2つの確執
第1条
他者を暴行、虐待、監禁などの行為によって死にいたらしむ者あれば、市民階級以上の町民が1度ずつ樫の木の棒で罪人を殴り、これを罰する。
第2条
他者を2人殺害せしめた者は、市中にて衆人の監視のもと股裂の刑に処する。
第3条
他者を3人以上殺害せしめた者は、死刑の上で、如何なる弔いも施さず。もしそれが聖職者であれば守護聖人の名に置いて、教会から除名する。
——ハリサイの教令集、第173章より。
アルとの戦いを終え、エルノー村に戻った俺達を待っていたのは新たな任務だった。
隠者達と40代目聖女、レイブン・クシラスを殺したイゴールの討伐。
「……」
「一体、どういう事なのですか! イゴールがお母様や叔母様を殺した!? そんな事があるわけ無いでしょう!」
「いえ、こちらも王都から伝わった内容をそのまま説明しただけなので……す、すみません」
「ヘス。ちょっと落ち着いて、とにかくイゴールに会いに行こう。きっと何か事情があるのよ」
珍しく激昂するヘスをスカーレットが宥めた。
「あのう、勇者様。任務、受けて頂けますか?」
「……取り敢えず追いはする。ただ、討伐は確約出来かねる。それで良ければ、だが」
「はい。とにかく上から早く報告しろって急かされてるので、それで構いません」
イゴールの奴、ついに掴んだのか、魔王を倒す為の糸口を。だとすれば、アイツは今、魔王城へと続く街道を南下している筈。俺達と合流する為に。
「あの、イゴール様の行き先に心当たりはありますか? 私達では全く分からなくて」
受付嬢は申し訳なさそうに項垂れた。
「構わない……行くぞ。ヘス、スカーレット」
俺達は宿から荷物を取ると、早速街道を北上した。
何処まで進む事になるか分からないが、この道の先にアイツは居る。俺は確信と共に進み続けた。
それから、7日ほど掛けて俺達はマインツの街まで戻って来ていた。
俺達は早速、民兵協会に顔を出す。
待合の広間では、もっぱらイゴールの話題で持ちきりだった。少し前までは勇者パーティの噂に執心だったくせに、勝手な奴らだ。
「勇者様。いらしてたんですか」
「ああ、イゴールの件で目撃情報とか無かったか?」
「ええ、ありました。昨日と今日で数件、ただ街中での戦闘は避けて欲しいんです。住人の混乱を招いてしまうので」
俺は無言で頷く。
「よし、二手に分かれて探すか。ヘスは俺と来い。スカーレットは1人で頼む」
ヘス自身には戦闘能力は皆無だ。万が一イゴールに襲われた場合の事を考えてそう割り振った。
2人は特に異論を挟まずに受け入れる。
民兵協会を出て、俺達は街の北部へ、スカーレットは街の南部へ向かった。
俺達は宿屋や酒場で聞き込みをしたり往来を見張ったりしながら、あっという間に正午を迎えた。
「はあ、はあ、少し、疲れましたね。レオン」
マインツまでの強行軍が祟ったのか、ヘスは息を切らし膝に手をついた。
「そうだな。何処か店に入るか」
俺は入れそうな店を求めて往来を見回す。
「あの、道に迷ったんですか?」
すると、1人の少女が俺に話しかけてきた。
「いや、そういう訳じゃない。気遣いには礼を言うが、俺たちの事は気にしないでくれ」
「そうですか。分かりました貴方達のことは気にしません。でも、貴方達はどうでしょうか」
俺は胡乱げに片眉を上げた。
新興宗教の勧誘か?
