#8.それぞれの接客
異世界カフェは有難い事に大盛況だった。
常にキャストの皆は忙しく動き回り、給仕や接客、洗い物など、
それぞれに役割分担をしながらも店を回していた。
ボク自身の接客は自分の事だから良いとして、問題は各キャストだ。
ボクはそんなに混みあっていない時にそれぞれの接客を見てみた。
(※お客様は複数名の3~50代男性を想定)
~幽霊・ハナの場合~
「あ、どうもこんばんわ~。幽霊のハナって言います。」
「え、幽霊なの!?どういう事?死んでからどれくらい?」
「もうかれこれ、30年くらいになりますねぇ。
あの頃は今よりも夏が涼しかったです。」
「マジで!?オレ32歳だから、丁度産まれた時くらいって事!?」
「えぇ、まぁそれからは幽霊として世界を見ていましたから、
情報のタイムラグがあったりはしないのですが。」
「へぇ~、じゃあこのAmazomで買ったお化け探知機、掛かるかな?」
「さぁ、どうでしょうね?
ただ、もし反応しなければそれは偽物と言う事でしょうねぇ。
私、本物の幽霊ですから。」
「へぇ~、あくまで強気な姿勢を崩さないね~。どれどれ、お!?」
━ピピピ―、ピピピー、ピピピ―━
「うぉ、すげー!!マジで探知されちゃったじゃん!!
えっ、って事はアレかな、オレん家の2階の奥の部屋、
探知されたんだけどさ、いるのかな?幽霊。」
「あ、じゃあちょっと視させて頂きますね。うーん・・・。
あ・・・居ますね、30名はいらっしゃいます。」
「えぇえ!?30名!?どういう事!?何で何で!?」
「どうやら、霊界のカラオケボックスになってるみたいです。
ですから毎晩そこに集まってカラオケ大会してますね。」
「げー、マジかよ!?場所代払えよな…どおりでうるさかったわけだ。」
「まぁ、別に害を加えようと言う感じでは無いですから、
もう少し静かにして下さいってお祈りしてお供えしてみては?」
「わー、スゲー、ガチの幽霊からの情報、ためになるぜー」
どうやらハナちゃんは、上手い事自分の特性を活かして
接客をしているようだ。
~九尾の狐・エリの場合~
「へぇ~、これ何、コスプレ?
尻尾動いてるじゃん、バイブ?ねぇコレバイブ?」
「・・・(怒)
お主、失礼な奴じゃのぅ。少々痛い目を見るか?」
「わー、すげーなり切ってるじゃん。
何々、九尾の狐コスプレ的な感じ?
やっべー、九尾の狐の尻尾にぐるぐる巻きにされてー!」
「ほぅ、それならばぐるぐる巻きにしてやろうぞ。
もっとも、命の保障は無いがな。」
そう言うと、エリ様は男性を尻尾でぐるぐる巻きにし持ち上げた。
「うぉ!?何コレ、どういうカラクリ!?」
まだ男性はエリ様がコスプレだと思っているようだ。
「ほぅ、どこまでも目の前の現実から逃れるか…。
ならば、このまま締め上げてやろう」
エリ様はそのまま尻尾を強く締め上げ始めた。
━ギリギリギリ…━
男性の身体に尻尾の筋肉が食い込み始める。
「ぐ...がぁ…ヤベ、何だコレ…おい、外せよ!
お前何なんだよ、妖怪か!?なぁ!!」
「ふん。だからそうじゃと言っておるじゃろうが。
ようやく認める気になったか?」
「んなモン、ガチでいるワケが…があぁぁぁ!!」
「愚か者め。本当に死んでしまうが良いのか?
こんなバカげた事で命を失うのは真の痴れ者じゃぞ?」
「あ”...あぁ、…わ、わかりました、認めます。
認めますから…許して下さい、ごめんなさいぃぃ…」
男性の泣きながら股間からは漏らしながらの謝罪により、
ようやく許されたようで尻尾の締め上げが緩められる。
男性はそのまま床にボタッと無様に叩きつけられた。
「クソ…、何なんだこの感情は…。嫌だった、悔しかったのに、
胸が高鳴りやがる…どうなってるんだ、オレの身体は。」
この後この男性はエリ様の大ファンとなり、ドMに開花してしまった。
ウチのコンカフェ最強の大妖怪エリ様はどうやっても最強だった。
~宇宙人・レイナの場合~
とぼけた風な宇宙人のレイナ。しかし彼女なりにも接客方法はあるようだ。
「えー、何その肌の色と全身タイツスーツ。何かエロくね?」
「エロくないなりよ。コレは宇宙服なのなりよ。
肌はレイナちゃんの星ではコレが普通の肌の色なのなりよ。」
「へぇ~、面白れぇな~、宇宙人設定なの?
