#10.アヌビス神の来訪!?
異世界存在、と言う意味では神様もそのカテゴリに入るのかも知れない。
そしてこの日、ボクのカフェにもそうした圧倒的な存在がやって来た。
━チリンチリン━
お客様の訪問を告げる呼び鈴が鳴る。
ボクはすぐに飛んでいく。
「ハァーイ、異世界コンカフェへようこそ!
ボクが店長の猫耳ミイラ娘みぎゃーだニャン!!」
「・・・・・・。」
そこに立っていたのは大柄で2M以上はあろうかと言う、
黒い肌をした犬の顔の異世界存在だった。
「えぇと…どちら様ですか?」
その時、店の中からポンぬさんが飛んで来た。
「貴方様は!アヌビス神であられますね!?
何故このような場所に?貴方様は冥府の神では!?」
「うむ、最も私は死者の魂を導く冥界の神アヌビスなり。
最近ココで包帯のミイラが異世界存在を集めていると聞いてな。
しかし、小さな小娘では無いか。しかし違和感がある。
どうにも匂いが男なのだ。」
「あ、そうだよ?ボク、ミドフォーの男だよ?」
「何と…。男でこのような愛らしくくびれた見た目をしておるのか。
何故、不死の象徴であるミイラをモチーフに選んだのだ?」
「えーっと…(どうしよう、何だかセクシーでエッチだからとか、
絶対に言えない雰囲気だよぉ...)
やっぱり、このお店も閉店と言う死を迎える事無く、
永遠に続きますようにって願いを込めてだよ?
(ヤバ、ちょっと無理があったかな?)」
「ほぅ…。中々良いセンスをしておるな。
お前が死を迎える時には、その愛らしい姿ごと永遠に保存してやろう。」
(え、すっぴんじゃなくてこのミイラコスプレ姿を?
それって、後世の人達に発見された時、男なのにこんな格好をして
エッチでセクシーな猫娘を演じていた変態だって言われちゃう…)
「あ、あの、嬉しい申し出なのですが…、ボクにはさすがに勿体なくて。
失礼ながら、辞退させて頂きます。そのようなお力はもっと、
本当に不老不死を願う人の為にお使いになられた方が良いかと。
差し出がましいようで大変申し訳ないのですが…。」
「何故だ?男なのにそのエッチでセクシーな可愛い恰好を、
もっと多くの者達から認められたいのであろう?
それならば現代の人間達に限らず、後世の人間達からもそのように
エッチな目で見られ続ければ本望では無いか?」
(え、アヌビス様ってボクみたいな男が猫耳ミイラ娘のコスプレして
皆からエッチでセクシーだなって目線で見られたいって事に
一定の理解を示しているの!?)
「私は神だぞ。お前の願いなどお見通しだ。
それに男だからと言ってその願いは男らしい事には限らぬ。
可愛くてエッチな目で見られたいと言うのは全人類共通の意識だ。
私はそれをおかしいなどとは全く思わぬ。」
何とも、神様はスケールが違った。
別にボクみたいなミドフォーの男が猫耳ミイラ娘コスプレをして、
皆からエッチでセクシーな子だなって思われたい事について、
全く否定もせずむしろ普通の事だと言ってくれた。
ボクはアヌビス様に言葉を返した。
「ありがとうございます。本当は皆からそう見られたくて、
だけどやっぱりこんな年齢だし、男だし…もう無理かなって
そう思っていました。だけど諦めなくても良いんですね。
猫耳ミイラ娘コスプレ、これからも続けます!」
「まぁ、いつまでも続けると言うのは少々厳しいのかも知れぬ。
しかし人はあり得ぬものを手に入れようともがき生きるものだ。
そうした人々の生き様が積み重なり今と言う時間軸が存在するのだ。
お前もせいぜい足掻いてみよ。そしてエッチでセクシーな猫耳ミイラ娘、
それを体現する40代中盤男性として自らの存在感を示せ。」
何とも、神様からそう言われると物凄い壮大な事のように感じてしまう。
しかしやっている事は単なる変態性欲、承認欲求の塊だ。
「しかし、そんなにエッチでセクシーなミイラ娘になりたければ
もっと薄い生地を使えば良いだろう。トイレットペーパーはどうだ?