「あ、挨拶が遅れましたね。初めまして。私はアミリア、アミリア・シェカと言います」
俺はヘスと顔を見合わせた。アミリア。聞き覚えのある名前だ、確かイゴールと同行していたとか言う。
「俺はレオン、分かっていると思うが勇者だ。そして、こっちが……」
「そ、そんな事より! あの、本当にイゴールはお母様と叔母様を殺したんですか!?」
俺の自己紹介を遮ってヘスがアミリアに詰め寄った。
「ああ。お前の母上を殺したのはイゴールでは無いが、既に亡くなっている。そして、レイブン・クシラスも」
少女は突然、目を細めたかと思うと老獪な口調で淡々と話した。
「……う、嘘」
ヘスはそれを聞くなり走り出す。俺はその背を追おうとしたが、アミリアが俺を呼び止めた。
「明日、正午。モロの洞穴で待っている。イゴールと共に」
俺はグッと口を固く閉じ軽く顎を引いて、改めてヘスを追いかけた。
ヘスは大通りを逸れた路地裏の1本で膝を抱えて座り込んでいた。
「ヘス、平気か?」
「……レオン、貴方はどうして平然としていられるのですか? 貴方だってお母様を失ったのですよ?」
「俺は、小さい頃から勇者たれ、平和に殉じろと母に言い聞かされて来たからな。それに母をやったのがイゴールなら、必ず何か理由がある」
奴はイタズラに人を殺す様な人間では無い。それに、奴は奴なりに母を慕っていた様に思う。
「そんなの、理由があるからって私は納得出来ません!」
「納得しろとは言ってない。ただ俺達は勇者パーティだ。そして、勇者パーティの使命とは何だ?」
「それは、魔王を倒す事……」
俺は首を横に振った。
「俺達の使命は平和を手に入れる事だ。それが叶うまで、俺達はどんな痛みも喪失も抱えて戦わなきゃならない」
「スカちゃんは私の事をイカれた女って言ったりします。でも、本当に狂ってるのはレオンとイゴールですよ。一体どうして……そこまで強くあれるのですか……」
ヘスは嗚咽を漏らしながら、両膝の間に銀の頭を潜り込ませた。
「別に、俺が強い訳じゃ無い。ただ気持ちを細かく分けて見ればいい。大切な誰かが死んだ時、死んだ相手が可哀想と思うのか、単に自分が寂しいだけなのか。ヘスはヘスの母上が憐れだったと思うのか?」
「……いえ、そんな風には」
「なら……自分が寂しいってだけなら。何とか乗り越えられる。そんな気がしてくる」
俺は凝り固まった表情筋に力を込めて、口角を何とか持ち上げた。
隠者の里を滅ぼしたのがイゴールなら、必ず何か理由がある。平和の為の、理由のある死なら、母は最後まで矜持を貫いたと言う事だ。それを憐れむ理由が何処にある。
「……いつも、そんな事を考えて貴方は里にいたのですか?」
「父が死んだ時に母が教えてくれたんだ」
「……流石は先代の聖女ですね……タアッ!」
ヘスはいきなり立ち上がると、ピシャリと自分の頬を叩いた。白い頬がほんのりと赤く染まる。
「お、おい……?」
「レオン、私、やっぱり貴方達のように強くはなれません。でも、戦います。魔王と、イゴールと……現実と」
「ああ、頼りにしてる」
俺は軽く笑ってヘスに向かって拳を差し出す。ヘスもまた小さな拳を作り、俺のものと突き合わせた。
その後、スカーレットと合流し、アミリアから聞いた話を共有した。
翌日、俺達は言われた通り正午にモロの洞穴に到着した。
「イゴール、いるのか?」
洞穴の奥に声を張り上げると、2つの人影が現れた。俺達は反射的に武器を構える。
「久しぶりだな、レオン」
「ああ」
1ヶ月ぶりに見るイゴールは、やつれて見えた。人前に姿を晒せない影響で、碌に食事を摂っていないのかもしれない。
