第2話 ドキドキ♡矯正歯科デビュー.
初めての矯正!今までの人生でかすることさえなかった矯正器具が、同居人の口に装備される……。
紹介状をもらって、引き伸ばすこと数週間後。ようやく矯正歯科受診日になった。
「一人で行ってきていいって……」
大体こういうとき、なぜか同居人は私を一緒に連れていく。理由はよくわかっていない。
なんのために私は、病院に引率するのだろうか。わけわからんまま、同居人が運転する車の助手席に乗って、片道おおよそ40分かけて矯正歯科に向かった。
矯正歯科は、ビルの中に入っている小さな病院だった。年季を感じる作りで、待合に大人5人くらい入ると手狭に感じるくらいの広さ。特に受診する予定がないのに、私は気合を入れた。歯医者は嫌いでございます。
完全予約制の矯正歯科なだけあって、スタッフさんも少数精鋭の様子。そして、先生がベテラン。おじいちゃんだった。名前を呼ばれ、同居人だけ診察室へ。診察室まで引率しなくてよかったと安心する反面、待合室のソファで待ち続ける私は一体……と、一瞬の虚無。
最初の受診はそこまで時間はかからずだったが、手術対象になるかを検査せねばならないとのこと。
おそらく手術対象になるとは言われたものの、検査代が5万円ほどかかるとのことで動悸がした。たけぇよ……。
そして迎えた、検査当日。特に役に立つわけでもないのに、私は当たり前のように矯正歯科に引率していた。待合室でひたすら待つのが、私の仕事である。
こういう検査は、内容が変わることがあると思う。医学は日々進歩しているので、コロナ前の検査内容が参考になるかわからない。
でもなにをやるか全くわからないまま検査を受けるのは、恐らくハードルが高いのではないだろうか。
不安を和らげるため、本当に参考程度に同居人が受けた検査内容を記載するけども、鵜呑みにはしないでほしい。こういう内容かもしれないなという程度に、受けてもらいたい。
まず、頭を丸ごと固定。
私は検査の様子を一切見ていないので、同居人の記憶を発掘して執筆している。本当に鵜呑みにしないでほしい。同居人、結構いい歳なのだ。そして、こういう記憶は一瞬で消す才能を持っている。物理的に時間も経っているため、検査内容が異なる可能性があるはず。
本当に参考程度に。以下のような検査を受けたらしい。
・プレートのようなものを口に突っ込み、完璧な歯型を取る
・レントゲンを撮る…耳の穴に棒を突っ込んで、絶対頭がぶれないようにしてレントゲンを撮った
・普通のデジカメみたいなカメラで、口の中の写真を撮った
レントゲンは、なんかよくわからんなってくらい撮ったらしい。耳の穴に棒を突っ込んで固定したのは、結構衝撃的だったご様子。スムーズに話してくれた。この調子で全部話してほしかったけど、残念ながら他のことはうる覚え気味だった。悲しい。
手術は怖い。だから多分、同居人は避けられるなら回避しただろう。そういう性格である。ガタイはいいけどビビり。
でもビビっている場合ではなかったのだ。矯正歯科の先生から、衝撃の一言を告げられた。
「噛み合わせが一か所しか合ってない。このままいくと歯が全部抜ける」
今までかみ合わせが合ってないまま、食事をしてきたという驚愕の事実。最初からこれだったから、違和感はなかったとのこと。そらそうかもしれんけど、どうやって今まで食事をしていたのか。
どうやら、草食動物みたいに食事をすりつぶすように咀嚼していたらしい。人間はすごい生き物だ。かみ合わせがあっていなければ、適応する能力を持っている。
しかしなぜ今までこの深い噛み合わせが発見されなかったのかは、謎のままだった。今までのは医者はなんだったんだと、同居人は帰りの車でブリブリ怒りながら運転していた。
普通子どもの頃に見つかって、成人するまでに処置するらしい。この年齢になるまでほったらかしになっていた事例はあまり見ないとまで言われてしまった。
同居人、食べることが生きがいみたいなところがある。ものすごく食う。食に興味がない私では考えられないような量を平らげるほど食べる。その生きがいともいえる食が楽しめなくなるとなると、それはもう死活問題!
手術対象になる場合、矯正が保険適応になるのも手術と矯正に踏み切った理由の一つだろう。
同居人は下顎がプリティサイズなので、それをせり出す手術をするとのこと。顎が数ミリ前に出たときにかみ合わせが合うよう、矯正をするらしい。
矯正歯科デビューを果たし、まずは下の歯から矯正スタート! 総合すると1年半ほどの期間をかけて、下顎をせり出したときにかみ合わせが合致するよう、上下両方矯正を進めるらしい。
ちなみに、矯正器具を初めて装備したときは、かなり時間がかかった。1時間以上待合室で待っていたような気がする。ゲームが進んだ。
矯正器具を入れたら、基本は取り外し不可。24時間つけっぱなしで、手術の日も自ら取り外しはしない。
ただつけっぱなしにしておくだけ。それはそうなのだが、それが結構大変だったりする。入れてすぐの段階では未知数だった、矯正器具との共生生活が幕を開けた。
ドキドキ♡しながら処置室に入っていき、出てきたら矯正器具の違和感にものすごい渋い顔をしていた。
これから長い長い矯正との生活が始まる。




