#29.くっ殺女剣士はマゾヒズム?
ある時悪魔のポンぬちゃんが、「面白いモノが獲れた」と言って来た。
悪魔が捕えて来るもの…異世界のドラゴンの子供とかかな?
そう思っていると、ポンぬちゃんは大きな麻袋を投げて来た。
━ドンッ!━
非常に重みのあるソレは、明らかに人くらいの大きさだった。
「え、ポンぬちゃん、コレ…何?」
「まぁ良いから開けてみろよ、お前だって男だろ?
異世界からのお土産だよ。」
言われるがままに麻袋を開けると、何と中から女性の剣士が出て来た。
「え、人!?って言うか、剣士じゃないの、この人!?」
女剣士は口に猿轡を噛まされており、喋れないようだ。
ボクはそれを丁寧に外した。
「くっ、私をこんな辱めてどうするつもりだ!!」
この質問に答えるべきはポンぬちゃんだろう。
「えー、別に悪魔が女剣士を捕らえる理由なんて、
子供が虫を捕まえるのと同じだよ。
捕まえたいから捕まえる。それだけだよ。」
「何だと!?だったら、悪魔の労働力だとかエネルギーだとか、
そういった何かしらの目的があって攫ったのでは無いのか!?」
「あー、うん。お前弱そうだったからさ、チョロいし、
蟻でも捕まえるような感覚でヒョイっと。」
「ク、何たる屈辱…!!
もういっそ、殺せ!!」
「うわ~、出たよ誇り高き女剣士の『くっ殺』(笑)
別にこっちは殺そうと思えばいつでも出来るのに、
わざわざお前から言われて殺すワケないだろ。」
ポンぬちゃんは心底バカにした風に女剣士を見下した。
「ええと、ポンぬちゃん、この女剣士そんなに弱かったの?」
「弱いも何も、コイツレベル30くらいが推奨される場所に
レベル15で単身乗り込んで来たんだぜ?バカだろ(笑)
みぎゃーだって男だし、好き放題犯したいかなと思ってさ。
ホラ、私だってイジめるばかりじゃなくてたまには良い事するだろ?」
いや、まぁ確かに綺麗な女剣士ではあるけれど、犯すって…。
さすがにかわいそう過ぎるだろ。女剣士は随分と憔悴している。
「どうしたの、もしかして捕まえられてから何も食べてないとか?」
「そ、そんな事…、想定済みだ!敵に捕らえられたら…何も出来ない…」
女剣士が弱気になっていた。
「キミ、名前は?」
「・・・・アラヤだ。ギリシア神話の戦いの女神の名だ。
誇り高き女剣士になるようにと祖母に付けられた。」
その時、ポンぬちゃんがプッと噴き出した。
「ちょ、おいおい…折角そんな気高き名前を貰ったのに、
簡単に私に捕まってトイレすらさせて貰えず半日、
お前恥ずかしくないのかよ?」
見ると女剣士は内股をもじもじとすり合わせていた。
「あ、トイレ、行きたいの?」
「・・・・う、その、あの…行き…たい。」
しかしボクはそのしおらしい女剣士の仕草を見てムラッとした。
普段は強気で気高い剣士なのだろう。それが排泄を半日我慢させられ
こんなに弱気でもじもじしている。
「ポンぬちゃん、ごめん…ボクちょっと我慢出来ないかも…」
「ふふ、そうだろ?みぎゃーだって男だからな?」
ボクはトイレに向かった。
このままではアラヤを襲ってしまいそうだった。
ボクはトイレで一人でムラムラを処理した。
「ふぅ…ヤバかったな。あ、アラヤさん、トイレ使って良いよ。」
アラヤさんは一瞬戸惑いの表情を見せ、それからポンぬちゃんを見た。
「まさか、本当に行っても良いのか?排泄に…」
「ふん。私は別にお前の事なんてどうでも良いんだよ。
お前の新しい飼い主が行っても良いって言ってるんだから、
行っても良いんじゃねーか?まぁ私だったら、絶対行かせないけどな。」
アラヤはすぐにトイレに走り込んだ。
ドアをバンッ!と閉めて、その後排泄音がコチラに聞こえるくらい勢い良く
恥も忍ばず放尿ともう一つの行為をしていた。
「うわぁ、めちゃくちゃ溜まってたんだね、かわいそうに…。」
「いや、みぎゃーさすがに笑えねぇか?
だってアイツ誇り高い女剣士のクセによ、我慢出来なかったからって、
凄い排尿音と排便音だぜ?そろそろ放屁もするんじゃねぇか?」
すると、トイレから大きな音が聞こえて来た。
『ぶっ...ぷぷぅ~…ぶりぷっ...ぶぶぶっ!!』
「うわぁ…」
ボクはとても気の毒に思ったが、ポンぬちゃんは終始笑っていた。
やがて一通り終わった後、アラヤさんが出て来た。
「…ごめんなさい、物凄くはしたない音を聞かせてしまって。」
「え?いやいや、仕方無いでしょ、さすがにこんな事されたら誰だって、
我慢出来ずに音なんて配慮出来るワケが無いよっ!」
「とは言え、恥ずかしい音を聞かれてしまった事は変わりない。
こんな情けない女だが、嫁に貰ってくれぬだろうか?」
えぇえーーーー!!!!????
