魔石灯
「よし!やるぞー!」
起きて早々、俺は昨日もらった魔石灯を作業台の上に置き、ライムが起きるまで自分で調べることにした。
昨日、ライムが魔石に魔力を込めてくれたらしい。それでも光が弱くなったり、点滅したりする。でも魔石自体には何の問題もない。つまり、どこが悪いのか、なぜそうなるのかが分からない状況だ。
「とりあえず状態確認からだな」
魔石灯を手に取り、外側から状態を確認していく。
金属の枠に目立った歪みはなく、ガラスにもひびは入っていない。
次に中に入っている魔石を取り出し、状態を確認する。
魔石の不良品の多くは核にヒビが入っているから、今回もその類かと思ったが、傷ひとつない綺麗な魔石だった。
「やっぱ内部の構造に問題があるのか…」
そんなことを口にした後、俺は工具を手に取り、魔石灯を慎重に分解し始めた。
部品を一つずつ外し、順番が分からなくならないように並べていく。
こういう作業は嫌いじゃない。むしろ分からないことがどんどん分かっていくから夢中になってしまう。
そうしているうちに、魔石灯の中心に長い棒状の金属部品を見つけた。
今までかなりの数の魔道具を見てきたが、こんな部品は見たことがなかった。
「ライムが起きてれば色々わかるのになぁ〜」
そんなことを呟いた途端、後ろから小馬鹿にしたような声がした。
「もう俺に頼るのか?意外と早かったな笑」
「おはようライム。早速だけどこれ何なのかわかるか?」
「おっ、これ魔石灯の部品だよな? …たぶんだが、魔石から魔力を伝えるための部品だな。こいつを通して、魔力を光に変えてるんじゃねぇか?」
「なるほど…じゃあこれに問題があって魔石灯が壊れたってことか?」
「そこまでわかるわけねぇだろ‼︎そこはお前の専門分野だろ‼︎」
「そうだな。とりあえず元に戻すから、魔石から魔力がちゃんと流れているか確認できるか?」
「やったことないからわからねぇけど、多分できるぜ」
「わかった。ちょっと待っててな」
そうして俺はすぐに魔石灯を組み立て直した。
「おーい!ライムー!終わったぞ〜!」
「よしそれじゃあ確認するからちょっと待ってなー…」
そうしてライムは集中し始めた。その姿は何か…『スゴ味』があった!
そうしてしばらくしたらライムがため息をついた後俺に話しかけてきた。
「魔力が途切れ途切れになったり、魔力の流れが悪くなったりしてるな」
やっぱりなと思っていたら続けてライムが話してきた。
「いや、あの部品自体には問題なく魔力が流れてるぜ。ただ、その部品の近くで魔力の流れが不安定になってるんだ」
「え!?」
意外だった。俺はてっきりあの部品に問題があると思い込んでいた。
「じゃあそこまでは普通に魔力が流れていたのか?」
「そう言ってるだろ!動揺しすぎだ!でも魔力が不安定になるのはその部品の近くだったぜ」
「そうなのか?」
「あぁ。多分だが、魔力を光に変える部分とあの金属部品の接続が悪いんじゃねぇか?」
「なるほど……接続部分か」
俺は魔石灯を見つめながら、頭の中で構造を整理した。魔力を伝える部品そのものに問題がないのなら、考えられる原因は限られてくる。
「よし、もう一度分解して、接続部分を詳しく調べてみるか」
「終わったら呼べよー」
ライムはそう言い残すと、飛びながら自分の部屋へ戻っていった。
途中まではさっきと同じだったので案外すぐに終わった。さらに分解を続けて、全ての部品を取り外した。
「ふぅ、とりあえずこれで全部かな。」
そうして位置的に接続部分を見たが、見たことのない金属でできていた。
「なんだこれ?少なくとも前の世界でも見たことないな。とりあえず『検索』で調べられねぇかな?」
そうして検索で調べたが俺の調べ方が悪いのかエラー表示で終わってしまった。
「まぁそもそも何も分からない状態でするものじゃないな」
そうして俺はライムを呼んだ。
「んで、この金属が何かわからんから俺を呼んだわけか」
