第3話 難だらけ!矯正器具との生活
矯正器具を装備した同居人、思うように食べられない日々をすごす……。
矯正器具を入れて以降、月一回矯正歯科で器具の調整をする生活が開始。これが思いのほか結構大変だった。
最初は下だけ矯正器具が入った。一番最初矯正器具が入って処置室から出てきた同居人の顔たるや。
「あー気になる」と、小さな声で言っていた。会計を済ませて駐車場で言ってくれ。
まず最初に気を付けておきたいのが、矯正器具を入れると虫歯リスクが高まること。
矯正器具は、基本ずっと入れっぱなしになる。器具に食材が挟まりやすいので、できれば毎食入念に歯磨きをした方がいい。じゃないと、すぐ虫歯になってしまう。矯正器具が干渉していない箇所の虫歯であれば、普段通っている歯医者でも治療はできる。
でも器具がかぶさっているとなると、虫歯治療がどうなるのかは不透明。歯痛は避けたい。 だからだろう。同居人も、かなり頑張って歯を磨ていた。
次に知っておきたいのが、施術の基本。
同居人は通っていた矯正歯科では、施術を受ける前に歯に着色して磨き残しをチェックし、歯磨きをしていたとのこと。その後は問診などがあり、先生が矯正器具をしめるなどの施術を行う。なので、患者サイドは口を開けていれば施術そのものは終了。
レントゲンやデジカメでの撮影は、不定期で実施。レントゲンよりも頻繁だったのが、歯型取りだったらしい。おそらく3か月置きくらいにやっていたと話していた。(ここはうる覚えで、多分通う矯正歯科で差があるかも)
器具をつけるタイミングで、結構お金がかかる。万単位でかかると思っておいた方がいい。
保険対象でも結構なお金がかかるので、その部分は知っておいた方がいいだろう。なにも知らないままだった私は、たまに「ん?」って聞き返したくなるような金額になることがあった。
同居人は下顎だけにメスを入れる手術を受けるため矯正を開始したためか、最初は下の歯だけに装具が入った。器具が入ってすぐのときは、以下のことがずっと気になっていたと話していた。
・永続的に歯周辺になにかついてる感じがする
・唇の内側に器具が付着し、気になる…口内炎ができやすくなる
・歯の位置を動かす器具なので、手術前まで24時間エブリデイズッ友
矯正器具の調整は、先生が全部やるため詳細はよくわからなかった。装具を締め上げる際、同居人が通っていた矯正歯科では専門の道具を使用。
小さなペンチのようなものを使用したらしい。口内を圧迫することはないので、オエッとはならなかった。
人によって内容は異なる部分があると思う。また、通う矯正歯科によって使用するものは異なることもあるだろう。また、口腔内の状態、歯並びなどによっても施術に違いが出る可能性が高い。そのため、上記のことは参考程度にしてもらえるといいかなと思う。
矯正器具をしめる際は、最奥のほっぺた近辺のワイヤーを引っ張って行う。そのため、ワイヤーがちょっと飛び出てほっぺの内側に刺さることも珍しくない。
当然ではあるけれど、飛び出たワイヤーは先端が鋭いためほっぺの内側にブスブス刺さって痛い! チクチクするし、無事出血する。
出血するということは、口内炎ができる確率が高まるので、噛み合わせと併せてものが食べにくくなってしまう。
同居人も、飛び出たワイヤーにかなり悩まされていた。受診後かなり早い段階でワイヤーが飛び出ることもあったので、色々と検索をかけて対処方法を発見!
