#25.時空のおっさん
世間、取り分けネットの世界で語られる都市伝説の中に
『時空のおっさん』と言うものがある。
いわゆるネット上の「怖い話」、実話系怪談、
または実話系都市伝説の一つ。
異世界に迷い込む系の怪談の一種で、日常生活を過ごしていると、
いつの間にか迷い込む……という始まり方が多い。
普段通り学校や会社に行くと、
そこは誰もいない教室だったりオフィスだったり。
他にも買い物中などに突然、周囲に誰もいなくなっている事に気付く。
戸惑っていると、突然そこに何者かが声をかけてくる。
それはたいていが中年の男性で、普通に姿を現すのみならず、
当事者が所持している携帯電話などに通知してくる事もある。
その声の主に反応する、もしくは電話に出ると、
その中年男性=おっさんは、
「なぜこんなところに来たんだ!」と、
咎めるような強い口調で怒鳴りつけてくる。
そして気が付くと、元に戻っている……というところで終わる。
時空のおっさん (じくうのおっさん)とは【ピクシブ百科事典】
まぁ、都市伝説や怪談を作る上ではこうした存在が必須だろう。
しかし本当に単なる創作されたキャラクターなのか。
ボクはもし存在するのであれば一度会ってみたいと思っていた。
そしてそれは、ある営業を終えた後の事だった。
~異世界コンカフェ営業終了後~
「ふぅ~、皆今日もお疲れ様~。
ボクはメイク落としたりゴミ出しとかしとくから、
もう皆帰って良いよ~、今日もありがとね~。」
「ホイホーイ、みぎゃタンも早く帰るなりよ?
可愛いんだから、歩いてたら襲われるかもなりからなw」
「お疲れ様です。みぎゃーさん、また今日も汗だくですね。
本当にお疲れ様。コレ、私が作ったひんやりドリンクです。」
「ふふ、本当に毎日毎日飽きもせず恥ずかしい恰好で出勤しおって。
まぁ、ここまで続けれ来られている胆力の強さは認めるぞ。
さぁ、それでは妾も居所へ帰って酒でも飲むとするか。」
そうして皆が帰った後のコンカフェはシーンとしていた。
今はもう、セクハラして来るサラリーマンのおじさんも、
ボクの汗だくの包帯の匂いに興奮する常連さんも居ない。
ただ静寂が支配する中でボクは、グラスを拭いたりしていた。
━ぐぎょろぅるっ━
突然、ボクの隣の空間が歪んだ。
一体、何が起きたんんだ!?
━グゴゴゴゴ….━
その歪みはやがてボクを飲み込み、そのままボクは意識を失った。
~???(何処?)~
目が覚めるとボクは、誰も居ない工事現場のような場所に居た。
あ、コレ異世界だ…。ボクはすぐに気付いた。
そして脱出の為の糸口を探そうとした時、後ろから突然、
物凄い大きな声が聞こえた。
「おい、お前!!何やってるんだ!!
ここは一般人が来て良い場所じゃないぞ…。
こんな所に迷い込んで来て、犯されたいのか?」
それは、ボクが一度会ってみたいと願っていた時空のおっさんだった。
しかしただ一つ想像したのと違ったのは、とてもキモかった事だ。
突き出たお腹、透けている乳首、ニヤニヤした表情に垂れている涎。
そのクセして、偉そうな態度がとても鼻に付いた。
・・・そうそう、鼻に付くと言えばその匂いもヒドかった。
いくら異世界存在とは言え、有り得ないくらい臭い匂いをさせている。
ボクは時空のおっさんと一度会いたいと思っていた事を後悔した。
(嘘でしょ、こんなに臭いなんて…早くこの異世界を抜け出したいけど、
どうせこのおじさんを上手く使わないと出れないんだろうなぁ、嫌だな)
すると時空のおっさんはボクの身体を舐めるように見まわして来た。
「ふぅん、お前、男か?いやそれにしても女にしか見えん。
どれ、この異世界から戻してやる代わりに、俺に抱かれる気は無いか?」
来た。結局キモおじ達って最後はコレだ。皆、身体目当てだ。
って言うかボクがミドフォーの男だとわかった上で、それでも良いのかな。
「あの、ボク年齢もあなたと同じくらいの男ですよ?
