#12.ボクの包帯は聖骸布!?
「みぎゃタンのそのエッチな匂いのする包帯さ、もしかして一部の人達から
聖骸布みたいな扱いされてるんじゃない?」
突然、アンドロイドのアイからそんな事を言われた。
「え、え、何?ってか、包帯ちゃんと毎日変えてるよ?
まぁ一日汗吸ったの販売してるし、それは多少はその…
臭いかも知れないけどさ。」
「んー、何て言うのかな、霊力とも妖力とも何とも違うけど、
いわばみぎゃタン力、みたいな?そういう力が染み出してる、
特別なアイテムとして引きちぎってでも欲しいって言う異世界存在とか
この前みたいな謎の組織がいるんじゃないかなと思って。」
何て事だ。僕が自らを常に恥ずかしい緊張状態に晒すためのアイテムが
そんな風に思われていたとは!?
「だってさ、考えたらおかしいじゃん。
めちゃめちゃ恥ずかしい思いしまくってるのに
いまだにその格好やめないじゃん?
別に恥ずかしいだけなら、バニーガールとか逆バニーとか
色々あるじゃん。」
何故例えに出されたのが両方ともバニー関連なのかが謎である。
「うん、まぁでも確かにそうだよね…。
わざわざこんな千切られ易い格好よりかは、同じ恥ずかしいだけなら
バニーガールとかもあるかぁ…。」
そもそも、恥ずかしい格好をしたいと言う考えがバレている事が
何よりもめちゃくちゃ恥ずかしい。
「だったら一度、バニーガールでもやってみようかな..。」
「いや、どうせやるなら逆バニーでしょ。」
「え、逆バニーって股間丸見えじゃない!?
さすがにそれは経営者としてヤバ過ぎるよ。普通に犯罪だし、
そこまで来たらもう変態って言うか精神異常者でしょ。」
「いや、別に逆バニーって全てが通常のバニーと真逆になるワケ
じゃないんだけど…。みぎゃタン、どんだけ偏った知識で
逆バニーを認識してるの?」
「え、違うの?」
「・・・・。」
何はともあれボクはこの会話から、
一度バニーガール衣装での勤務を検討してみたのだった。
仕事終わり、自宅PCでネット販売されているバニーガール衣装を物色する。
「え、でもやっぱりこんなの、股間の膨らみ丸見えじゃん。
恥ずかし過ぎる…。」
だけど、もしコレを着て出勤している自分、
と妄想すると僕は興奮している自分に気付いてしまう。
(わ、ヤバ…。いつの間にかめちゃくちゃ興奮しちゃってる…。
パンツ履き替えて寝ちゃおう。)
こうしてこの日はネットで見るだけに留まり、
翌日もまたボクはいつもの猫耳ミイラ娘コスで出勤した。
「皆、おはよー。
ってか、勤務は夜からだけど何故かおはよーって言っちゃうよねぇ。」
するとそこへ、また黒いスーツの秘密結社の男達がやって来た。
「コイツか、不思議と異世界存在が集まるコンカフェの経営者は。
裸に包帯だけを巻いて、確かにあられもない哀れな格好だな。
コレで40代中盤の男ってんだから笑えるぜ。」
ボクはまたやって来た謎の組織達に嘲笑われて憤慨した。
「ちょ、ちょっと!いきなり来てその言い方、失礼じゃないですか!?
別にボクがボクの店でどんな格好しようと自由でしょ?」
「フン、自分の店ならどんな格好でも自由だと?
だったら、逆バニーでもそんな事が言えるのか!!」
ボクは昨日のアイとの会話を思い出していた。
「べ、別に逆バニーって全てが逆ってワケじゃないよ!?
だから股間はちゃんと隠されてるし!!」
「…コイツは一体何を言っているんだ?
そんなの当然だろう…。それともまさかその年齢で、
逆バニーは丸ごと真逆だと思っていたのか?」
ボクは図星を突かれてめちゃくちゃ恥ずかしくなった。
「う、うるさいうるさいうるさいぃ〜!!」
もはやボクには何の理も無い状況の中で、
ただ駄々をこねるような状況となった。
「まぁ良い。どうやらコイツの巻いた包帯はマニア達の間で高額転売されて
いるらしいな。嗅げば異世界存在達と繋がる力を得るだとか、
単純にエロ臭い匂いがするだとかで。」
「!?」
まさかの、ボクの着用済み包帯って転売ヤー達の餌食になってたの!?
彼らは仲間内で何やら相談を始めた。
「それならば、直接生体からその成分を摂取すれば良いだろう。
別にわざわざ包帯と言う媒介にこだわらずとも良いのではないか?」
「いや、どうやらコイツが一日働く中で感じる【恥ずかしい】と言う思いが
染み出し、それが匂いや特殊な力を与えているらしい。
だからバカらしく見えてもこのプロセスは必要なのだ。」
「え、えぇえ〜!!??」
ボクは思わず声に出して驚いてしまった。
そんな事自分でも知らなかったのに、誰が発見したんだろう。
「と、とにかく!
ちゃんとお買い上げ頂かないとこの包帯は渡さないんだからね。」
「何、売っているのか!?
転売サイトに出ているものは無理矢理引き剥がしたものでは無いのか?」
「ちゃんと店内カウンターで販売してるよ。2000円だけどね。」
「に、二千円だと…?そんな安価であんな良いモノを?
