#14.もう一つのコンカフェ!?
黒い包帯のボクのクローン、通称黒みぎゃ子。
彼(彼女?)はボクのコンカフェとは別に新たに店舗を持ち、
そこで出勤していないキャストや非レギュラーキャストを
常勤で雇ったりと言った形で経営を手伝おうとしてくれた。
店舗はココから近い所にあり、お互いに融通出来る場所にある。
果たして黒みぎゃ子のコンカフェはどんな感じなのだろうか。
(ここから黒みぎゃ子に視点の主体が交代)
やっほー♪ボクは黒みぎゃ子、みぎゃーのクローンとして造られた。
造られた目的についてはまだ秘密なんだけど、みぎゃーよりも少しだけ
ハイスペックな感じで造られてるから色々とみぎゃーをイジめれるんだ♪
それで、みぎゃーに敗北感を味合わせる為にどうすれば良いかなと考え、
より少ない人数で、しかも自分がレギュラーに雇わなかった子達を使って
それで本店以上の売り上げを上げたら絶望してくれるかなって思って、
ボクは口裂け女とゾンビのぞん子に声を掛けたよ。
あと、一度みぎゃーの店を訪れたけれど休館日だった為に諦めた
サキュバスちゃんも雇い入れちゃった。あとはここに非番の子達がたまに
サブとして入ってくれたりするんだけど、ハッキリ言ってこのメンバー、
もう本店に勝つ自信しか無いの。みぎゃーのほえ面が見れるかなぁ♪
「まず口裂けちゃんはさぁ、もう口裂けてないんだよね?
と言う事は単なるマスクしただけの美人だから、そのマスク販売しよう。
キミが流行った1970~80年代の話題に詳しいから高齢者を相手にして、
古き良き日本の淑女を演じてみせてよ。」
「ハイ、わかりました。みぎゃーさんったら週三回と言いながら
あまり呼んでくださらなくて…。ココでならレギュラーになれるし、
私絶対に売上に貢献して頑張ってみせますわ。」
「オッケー。さぁ次はサキュバスのリリスたんだけどさぁ、
まぁキミはもうそのままで十分にエロいし、だけど安売りしないでね。
あくまで勿体ぶって、お客様のリビドーをグツグツ煮えたぎらせて。」
「わかりましたわぁ~。私、そういうのは得意ですわよ。」
「さて、ゾンビのぞん子だけど…、まずキミの腐臭にはこの香水を混ぜれば
強力な性臭になるんだ。臭いのに興奮しちゃう匂いって事だね。
あとはよく見たら結構可愛いし、キミはロリっ子で頑張ろうか。
まぁ甘ちゃんのみぎゃーと違ってコッチはガチだし、勝てるよ。
ボク達4人だけで売上上げちゃったら、みぎゃー泣くかなぁ。
あ~早く見たいなぁ、40代中盤のおじさんがミイラ女装しながら泣いて、
挙句に漏らしてくれたりしたら傑作なんだけどなぁ。
想像しただけで疼いちゃうなぁ、フフ。」
こうしてボクは打倒本店を目標に掲げて、まずは開店前にチラシ配りや
ネット広告、更には動画配信やコラボ等で一気に知名度を高めた。
すると初日、手に余る程の大盛況となった。
「す、凄いですね…。裂けてない口がポカンと開いて閉じませんわ。」
「うわぁ~、こんなにたくさんのお客様達がアタシの身体目当てに…。
どうしよっかなぁ~、少しチップくれた人には胸くらい触らせようかな」
「うわうわ~、こんなにたくさんの人達…、食べたくなっちゃうけど我慢。
本当にボクの匂いなんかで皆寄って来てくれるのかなぁ?」
3人は最初こそ不安げだったけど、すぐに手慣れて来て捌けるように。
みぎゃーのコンカフェが表だとしたらコチラは裏と言う事もあり、
そのプレミア感や隠匿された感じがウケて初日は大成功だった。
「ヤバ、この売上…、普通にみぎゃーのとこの3日分超えてるでしょ。」
その時、みぎゃーがボクの店の一日目が終わった後の様子を見に来た。
「やっほ~、どうだった?上手くお店回せた~?」
ボクは得意げに売り上げ帳簿をみぎゃーに見せ付けた。
「フッフッフ、見てお漏らしするなよ?ホラ!みぎゃーのお店の
3日分の売上を一日で上げちゃった!!」
さぁ、泣くか?良い年した大人が年甲斐も無く泣くか?
と思ったが、その反応は意外なものだった。
「へぇ~、凄いじゃん!良かったね、最高売上だぁ!!」
・・・何とも調子の狂う反応だった。
何でライバルのボクの売上をそんな風に喜べるのか。
ボクは尋ねてみた。
「み、みぎゃーって悔しくないの?
ポッと出のクローンの僕に初日売上越されて、
これからも売上負け続けるかもなんだよ?
情けなくて泣きたくなったり、お漏らししたりしないの?」
「え?うん、別にしないよ。だってクローンとは言えキミは
ボクと同じ遺伝子をベースに生まれたんでしょ。
そんな自分の分身が売り上げ上げてたら嬉しいだけだよ。」
・・・何とも本当に調子の狂うヤツだ。
見るとみぎゃーは一日の勤務を終えて汗だくだった。
「うわ、包帯汗だくじゃん。嗅いであげようか?クンクン…。
うっわ、臭ー(笑)コレ、ちょっとヤバくない?
