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ゲームなら作業、リアルなら命がけ

「ふっ!」

「ブウウー!」


 ストライクで突っ込んでくるホーンラビットに、こちらもストライクを発動させ、ホーンラビットの額に拳を当てる。

 ホーンラビットが吹き飛び、消滅する。


「ふう。最後の検証も終了と」


 落ちていた魔石と皮を麻袋に仕舞いながら、今までの検証結果を纏める。


 ストライク。

 スキルの効果は踏み込んだ方向への高速突撃。

 使用にエーテルを消費する。どうやら攻撃スキルは消費対象スキルのようだ。

 飛距離は目測で約三メートルくらい。 

 同じスキル同士でぶつかり合った場合は多分強度値の高い方が勝つ。

 そして別に対象がいなくても発動は可能。

 ただ何かに接触しないと効果が消えないから、最悪三メートル跳びっぱなしになる。

 検証結果はこんなところかな。


 ま、攻撃スキルの最大利点はそこじゃなくて、スキルそのものにある訳だが。

 最大の利点。それは攻撃スキルの発動を相手に悟られずに発動できる点だ。

 魔物がスキルを使うと銀色の輝きを放っていたが、俺が発動しても他のスキルと同様に知覚できる現象は起こらなかった。

 しかし俺自身はスキルの発動を感知できるから発動したかどうかはちゃんと分かる。

 対魔物戦では大して変わらないかもしれないが、対魔族戦でこの利点はかなりでかい。

 なんせ不意をつけるのだから。


「後はエーテ吸収の回復量と吸収で相手を倒せるかどうか。それとスキル同士の兼用が可能かどうかだな」


 俺はエーテル吸収について考えながら、地図で道順を確認してボス部屋に向かって進む。


 ホーンラビットとの戦闘はさっきので四体目。

 そしてストライクの検証もしつつエーテル吸収も行っていた。

 今のところ体に異変や違和感はみられない。

 ストライクの消費量よりも吸収の回復量の方が勝っているのは間違いないだろう。


 問題はエーテル吸収で相手を倒すことが出来るかどうかだ。

 もう少し消費の高いスキルを覚えたら試してみよう。

 満タンでは発動しないのがキツイよな。


「ん? あれがボス部屋か?」


 視線の先に今までとは作りの違う扉を見つける。

 今まではシンプルな作りの一枚扉の自動スライド式だったが、目の前にある扉は二枚扉だ。

 本来なら取っ手がありそうな場所に赤い宝玉が左右に一つずつ嵌められている。


「さて、どうしたものか……」


 現状、俺のレベルは未だに1だ。

 そして幸か不幸か砂時計も倒れることは無かったので時間は把握できる。

 砂の落ち具合から残りは多分二十分程度だろう。

 少なくともこの試験にタイムオーバーはない。死ぬか生きるかだ。 


「そうだ。俺には解析があるんだから、とりあえず扉だけ開けてボスのデータを確認しよう」


 俺は砂時計と地図を麻袋に仕舞い、隅において扉の宝玉部分に触れる。

 するとこちら側に向かって扉が開く。

 外開きか。確かに踏み込んだなら扉に突き飛ばされて内側に閉じ込められるな。

 

 扉の観察もそこそこに、ボス部屋にいるであろうボスを探す。


「……うわぁ」


 ボスはすぐに見つけた。

 成人した樋熊の二倍くらいはありそうな体長の兎が、部屋の中央で悠然と立ち、こちらを睨んでいた。


 うん兎だ。血走った目とか、逆立った白い毛とか、太い腕や鋭そうな爪があっても、あの長い耳は兎だ。



 名前:グリズリーラビット レベル:7 属性:? 

 ドロップ:? ? 

 スキル:《ショック・アタック(可)》



 グリズリーなのかラビットなのかはっきりして欲しい。 

 いやそれより、あのスキルが例の麻痺攻撃か? 

