《光属性》《全異常耐性LV1》
魔法:『サンダー・ボール』
『ヒール』
『ビーナス・エール』
名前:レイナLV12 種族:獅子族 性別:女
主人:ソラ
ジョブ:戦士LV7
装備:銅のハルバート 銅の額当て 上質な革のジャケット 上質な革のグローブ
上質な革のブーツ
アビリティ:【スラッシュ】【武器耐久値小上昇】
スキル:《毒無効》《火属性》
《最大エーテル強度値上昇LV1》《自然治癒速度上昇LV1》
《バーニング・ソウル》
魔法:『ファイア・ボール』
「おお本当にジョブが変わってる!」
「やったなジーナ!」
「はい!」
三人で喜び合っている時にふと気になったのでジョブチェンジで自分のジョブを見てみる。
あ、俺も戦士習得してる。
ジョブの項目に戦士が追加されていたが、今は変更せずにそのままにした。
初めて三人でパーティを組んで迷宮に訪れてから既に三日が経過した。
基本方針としてジーナが魔法使いを習得してレベルが8以上になるまでは二階と一階の探索を行うことにしていた。
更にこの三日で、迷宮を探索する上で知っていた方が良い知識や知恵を、冒険者ギルドや知り合いから教えて貰っていた。
まず白兎のアミュレットについて。
白兎のアミュレットの効果は身に着けている者が止めを刺さないと意味が無いとソフさんに教えてもらったので、ジーナから俺に戻した。
次にボス戦。
初日にボス戦で資金稼ぎをしようと一階のボス部屋に行ったが、扉の宝玉の色は灰色で、開けるとそこには出れもいなかった。
冒険者ギルドで訊いてみたところ、どうやらボス部屋には特殊な細工がしてあるらしく、一度その部屋でボスと戦うと、どうやら次の日までボスと戦った者、正確にはボス戦に参加した者全員、その日は倒したボスとは戦えなくなってしまうらしい。つまりボスと戦えるのは一日一回ということだ。
まあ方法としては俺、レイナ、ジーナと一人ずつ部屋に入れば三連戦できる訳だが、現実的ではないのでボスとは一日一階と割り切ることにした。
次にドロップアイテムについて。
食べ物系のドロップアイテムは薄い透明の丸い膜で護られている。
強く握ると割れてしまうが、丁寧に持てばそのままの状態でポシェットに仕舞うことも出来る。
因みに液体系も同じ仕様なようで、膜で守られている状態ならポシェットに仕舞えるが、食べ物系と違って割れてしまうと仕舞えない。
理由は単純だ。床にこぼれるからだ。
そのため液体系は、一度器の上で割って中身を出してからビンやボトルに入れて持ち運ぶのが当たり前らしい。ドロップした薄い膜の大きさに合わせた専用のポットも売られている。
もちろん俺達はポッドも空き瓶も購入している。宿屋のタンスに放置状態だが
上の階層に行けば行くほど、手に入る食べ物の質は上がっていくとの事なので、今から少し楽しみではある。
次は帰還のクリスタルについて。
本来帰還のクリスタルを使用すると入口に戻るのは使った本人だけだが、どうやら使い魔と主の主従関係があると、どちらが使っても主と使い魔全員纏めて入口に戻ることができるみたいだ。
これは俺達にとってはありがたい仕様だ。
なんせ誰か一人が使えばピンチの状態でも逃げることが出来るのだから。
他にも色々細々した事も教えて貰ったが、今はいいだろう。
改めて今まで知りえた情報を纏め終えた俺は、立ち上がって二人に提案する。
「ジーナもジョブを習得したし目標のレベル8にも到達した。そろそろ二階のボスに挑んでみるか?」
「だね。連携も上手くなってきたし、いいと思うよ」
「お二人がいいなら私も構いません」
二人の許可を得たのでボス部屋へと向かう。
既に三日も探索したお陰で、二階層の地図は完成している。
というか冒険者ギルドで地図が売っていたので、三階層の地図は買うつもりでいる。
一枚300MSと高値だが自分で探索するより楽だし仕方ない。
「よし。取り合えず扉を開けて相手の情報を確認してみよう」
ボス部屋の扉を開けてボスを確認する。
「うっわあぁ……」
俺は部屋で仁王立ちしている魔物の姿を見て絶句する。
体長十メートルはありそうな白熊の体に、純白の翼が生えていた。
それだけならまだ許そう。だがそいつの一番異様な箇所は頭だ。
体だけ見たら間違いなく白熊なのに、頭が白鳥だった。
いや、色合い的には白鳥だが、ぶっちゃけ恐竜のプテラノドンにしか見えない。
ギザギザの鋭い牙の生えた鋭く尖った黄色い嘴に、大きな瞳は血走っている。
しかも毛が逆立って通常の美しい白鳥の姿は微塵も無い。
「こ、怖いです」
「ああ、なんかもう色々間違って生まれて来たとしか思えないな」
二人もドン引きである。とりあえず俺は当初の目的を達するために解析を行う。
名前:エンジェルグリズリーLV13 属性:?
