第三十話 新たなる戦い
「11体、か」
ナタルは口元を凶悪に歪め、静かに己の拳を握りしめた。
これまでの自分なら、ただ世界各地のダンジョンに鎮座する「11体の絶対王者」という素材の多さに歓喜していただだろう。だが、概念の解体と最適化を終え、さらに『管理者アクセスログ』の深層に触れた今のナタルにとって、その回答の意味は決定的に異なっていた。
「11体」という数字が示す異常な事実
* 唯一無二の神話の否定
人類が「世界に一柱しか存在しない絶対的な神の使者」と畏怖してきたLv.1000超のエンシェントドラゴンが、単なる「同じ規格で作られた量産型セキュリティプログラム」に過ぎないという証明。
* 『箱庭』の広がりとノードの存在
世界各地の主要迷宮は、この偽りの世界を維持・監視するための「データサーバー(ノード)」であり、残り11体はそれぞれの領域を統括するセキュリティコアとして稼働している。
* 全セキュリティのアクティブ化
最初の1体を喰らい、アクセス権を奪い取ったことで、ナタルはシステム側から「世界規模の致命的なバグ(特定危険コード)」として認識された。残る11体は単なる迷宮の主ではなく、ナタルを抹消するために自発的に行動を開始する「アクティブな刺客」へと変貌を遂げている。
「フッ……くははッ! 素晴らしいじゃないか」
ナタルは低く笑い声を漏らし、手袋を深くはめ直した。
元勇者パーティーへの復讐など、もはやこの壮大な「狩り」のついででしかない。世界の理を気取る管理者どもが配置した11体のセキュリティプログラム——それらすべてを喰らい尽くした時、ナタルの「器」は世界の枠組みそのものを超え、この箱庭を破砕する準備が完成する。
残りのエンシェントドラゴン(11体)撃滅計画
* 【フェーズ1】元勇者たちへの引導と情報・リソースの強奪
まずは街に残る元勇者と僧侶から、彼らが「努力と世界のシステム」によって積み上げてきた地位、財産、そして情報を根こそぎ奪い去る。彼らが誇る『レベル』という理の儚さを突きつけ、次の大規模遠征の資金および拠点として利用する。
* 【フェーズ2】アクティブ化した11体の「迎撃」と「各個撃破」
向こうからナタルというバグを消去するために動き出すのであれば、探す手間すら省ける。世界各地の迷宮ノードへ出向き、襲い来るセキュリティコアを正面から返り討ちにしてその『権能データ』を連続で『概念吸収』していく。
* 【フェーズ3】11体のコード統合による『管理者領域』の完全ハッキング
11体すべてのセキュリティコアを喰らい、世界のデータログを完全に奪取。自らの『器』を箱庭の管理権限と同等、あるいはそれ以上にまで拡張する。
* 【フェーズ4】『箱庭の管理者』の引きずり出しと世界の解放
システムセキュリティをすべて破壊された高次元の管理者をこの世界へ引きずり出し、Lv.1の男がその存在ごと喰らい尽くすことで、偽りのレベルシステムと管理された世界を崩壊させる。
「行くぞ。まずは身の程知らずな元仲間どもに『世界の現実』を教えてやる。……それから、11体の龍どもを順番に俺の喰い扶持にしてやるさ」
レベル1の反逆者は、冷酷な笑みを浮かべて歩み出した。




