世界のかけら
読みにくければ飛ばしてくださっても大丈夫です。
ガラスに“世界”が映っている。
森の中で起き上がる私。どこかのパーティーで所在なげに佇んでいる少女-姫。
私の手を差し伸べてくれるトリスさん。姫に手を差し伸べる王子。姫に暖かそうなレッグウォーマーを履かせてあげる侍女エリエール。
携帯を取り上げるマルス。もみ合いになって。王子は姫に本を読み聞かせてあげて。トリスさんの指が紙面をゆっくりなぞるのを眺めるロザリーさん。教室で本を読み上げる私。欠けてしまった物語。眠ってしまった姫の頭をなでてやる王子とその光景をほほえましく見守っている侍女。
わざとらしく視線をさ迷わせるレイス先生。レイス先生と対峙する幽霊、エリエール。森の中に狼に喉を噛まれるエリエール。エリエールの瞳に最後に映ったのは変わり果てた王子の姿で。
草むらでシロツメクサの指輪を兄に渡すローリエちゃん。白の指輪を交わす姫と村の青年。捨てられた白の指輪。贈られた赤の指輪。『すぐに枯れてしまう花よりもこのルビーのほうがあなたの指にはふさわしい』悲痛な願いは叶わず。『シロツメクサの指輪、渡してもいいですか』落ちる涙。背を向けるトリスさん。朝もやの中、ロザリーさんに白の指輪を贈る。
馬車のシャムローさん。姫とよく似た女性-アイリスさんが倒れたゾンビの指にアカツメクサの指輪を嵌めながら囁く。『シロツメクサは贈れないけれど……』。はじめて生まれた赤子を『シャムロー』と呼ぶアイリスさんと夫。村の入り口で倒れた青年の指に嵌められたアカツメクサの指輪を見て、神の奇跡に感謝するアイリスさん夫妻。
王城の床に広がる血。攫われたアイリスさん。国王と対峙するエリエールの仮面は消え落ち、恐ろしい死霊王子の姿が現れる。破壊された城壁。王城で赤子を託す侍女。
新王の手から返されたルビーの指輪を手の内で転がすトリスさん。
茨の城。春の庭のベンチでもそもそお昼ごはんを食べる二人。同じベンチで噂を聞く姫。暖炉の中に投げ捨てられた薔薇。燃えていく様をじっと眺める姫。墓石さえ置かれていない森の木の根元に薔薇を供えるレイス先生。
薔薇の庭で起こった惨劇。呪いは跳ね返り王子の身に降りかかる。
腐った自分の身体を見て森に逃げる王子。
赤の指輪を嵌める資格を失った姫は指輪をはずす。その光景を生垣の陰で見てしまうエリエール。
幼い王子は魔術書を手にとってしまう。王子のはじめての呼びかけに水の精が答える。
王子は暗い怒りの心のまま村の青年を生ける骨に変える。
湖で囁かれる言葉。『来年の春・・・庭の薔薇が一番美しく咲き誇る時期にあなたを迎えに行きます』『私、幸せになれるかしら』心の奥に押し込められた涙。姫の指の先にそっと口付ける王子。『薔薇の花が咲く前に、私を連れ出して』
トリスさんの手に変わらずあるアカツメクサの指輪。『アカツメクサというんだ。大切な人たちからもらった大切な指輪だから、こっそり魔法をかけてあるんだよ』
ジャガイモをそのまま鍋に投下するトリスさんを叱るロザリーさん。みんなで撮った携帯の画像。『いつって……。私の告白に適当にうなずいていたの?』 子供たちに授業を教える二人。
エリエールさんへ結婚の報告に行くトリスさんとロザリーさん。
『私のことなど放っておいて、さっさと天国に逝っているかもしれないがな』
二人を祝福するように柔らかな風が吹く。
エリエールさんが私たちに一瞬だけ私たちに姿を見せてくれる。
森に置き去りにされていた赤子を拾い上げるレイス先生。
レイス先生の養子になることを決意した少年にルビーの指輪を渡すトリスさん。
イリーナさんに過って雷をぶつけてしまうアレスさん。たった5分のそれもカーテン越しのお茶会。髪をばっさり切るイリーナさん。『これの方が怖くないですよね』アレスさんはイリーナさんの髪を切りそろえる。アレスさんは散々悩んだ末、店主に伝える。『レモン色のリボン』
成長したイリアがシロツメクサの冠を王妃に渡して、恥ずかしそうに母親の後ろに隠れる。それを見て微笑むアレスさん。
森の木々の隙間から子供たちに囲まれる姫を見つめるゾンビ。
冬の夜、老女の寝所に頭に雪を載せたゾンビが訪れる。
『私は、死神ではないよ。君は一人で夫のもとへ行くんだ』
姫はトリスさんを川に蹴落とす。
『シャムロック、私はもうしばらく彼と二人っきりでいたいの。だから、せっかく来てもらって悪いけれど、帰って』
姫の墓石。トリスさんはロザリーさんの額に口付けを落とす。
お互いの手を握りながら墓を後にするトリスさんとロザリーさん。一歩進むごとに年を重ね、降りしきる雪にまぎれて消えていく。
すべてのガラスが砕け散りーー
私は目覚めた。
時系列ばらばらです。
この世界の過去と現在と……ほんの少しだけ未来も混ざっています。




