第七話 最適化
深層へと足を踏み入れた俺は、激しい戦闘を終えるたび、必ずある「作業」をルーティンとして取り入れるようになった。
それが戦闘後の「最適化(再構築)」だ。
特に長時間の乱戦や、大量の魔物の群れを相手にした後は、体内に莫大な数の概念が脈絡なく溜め込まれる。
そのままにしておけば、以前のように「器」が過負荷を起こし、ノイズとなって体に負荷をかける。
(……集中しろ。体内の概念を精査するんだ)
静寂の広がる洞窟の一角で、俺は胡坐をかき、己の内面へ意識を深く落とし込む。
『概念吸収』によって奪い続けてきた能力の中には、無駄な重複や、すでに上位互換を手に入れた「下位の概念」が数多く混ざっていた。
例えば、スライムから得た微弱な『酸耐性(小)』や、下級魔物の雑多な『腕力強化(微)』といったものだ。
俺は体内で蠢く無数の概念の中から、それら不要な重複や下位の概念を削ぎ落とし、完全に「削除(消去)」する技術を体得していた。
(重複している下位概念を破棄……純度の高い上位概念だけを残し、一つの強固な「核」へと統合・圧縮する……!)
思考を研ぎ澄ますと、体内に溜まっていた雑多なノイズが綺麗に消え去り、澄み切った巨大な魔力と精緻な武技の概念だけが、極限まで磨き上げられた形で肉体に馴染んでいく。
「……ふぅ」
一息ついて目を開けると、身体の軽さと能力の密度が、最適化前とは比べものにならないほど跳ね上がっているのが分かった。
ステータスの「数値」そのものは変わらなくとも、力とスキルの「質」が完璧に洗練されている。
「ねえ、ナタル……またそれやってたの?」
少し離れた場所で警戒にあたっていたスターシャが、呆れたような、けれどどこか恐れを抱いたような視線でこちらを覗き込んできた。
「あなたの『高級鑑定スキル』で見てても、本当に不気味よ……。戦闘が終わるたび、あなたのステータス欄に溢れていた雑多なスキル表記がスッキリ整理されて、代わりに一つひとつのスキルの絶対的な威力が跳ね上がっていくんだもの」
「ただ奪うだけじゃ、効率が悪いからな」
俺は手袋をはめ直し、静かに立ち上がる。
「戦闘で強者の概念を喰らい、戦いの後に不要な下位概念を削ぎ落として最適化する。このルーティンを繰り返すことで、俺の『器』は限界なく純度を高め続けられる」
「能力を奪うだけじゃなくて、自分の中で整理・整理統合して洗練させるなんて……。もはや『レベル』なんて枠組みで強さを測ること自体が間違いね」
スターシャは息を吐き出しながら、苦笑いを浮かべた。
雑多な概念を捨て去り、純粋な強さだけを洗練させた「最弱のLv.1」。
俺の『器』はさらなる高みを目指し、より巨大な獲物(概念)を喰らう準備を完了させていた。




