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みぎゃ☆みぎゃ異世界コンカフェへようこそ!  作者: みぎゃー


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#22.野獣先輩異世界存在説

ある夏の午後の昼下がり、ボクは下北沢の住宅街を歩いていた。


うだるような暑さ、アイスティーでも飲みたい。

だけどそんな気の利いた先輩なんて居ない。

そんな事を考えながらボクの脳内では、さすがは島国日本。

『ISLANDERS』だなぁってワケのわからない事を考えていた。


ボクは暑さで頭がやられちゃったみたいで、包帯猫耳の姿のまま

人気が無い事を良い事に天下の往来を歩いていた。

道路の真ん中を歩くと『王道を往く』気持ちになっていた。


暑さで意識が朦朧としていたボクの目には睡眠薬でも飲まされたかのように

幻覚が見えていて、周囲からは『やりますねぇ』と称賛の声が響いていた。


そんな時、ボクのお尻をペロンと触って行く手があった。


「ひゃっ!?」


ボクはミドフォーの男なのに、情けない声が出た。

包帯を巻いた部分と巻いていない日焼けした部分の肌の色は

明らかに差がある事は自分でも理解していたのだが、

その時ボクのお尻を触って来た男がこう言った。


「すっげぇ白くなってる。ハッキリわかんだね。」


何で、焼けてる肌じゃなくて白い元々の肌に注目するの!?

そして男はそのまま、放屁して走って逃げ出した。


その後姿を見てボクは思った。


「あ、アレ…?もしかして、野獣先輩?」


野獣先輩とは、ゲイビデオ「真夏の夜の淫夢」第四章「昏睡レイプ!野獣と化した先輩」の登場人物である。作品における正式な役名は田所。「YJSNPI」とTDN式表記で書かれる事もあるが、近年はそのまま漢字で表記するのが主流である。


野獣先輩とは (ヤジュウセンパイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

野獣先輩と言えば、今やネット中の人達が探しても見つからない、

幻のツチノコみたいな存在だ。

ボクは逃げる野獣先輩を追い掛けた。


「待てーーーー!!!!

 ねぇ、止まってくれたら、ボクの汗だくの包帯あげるよ?」


野獣先輩はホモのはずだ。

だったらこんなに可愛い男の娘のボクの汗だくの包帯は

物凄く欲しいんじゃないだろうか。


だけど、野獣先輩は放屁を繰り返す毎により早くなって行き、

ボクは足がもつれそうになって来た。


「ハァ、ハァ…。ヤバい、心臓が千切れそう…」


野獣先輩との距離が開いて行く…。

ボクは脳が酸欠になり、そのままその場に倒れてしまった。


・・・・・


・・・・・


・・・・・


気が付くとボクは、どこかの家の中で寝かされていた。

いやもう、皆様お気づきだと思うけど、野獣邸だ。


「オレを追い掛けて喉乾かない?アイスティーしか無いけど良いかな。」y


もうお決まりの常套文句だ。

と言う事はボクはこれから昏睡レ〇プされちゃうの!?


・・・・さすがにそれはごめんだ。

ボクは介抱してくれたお礼だけ言って、野獣先輩を問い詰めた。


「ねぇ、どうして長年、人々から逃げ続けるの?

 ちゃんと皆の前に姿を現して、説明責任を果たしてよ」


ボクはきっと暑さで頭がイカれてたんだと思う。

別に冷静に考えれば野獣先輩には説明責任なんて無い。

だけどこの時のボクは野獣先輩を激しく問い詰めていた。


「・・・お前の事が好きだったんだよ!」


唐突な告白である。そもそもボクらはさっき出会ったばかりだ。

好き「だった」とか、ちゃんちゃらおかしい話だ。


「あのさぁ、話から逃げないでくれるかな?

 ボクはこれでも真剣にキミに聞いてるんだよ?

 ねぇわかるかな、キミの事を追い求めてたくさんの人達が

 時間もお金もいっぱいかけて、キミの事をまるで幻の生き物みたいにして

 一生かけて追い続けているんだよ?それなのに、キミはどうして…」


野獣先輩は少し困った顔をした。


「この辺にぃ~」


いや、もう知ってるゾ、コレ。どうせ、上手いラーメン屋の屋台が出来た。

だから、いやじゃけん、夜行きましょうねと言いたいんだろう。

ボクは野獣先輩があまりに語録ばかりで喋る事が気になった。

彼は2001年の夏の日から抜け出せていない。

未だに彼が見つからないのはもしかして、そういう事じゃないのか。


「ねぇ、もうボクの前では語録禁止!

 ちゃんと『今のキミ』の言葉で語って!?」


ボクは野獣先輩にズイッと詰め寄った。

胸の所の包帯が少しはだけたみたいで、汗がむわぁっと彼の顔にかかる。

彼はその瞬間「ウッ」と言う顔をした。


「あ、ごめん、汗臭かったよね。こんなミドフォーの男の汗なんて…」


「あ、いや、むしろすっげー興奮した。だってすげぇ可愛いんだもん。」


・・・野獣先輩が初めて、語録以外で話してくれた。


「え、あ、あの、その、ありがとう。ボク、変じゃないかな?