かなり薄いから透けるし、水で簡単にボロボロになるぞ。」
「え、ちょ、ソレはさすがに恥ずかし過ぎます!!
それにその、ちょっとでも興奮しちゃったら鼠径部が…その…」
「あぁ、そうか。確かに先走り汁で濡れて先端が丸見えになるな。
それではまるで変態のようだ。最も、変態なのだがな。」
何と言う神様だ。変態性欲だって事がバレていたのか。
「近年、ミイラは恐ろしくおぞましい物として恐れられて来た。
しかしお前のような者がそのイメージを払拭してくれれば
またミイラ化の技術が普及するかも知れぬな。
何より救いたい魂達にはその復活の際の乗り物として
身体を残しておいてくれた方がコチラとしても助かる事があるのだ。」
「ま、まぁそのガチミイラの話題はアヌビス様の専門ですもんね。
ただボクなんて本当、ただエッチなミイラ娘を目指してるだけですよ、」
「ふ・・・時代と共にミイラの役割は変わるものだな。
ところでポンぬよ、悪魔としての務めはちゃんと果たしておるか?」
「あ、ハイ!人間達の欲望を掻き立て、それを叶える為に多くの犠牲を求め
この世界のエネルギーの動きを活発にするよう努めております。」
「なるほど、ご苦労である。
我々神々はお前達のような末端の者達を指導・監視する役目であるが、
それは決して優劣の話では無い。単なる役割なのだ。
だから自分の立場を卑下するで無いぞ。十分に誇らしい役目だ。
ここに居る他の者達も全てそうだ。」
キャストの皆がアヌビス様の話に聞き入った。
やはり神様の威厳・存在感は凄まじい。
「ところで、そこにおるのは幽霊だな。
お前、生まれ変わりたいとは思わぬか?
もし上手く成仏出来ずにここにいるのなら私の力を使い
その魂を成仏させた後に復活させてやろうぞ。」
何とも物凄い能力だ。ハナちゃんの悩みが一気に解決してしまう。
「えぇと…ありがとうございます。
だけど私はまだ、暫くはこのままで大丈夫です。
みぎゃーさんや皆と一緒にここで異世界コンカフェを楽しみます。
こんな事、私のこれまでの幽霊生活の中で無かった事だから。
今はこの暮らしを大切にしたいんです。」
「ほぅ、なるほど。お前の意思は尊重しよう。
もし破壊と再生を望むのなら、冥府へと連れて行こう。
まぁ最も、お前達は国ごとに神が違うのであろうから、
自らの信じる神に願えば良いのだがな。
しかしその神々も本来は全て繋がっている事、忘れるな。」
国ごとに神様の姿形は違って伝えられている。
しかしそれはあくまで文化的な概念の相違でしかなく、
実際には魂という形では同じものであると言うのだ。
「みぎゃー…、お前の魂は非常に複雑な形をしている。
それは神の私の目から見ても複雑怪奇だ。
この星を滅ぼし兼ねない負のエネルギーと、
救世主のような非常に大きな正のエネルギー、
それらが一身に同居しておるのだ。
ある意味では非常に危うい、しかし同時に凄まじい。
その力の使い道、誤るで無いぞ?」
何だか物凄い事を言われるけど、ついさっきまで
先走り汁で先端が濡れて透けるなんて話をしていたんだけど?
こんな倒錯変態フェチ男にそんな力があるのだろうか。
「自分を必要以上に卑下せずとも良い。全ては役割なのだ。
自身の役割をハッキリと認識し、それに恥じぬ生き方をするのだ。
まぁお前の場合はまずそのお役目を探す所からだな。
非常に遠い度になるが、自分が何者かを見つけた時、
お前は全てを壊す力と全てを作り直す力の両方を手に入れる。
楽しみにしていろ、どう転んでも普通ではいられぬぞ。」
そう言うとアヌビス様はドアからゆっくりと出て行った。
まさか神様が来店するなんて。
ボクとキャストの皆はただ茫然と、その神々しいまでの残り香の中で
自分が今ここに居る意味を考え続けたのだった。