それなのに、良いんですか?」
「ん?あぁ、お前40代中盤の男か。心配するな、俺は38だ。」
何と時空のおっさんはボクよりも年下だった。
「だからよ、年下の後輩を可愛がるような感じで頼むぜ、
よしよしって、お前のヒザの上で寝かしつけてくれよ。」
何とこの時空のおっさんはボクにバブみを感じていた。
最悪だ、キモ過ぎる…。
「あ、あの、ボク本当に、中身中年男だから…キミと変わらないよ?」
異世界存在である以上、もうボクは敬意を込めてあなたと呼ぶのを止めた。
と言うか、単純に気持ち悪いだけのおじさんに思えたのだ。
その時、ボク達の元に全身真っ赤な人体模型のような何かが走って来た。
よく見るとそれは剥き出しの筋肉繊維のようでとても気持ち悪かった。
「ぎゃあぁぁぁ!!アレ、何!?アレも、おじさんの仲間なの!?」
「あぁ、アレはこの異世界でのエンティティ(敵)だ。
アイツに捕まると同じように筋繊維だけにされるぞ。
嫌なら俺の言う通りにしろ。俺のケツの穴を舐めるんだ。」
「・・・・ハァ?」
ボクはこんな恐ろしい状況ではあったが、反発心を抱かずにはいられず、
つい反抗的な態度を取ってしまった。
「良いよ、ボク一人で逃げるから。」
そう言ってボクはその場から逃げ出した。
幸い、人体模型のようなモノはそれ以上ボクを追って来なかった。
「ふぅ、とりあえずこれだけ逃げれば大丈夫かな。
それにしても、どうやってココから出ようかな…」
ボクはかなり走って来て疲れた事もあって、その場に座り込んだ。
景色はずっと似たような工事現場の連続だ。
とにかく何とかして脱出の為のヒントを見つけないと。
するとそんなボクの前に再び、時空のおっさんが現れた。
「おいおいおい、逃げんなよ。大体、この空間は俺のものだ。
お前には逃げ場はねぇよ?」
何て事だ、この時空のおっさんはこの世界の支配者だった。
ん、待てよ?支配者…?と言う事は….。
「もしかして、キミこそがエンティティなんじゃないか?
そしてあの筋繊維の人体模型こそが本当の時空のおっさん。
キミは彼の皮を剥いでしまった…。」
「・・・フン、勘が鋭いな、そんな所まで女っぽいのか、お前。
まぁ良い。どうせ筋繊維が剥き出しになるまで皮を剥がれて
常に痛みの中で何叫び走り狂うしか無いアイツにはもう力は無い。
そしてこんな場所に迷い込んだお前は、俺の性欲を満たすのだ。」
そういうと時空のおっさんもどきは股間から臭い棒を取り出した。
「さぁ、舐めろ。それしかお前が助かる道は無いんだ。」
ボクは観念して、臭い棒の匂いが鼻に付くくらい近くまで顔を寄せた。
しかしその時、声と走る足音が聞こえた。
「おーい、そんな事しなくて良い!
キミを元の世界に帰しあげるよー!!」
それは、筋繊維が丸見えになるくらいまで皮を剥がれてしまった
本当のこの世界の時空のおっさんの成れの果てだった。
「ハァ、ハァ、やっと追い付いた。キミをちゃんと帰してあげよう。」
しかし、時空のおっさんもどきがそれを阻止しようとする。
「ふざけるな。せっかく見つけたフェチっ娘なんだ。
逃がすワケが無いだろう。」
「知るか、この世界のバグめ。さぁキミ、私の手に触れるんだ!」
筋繊維丸見えのグロテスクな手。
しかしボクは勇気を振り絞り、その手に触れてみた。
━シュウゥゥゥゥゥ…….━
突然噴き出した光がボクの身体を包み込み、そのまま宙に浮いた。
「さぁ、そのままゆっくりと目を閉じて元の世界を思い描くんだ。
もう二度と、こんな所に来ちゃダメだぞ…」
そうしてボクが目を閉じて元の世界を思い浮かべた時、
フッと意識が遠のく感覚があった。
しかしそんなボクが最後に聞いたのは、
本当の時空のおっさんの断末魔の叫びだった。
どうやら背後から時空のおっさんもどきに襲われたようだ。
「時空の….おじさん!!!!!」
ボクは大声で叫びながら、パッと目が覚めた。
するとそこは営業終了後の異世界コンカフェだった。
ボクは床に倒れ込み、寝ていたようだった。
「夢…では無かったよね、明らかに異世界に行っていた…。」
『時空のおっさんが実在するなら是非会ってみたい』
そう思っている人は多いと思う。
だけど、ボクから言える事は止めておいた方が良いと言う事。
もし会ってみたいと思っている時空のおっさんがキモかった時、
あなたはそれでも時空のおっさんに憧れを抱けますか?