「それで、こんなジメジメした穴倉に人を呼びつけたんだ。何か良い話の1つや2つはあるんだろ?」
俺はわざと刺々しい口調で尋ねた。
「いいや? 1つもねえよ。そんな事よりお前の聖剣と俺の剣、交換してくれ」
「ちょ、ちょっとイゴール」
困惑と疑念を声に滲ませて、スカーレットが口を挟む。
「どう言うつもりだ? キサマが聖剣を手に入れたとしても何の意味もないぞ?」
「そうでもねえのさ」
イゴールは薄く笑う。
「叔母さんに直接聞いたんだ。どうやら、俺こそが本当の勇者だったらしい」
スカーレットとヘスが息を詰めて成り行きを見守っている。
俺は聖剣を佩いた剣帯を抑えながら1歩、イゴールとの距離を縮めた。
「お前らだって、叔母さんの声明は耳に入ってんだろ? ま、ちょっとした不調で人を見限る様なクズは勇者の器じゃなかったってこった」
「……100歩譲って俺が勇者じゃ無いと言うのは認めよう。しかし、キサマが勇者とは到底信じられん。どうしてもこれが欲しいなら実力を見せて貰おうか」
イゴールは勇者への憧れを失った。この茶番劇には何か意味がある。だとすれば、ここは大人しく奴の言う通りにするべきだ。しかし、そんな当たり前の論理よりも俺には大切な事があった。
聖剣は俺を選んではいない。その疑念は俺の中で半ば確信になりつつあった。であれば、俺は聖剣に代わる何かを手に入れないといけない。魔王に勝つ為に。
「良いぜ」
イゴールは腰の剣帯を取り外し地面に置いた。
「何も、殺し合いがしたい訳じゃ無いんだろ? なら、武器はいらねえ。この前殴り足りなかった分まで、やってやるよ」
俺も聖剣を外し、地面に置く。
空気が一気に張り詰める。だが、俺は息苦しさを感じるどころか、どこか、胸が空いた様な気がした。
俺はイゴールを真正面から睨みつけた。
イゴールから発される気配は明らかに以前より強まっている。
加えて奴の自信満々の態度から察するに、既に呪いは解いたらしい。
「俺は、キサマが呪いを受け、加護を失った時安心していた。常に俺の一歩先を行くキサマが、目障りだった。不快だった」
「ああ、知ってる」
「……」
俺は言葉の代わりにイゴールに肉薄し、貫く様な拳を返す。
奴は俺の拳を軽く受け流し、反対に俺の顎に肘鉄を喰らわせた。
「ガッ!」
視界が揺れた。口の中を切り、後ろに2、3歩よろめく。それから、イゴールは俺の足を刈り、無防備な腹に拳を叩き込んだ。
「セェェイッ!」
「ガハッ」
俺は地面を転がり、衝撃を逃す。口の中いっぱいに鉄の味が広がった。
「相変わらず、すばしっこい野郎だ」
挑発を無視して、再び距離を詰める。
殴ると見せかけて俺はイゴールの背後に回り込んだ。
「っ——!」
続けてイゴールの腰に手を回し抱え上げ、岩壁を足掛かりにして飛び上がる。空中で蜻蛉返りして、奴を頭から地面に叩きつけた。
イゴールは地面に両手をつき、バネの要領で衝撃を逃す。が、動きが止まった一瞬、俺は奴の顔を蹴り付けた。
イゴールは地面と水平に錐揉みしながら下生えの中に吹っ飛んでいった。
「分かったか! 加護があろうと、今の俺はキサマよりも強い。最早、俺にとってキサマは路傍の石くれに過ぎない」
俺は改めてイゴールを嘲笑った。
「よく言うぜ。だったら何でノコノコとここに来た? 俺とケリを付けたかったからだろ?」
「違う。真実を確かめる為だ。それさえ済めばキサマに用はない」
もう、俺の中から消えてくれ。
俺は心の中で願った。
今度はイゴールが下生えを蹴り付けて、疾風の様に俺との間合いを駆け抜ける。勢いそのままの上段の蹴りを躱す。だが、奴は器用に体を回転させ、身を屈めた俺に逆の足で蹴りを放つ。