だけど肌の色はファンデーションにしては綺麗過ぎるし…
え、マジで宇宙人なの?何か証拠とかある?」
「ウンコが緑色なりよ。」
「え?・・・ぎゃははははは!!!!
いやいや、それってオレも下痢気味の時そうなるから(笑)」
「しかも動くなりよ?ニョキニョキと。」
「え・・・?(ドン引き)」
「見るなりか?良かったら今から一緒にトイレ行くなりよ。」
男性は見たいような見たくないような様子で、
無理矢理トイレに一緒に連れられて行った。
数十秒後、トイレから「ぎゃあぁぁぁ!!」という声が聞こえた。
それから更に十数秒後、男性はげっそりした顔で出て来た。
「な、レイナちゃん言った通りだったなり?」
「いやまぁ、確かにそうなんだけど、何て言うかその、匂いが…。
まさに宇宙規模過ぎてもうオレ何も食えねぇ…。」
臭かったんだな…。そう思い、ボクもかける言葉が見つからなかった。
しかしどうやら、ボクの予想とは全く違う方向性で男性は食欲を失った。
一緒に居た仲間達が男性を慰める。
「おい、まぁそう落ち込むなよ。
それに宇宙人だか何だか知らんが、美少女のウンコ見れたんだろ?
ある意味では儲けものじゃないか。」
どうやら仲間達の一人はスカトロ愛好家のようだった。
男性がその言葉に否を唱える。
「いや、違うんだ。匂いが地球上のどの食べ物よりも食欲をそそり、
もうアレを嗅いだら地球上の食べ物が食べられねぇよ。」
何とレイナちゃんのうんこの匂いを嗅いだ男性はその素晴らしさゆえに
地球上のあらゆる食べ物の匂いが陳腐に思えてしまったのだった。
「おいおい、そんなに凄かったのかよ、だったらオレも…(ゴクリ)」
「もうダメなりよ?一人がちゃんと体験したんだから、後の人はダメなり」
「そんなぁ!オレ達だって嗅ぎてぇよ、嗅がせてくれよぉ~!!」
仲間が赤ん坊のように駄々をこねたが、断固拒否された。
あの一回はまさにサービスだったのだろう。
「レイナちゃん、何食ったらあんなウンコ出せるの?
オレ達俄然宇宙人に興味出ちゃったよ。色々と教えてくれ!」
彼女は彼女なりに、お客様達と異文化交流を図っているようだった。
~アンドロイド・アイの場合~
アイは人工的に作られた有機生命体型ヒューマノイドだ。
呼び方は詳しくは忘れたが、確かそんなだった気がする。
彼女は一通りの人間に関するデータを持ってはいるが、
まだその活用の方法がこなれていない時がある。
そのズレを楽しめるかどうかが、彼女と楽しく時間を過ごせるかどうかの
重要な分かれ目になるようだ。
「へぇ~、アンドロイドなの?
あ、確かに腕とか機械の部分が見えてるね。
おじさんはお尻にエネマグラ(快感用玩具)入れてるけど、
それだとアンドロイドって事にはならないのかな?」
「何言ってるの?それは単なるアナル弄りおじさんじゃん。
アンドロイドはそもそもが機械から出来てるんだよ。
構造からして違うのに…わからないの?」
「え、ちょ、アイちゃん~、おじさんジョークじゃん(笑)」
「ごめん、何が面白いのかわかんないや…。」
アイは時々、こうやってお客様の言葉が理解出来ずに
少し空気が読めない時があった。
それでも根気強くお客様、いや人間を理解しようとする姿勢は
彼女の魅力を高めるのに一役買っているようだった。
「ねぇ、そのエネマグラ、ここに出せる?」
「え?いやまぁ、取り出す事は出来るけどさすがに、
こんな場所でお尻から玩具を取り出して置いたら汚いし、
他の子達からもドン引きされちゃうでしょー。」
「いや、もう既に皆おじさんの話を聴いてるから大丈夫だよ。
おじさんが変態だって事は見た目からもわかるし。
さぁ、ココにティッシュ置いたから、出して。」
あくまで冷静に促すアイに、おじさんは根負けしてしまう。
「もう、仕方ないなぁ…。それじゃあ放り出すよ?