なんと飛び出たワイヤー部分に入れ歯を安定させる『タフグリップ』を丸めて貼り付け、封印する方法を見つけたのだ。
私は矯正未経験なので、矯正の痛さもワイヤーがほっぺに刺さる感覚も分からない。効果があるならそれでいいんじゃないかと、特に反対はしなかった。しかし半信半疑であったのも事実。
それまでほっぺにワイヤーが刺さる度、「あー痛い!」と結構大きな声で騒いでいた。
私は自分の身に起きる不具合に関しては、すぐに諦めてしまう性質。私自身未体験の痛みなので想像することもできず、騒ぐくらいならタフグリップを早く試してみてくれと見守ることしかできなかった。
実際にタフグリップを使用したら、ほっぺに傷を作らずに済んだ模様。「痛くない」「すげぇ!」と、大いに感動していた。
というのも同居人、食べることだけでなく外食も好き。特にラーメンが好きなので、口に傷ができると機嫌が悪かった。
月一で矯正歯科通いで、街中まで行く。その帰りに、ちょっと外食して帰るのが楽しみだった。
口内に傷があったり、ワイヤーが飛び出ているとなると、本当に面倒な感じで機嫌が悪くなる。それが解消できたのは、引率する私にとってもストレス軽減になった。タフグリップ、ありがとう。
矯正開始後、徐々に歯の位置がずれ始める。特に矯正歯科に行った当日と翌日は、締め上げられている感じがして、痛みを感じていることが多かった。虫歯の痛さとは全く異なる痛みで、固いものはほとんど食べられない。
矯正による歯の痛みを感じるようになって以降は、矯正歯科受診直後に外食はしなくなった。そして、以下のものをよく食べていた。
・豆腐
・柔らかい麺類
・卵焼きなど
とにかく柔らかいものを好んでいた。ごはんもだんだん軟らかめになっていって、あまり噛まずとも飲みこめるようなものを食べていたように記憶している。
料理は私が担当しているので、作るものは結構苦労した。なんなら食べられるか聞けば「なんでも食べる」と答え、いざ出してみると「それは食べるの難しい」と言ってのける。これの繰り返し。
なんなら食えるか言え。作るこっちの身にもなってほしい。
ただ、同居人は食の鬼なので、柔らかいものを好むといっても結構色んなものを食べていた。
うどんを食べるときも、かき揚げをつゆにつけてクッタクタにして食べてたし、器具の調整が終わって数日したらハンバーガーなんかも食ってた。案外なんでも食う。
柔らかさだけでなく、飲みこみやすさも大事なのかもしれない。ハンバーガーなんて結構ガツンと肉を使ってたけど、結構すんなり食べてた。
一人で何個も食べる程度に元気よく食ってた。多分、肉だけじゃなくてトマトみたいな水分の多い野菜も一緒に口の中に入っていたのがよかったのかなと思う。
あと、飲みこみやすさに注目すると、油分も大事なんだと思う。衣がしっかりしてるファミチキも、同居人は美味しそうに食ってた。食ってたっていうか、多分飲んでた。中から脂があふれ出てくるため、多分飲みこみやすかったのだろう。味も濃いし、あっという間に食べ終わっていたような気がする。
矯正が進むと歯の位置が変わるためか、食べ物が噛みにくくほっぺをよく噛んでいた。
同居人は基本温厚で、一緒に住み始めて怒っているところを見たことがない。すねたり文句を垂れることは、結構それなりにある。でも苛立っている場面はほぼほぼ見たことがなかった。
しかし、食べ物が噛みにくいというのは、相当なストレスになったらしい。食べることが生きがいなので、なおさら腹が立ったのだろう。
「あークソ、口の中噛んだ」「舌噛んだ!もー!」と食事の度怒っていて、あまりお言葉はよろしくないけど「クッソ!」とキレていたこともある。
これは同居人だけのことかもしれないが、かみ合わせが全くあっていないためか、噛むとバックリ傷ができるくらい深い傷を作ることが少なくなかった。
噛むかもしれないのに普通の力で噛み続けていた同居人だったからこそ、できた傷である可能性はあると思う。
なんといっても、これまでの人生、食べ物をすりつぶしながら咀嚼していた人間なのだ。噛むときに入る力は一般的な人とは異なっていてもおかしくない。
深い傷を作る度、キレ散らかしながらティッシュで血を吸っていたのを覚えている。
手術を終えてだいぶ時間が経った今、同居人の話しを聞きながら私は執筆している。
「あのころ怒りながら食べてたな」と私が言うと「そうだっけ」と、同居人はケロッとして受け答えしていた。手術が終われば、快適な毎日が待っている。
やんわり噛んだら?って何回か声をかけたが、聞く耳なんぞ持たなかった。気が強いのか、こちらの話は聞くに値しないのか。
やんわり噛む能力は、今も全く持ってない。全力で食材とほっぺたを噛む。
そしてこの矯正、思いのほか長い時間を使用することになる。