ドロップ:? ?
スキル:《スマッシュ(済)》
魔法:『ウィンド・トルネード(可)』
「魔法……だと!」
ついに俺にも魔法を使える時が来たのか!
い、いやいや落ち着け俺、相手はレベル13だ。
下手したら一発食らうだけで大ダメージ……ん、待てよ。
バーニング・ソウルは俺のステを多分倍化するスキルのはずだ。
ならバーニング・ソウル状態で受ければダメージを最小限で抑えられる可能性は高い。
あれ、案外いける?
安全と利益を天秤にかけて思案して、二人に提案する。
「あの魔物の名前はエンジェルグリズリー、レベルは13、スマッシュと魔法のウィンド・トルネードを使う」
「聞いた事の無い魔法だな」
「可能の文字があるから、多分魔物専用の魔法なんだと思う」
「そう言えばご主人様には遠距離攻撃の手段がありませんでしたね」
「ああ。だから取り合えず今回は様子見で、いけそうなら倒す。もしやばそうなら奴の魔法だけラーニングして、帰還のクリスタルで逃げる。という作戦で行こうと思うんだが」
どうだろう? と二人に視線を向けると、二人とも頷いて肯定してくれた。
「じゃあ行くぞ!」
ボス部屋に突入する。
「ギイイイイ!!」
奇妙な雄叫びを上げると、エンジェルグリズリーはその場で羽ばたいて空中に浮く。
とはいっても体格に翼の大きさが合っていないのか、足が軽く地面から離れた程度の浮遊だ。
むしろ羽ばたきで起こっている風圧の方が脅威だ。
「ジーナ! 空を飛ぶときは気をつけろ!」
「はい!」
ジーナに忠告して進み続ける。
「ギイイイイ!!」
ある程度まで近付くと、浮遊していたエンジェルグリズリーが雄叫びを上げた。
するとエンジェルグリズリーの体の周りが緑色に輝き、三本の緑色の竜巻が現れて俺達に向かって放たれた。
三本!? 複数体攻撃魔法だと!
「二人とも後方に下がれ! バーニング・ソウル!」
まずは確認しないと!
エーテル吸収を行いつつバーニング・ソウルで強化してストライクで横に移動する。
すると三本の竜巻の内の一本が、俺の方へ進路を変更する。
誘導タイプ!? おいおい第二階層でこんな魔法が使えるのかよ!
俺はバーニング・ソウルで失うエーテルを補うためにエーテル吸収を常に行いつつ竜巻に向かう。
だああ怖いけどやるしかない!
俺は銅の剣を突き出して、ストライクで竜巻に突っ込む。
「うああぁぁ!?」
もしかしたら剣が接触した瞬間に竜巻を消滅させられるかもと考えていたが、甘かった。
竜巻と接触した瞬間、腕には確かに軽い衝撃はあったが、俺の体はすぐに竜巻に飲み込まれてしまい全身を切り刻まれ、最後には吹き飛ばされてしまった。
「ぐっつあぁ!?」
全身を強かに打ちつける。
「ご主人様!?」
「だ、大丈夫だ!」
二人の方を見ると俺の指示通りに後方に下がっていた。
そして残り二本の竜巻は二人に到達する前に途中で消滅する。
「キイイイイ!!」
エンジェルグリズリーが雄叫びを上げるのを聞いて、慌てて振り返る。
エンジェルグリズリーが二発目を放つところだった。
「帰還のクリスタル!」
レイナがクリスタルを掲げると、俺達の体が光に包まれ、一瞬の内に迷宮のホールへと戻っていた。
「あ、危なかった」
「ご主人様! 今ヒールを致します」
ジーナが駆け寄って来て俺にヒールを何度も唱える。
その間に自分の状態を確認をする。
装備品に守られていない部分には切り傷を負ったが、幸いなことに深く大きな傷は無い。
装備品にも小さな切り傷が入っているだけでまだ問題は無さそうだった。
だが、あまりの力量差にもはや笑うしかない状態だった。
おいおい第二階層でこれとか、難易度高すぎるだろ。修正が必要だ。作った奴を呼んで来い。
「とりあえず一旦帰るか?」
レイナも心配した表情で俺の顔を除きこむ。
「……そうだな。外に出て日の高さを確かめて、昼近くならメシにしよう」
俺達は一度外に出て日の高さを確認する。
太陽の位置的にすでに昼は過ぎているみたいだ。
「それじゃあご飯でも食べながら対策を考えよう」
「賛成」
「分かりました」
少々悔しい思いもしたが、ステータスを確認するとちゃんとウィンド・トルネードを習得していたので最低限の目的は達成したといえる。
しかしホント、どうしたものか……。
俺は新たな難問に頭を悩ませながら、二人と共に町へと戻った。




