焰《ほむら》
「起きたか?」
旦那が、寝ぼけ眼の私の頭を軽く撫でて言う。
「ん。ごめん」
二人で子供の名前を考えているうちにうとうとし始めて、そのまま旦那の肩にもたれて寝てしまったようだ。
昔見た夢の続きを見た。背も高くなって、顔立ちもりりしくなって、たくましい腕には……小さな赤ん坊を抱いていた。
確か彼の名は……
「ちょっと、辞書貸して」
昔、彼の名前のことを『火星』みたいだと思ったんだ。火星を辞書で引くと別名『焰星』となっていた。
「焰ってどう?」
『焰』の字を指し示して、夫に見せる。
なんか、アニメとかのキャラクターでいそうだけれど。
「かっこよくて、いいんじゃないか?」
「変じゃない?」
「いや。ただ……」
「ただ?」
「お前が、自分の息子の漢字を書けるかが心配だ」
昔から、どうも漢字は苦手だ。
まだ旦那と付き合っていた頃、旦那の誕生日プレゼントに手書きでメッセージカードを添えたところ、その……旦那の名前が間違ってて爆笑されたことがあった。
さっきだって、辞書のページを開けた途端、眠ってしまった。
「ぐっ。書けるわよ。……辞書を見れば」
名前の出所を聞いたら、旦那はすねるかもしれないので、黙っておこう。
「よし、今から息子の字を練習だ」
「え~。じゃあ、もっと別の字にしようよぉ~」
焰、文字化けしていませんように。
文字化けしてしまった方は『焔』で。
人名に使えるようです。