俺は腕を交差させ、衝撃を受け流す。
いい加減、俺の中から、いなくなってくれ。俺の願いとは反してイゴールは俺に喰らいつく。
「ハァッ!」「タァッ!」
拳には拳、蹴りには蹴り、頭突きには頭突き。
互角の応酬が続く。鈍い肉の音が森に響いた。
徐々に視界が狭まり、やがて、イゴールの拳や足以外の全てが消え去る。
このままじゃ、埒が明かない。
俺は勝負を掛けることにした。イゴールの中段の蹴りを間一髪躱し、奴の足の側面を転がる様に接近する。そして、肘をイゴールの脇腹に叩き込んだ。
「グッ」
悶絶し、僅かに下がったイゴールの両耳を掴んで奴の顔面に膝蹴りを喰らわせる。
俺の頭の中から、勇者の使命も、魔王の討伐も、任務も全てが消え。ただ、勝利への強い願望が残った。
ふらつくイゴールの腹に拳を何度も打ち込む。
「ハァッ!!」
そして、最後に一際強い一撃がイゴールの体を後ずらせた。
イゴールは未だに倒れないが、俺は奴に歩み寄る。
「もう、限界だろう? 今回も俺の勝ちだ」
俺がそう語りかけるとイゴールは口の端を吊り上げた。両腕が俺の後頭部をガッチリと掴む。そして、頭突き。
眼の奥で熱い何かが弾けた。
衝撃で脳が揺れる。
途切れそうになる意識の中で、俺は何度も繰り返し同じ命令を体に出し続けた。それが功を奏し、奴の突き上げられた拳に自分のそれを合わせる事で狙いを外す。
俺の顎を狙ったであろう拳が視界の端にある。
攻撃が失敗したと見るや、イゴールは俺の腕を振り払い、さっきのお返しという様に何度も拳を振るった。
俺は打撃の嵐に晒され、それでも奥歯を食いしばり必死に耐える。
「グッ、く、くそっ」
永遠にも思える時間が過ぎて、鈍い衝撃の連続が途絶えた。
——耐え切った。
俺がそう思えたのは僅かな間だけだった。息を乱し、勝ち誇るべく、笑みを浮かべようとした。しかし、寸前で膝が砕け、その場に跪く。
「はぁ、はぁ、俺の勝ちだ。聖剣は貰っていくぞ」
イゴールは地面から聖剣を拾い上げた。陽光に透かしてその刃を見つめる。
「2人とも傷を癒します。“アスクレピオスの杖”」
ヘスが光の杖を地面に突き刺した。それと同時に俺達の負った怪我は見る見るうちに治っていく。
俺は口の端から溢れた血を拭ってマインツへの帰路を取って返そうとした。
「なあ、お前これからどうすんだ?」
イゴールが俺を呼び止めた。
「無論、魔王の討伐に行く」
「そうか。でも、暫くはマインツに居ろよ。それと、聖剣の代わりにこれをやるよ」
そう言ってイゴールが何かを投げた。放物線を描いてフワリと飛んできたそれは、俺の手にすっぽり収まる。
これは、イゴールの使っていた……。
「俺の剣だ。そうそう、グリップの革紐がボロくなって来てるから、取り替えといた方が良いぜ」
「ふん! 知った事か」
俺はそう吐き捨てて街に戻った。
“暫くはマインツに居ろよ”か。ここで何かやらかすつもりか……。
俺達はマインツの宿に戻り、それぞれの部屋で体を休めることにした。
ベッドに体を投げ出すと、心地の良い疲労感が全身にのしかかった。が、直ぐに手持ち無沙汰になり、俺は気紛れにイゴールの剣を手に取る。
そう言えばイゴールの奴が革紐がどうとか言ってたな。俺は剣の柄を爪で引っ掻く。すると簡単に紐が剥がれた。
「はあ……どうして俺がアイツの剣なんかを……」
剣を鞘から引き抜くと、柄とは裏腹に刀身は鋭利な輝きを放っている。
刀身はしっかり手入れされてるのに、どうして柄だけ……? まさか……!