 いや決め付けはよくないか。通常攻撃の可能性も一応考慮するべきだな。


 扉を越えていないお陰か、グリズリーラビットは物凄い形相でこちらを威嚇するだけで、近付いてはこない。

 それにしても広い。ボス部屋は迷宮入り口のホールを少し小さめにした広さの部屋だ。

 もちろん柱なんてないから、隠れてやり過ごすのは不可能なようだ。

 

 さて、敵のレベルがいきなり跳ね上がった訳だが。

 ホーンラビットをもう少し倒してレベルを上げるか? 


 だが、そもそも魔物を倒せばレベルが上がると思っているのは俺の思い込みだ。

 もしかしたらレベルアップは別の方法かもしれない。

 その場合、無駄に装備の耐久値を減らす……あ。

 そうだよ。装備には耐久値があるんだから、下手したらボス戦前に壊れたりしたらその時点でアウトじゃないか。 

 

「つまり、ほぼ万全な状態の今が、一番ベストかもしれないって事か……」


 行くか……引くか……。

 しばらく頭で悩んだ後……俺は覚悟を決めた。


「だああ行ったらああぁぁ!!」


 麻袋をボス部屋の壁際に軽く放り投げ、グリズリーラビットに向けて駆け出す。


「グオオオオオ!!」


 もはや兎の鳴き声とは程遠い雄叫びを上げながら、グリズリーラビットが兎跳びでやってくる。


 早いそして怖い!

 

 ストライクで斜め右に跳躍する。

 高速移動で側面を取ろうとしたが、グリズリーラビットが腕を振るって俺を引き裂こうとする。


「うおお!」


 着地と同時に屈み、振るわれた腕を避ける。

 その隙に脇腹目掛けてストライクで右ストレートを叩き込む。


 硬って!?

 殴った俺の腕の方が痺れる。

 つまり向こうの方が強度があああああ!?


 振り下ろされた爪を後方にストライクで跳んでなんとか避ける。

 アホか俺! 今は集中しろ集中!!


 戦闘態勢を取ってグリズリーラビットを観察する。

 グリズリーラビットが再度突進してくる。


 俺はグリズリーラビットの振るわれた腕の下を潜り、去り際に蹴りを膝裏にお見舞いするが、やっぱり硬く、蹴った俺の足の方が痛い。


 再度後方にステップし続けて距離を取る。

 あ~畜生! ダメージ1しか与えていない気分だ。

 そもそもダメージが入っているのかどうか……。

 とりあえず吸収だ!


 グリズリーラビットからエーテルを吸収してエーテル量だけは切らさないようにする。

 それにエーテル量が減れば相手の防御力も落ちるだろう。


「グオオオオ!!」


 グリズリーラビットが雄叫びを上げると、四肢が銀色の光る。

 スキルか!

 現象の違いはあるが、そう判断した俺は解析を行う。

 

 駄目だ。まだラーニングできていない。

 俺はもう一度突っ込む。ボスが使うスキルだ。いいものに違いない。

 だがくらえば間違いなく支障が出る。


 最悪、死……。

 心臓の音がやけにでかく聞こえる。

 そしてこちらが迷っている間に向こうから距離を詰められてしまう。


「くっストライク!」


 後方に高速退避して振るわれた腕を避ける。ストライクは退避にも使えるのがありがたい。

 地面に接触したのに腕の光りは消えていない。

 そして相手のステータスにも変化は無い。


「駄目だ。やっぱり一度はくらう必要があるのか?」


 世の中そんなに甘く無いってか、畜生。

 今後のことを考えるなら、スキルは手に入れるべきだ。

 だがもし、その一撃に耐えられなかったら……。

 ジーナの顔が頭を過ぎる。

 

「男なら! 女の期待に応えてこそ!」


 グリズリーラビットに突撃する。

 なるべく硬い部分。ガントレットと額当てで受け止める!


 グリズリーラビットが左手を大きく振りかぶる。

 横の薙ぎ払い!

