マジックポシェット
死ぬかと思ったね。
ジーナ以来、二度目の綺麗な川からの生還である。
調子こいた。本当にいつか死ぬんじゃないだろうか。
天井を見詰めながら昨夜の行為を反芻する。
うん。まあ後半はレイナも匂いを気にしていなかったし、一応目的は達したと言えるだろう。
「さて、一応昨日最後にレイナとはエンゲージも済ませたから、ステータスは変わったはず」
主は使い魔のステータスも見れるのが便利だよな。
名前:ソラLV8 種族:魔人族 性別:男
ジョブ:調律者LV8 勇者LV1 魔人LV8
使い魔:ジーナ レイナ
装備:なし
アビリティ:【エンゲージ】【ラーニング】【サモン】
【バースト・ソウル】【成長速度上昇LV1】【成長値上昇LV1】
スキル:《全属性耐性LV1》《全状態異状耐性LV1》
《解析》《身体強化LV1》《ジョブチェンジ》《エーテル吸収》
《エーテル消費量減少LV1》
《ストライク》《ショック・アタック》
魔法:なし
名前:ジーナLV6 種族:悪魔族 性別:女
ジョブ:悪魔LV6
主人:ソラ
装備:なし
アビリティ:なし
スキル:《雷属性》《魅了無効》
《光属性》《全異常耐性LV1》
魔法:『ビーナス・エール』
『サンダー・ボール』
『ヒール』
名前:レイナLV11 種族:獅子族 性別:女
主人:ソラ
ジョブ:戦士LV5
装備:なし
アビリティ:【スラッシュ】【武器耐久値小上昇】
スキル:《火属性》《毒無効》
《最大エーテル強度値上昇LV1》《自然治癒速度上昇LV1》《バーニング・ソウル》
魔法:《ファイア・ボール》
レイナのスキルが二つ増えたか。
俺も新しいスキルを覚えたし、ジョブの装備枠も一つ増えた。
多分使い魔が増えるたびに装備可能ジョブが増える仕組みなのかもしれない。
ジーナのレベルが上がったのはジーナが俺の使い魔だからだろう。
冒険者ギルドでジーナに使い魔について詳しく訊いて来て貰って知ったのだが、本来魔物や魔族を倒して手に入る経験値は、倒した本人にしか入らないらしい、だが使い魔と主は特別で、どちらが相手を倒しても、両方に同じ分の経験値を得ることが出来るらしい。
他にも経験値を分配できる他、色々機能のあるパーティリングなるアクセサリーもあるが、こちらは手に入る経験値が人数で割った数になってしまう。
つまり二人いたら一人が手に入れる経験値は本来の経験値の二分の一となる。
さて、二人が目を覚ますまでもう一眠りするかな。今日から本当の意味でこの世界での生活が始まるのだから。
*
「さて、それじゃまずは色々確認しようか」
ベッドの上で三人で座って話し合う。
「まず前衛は俺とレイナ、後衛がジーナで行こうと思うが、なにか意見は?」
「あたいはいいと思う」
「私も特にありません」
「よし。それじゃあジーナは後方から魔法を使ってくれ。ジーナの当面の目標は魔法使いなることだ」
「了解しました」
修行中に冒険者ギルドでジーナに訊いて来て貰った内容の一つがジョブに関すること。
既に習得しているジョブと特に特殊な条件無く誰でも習得できるでジョブを訊いて来て貰った。
まず戦士、魔法使い、狩人の三つは、内容が違うだけで条件は同じだ。
戦士は近接武器装備で一定数物を切る又は突く。
魔法使いは一定数魔法を対象に使用する。
狩人は遠距離武器装備で一定数物を射抜く。
三つともそれぞれの職業にあった攻撃を続ければ習得することが出来る。
因みに格闘、素手だとどうなるのかも聞いてもらったのだが、前例が無いので分からないと言われてしまったらしい。
僧侶や剣士といったものもあるが、剣士は騎士団に僧侶は教会に属さないと習得できないジョブとのこと、できればジーナには僧侶になって欲しかったが、仕方ない。
修行僧、モンクも考えたが、素手格闘が条件だったらキビシイので諦めた。
次に俺の勇者だが、習得条件は聞いてみればあっけない内容だった。
習得条件その一、自身のレベルよりも10以上離れた魔族を倒すこと。