俺は足元に落とした革紐を拾い、裏返した。すると、ぼやけた文字で何か書かれている。間違いない。イゴールの字だ。
——レオン。
私は貴方に勇者たれと厳しく育てて来ました。私は、私達の勝手な業を背負わせてしまう事が心苦しかったのです。
だから、せめて過酷な旅を生き残れる様にと、そうして来ました。
最後にその事を謝りたかった。
貴方が幼い頃、山桃を踏み潰した事。貴方の優しさを否定した事。本当にごめんなさい。
ただ、これだけは信じて欲しいのです。私は貴方が健やかに、幸せに暮らせる事を望んでいます。そして、どうか貴方が魔王に打ち勝てる様にとも。
さようなら。レオン。私の愛しい子。
字こそイゴールのものだったが、丁寧な筆致は明らかに母のそれだった。
今生の別れに息子に宛てる文としては、余りにも簡潔だ。しかし、不思議と母らしいと言う気持ちしか湧いてこなかった。
イゴールの奴、これを読ませる為に、革紐だけ敢えて変えなかったのか。
革紐には母の遺言以外にもう1つ文章が並んでいる。こちらはどうやらヘス宛らしい。
俺は隣室に行き、彼女に革紐を渡して自室に戻る。部屋の壁が薄いのか、微かに嗚咽が聞こえて来た。
それから、日が暮れるまで俺は眠った。
目覚めたのは盛大な爆発音の為だった。
どうやら始まったらしい。
「ヘス、スカーレット、行くぞ!」
俺が部屋を出ると、既に2人は俺を待ち受けていた。宿屋を出て、マインツの出口に向かうと民兵協会の受付嬢が遠巻きに様子を眺めている。
俺達がその視線を追うと、暗い空に巨大な火の龍が対空していた。
「あ、勇者様! あの……」
「分かってる、様子を見てくるから残りのミリシア達には市民の避難を頼む」
「はい!」
あの方向は、まさにイゴール達がいたモロの洞穴の方角だ。アミリアと言う少女があれを出しているのか?
答えを求める様に背後のスカーレットに視線をやると、女は表情を固くしていた。
俺達がモロの洞穴がある山に入ると、対空していた火の龍は長い首を前に突き出す。
前傾し空気を含む様に翼を膨らませて、たった1度羽ばたいた。それだけで、圧倒的な風圧が木々を薙ぎ倒し、世界に闇が戻る。
暫くの静寂の後、遥か遠くで土煙が膨れ上がり、火の柱が天へと伸びた。
「凄い……何て火力なの」
「あれは魔王城の方角か……」
スカーレットの呟きを聞きつつも、爆発からは目を外さない。
遅れること数10秒、爆発音が届いた。そして、まるでそれに答える様に、夜に厳しい声が響く。
「無念だ。ジグムントもアルも勇者パーティに討たれ、陛下の足元が揺らいでいる時に、よりによって我の次に古参の貴様が裏切るとはな、小娘ぇ……」
次に夜空に迸ったのは火ではなく、雷。闇を引き裂いて雷を纏った巨鳥が姿を現した。
「あれは、雷鳥?」
「ああ、だが、なんて大きさだ……。一体何年生きればあれ程までになる……?」
ヘスがボソッと呟いた。俺は同意しつつも、遥か遠くで羽撃く雷鳥に手をかざす。
「確かに……不甲斐ない。200年もの間魔王の暴虐を許してしまった……」
答えるのはイゴールと一緒にいたあの少女。
「でも、だからこそ私は過ちを正す! 来い、炎錫レーヴァテイン!」
「裏切り者は須く粛清するのみ。魔王様が1の忠臣、アトラスが、今宵こそ引導を渡してくれるわ!! 来たれ野道具! 雷鎚ミョルニル!」
アトラスは気紛れに空を旋回すると武器の銘を呼ばわる。稲妻が降り注ぎ、その光線を巨鳥の鉤爪が鷲掴みにした。
掴まれた雷光は鉄鎚に変形し、相対する少女の炎に照らされて光沢を見せる。
常軌を逸した戦闘の火蓋が、今、切られた。




