13
次の日のシフトは二十一時まで。
帰宅すると、家には母しかいない。
「あのさ」
自室に荷物を置き、コートを脱いで一階に下りた響はさっそく尋ねてみた。
コタツに入り、テレビを見ている母親は響のほうを向く。
「なあに、響。どうしたの」
「蜜美は今日も塾なのか?」
母は首を横に振った。
「塾は火曜と木曜だけよ。今日は違うわ」
意外にも少ない。
もっと連日のように塾ばかり行っているものだと、響は思っていた。
「今夜もどこかで自習しているんじゃないかしら。蜜美ちゃん」
「どこかでって……、そんな、ほったらかしで良いのかよ!」
意識せずに語尾が強くなった。
そんな響に対し、驚いた顔をする母親。
目を丸くするとともに「あんたあれくらいの歳のとき、ぜんぜん家に帰ってこなかったじゃない!」と言われてしまった。
(う……!)
響は言葉に詰まる。
たしかにそうだ。その通りだ。
夜中に帰ってくるのはマシなほう。
しょっちゅう外泊していた。
友達の家だったり、一晩中遊んでいたり。
朝帰りし、徹夜明けの登校も多かった。
それどころか学校を休んで爆睡、というパターンもある。
「蜜美ちゃんは響よりしっかりしてるんだから、響に心配される筋合いないわよ」
「なんだよそれっ」
「男の子なんだし。未成年の分際で午前様のあんたとは大違い。ちゃんと毎日帰ってきて偉いわ」
響はぐうの音も出なかった。
「急に蜜美ちゃんの心配して、お母さんびっくり」
「そ、それは……」
確かに突然こんなことを言ってしまったので、不自然に思われるだろう。
しかし、気になったのだからしかたない。
「だ、だけどさ。蜜美、しょっちゅうファミレス行って、小遣い足りるのか?」
さらに続ける質問は、努めて普通の会話っぽく言ってみる。
「たまに食べて帰ってくることもあるけど、ほとんどドリンクバーしか頼まないんですって」
「へー、そうなんだ……」
「なんか変だわ、今日のあんた」
肩をすくめる母親の前「なんでもねえよ」と言い放ち、響は自室に帰る。
今日は店でサンドイッチを食べてきたのですでに空腹は満たされていた。




