初めてのパーティプレイ
俺達はイース迷宮へとやってきた。
俺の能力は他人に知られない方がいいだろうという理由から、一番人の利用が少ない迷宮を選んだ。
一時間タイプの砂時計で測ってみたが、迷宮までは徒歩で三十分ちょっとで到着した。戦闘前の運動だと思えばそれほど苦ではない距離だ。
道中でレイナとジーナに俺の能力、ラーニングとジョブチェンジについては軽く説明した。
これから一緒に戦う以上は教えておく必要があると考えたからだ。
ただ解析については敵やアイテムの情報、装備品のレア度を確認できる程度と、ちょっとだけ嘘をついた。もう少し自分自身が能力を把握してから伝えたかったからだ。
いずれ時を見てちゃんと説明しよう。
迷宮の中に入り、一階の通路を歩きながら、俺は心の中でそう結論を出した。
今回は三人の連携を高める目的なので一階から探索を始める。
「一階の魔物はホーンラビットだ。こいつらの基本攻撃は体当たりだが、たまにスキルを使って高速体当たりをしてくるから注意してくれ」
「もしかしてダーリンのあの高速移動の技か?」
「ああ。あれは本来体当たりに使うスキルなんだよ」
誰もいないのを確認してからレイナの質問に答える。
「まさか本当に魔物の技を習得できるなんて、流石ですご主人様」
ジーナがまるで自分の事の様に誇らしげな顔で俺を褒めてくれた。
「ま、習得するために一度はスキル攻撃を食らわないといけないのがねぇ」
「場合によってはその一撃で死んじまうかもしれないもんな。以外に使いどころの難しいアビリティだな。そういえば普通のスキルは習得できないのか?」
「多分無理だと思う。レイナとの戦闘で何度もスラッシュを受けたけど覚えられなかったし、本当に敵のスキル専用なんだろうな」
そもそも覚えられるのは可って文字が入っている技だけみたいだしな。
周りを警戒しながら進む。
今回は地図が無いので紙に逐一道順を書いていく。マッパーはしっかり者のジーナに任せた。
マッピングという頭の中に地図が浮ぶスキルもあるらしいが、習得方法を後で冒険者ギルドで聞いておこう。
「あ、ご主人様あれを」
正面通路に三体のホーンラビットを見つける。
向うの一匹がこちらに気付いて振り返って威嚇してきた。
俺は腰に差していた銅のショートソードを抜いて臨戦態勢を取る。
レイナもハルバートを構え、ジーナは飛んでスタッフを構える。
片手格闘はキツイと言うことで暫くは武器持ちで行くことにした。
他にも理由としては迷宮には空を飛ぶ魔物もいるからリーチがあった方がいいと、レイナに助言を受けたからだ。
「俺とレイナで足止め、ジーナはタイミングを見て魔法を、みんな声かけを忘れないように」
「はい!」
「了解!」
俺とレイナがホーンラビットに駆け寄る。
レイナが二体を受け持ち、俺が一体を受け持つ。情け無いが今の俺では一体が精々だろう。
その分早く片付ける!
体当たりを繰り出してきたホーンラビットの眉間目掛けて剣を振り下ろして弾き飛ばす。
「サンダー・ボール!」
吹き飛んで倒れたホーンラビット目掛けてサンダー・ボールが飛来し、炸裂する。
ホーンラビットの体が消滅したのを確認してすぐにレイナの元に駆けつける。
「スラッシュ!」
レイナはハルバートを大きく振り回して二体のホーンラビットを弾き飛ばす。
「右は私が!」
「おう!」
倒れ伏したところに二人が魔法をぶつけてホーンラビットは消滅する。
「ナイスサポートだったぞジーナ」
「ああタイミングばっちりだ!」
「あ、ありがとうございます。ご主人様と練習したお陰ですね」
俺とレイナが褒めるとジーナは照れながらも嬉しそう微笑んだ。
「だが、流石に少し弱すぎるか」
「かもな。とりあえずボスまで行くか? ここのボスは厄介だし良い練習になると思うが」
グリズリーラビットか、だけどあいつは結構強いからなぁ。いやでもレベル的には一つ上の階に行っても……。
「よし。レイナの言う通りボスに挑んでみよう」
熟考した後にレイナの提案を採用する。
俺自身も以前と今回でどれだけ強くなったかを試してみたいという想いもあった。
「ボス部屋までの道順は覚えているから、二人とも付いて来てくれ。ついでに道中の扉も確認して行こう」
始めて来た時は探索する暇が無かったからな。
ボス部屋までの道順を進みつつ、見かけた扉を片っ端から開けていく。
基本、魔物がいるか居ないかで、偶に通路に出たが、その場合は無視してボス部屋へと続く道を進んだ。
それにしてもこの階の魔物はホーンラビットしかいないんだな。
興味本意で解析を行う。
名前:ホーンラビットLV2 属性:風
ドロップ:兎の皮 ?
スキル:《ストライク(済)》
あれ? 情報が追加されてる。
ドロップの項目が埋まったのは俺が手に入れたからだ。
それはホーンラビットとの二度目の戦闘時に確認した。
その時は属性は埋まっていなかった。条件は……いや、一つしかないか。
そう言えば属性に関してはまだ説明を聞いていなかったし、丁度いいか。
俺は手早くホーンラビットを倒して、ジーナに質問した。
「なあジーナ、属性にはもしかして反属性とか弱点属性みたいなものがあるんじゃないか?」
「あ、はい、その通りですご主人様。属性を習得すると魔法を使える代わりに特定の属性攻撃に弱くなったり強くなったりというデメリットもあります」
やっぱり。多分風と雷が反属性同士なのだろう。
「幸い光と闇属性に弱点は無いので、私の弱点属性は火属性なので火系の攻撃はダメージが増加します。逆に雷の弱点属性である風属性の攻撃はダメージが軽減されます」
「あたいは火属性だから水属性が弱点だ。代わりに雷属性には強い」
あれ? 違ったか。
雷の弱点が火で、火の弱点が水って事は……五行相剋か!