「そうなんだよ。お前見たことない?こういうの」
「この金属は俺も見たことないからなんもわからねぇな」
「なんだよ〜いつも偉そうなこと言ってるのに!」
「仕方ないだろ!本当に知らないんだから」
「悪かったって!冗談ですやん!」
「まぁそれはいいとして、なんか随分と摩耗してないか?その部品」
「あっ!ほんとだ!」
金属の種類に気を取られて気づかなかったけど確かに摩耗していた。
「なるほど…それじゃあそこを直してみるか…」
「俺もう戻っていいか?」
「あぁ、直し終わったらまた呼ぶな」
「了解〜」
「あと、ありがとな」
「どうした!?俺に感謝するなんてお前らしくねぇな」
「いやちゃんと感謝してる…そういえばしたことなかったな…ごめん…」
「哀れみの目を向けるな‼︎」
そうしてライムは部屋へ戻り俺は作業に戻った。
今回は肉盛り溶接(同じ金属を使って溶接すること)が使えないから面倒だな…。とりあえず魔力通す金属がないか調べるか…
そうしてしばらく検索で調べた結果、いくつか魔力を通す金属はあったがどれもこの世界にしかない金属同士の合金でしか作れないことがわかり、そのうちのいくつかはこの店にある素材で作れたので、とりあえず一つ目の魔力を通す金属を製作した。
しかしあの合金と上手く噛み合わず魔力が散ってしまった。
「うーん、魔力が途中で散っていくな……。金属自体は魔力を通すはずなのに、何が違うんだ?」
俺は合金の配合を見直し、もう一度素材を選び直した。
そうして2、3つほど合金を作り、なんとかあの金属に合う合金を見つけることができた。
その後、魔石灯をもとに戻し、ライムを呼んだ。
「おっ!ちゃんと魔力通ってるぜ」
その直後、魔石灯が淡い光を放った。光は途切れることなく、安定して周囲を照らしている。
「よっしゃぁぁ!!」
嬉しくて思わず声を上げてしまった。
そうして魔石灯を直したことをベルさんに報告した。
「ありがとうございます!」
「いえいえ!それが仕事ですので!そして料金の方ですが5000カリになります」
「え!?そんなの安すぎますよ!そんなんじゃたりません!10万カリくらい持ってってください!」
「いえいえ!こんな大金受け取れません!」
「こんな大金いいのか!?なぁ貰っちゃおうぜ!」
「お前さぁ。こういうのは遠慮するもんなの!」
小声で俺がそう呟くとベルさんは
「いえいえ!そちらのスライムさんの言う通りですよ!これは料金とは別の、私の気持ちですので受け取ってください!」
「それでも受け取れませんよ!!」
その後もそんな会話が続き、結局10万をもらうことにした。
「いやー、私ももう冒険者をそろそろ引退するので、魔力を使うのも控えようと思っていたんです。よければ、その魔石灯も差し上げますよ」
「いやいや、修理代に加えて10万カリまでいただいたのに、魔石灯まで受け取るわけにはいきませんよ!」
「いいんですよ。私は冒険者をやめて、魔力も使わなくなるので使う機会も減るでしょうし、直してくれたあなたに使ってもらえるなら、私も嬉しいですから」
「……そこまで言っていただけるなら、お言葉に甘えて」
その後気になった事をライムに小声で話した
「え、冒険者やめたら魔力も使わなくなるもんなの?」
「まぁそうだな。基本的に魔道具を使う場合を除けば魔力を使うのは基本的に魔法を使うくらいだからな。しかも魔力は普通は自然回復するもんじゃねぇし、いざという時に残しておくんだよ」
「それ、魔法使いとかバンバン魔力使ってるけど大丈夫なの?」
「それは魔法使いや僧侶はサブスキルで『自動魔力回復』を習得してるやつが多いからな」
そんなのあるんだ…結構冒険の方は知らないこといっぱいあるんだな
そうして俺は魔石灯を貰い家に帰った。
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