習得条件その二、倒す対象が悪であること。
以上の二つだけだ。
悪というのが何を指すのか分からなかったが、それはレイナが答えてくれた。
「ソウルクリスタルは自分の心を形にした物で、非道な行いをすればするほど、ソウルクリスタルは濁って行って、黒い光りを放つようになる。逆に善行を多くつんでいる人は澄んで行って白い光りを放つ。故に黒よりは悪、白よりは善って呼ばれるんだ」
「へえ。それってソウルクリスタルオープンじゃ分からないのか?」
「ああ。あれはあくまで情報の提示や確認のためだからな。魔族は死ぬと誰もがソウルクリスタルを対外に排出する。ソウルクリスタルの色が確認できるのはその時だけだ」
「つまりヘクツのソウルクリスタルは黒よりだったって事か。外に出たソウルクリスタルはどうなるんだ?」
「三日もすれば勝手に消滅する。使用目的としては証拠品ってトコかな。ソウルクリスタルに触れるとそのソウルクリスタル持ち主の情報が頭に浮ぶから、誰のものだったか知ることが出来る。盗賊とかの討伐の証拠として提示するのに使われるんだ」
残念。クリスタルを使うことでスキルを覚えたりとかはできないのか。
ま、できちゃったら魔族同士での殺し合いが起きるだろうけど。
ジョブについての話し合いを終えて、次にそれぞれの腰に装備されたポシェットを見る。
「レイナ、一応もう一度マジックポシェットの使い方を教えてくれるか」
「ああいいよ。まずアイテムを入れる時は手に持ってボックスインと声に出して唱える」
レイナが丸薬の傷薬を手に持ってボックスインと唱える。
するとポシェットの上部に魔方陣が浮んで、アイテムが輝いて粒子となって魔方陣に吸収される。
「中はこんな感じだな」
レイナがボタンを開けてポシェットの上部を開く。
ポシェットの中は九つの区画に分けられていて、その一画に先程の薬草がかなり小さく縮小されて一粒入っていた。さっきはビー球くらいあったが、今はBB弾くらいの大きさになっている。
「アイテムの取り出し方法は二つある。一つずつ出す方法と、まとめて出す方法だ」
レイナがポシェットの蓋を閉めながら取り出し方法の説明を開始する。
「一つずつ取り出す場合はポシェットの蓋を閉めた状態で取り出したいアイテムを思い浮かべてボックスアウトと唱える。声に出す必要は無い」
レイナが念じると、ポシェットの上部に魔方陣が浮んで、その上に元の大きさの傷薬が現れて空中で静止する。
「一つの種類の物を複数同時に外に出す場合は、取り出したいアイテムを思い浮かべて蓋を開けた状態でボックスアウトと唱える。こっちの場合は声に出す必要がある」
レイナが上部を空けた状態でボックスアウトと唱えると、中の傷薬が全て光りの粒子となって開いた上部から外に飛び出してベッドの上で元の傷薬になる。
「因みにマジックポシェットに入れられる物の種類は九種類、数は八十一個まで入れられる。種類が九種入っていると個数に余裕があっても新しい種類は入れられないから注意してろよ。それと液体系は瓶とかに入れないと仕舞えないのも忘れないこと」
「了解」
「分かりました」
レイナに再度マジックポシェットのレクチャーを受け、装備に関しての話し合いを終える。
「それじゃ、確認はこれで終了だな。さっそく迷宮に行くとしよう」
「おう」
「はい」
やる気に満ちた顔で三人一緒に宿を出る。
そりゃやる気も出るってもんさ、なんせこのマジックポシェット、一つ五千MSもするんだからな!
そして新しいこの部屋の一晩の料金は一晩五百MS。
必要最低限のアイテムと日用品、色々買ったため、俺達全員の残り所持金、約5万MS。
その全てがレイナのお金である。男として、旦那としてこれはいかん。
少なくとも二人に迷宮に入る用の服と私用で着る用の服くらいは買ってやらないと。
ジーナの服では正直迷宮探索に向かないし、逆にレイナは迷宮探索用に適した服しか持ってない。
当面の目標は決まった。頑張れ男の子!
俺は迷宮に向かう道中で改めて気合を入れ直した。