ここにきて陰陽五行要素が出てくるとは、何でもありだなこの世界。
だが間違いない。ジーナがサンダー・ボールを当てたから属性の項目が判明したんだ。
弱点属性の攻撃で属性の判明は間違いないだろう。
もしくは軽減される耐性属性での攻撃でも判明するかもしれない。
光と闇属性に関しては弱点がないそうだから、別の判断方法で判断するのかもしれないな。
「教えてくれてありがとう。これからは属性についても気をつけながら指示するよ」
今後はもう少し解析を多用しようと心に決めて、探索を再開する。
そしてボス部屋に向かう通路にある最後の小部屋の扉を開けるも、そこにも何も無かった。
「……宝箱とかは無いんだな」
迷宮に宝はつきものだと思ったんだが。
「ああ、迷宮あるあるの一つだな。あたいも最初はお宝があるのかと思ったけど、そういうのは無いらしいぞ。迷宮の小部屋にいるのは魔物だけで、小部屋の魔物は倒しても暫くすると復活するんだとさ」
「通路の魔物は復活しないのですか?」
「んにゃ、通路の魔物も復活するらしいが、元いた通路とは限らないし数も違う。小部屋の魔物は必ず最初からいた数が復活するらしい」
固定かランダムかの違いだな。たまにゲームみたいな設定があるよなこの世界。
などと話している内にボス部屋に到着した。
「さて、二人とも俺が言った情報は覚えているか?」
二人に最終確認を行う。
「はい。グリズリーラビットの基本攻撃は腕の振り回しや振り下ろし、それと体当たりに飛び上がって落下してくる踏み付け」
「スキルはショック・アタックで銀色に光る四肢に防具の上からでも触れちまうと十数秒眩暈を起こして体が思うように動かなくなる、だろ。ダーリンが使う分には頼もしいんだが、敵が使うと思うと厄介極まりない能力だな」
「ああ。だから受ける時は武器、もしくは魔法かスキルを光っている部分に当てて効果自体を消す事。それと俺にはエーテル吸収があるからいいが、レイナとジーナはエーテル残量には気をつけながらスキルや魔法を使ってくれ。あと俺の方のショック・アタックだが、どうやらあくまでショック・アタックは四肢で使うスキルみたいで、武器を持っていると発動できないみたいだ。その辺も注意してくれ」
「ああ、了解」
「はい。気をつけます」
「じゃ、まずは姿を見るとしようか」
扉を開けて二人にグリズリーラビットを見せる。
「グオオオオー!」
扉が開いた瞬間、グリズリーラビットが雄叫びを上げてこちらを威嚇する。
「きゃっ!?」
ジーナが溜まらず短い悲鳴を上げて俺にしがみ付く。
その隣のレイナを見ると真剣は表情でグリズリーラビットを見詰めていた。
戦いに対してはいつも真剣だよなレイナは……指示を出す俺も見習わないと。
「あ、すいません」
「いや怖くて当たり前だろ。で、二人の感想は?」
ジーナを安心させるように頭を軽く撫でつつ二人に質問する。
「可愛くないですね」
「ああ不細工だな。特になぜあれだけ体が凶悪なのに耳だけ普通の兎耳」
「だよな」
なんというか耳と尻尾に申し訳程度の兎の要素入れて兎と言い張っている感じ。
「それじゃ二人とも……行くぞ!」
事前の指示通りまずは俺が先頭を駆ける。
グリズリーラビットが俺目掛けて突進してくる。
今では俺の方がレベルは上だ、臆せず試す!
「ストライク!」
剣を突き出して高速突撃する。
声に出すのは二人に教えるためだ。黙って使うと連携に支障が出るから仕方ない。
もちろん人がいない時限定だ。ボス部屋は一度閉まってしまえば誰も来ないから声に出し放題だ。
グリズリーラビットが思いっきり踏み込んで額を向けて突っ込んでくる。
切っ先とグリズリーラビットの額が激突する。
「ぐっおおお!」
腕に衝撃が走るが、耐えて押し返す。
「グオオ!?」
グリズリーラビットが押し返されて軽く後方に弾かれる。
その瞬間を狙っていたかのように、すでにスラッシュを唱え終えていたレイナが追撃する。
「はっ!」
斜めに振り上げられたハルバートが、グリズリラビットの脇を殴り飛ばす。
グリズリーラビトが更に後退する。
「ん?」
ハルバートが当たった箇所が切り裂かれていた。
そこから黄色い粒子が見えた。
血、とは違うよな。
黄色い粒子も血のように垂れたり噴出したりせずに僅かにその部分から外に放出されて、すぐに消える。
「サンダー・ボール!」
ジーナがサンダー・ボールをグリズリーラビットにぶつける。
おっと、考え事は後だ!
俺も再度戦闘に参加する。
グリズリーラビットがショック・アタックを唱えれば俺が剣を腕に当てて解除し、その隙を逃さずにレイナもすぐに追撃でグリズリーラビットを切り裂き、ジーナは確実に当てられるタイミングで魔法を放っていく。
そして気付けば、俺達はほぼノーダメージでグリズリーラビットを倒してしまっていた。
まさに数の暴力である。




