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第九話 アース・ドラゴンとの対決

深層への階段を下り切った二人の前に現れたのは、地下空間とは思えないほど壮大な広大なる大樹海だった。

その中央に鎮座するのは、山と見紛うばかりの巨躯を誇る地竜の王——『アース・ドラゴン』。

「気をつけなさい、ナタル。アース・ドラゴンはただの魔物じゃないわ」

スターシャが隣で険しい表情を浮かべ、警告を発する。「その鱗はあらゆる物理攻撃と魔法を無効化する『絶対地殻結晶』。そして地脈そのものを自在に操る『大地絶対支配』の権能を持っている……。Lv.200クラスの冒険者パーティーですら、束になってかかって一瞬で全滅するレベルの怪物よ」

巨竜が低く咆哮を上げると、地鳴りとともに空間全体が激しく揺れ動いた。アース・ドラゴンは目前の侵入者を認識するや否や、その太い尻尾を大地へと叩きつける。

次の瞬間、ナタルの足元の岩盤が突如として巨大な槍のように尖り、猛烈な速度で突き上がってきた。地脈を操作した不可避の必殺技。

「ナタルッ!?」

スターシャの悲鳴のような叫びが響く。しかし、ナタルは退けるどころか、迫り来る岩の槍に向けて自ら右手を差し出した。

ズゴンッ……!

凄まじい衝撃波が駆け抜ける。だが、巨槍はナタルの手袋を外した手に触れた瞬間、ピタリと動きを止めた。

【概念吸収(システム・オーバーライド)が発動しました】

【アース・ドラゴンの『大地絶対支配』『絶対地殻結晶』『地脈共鳴』を複製・加算しました】

ナタルの体表が一瞬だけ鈍色に光り、即座に収まる。巨槍の硬度と大地の威光が、そのままナタルの肉体へと浸透していく。ナタルが軽く手に力を込めると、巨槍は粉々に崩れ去った。

「……なるほど。これが大地の『概念』か。悪くない」

「そんな……ッ!? アース・ドラゴンの地脈攻撃を、手で受け止めて概念ごと呑み込んだというの……!?」

スターシャは目を見開いたまま絶句した。

だが、深層の主たる地竜の王も黙ってはいない。己の攻撃が無力化されたことを察知すると、アース・ドラゴンは全霊の咆哮を轟かせ、その背の巨大な結晶器官を激しく発光させた。

ズズズ……ッ!

空間全体の重力が一変する。アース・ドラゴンが行使したのは、広域の地脈を暴走させて巨大な超重力領域を生み出す『地脈崩壊(グランド・グラビティ)』。立っていることすら困難な超重力がナタルを押し潰し、同時に全方位の岩盤から無数の岩石の尖角が弾丸のごとき速度で雨あられと射出された。

「クク……、一筋縄ではいかないか」

ナタルは口元を歪めると、奪い取ったばかりの『大地絶対支配』を即座に発動した。自身の足元に逆方向の重力場を生成して圧力を相殺すると、跳躍一閃、弾雨を掻き分けて巨竜の頭上へと迫る。

「グラアアアアッ!」

巨竜は巨大な前脚を振り上げ、山をも砕く圧倒的な質量攻撃をナタルへ叩きつけようとする。空中で避ける術はない。

(——合わせる)

ナタルは空中であえて身体の力を抜き、前脚の巨大な爪に自らの掌をピタリと重ね合わせた。

【概念吸収(システム・オーバーライド)が発動しました】

【アース・ドラゴンの『怪力乱神』『超震動波』を複製・加算しました】

ドバァンッ!

空中で爆発的な衝撃波が弾けた。アース・ドラゴンの巨腕から放たれた威力がそのままナタルの腕力と衝撃耐性へと書き換えられ、巨竜の踏み込みの勢いが一瞬で殺される。

「見上げてばかりでは首が痛む。——降りてこい」

ナタルは空中で身を翻すと、奪い取った『怪力乱神』と重力干渉の能力を合わせ、巨竜の鼻先を下方へ叩き落とした。

ドゴォォォンッ!!

アース・ドラゴンの足元の重力が十数倍へと跳ね上がり、巨竜は悲鳴を上げる間もなく、自身の巨体と超重力に押し潰されるように地面へ激しく叩きつけられ、ひざ伏せた。

「グオォォォッ!?」

「終わりだ」

ナタルは無防備になり地表へ沈んだ巨竜の頭部へと悠然と舞い降り、その結晶化された巨大な額へ静かに指先を触れさせた。

【アース・ドラゴンの『龍鱗絶対防御』『地竜の生命力』『龍圧』を複製・加算しました】

身体の奥底から滾る莫大な龍の威圧感と強靱な生命力を確かめ、ナタルは静かに手を離す。

「ふう……。これでまた、『器』が広がった」

巨竜はプライドを完全に粉砕され、ナタルの圧倒的な『龍圧』に気圧されて動くことすらできずにいた。ナタルは振り返り、呆然と立ち尽くすスターシャへ視線を向ける。

「行くぞ、スターシャ。まだ見ぬエンシェントドラゴン、そして魔神ども……。俺の『器』を満たすための狩りは、まだまだこれからだ」


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