 グリズリーラビットは攻撃のモージョンが大きいから攻撃が読み易いのが救いだ。

 

 俺は腕が振り切らない内に自ら腕に突っ込む。その方が威力が弱いからだ。

 あくまで現実ならの話だが、今は賭けるしかない。

 両腕を額当ての部分で交差させ、更にストライクを使って、グリズリーラビットの腕と激突する。

 

「ぐっあああ!!」


 押し切れず、勢い良く吹き飛ばされる。額当てからピシっと言う音が聞こえた。


「ぐっつうぅ」


 地面に何度も叩きつけられながら転がる。


「あぐっ」


 勢いが収まった瞬間に立ち上がろうとするが、意識が朦朧として上手く立てない。

 くっそ。頭や顎殴られて脳を揺らされた時に近いなこれは。

 脳を揺らされると、人間は視界が歪んで上手く体を動かせなくなる。

 

 歪む意識の中で自分のダメージをチェックする。

 打ち付けられて全身が痛い。だが腕の方は痛みはあるがなんとか動かせそうだ。

 足も上手く動かせないだけで支障はなさそうだ。


「グオオ!!」


 グリズリラビットが大きく跳躍する。

 天井に着きそうなくらいの跳躍は前に進む跳躍というよりむしろ……おいおいまさか!?


 背中に悪寒が走る。

 動け! 早く! 早く!!


 無理矢理片足を起こして片膝立ちで足の裏を地面にくっつける。



 ストライクウウゥゥ!!


 前のめりに倒れこみながら、ストライクでその場を移動する。


 先程まで俺がいた地点に、想像通りグリズリーラビットが勢い良く落下する。

 大きな音と振動が、部屋全体を包み、俺の体を震わせる。


 危なかった、今のは危なかった!

 

 勢い良く起き上がって身構える。あんなものを食らったら確実にミンチだ。


「ってあれ? 起き上がれた」


 急に意識がハッキリした。

 もしかしてスキルの効果で意識が変だったのか?

 いや、今はそれよりデータだ。グリズリーラビットのデータを見る。


「よし!」

 

 ショック・アタックに済みの文字がある。グリズリーラビットの四肢の光りも消えている。

 俺は吸収で回復してからショック・アタックと念じる。


 四肢に力が漲る。

 とりあえず殴るか蹴るかすればいいはずだ!


 俺は怖いのを我慢してグリズリーラビット目掛けて駆け出す。

 というかここで行かないと間違いなく心の方が折れる!


 現実的にありえない存在だったお陰でまだなんとか戦えていたが、さっきの痛みと攻撃のせいで死を強く認識してしまった。

 拳が、体が震える。その震えを恐怖ではなく痛みによるものだと、自分を誤魔化して突き進む。


「おおおおおおお!!」

「グオオオ!!」


 無理矢理張り上げた俺の声に張り合うように、グリズリーラビットも雄叫びを上げて突進してくる。


 ストライクは使えない。二つのスキルを同時に使えるとは限らない。

 俺は振り下ろされた右腕をなんとか左に跳んでかわし、振り下ろされた腕目掛けて拳を叩きつけた。


「グオ!?」


 グリズリーラビットがよろめいて仰向けに倒れる。

 倒れた!?