恥ずかしくないの?こんなに包帯を臭くしちゃって。」
「え、そりゃ恥ずかしいよ…。だけどコレ明日販売するし、
何気にちょっとえっちでしょ♪」
・・・驚いた。コイツ、汗臭い事さえ前向きに捉えてる。
こんなヤツに売上で対抗しようとしていた事を後悔した。
こんなヤツと競争なんて、最初から無意味だったんだ…。
「ふぅん…。ねぇ、オリジナルってさ、何でこんな事してるの?
脱サラして異世界コンカフェを開くまではまぁわかるけど、
40中盤になってわざわざ自分が猫耳コスプレしてまで、
しかも滅茶苦茶恥ずかしい薄い布を巻いただけのミイラとか、
どう考えても頭おかしいじゃん?何でそんな事を…」
するとオリジナルは困ったような顔を浮かべながら言った。
「あ、アハハ。まぁ確かにそうだよね。
自分でも思うよ、こんなの変態じゃんってね。
実際そうなのかも知れないけどさ、だけどこの世界で
やりたいと思った事をやらないままで死んでしまう事って
一体どれほどの後悔が残るのかなって思ってさ、
恥ずかしい思いをしたって別に死ぬワケじゃないし、
その恥ずかしさも楽しめたら、凄く生き易いじゃん?」
オリジナルはそう、ゆっくりとベラベラ喋った。
「ハァ?
周りから見れば気持ち悪いだけのおじさんじゃん。
いくらに合ってるとしてもやっぱりやってる事は
かなりキモいと思うよ。それにそんな弱点丸出しの格好、
本当に弱いオスって感じ。何なら〇玉握ってあげようか?」
「・・・本当に?別にボク、クローンになら良いよ。
情けなくて弱い姿見てストレス発散出来るならさ、構わないよ。」
コイツ、狂ってる。そう思ったけど、どこかボクはたじろいだ。
何なんだ、コイツの目は。ただ真っすぐに澄んでる。
これまで社畜人生の中で世の中の嫌な事をいっぱい見てるはずだ。
それなのに何でこんなに子供みたいな真っすぐな目をしてるんだ。
「ボクね、本当にどうしようも無いヤツなんだと思うんだ。
いわゆる負け組男性だって言う自覚があった。
それで現実逃避の為に異世界存在について色々と調べたりした。
本当にこんな存在達が居たら、世の中は楽しいだろうなって。
皆が暮らしてる当たり前の生活ってボク達みたいな弱い存在を
居ないものかのように見ないフリする事で成り立っててさ。
だけどきっと異世界存在が実在すれば、そんな普通の人達も
皆ワ―って大混乱して社会が麻痺するんじゃないかなって。
そうなった時に初めて、弱者も強者も平等に一人の人間になる。
そう思うと、異世界存在の実在を強く願うようになってね。」
「・・・そんなの、お前が変態的な恰好してる事の理由にならないじゃん。
結局、恥ずかしい恰好をして自分を弱者に固定してるだけじゃん。」
「うん、そうだよね…。だけどさ、可愛いでしょ?この格好。
男だからとか中年だからとか、そういうくだらない理由で諦めたくない。
好きな恰好をして、それが恥ずかしい恰好だったとしても良いじゃん。
だって神様はこういう格好をする事を禁止なんてしてないんだよ?」
コイツ(オリジナル)の言葉はいちいちボクを刺激した。
筋が通ってるようで通ってないようで。だけどボクはいくら否定しようが
コイツから生まれたクローンだから言ってる事がわかってしまう。
何だろう、こんな布で巻いただけの格好、情けなくて格好悪い。
だけど武器を持っていないし、急所だって丸見えだ。
例えるなら両生類のカエルとかに近いかも知れない。
丸腰で弱点も露わですぐにでも潰せそうな存在。
だけど、だからこそ愛される何かがあるのかも知れない。
「可愛いって思って貰えるんだったらさ、ボクは恥ずかして構わないの。
だって可愛いものって強くないじゃん?癒されるものって柔らかいし。
ボクは自分がどうせなるのなら、そういうものになりたいんだ。」
「・・・・。」
ボクは何も返す言葉がなく、ただオリジナルを見つめた。
本当に無防備で、だけど澄んだ目をした女装中年男。
だけどその姿はとても愛らしいようにも思えた。
「・・・フン、何か興が削がれたよ。今日は帰る。
だけどさ、正直お前の生き方が少しだけ羨ましいかも。
ボクだってクローンだから似たような所あるけど、
自分の意思で選んでそういう生き方をしたお前の事が、
本当に少しだけだけど羨ましいよ。ボクなんて、
造られた時からこの生き方を指定されていたからね。」
ボクはそのまま、ボクを造った存在達がボクの為に用意した
小さなアパートの一室へと帰宅した。
アイツ(オリジナル)はあぁ見えて自分の哲学を持っている。
仲良くするつもりも無いけど、あまりイジめ過ぎないよう、
適度な距離を取りながらボクの根っこになったアイツの事を
これからも少しずつだけど理解してやっても良いかも知れない。
ボクはそんな風に思いながら、ピンク色のふわふわのタオルケットを
抱きしめながら眠りに就いたのだった。