 ミドフォーでこんな包帯猫耳女装子コスプレなんてさ。」


「いや、すっげー可愛いじゃん。むしろ犯したいくらいだよ。

 って、オレはホモだから誰でも良いとか思われてんかな?

 まぁ、否定はしないけどさ。だけどオレだって、ちゃんと

 相手は選んでるつもりだぜ?」


流暢に、日本語…と言うか人間の言葉が野獣先輩から溢れて来る。

ボクはそれだけでもう、何か涙ぐんでいた。


「ちゃんとしゃべれるんだね、人間の言葉。」


ボクは暑さに頭がやられて、物凄い失礼な事を言ってしまった。


すると、野獣先輩は傷付いたようで目を伏せて口をつぐんでしまった。


「あ、ごめん…」


彼は再び、心を閉ざしてしまったようだった。


「・・・帰って。」


「え?」


「帰ってくれ。もう体調は戻ったんだロ?

 だったらもうこの野獣邸から出て行ってくれ。

 オレの理性が残っているうちに、早く。

 そうでなきゃアンタを今ここで犯してしまう。」


ボクは野獣先輩のストライクゾーンに入ってしまったのだろうか。

何にせよ今ココはボクにとっては危険ゾーンのようだ。


「そ、それじゃあ出て行くけれど、覚えていて?

 キミは…皆から愛されてる。だから、決して逃げないで。

 最初は好奇の目に晒されるかも知れないけれど、

 キミの味方だってたくさんいる。だから、一人じゃない。

 ボクだって、キミを応援しているから….!!」


そう言い残し、ボクは野獣邸を後にした。


野獣邸の外では野獣先輩の更に先輩のMUR先輩が待っていた。


「お前、アイツの股間チラチラ見てただろ。」


「見てないよ。何で見る必要なんかあるの?」


「嘘つけ、絶対見てたゾ。見たけりゃ見せてやるよ、ホラ。」


━ボロンッ━


ボクの目の前に邪龍が解放された。


「あ、コレでこの家の中で落ち込んでる彼の事を慰めてあげてよ。

 きっとキミにしか出来ない事だと思うからさ。」


そう言ってボクはその場を逃げた。

野獣先輩を傷付けてしまった。

その事が、いつまでもボクの心の中で重荷となりチクチクと痛んだ。


(野獣先輩…もしかしてこれまでも、傷付けられて来たのかな。

 そりゃ人前に姿を現せなくなるよね…」


しかしその時、ボクの目の前の道路の遠く向こうに野獣先輩が現れた。

しかもその数、およそ7~10匹。


「え、や、野獣先輩?それもたくさん…何コレ、白昼夢!?」


そんなワケが無かった。そう、皆もうわかっているはずだ。

コレは『真夏の夜の淫夢』なのだろう。野獣先輩達がボクを手招く。


「良いよ、来いよ!」


なるほど、鬼ごっこをしようと言うのか。

ボクはどうせ夢の中ならと、包帯を少し緩めた。

そして全力疾走の構えをした。

クラウチングスタートの姿勢を取り、自ら銃声の真似をした。


「BAN!!」


まるでウマ娘のように駆けだしたボクは誰よりも早かった。

しかし、野獣先輩たちは四方八方に飛び散った。

ボクはそんな彼らを追い掛ける。


「コラー、待てー!逃がさないぞ~!!」


ボクは思い切り駆けた。真夏の妖精達をせめて一匹だけでも

この手につかみ取りたい。そんな気持ちでとにかく駆けた。


ある時には彼らは交番の前で待ち受けた。

しかしボクが追い付くとまたすぐに逃げ出した。


ある時彼らは女子大の中でまるで生徒のように歩いていた。

ボクは捕まえようとソッと近づいたが、逃げられた。

まるでトンボの捕獲の様子みたいだった。


いつの間にか街中が野獣先輩で溢れかえっていた。

だけどボクはそのどれを追い掛けても捕まえられなかった。

そうしてやがて自分の心臓がとっくに限界な事に気付いた。

ボクはそのまま後頭部から地面へと倒れ込んだ。


━ドンッ!─


強い衝撃と共に目が覚めた。

気付くとボクは病院のベッドで寝ていた。


「あ、起きた。本当にオリジナルはバカだなぁ、ったく。」


そこにはボクのクローンの黒みぎゃ子がいた。


「お前さぁ、こんな暑い中で服着たくないのはわかるけど、

 包帯服のまま突然走り出して勝手に熱中症なったんだろ?

 周りで見てた人が居たから良かったけど、一人だったら死んでたぞ。

 一体どんな幻覚を見てたんだよ本当に。」


やはり、アレは夢だったのか。


「ところでさぁ、お前、誰かに痴漢でもされたの?

 包帯での日焼けとは明らかに違う、強く掴まれたような跡が

 尻の所にあったんだけど。それを追い掛けようとしてたのか?」


鏡越しに自分のお尻を確認すると手形がクッキリと付いていた。

アレは…夢?いや、現実?


まるで夢か現実かわからない、真夏の夜の淫夢。

だけど確かに彼は存在していた人物だ。

そして今もどこかで吠えているのかも知れない。


『イキスギィ!』と。


挿絵(By みてみん)

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