 まるで先程の俺の様に、眩暈でも起こしたかのような倒れ方だ。


「やっぱり、さっきの現象はスキルによるものか!」


 俺はその隙に吸収を行い、もう一度ショック・アタックを唱える。

 体がだるい。エーテルが減ってきているのか。


 ショック・アタックを纏った状態で吸収を行えるといいんだが。


 吸収を唱えてみたが駄目だった。ストライクも発動しない。

 断定はできないが吸収も攻撃スキル扱いで、発動できる攻撃スキルは一度に一つのみって事か。

 こちらが考えを纏めている間に、グリズリーラビットが勢い良く飛び起きる。


「ちくしょう、まだまだ元気じゃねえか」


 だがしばらく動きを止めることはできる。

 もはや俺の望みはショック・アタックで相手が倒れている間にエーテルを吸収し尽くすしかない。


 起き上がったグリズリーラビットも四肢にショック・アタックを纏う。


 あれは受けたら駄目だ。

 俺は自ら攻める。攻撃のリーチが相手の方に分がある以上、攻めるしかない。

 勝機が生まれて心の方にも多少ではあるが余裕が出来た。


 横から振り払われた一撃を屈んで避け、光っていない肘から上の二の腕部分にアッパーを打ち込む。

 先程の再現のように、グリズリーラビットが仰向けに倒れる。


 吸収を行いつつ、ショック・アタックでショック・アタックを纏ったグリズリーラビットの腕を軽く蹴る。

 するとグリズリーラビットの腕から銀色の光りが消え、俺の四肢からも力が消える。

 一応接触で消えることは消えるんだな。


 確認したいことは終えたので、すぐに相手の攻撃範囲ギリギリまで後方に跳んで退避し、再度吸収を行う。


 吸収は相手のエーテルが俺の中に吸収されればすぐにもう一度発動できる。

 だから離れすぎず、可能な限り対象との距離は近い方がいい。

 

 吸収を二回唱えたところでグリズリーラビットが起き上がる。


 俺はストライクを唱えてグリズリーラビットに肉薄する。

 グリズリーラビットがその場で大きく跳躍して俺を避ける

 俺は落下地点を見定め、落下時にグリズリーラビットの背後が取れる位置へとストライクで移動する。


 こっこおぉ!

 グリズリーラビットが着地した瞬間の轟音と衝撃に驚きつつ、なけなしの勇気を振り絞って後ろからショック・アタックを背中に叩きつける。


 グリズリーラビットが前のめりに倒れこむ。そしてその隙にエーテルを三回吸収する。


 命がけの作業を続ける。

 相手の攻撃を食らわないように注視し、ストライクとショック・アタックを使い分けて倒し、吸収を行う。


 吸収回数が二桁に入ってしばらくすると、相手に変化が出始めた。

 動きが散漫になり、呼吸も荒く苦しそうなものに変化した。


 だがそれは俺も同じだ。吸収を連発しているとはいえ、あくまで回復されるのはエーテルのみ。

 

 体力がもう底を突きそうだ……。


 装備で覆われていない部分のあちこちに切り傷があり、装備内には痣ができているだろう。

 ガントレットにも罅割れがおき始めた。


「あと少し、あと少し!」


 口に出して自分を鼓舞する。

 動きの遅くなったグリズリーラビットから、ストライクで距離を取りつつ吸収を行う。


 ストライクを使うのは吸収を行うためだ。

 グリズリーラビットがまた大きく跳躍する。だが万全な状態よりも高さは無い。


 チャンス!

 俺はストライクで背後を取り、すぐにショック・アタックで着地したグリズリーラビットを蹴る。

 グリズリーラビットがまた前のめりに倒れる。

 そしてその隙に二回吸収を行って距離を取る。


「……?」


 しかしグリズリーラビットは起き上がらない。


 なんだ? 罠か?


 グリズリーラビットの表情が見える方へと、警戒しながら移動する。

 グリズリーラビットは表情を歪めて低く唸っていた。


 本当に起き上がれないのか?

 俺は吸収を行う。

 グリズリーラビットの表情が更に険しくなったような気がする。


 エーテル不足。

 ジーナが言うには最終的には気絶するとのことだが、つまり今のあいつは気絶間近って事か?


 いい機会だ。悪いが実験に付き合って貰おう。

 俺はグリズリーラビットに吸収を行う。しかし発動したのは一回だけだった。


 もう一つ、ついでに確認しておこう。

 ショック・アタックを発動させた後に、やめると念じてみる。

 すると四肢から力が消える。


 どうやらショック・アタックは任意で発動を止められるスキルみたいだな。

 後は発動した段階でエーテルが消費されたかどうかだが、それはまた今度にしよう。


 俺はストライクを使ってエーテルを確実に消費して吸収を行う。しかし吸収は発動しなかった。 

 つまり吸収の限界って事か? 