わかった、それなら買おう、1000個頼む。」
「ダメだよ。あくまで昨日身に付けてたのを翌日に先着順で売ってる。
量産出来ないモノだから、そこはご理解頂きたいよ。」
「何と…。だったら、店に通い詰めるしか無いと言うのか?」
「つまりはそういう事だね。
だけどたまには常連さんとかにも買わせてあげてね。
意外と人気なんだよ、ボクの着用済み包帯。」
「くそ、しかし我々の開発したハイブリッド異世界存在1000体に
全て配るまでには2000円×1000体で200万円はかかるぞ…。」
「それは確かに…。予算が降りそうに無いな。」
コイツら一体どれだけケチなの!?とボクは思った。
「ク、それならば仕方ない。
我々が毎日通い詰め、この店を異世界存在達から守ってやる。
その代わりに貴様は8割の出勤分の包帯を我々に差し出す、
それでどうだ?」
「別に良いけど、常連さんの席とかあるから、
キミ達は隅っこの席にいてもらうけど良いかな?」
「あぁ、構わん。むしろ我々はあまり表に出てはならない秘密結社だ。
そこに居ないと思われるくらい存在感は消していたい。」
「何かクラスの隠キャと考え方が同じだね…。
まぁ良いよ、そこまでちゃんとルールを厳守してくれるならそれはもう
立派なお客様だよ。
ボクもしっかり汗を付着出来るよう、頑張って働くね。」
「フン、調子に乗るなよ小娘...いや、中年男が。
その気になれば貴様らなどあっと言う間に…。
いつまでも我々が大人しくしているワケでは無いと言う事を心得ろ。
あくまでコレは店内の実態調査も兼ねているんだ。」
「またまたぁ。
そんな事言って本当はボクの猫耳ミイラ娘姿が見たいだけじゃないの?」
「そ、そんなワケが無いだろう、調子に乗るな!!」
「キャー、こわーい(笑)」
こうしてボクは何とかピンチを乗り切った。
それにしても本当にこんなボクの汗と匂いが付着した包帯に
力が宿るなんて不思議な話だ。
その時、宇宙人のレイナちゃんが下らないジョークを言った。
「しかしみぎゃタン、男のエッチな布なんて、
キリストを包んだ聖骸布じゃなくて【性・GUY布】なりな!」
━シーン…━
一瞬にして場が静かになった。
「さて、そ、それじゃあ我々は一旦アジトに帰るとしよう。
明日からは毎日奥の席に座らせて貰うからな、覚悟しろよ!」
覚悟も何もあったものでは無い。
単純に常連さんが増えるというだけの話だ。
もちろん彼らが闇の秘密結社である以上は警戒は必要だ。
だけど必要以上にそればかり気にしていても営業出来ない。
悪魔のポンぬさんがボクに話しかけて来た。
「キリストの聖骸布は2000年以上経った今でも、
私達悪魔が触れようとすれば体を炎が包む。
お前の包帯ももしかしたら本当に何か、
凄い力が染み出しているのかもな。
いやそれにしても、染み出すって何だか恥ずかしいな。
だってお漏らししてるみたいで情けなくないか?」
まったく、本当にもう!
この人(悪魔)と言い、エリ様と言い…何かにつけてボクの事を
わざわざと辱めるような言い方をする。
そりゃ一日頑張って働いてる間身に付けていた包帯なんて、
恥ずかしさから来る緊張もあるし色々と染み出すだろう。
何もそんなイジめるような言い方をしなくても、と思った。
幽霊のハナちゃんが更に付け加えるように言った。
「だけど本当に、みぎゃーさんの包帯、何て言うかその、
嗅いだら安心する匂いがするんですよね…。
それと体の奥からこう、こみ上げるものが…。
まぁ私幽霊ですから、体と言って良いのかわかりませんが。」
ボクはこの日、来てくれた常連さん達に事の経緯を伝えた。
これからは着用済包帯を売れる頻度が減ってしまう事を説明した。
「そ、そんなぁ~。店長さんの着用済包帯、嗅ぎながらその、
一人で致す事がかなり気持ち良かったのに。
だけど洗って使ったら匂い取れちゃうし、どうしようかなぁ。」
惜しんでくれるのはありがたいが、使われ方が結構最悪だった。
「まぁでも仕方ないか。そうなると今ここでシッカリと嗅いで行こう。
店長さん、こっちに来てくれるかな?」
こうしてボクは以前にも増してお客様達からのセクハラに晒された。
だけどまぁボクの事をこれだけ強く求めてくれる事は嬉しかった。
そうして翌日からは早速秘密結社の男達が隅っこの席に居座った。
異世界コンカフェはこれまでにも増して活況を呈し、連夜賑わった。
敵だと思っていた連中までがお客様となり、この時ボクはこの店が
何か不思議な力に包まれているのでは無いかと考え始めていた。
しかしそれはボク自身の力によるものでもあると言う事に後日気付いた。
やがて秘密結社の男達が包帯を買い始めてから、包帯の転売は止んだ。
しかしそれでもしつこく売られ続ける過去の包帯転売については
プレミア価格となり遂には7桁を越え始めていたのだった。




