第三十一話 2体目のエンシェントドラゴン
11体ものLv.1000超の概念を同時に呑み込めば、最適化を挟む間もなく『器』が破裂して自滅する。12体いたセキュリティコアの1体を喰らった時点で限界領域に達したことを考えれば、闇雲な連続吸収は愚策でしかない。
効率よく、かつ確実に「11体の概念」を己の血肉へと昇華させるための段階的攻略戦略:
11体撃破・概念吸収の「最適化」効率化ルート
* 【手順1】『概念の圧縮と構造化(圧縮フォーマット)』による器の事前拡張
すでに獲得した魔物たちのスキルや耐性、1体目のエンシェントドラゴンの権能データを体内で再構築(最適化)し、雑多なコードを限界まで圧縮する。『器』の余剰容量(空きメモリ)を常に最大化させた状態で次の戦いに挑む。
* 【手順2】属性・権能の「シナジー(相乗効果)」を意識した討伐順序
11体のエンシェントドラゴンが司る固有概念(属性・空間・時間など)を分析する。互いに相反する概念を連続で取り込むと体内で反発を起こすため、「火・土」といった同系統や「空間・重力」といった相性の良い概念から順番にコピー・加算し、体内で段階的に融合させて『器』そのものの強度を底上げしていく。
* 【手順3】1体ごとに『自己概念の再構築』期間を挟む
アクティブ化した刺客が連続で押し寄せた場合でも、一度に複数体を喰らわず、まずはLv.200超えの無詠唱超規格外魔法等で「討伐(撃破)」のみを行う。安全な領域へ引き上げた後、1体ずつじっくりと『概念吸収』を行い、確実に体内でデータ統合を完了させてから次の個体の吸収へ移る。
「一度にすべてを呑み込もうとすれば自滅する。だが、1体喰らうごとに俺の『器』は拡張され、次の巨大な概念を受け止める余裕が生まれる……」
一口ずつ着実に噛み砕けば、11体という莫大なコード群すらもナタルを完全なる存在へと進化させる「階段」へと変わる。
ここから一番近いとこにいるエンシェントドラゴンはどんなやつだ?とヴァルネに尋ねた。
「ふふ、気になるの? 案外、目と鼻の先に鎮座しているわよ」
荷物をまとめ終えたヴァルネは、愉快そうに楠の杖で地面を小突きながら、ナタルに向かって片目を細めて見せた。
最寄りの迷宮に鎮座するエンシェントドラゴンの情報
* 潜伏地:『大断層の底・常闇の深淵迷宮(ノード04)』
この街から街道を西へ数日進んだ先、大陸を真っ二つに裂く大渓谷の最深部に位置する大迷宮。
* 識別個体名:『嵐龍』
空間そのものを無数の刃へと変える「大風と真空の概念」を掌握するセキュリティコア。
* 固有権能:『絶対空間切断』および『不可視の超風圧領域』
以前ナタルが1体目のエンシェントドラゴンから奪った『万物絶対切断』や『空間歪曲』と類似しているが、こちらは広域の空間そのものを常に「超音速の真空刃」で満たし、近づくあらゆる物質・魔力を分子レベルで刻む防衛ルーチンに特化している。
「アクティブ化」による現在の変貌
安全装置が解除された現在、この嵐龍は迷宮の最深部でおとなしく鎮座しているだけではない。
自発的に迷宮全体の風穴を開放し、周囲数キロに及ぶ大断層全体を「立ち入った者を即座に細切れにする巨大な真空結界」へと変貌させてナタルの接近を警戒している。
「1体目よりも防御を固め、寄ってきたバグ(ナタル)を遠距離からすり潰す気満々ね。……でも『空間』や『切断』の概念なら、あなたがすでに体内に持っている権能と親和性が極めて高いわ。喰らいやすさという意味では、最高の『2体目』じゃないかしら?」
「相手もこちらを『特定危険コード』として認識しているなら、真っ向からの力押しは向こうの防衛プログラムの術中に嵌まる」
ナタルは静かに己の拳を開閉し、体内の「器」を満たす概念の波動を微調整した。
これまでの戦闘と異なり、2体目のエンシェントドラゴン『嵐龍』はナタルというバグを消去するために「迎撃モード」へと移行している。迷宮全体に張り巡らされた『不可視の超風圧領域』は、ただ近づくだけで分子レベルの切断が襲いかかる迎撃システムだ。
準備を開始したナタルは、対『迎撃型アクティブコア』用に以下の攻略・対策の最適化を組み上げた。
2体目『嵐龍』討伐に向けた準備と対策
* 『超密度肉体構造』と『重力自在制御』の複合展開
1体目のエンシェントドラゴンやアースドラゴンから喰らった重力干渉と肉体耐性を最適化。広域の風圧・真空刃による圧殺を、身体の表面に展開する「局所超重力場」と「超密度皮膚」で相殺・食破しながら接近する。
* 『飛行・風圧制御』コードによる領域の「同調」
ワイバーンロードから奪った『飛翔・風圧制御』と『空力展開』の概念を稼働。嵐龍が作り出す風のベクトルの隙間を看破し、相手の風圧を推進力へ変換して大断層の空中を高速移動する。
* 『概念侵食』の先手
接近と同時に、1体目から奪った権能『万物絶対切断』『空間歪曲』をナタル側のノードとして干渉・発動。嵐龍の「絶対空間切断」のプログラムを外側から干渉・麻痺させ、概念吸収のための接触パスを無理やりこじ開ける。
「準備はできた。向こうが結界を強めようと、俺にとっては『喰らいやすい高濃度データ』の塊に過ぎん」
黒い手袋を深く締め直し、ナタルは大断層の深淵へ向け一歩を踏み出した。