ん~~~~~~(ブリッ)」
すると、おじさんの尻穴から見るも不思議なアイテムが飛び出した。
~にゅるんっ~
「へぇ~、こんなの入れてたんだね。気持ち良いの?コレ。」
「あ、アヒヒ…。ま、まぁね、結構気持ち良い、…かも。」
おじさんは柄にも無く照れながら言った。キモかった。
「ふぅん。アイね、コレもっと気持ち良い形に加工出来るよ。
やったげようか?」
「え、本当に?だけど今だって十分に、良い所に当たってるよ?」
「いや、コレじゃあダメだよ。ちょっと見てて。」
アイは自らの片腕を取り外して、中から工具セットを出した。
そしてそれで尻用玩具を切削し始めた。
「ココをこうして、っと…。よし、完成!コレ入れて?」
「こんなちょっとの加工で変わるものなの?まぁ入れてみるよ。」
~にゅるんっ~
すると、入れた途端におじさんの瞳が星(☆)の形になった。
「な、何だコレは…!?気持ち良すぎる…。
ヤバい、今ココでもう、気持ち良くて漏らしてしまいそうだ…。」
ヤバい!とボクは思った。
だけど今からトイレに案内しても、もう手遅れなようだった。
その時、アイがテーブルの下からサッと尿瓶を取り出した。
「ハイ。コレにしたら良いよ。」
「おぉ、気が利くねぇ。それじゃあ出させて貰うよ。
ぐのぅおぉぉぉぉ~・・・・」
~ぶりゅりゅりゅりゅ・・・ブッチッパッ!!~
それはおぞましいモノだった。
アイはすぐに尿瓶を店の外に持って行った。
この動きと判断力の俊敏さはさすがアンドロイドだ。
「フゥー、最高だったよ。アイちゃん、やっぱりアンドロイドは良いね。
次もお願い出来るかな?」
「いや、キモいからもうこういうのは止めて欲しいな。」
ハッキリと言うものである。
しかし拒否された側のおじさんも「ハゥッ!」とM心を刺激され、
結果的にはお互いにWin-Win…の様相を呈していた。
アイは本当に不思議な存在だ。
そもそもあの尿瓶、一体誰が何の目的であそこに設置していたのだろうか。
~悪魔・ポンぬの場合~
ポンぬはS属性の悪魔であるが、エリ様とはまた違ったタイプのSだ。
どちらかと言えば姉御肌、懐はエリ様よりも断然深い所がある。
「へぇ~、ポンぬちゃんって悪魔なんだね~。
何だか怖いな、地獄の炎で焼かれたりしない?」
「それはアンタがどう生きたかによるかな。
だけどまぁ正直な所、ほとんどの人間なんて大体地獄行きだよ。
だって生き物殺して食うだろ?それに万引きもしてるはずだし。」
「いや、万引きはしない人もいるよ~」
「ふ~ん。でもお前、好きな子の体操服盗んだ事あるじゃん。」
「え”、何でそんな事わかるの!?
って言うか盗ってない、僕は盗ってないよ!?」
「アタシ悪魔だからさ、わかるんだよ人間の罪が。
アンタ小学3年生の時に隣のクラスのエミちゃんの体操服盗んで、
家帰ってそれ着ながらエミちゃんに鞭で叩かれる妄想したじゃん。」
男性は仲間達から
「え、お前そうだったの?」
「うわヤバ、ちょっと引くわ」
と言われ、信頼関係にヒビが入ってしまったようだった。
「でもさ、結局自分の汗の匂いで上書きされちゃって、
臭くなって捨てたよな?アタシの悪魔の力で今ここに、
あの時のエミちゃんの体操服を復元してやろうか?匂いもそのままで。
ただしこれを受け取ったらお前は確実に地獄行きだよ?」
男性は大変驚いた様子だった。悪魔の言葉に耳を貸してはいけない。
コレはある程度オカルトを齧った事がある人なら羞恥の事実だ。
しかし男性はその契約を契ってしまった。
「ハイ、お願いします。エミちゃんの匂いもう一度、堪能したいです。」
仲間達…もう既に仲間では無いかも知れないが、彼らはドン引きしていた。
「それじゃあホラ、生成してやったぞ。今ココで存分に嗅げよ。」
男性は言われるがままに、体操服に鼻を近付けた。
━スゥゥゥ――――━
「ぷっはぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!!!!」
男性は緩み切った顔をして恍惚の中で蕩けていた。
仲間達は会計をしてそそくさと先に帰ってしまっていた。
「最高です。悪魔様ってこんな事も出来るんですね。
僕はもう地獄行きですか?良いですよ、もう地獄行きます。」
「おいおい、さすがにチョロ過ぎだろ…。
まぁでも人間なんて、こんなモンだけどね。
さっき帰ったアイツらだって、自分の事になればわかるさ。
アタシに付いた客どもは全員堕としてやる、地獄にね。」
さすがは悪魔、客とは言え容赦は無いのであった。
こうして5人の接客を見ると、それぞれに個性があるのがわかった。
ボクは5人を眺めるだけで一日が過ぎ、この日は楽に営業を終えた。