 グリズリーラビットはまだ意識がある。ただ、もはやまともに立つ事も出来ないほどの苦悶の表情を浮かべていた。


 俺は無言でグリズリーラビットに近付く。

 一応攻撃されないように背後に回る。


「ショック・アタック」


 スキルを声に出してみる。

 ストライク同様、ショック・アタックも声出しで発動できるようだ。

 スキルは全て声にだしても発動できるのは確定っぽいな。



「ふっ!!」


 俺はショック・アタックを纏った拳でグリズリーラビットを思いっきり殴る。

 鉄のように硬かったグリズリーラビットの肉体に、俺の拳がめり込む。

 こうまで違うのか。エーテルの強度が違うだけで。


「グウウ」


 グリズリーラビットが低く呻く。誰がどう見ても完全な弱いもの苛めである。

 すまん。手早く終わらす。


 俺は早く終わらせられるように思いっきり殴る。

 数発目にしてようやく、グリズリーラビットの体が黄色い粒子となって消滅してくれた。 

 ボスの場合黄色なのか……まあとにかく。 


「はぁ、良かった。勝ったぁ」


 安堵の溜息をついて座り込む。


 危なかった。吸収が無ければ、グリズリーラビットのスキルが相手を麻痺させるスキルでなかったら、そしてそれをラーニングできていなかったら、俺は死んでいた。


 生還の喜びを噛み締めつつ、ドロップアイテムの事を思い出して視線を前に移す。


「ん? なんだあれは?」


 俺は四つん這いのままそれに近付く。正直立って歩くのもキツイ。


「白い毛の飾りがついたペンダント?」



 名前:白兎の首飾り

 効果:装備者にレアドロップ率上昇(低)の効果を与える



 おっとこれは良い物だ。

 やっぱり勝手に発動してくれる解析は便利だな。

 通常のレアのドロップ率がいくらかは分からないが、無いよりはましだろう。


 俺は白兎の首飾りを手に取る。

 あ、これラビットフットだ。

 幸運を授けると言われる兎の足の飾りだ。

 なるほど。だからレアドロップ上昇効果なのか。


 俺が首飾りを首に下げると、紐の長さが丁度いい長さになる。

 外す時は後ろの留め金を外せばいいと。

 これも一応装備品扱いって事か、多分カテゴリーはアクセサリーってとこだろう。


 ついでに落ちていた黄色の魔石を拾う。

 黄色、黄色かぁ。道中の敵は赤い魔石を残して赤い粒子になって消滅した。

 もしかしたら消滅する色と石の色は関係があるのかもしれないな。


「ま、取り敢えずは千MSもゲットできたんだ。今はそれでいいさ」


 難しいことは後で考えよう。もはや動くのがやっとで頭が上手く回らない。

 俺は立ち上がって麻袋のところまで行く。


 麻袋の中を確認する。砂時計は壊れていなかった。

 良かった。弁償せずに済みそうだ。


「で、戻るためには一度第二階層に行く必要があるらしいけど……あれか?」


 部屋の中央にいつの間にか魔方陣が浮かび上がっていた。

 俺がその魔方陣に乗ると、視界が真っ白になって気付いたら知らない小部屋に立っていた。


 うわ、もしかしてワープか今の。

 到着した部屋を見渡す。

 足元には大きな魔方陣が描かれている。

 部屋の広さは結構ある。二百人以上は余裕で入れそうだ。

 一階層の入り口やボス部屋に比べれば狭いが、それでも広いよな。


 さて、第二階層についたら戻れると言っていたが、戻りたいとか思えば、お、当たりっぽい。


 俺が魔方陣に立って戻りたいと念じると、頭の中に入り口の景色がよぎる。

 試しに戻らないと念じると頭から入り口の景色が消える。

 便利な魔法だな。

 もう一度魔方陣を発動させ、今度は戻りたいと念じる。 

 先程と同じ様に視界全てが白くなり、気付いたら入り口のホールの中央にあった魔方陣に立っていた。


 ふむ。ついでに調べておこうか。

 俺は魔方陣に立ったまま移動したいと念じる。

 すると頭の中に第二階層の文字が浮かび上がる。

 やっぱりこの魔方陣は転移するためのものか。

 俺は選択を拒否して壁の魔方陣へと向かう。


 ああようやく外だ。

 改めて生還の喜びを噛み締めつつ、俺が魔方陣を潜った。

 

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