コレが、誇り高き女剣士のけじめと言うやつだろうか?
それにしてもボクの事を好きでも無いのにそんなので良いのか?
「あ、いや別にやるべき事をやっただけで…、スッキリしたなら良かった」
「あぁ、いや、コレは決まりなんだ。
自分の最も惨めな姿を見られた者と結婚すると言うのが…。
本当に申し訳ない、あんな汚い音を聞かせて不快だっただろう…。」
「あ~、いやえぇと…、ココはキミが住んでいた世界じゃないからさ?
別にそんな事で結婚とかしなくても良いんだよ?」
「いやしかし、それでは私の気が収まらぬ!!」
「えぇえ!?じゃあ、本当に本気で結婚するの!?」
「やはり、あんな臭い匂いに大きな放屁音を聞かせるような弱い剣士は
結婚対象にはならぬか?」
「あぁいや、そういう事じゃなくて…えぇと、その…、
ちょっとポンぬさん!何とかしてよ!!」
「アハハ(笑)みぎゃーも男だろう?
せっかく本人もそう言っているんだ。無責任に孕ませて、
その後に離婚すれば良いんじゃないか?」
「え、ちょっとそれは無責任過ぎるでしょ、
ボクそんなろくでなしじゃないよ!?」
しかしアラヤさんはボクのイメージを曲解しているようだ。
「そうか、孕ませるだけ孕ませて後は放置、か…。
本当に殿方は勝手なものだな。しかし止むを得まい。
全ては私が弱かったせいだ。好きにしろ。」
「えぇえ!?マジで、ボクに好き放題されても良いの!?」
「おいみぎゃー、何ちょっと確認し始めてるんだよ(笑)」
目の前のアラヤさんは憔悴しきっているとは言えとても美しい。
好き放題して良いなんて言われたらそりゃ、悪い気はしない。
「えぇい、でもやっぱりダメだ!こんな相手の弱みに付け込むような、
って言うかポンぬちゃん、ちゃんと元の世界に帰してあげて!?」
「あーいや、適当なRPGの世界から獲って来たから、
正直戻す世界がわかんねぇんだわ。」
「えぇえええぇぇぇぇ!!!!?????」
つまりはもう、この世界で何とかしないといけないと言うのだ。
「だ、だったらもういっそこの世界で好きな人を見つけてさ、
その人と結婚して幸せな家庭を…」
「いや、私は自身の恥ずかしい所を見られてしまった者に
操を立てると教育されて育てられて来た。
もう今更お前以外の男など目に入らぬ!!」
どうしよう、とても厄介な事になったぞ。
そこへ、黒みぎゃ子がやって来た。
「やっほー、久しぶりオリジナル。お、悪魔もいるじゃん。
それと…それ、誰?剣士?」
ボクは黒みぎゃ子にアラヤさんの経緯を説明した。
「へぇ~、みぎゃー良かったじゃん。タダでヤれるじゃん。
何でそんな良い人ムーブしてるの?
別に好き放題使っても誰もお前を咎めないぜ?」
「いや、さすがにキミ達異世界存在の常識はちょっとおかしいよ。
攫われて来て排泄を我慢させられて、それを聞かれて、
そしたらそこに居たボクと結婚なんて…かわいそう過ぎるよ。」
「え?でも案外そうでも無いんじゃね?
なぁ、アラヤとか言うお前、この猫耳包帯野郎、案外可愛くて
綺麗な顔してて悪くないだろ?
「ふん、無礼なヤツだな。しかし不思議とみぎゃーに似ているな。
・・・質問の答えだが、正直好みだ。私達女剣士は自分が強い。
…ま、まぁ、私は弱かったのだが…。と、とにかく、そんな理由で
強い男よりも可愛らしい男の方が好みなのだ。
コイツはその点、私の凄く好みだ…。」
何と、アラヤさんが求婚して来るのは自身の信念と別に、
単に好みに合致していると言う事もあったようだった。
「あ、あの、とりあえずボク、考えさせて貰っても良い?
い、一年くらい…。」
ボクは逃げ腰に提案してみた。
「あぁ、いつまででも待たせて貰うぞ。
しかしこの世界で私は、どう生きれば良いのか…。」
その時、黒みぎゃ子が提案を投げた。
「ウチで働けば良いよ、まだキャストに空きがあるし。
それで寂しく成ればたまにはダーリンの所に行けば?」
「だ、ダーリン、か…悪くないな。
その、あの、だ、ダーリン…それで構わないか?」
少し上目遣いでしおらしく言うアラヤにボクは迂闊にも
ドキッとしてしまった。
「ま、まぁ、その、本当にたま~に、だよ?
それにまだ、結婚を了承したワケじゃないんだからね?」
こうしてアラヤはボクの婚約者みたいな立ち位置になった。
ボクはとんでも無い関係性の異世界存在が出来てしまった事に戸惑い、
しかしもしかしたらあるかも知れないアラヤとの未来を想像し、
何とも言えない不思議な気持ちになりこの日を終えたのだった。




