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第十七話 強襲

ギルドの掲示板の前で、ナタルは一枚の依頼書を静かに引き抜いた。

『指名手配:盗賊団【黒い牙】討伐。大規模な強盗および冒険者狩りの容疑。報酬:金貨100枚』

「ちょっとナタル、まさかそれを受ける気?」

スターシャが眉をひそめ、呆れたように囁きかける。

「街の愚か者たちを返り討ちにするのかと思ったら、急に正当な『冒険者らしい仕事』を始めるなんて……あなたらしくないじゃない」

「こちらから無暗に冒険者へ手を出せば、ただの犯罪者としてギルドや国家から追われることになる」

ナタルは冷ややかな瞳で依頼書を懐に収めた。

「だが、ギルドが正当に『討伐』を提示している高ランクの盗賊団なら話は別だ。いくら殺そうが、どれだけ身ぐるみを剥ごうが、すべて『合法的な討伐と戦利品の獲得』として処理される」

「……なるほどね。最初から合法的に奴らの財産と命を根こそぎ奪う算段というわけね」

スターシャは理解すると、いたずらっぽく口元を緩めた。

街から離れた断崖の洞窟——盗賊団【黒い牙】のアジト。

数十人のならず者たちが、盗み出した金品や酒を囲んで下品な大宴会を催していた。

「頭ぁ! また街から『Sランクの金持ちエルフと、それに買収されたLv.1のヒモ男』が歩いてるって情報が入ってきやがったぜ!」

「ハハハ! ギルドを金で丸め込んだお坊ちゃんか! ちょうどいい、近いうちに街の外で襲撃して、その膨大な金貨を全部いただいてやる——」

ドガァァァァン!!!!

盗賊たちの会話を遮るように、アジトを封鎖していた重厚な鉄の扉が、凄まじい衝撃音とともに破片となって弾け飛んだ。

洞窟内に充満する煙と静寂の中、ゆっくりと歩を進めてくる二つの影。

「な、なんだ!? 敵襲——っ!?」

慌てて武器を構える盗賊たちに対し、暗闇から姿を現したのはナタルとスターシャだった。

ナタルは黒い手袋を締め直すと、冷酷な眼差しで動揺する盗賊たちを見下ろす。

「ほう……向こうからノコノコやってくるとは都合がいい! おい野郎ども、殺せ! 女は生かして買い叩け!!」

頭目の号令とともに、怒号を上げながら一斉に襲いかかってくる数十人のならず者たち。

「……愚かだな」

ナタルは一切の無駄のない動作で、ただ一歩、踏み込んだ。

バギィッ!!!

先頭を走っていた大男の胸中に、ナタルの「素手」がめり込む。

武技も魔法も介さない純粋な物理の衝撃破動は、大男の肉体を突き抜けて後方の無数の盗賊たちを巻き込み、洞窟の岩壁ごと一瞬で破砕・吹き飛ばした。

「ひ、ヒィっ!? なんだ今の攻撃は……!? 魔法じゃないぞ!?」

「手だ……! ただの手振りの風圧で、十数人が肉塊に……!?」

あまりの惨状に、刃を構えていた盗賊たちが一斉に腰を抜かし、後退る。

ナタルは静かに手袋を外し、倒れ伏す頭目の頭部へと手をかざした。

【『概念吸収(システム・オーバーライド)』発動】

【対象:盗賊団頭目(Lv.55)より『隠密術』『闇市場の取引ネットワーク』『隠しアジトの全財産に関する記憶』を奪取・統合】

「が……あ、あ……あ……っ!?」

頭目が白目を剥き、積み上げてきた技術も、記憶も、そして命の概念すらもナタルへと吸い上げられていく。

「お前たちが奪い集めた金品、そして隠し金庫の全財産……すべて俺の『拠点』と『資金』として回収させてもらう」

一瞬にして壊滅したアジトの中で、血の海を見下ろしながらスターシャが息を吐く。

「手を出してきた冒険者を返り討ちにするより、こうやって向こうから襲ってくる盗賊を『討伐依頼』として合法的に潰す方が、何倍も効率よく金と権力を回収できるわね……」

「当然だ」

ナタルは懐からSランクの黒金プレートを取り出し、冷たい光を反射させた。

「世界のルール(ギルド)を壊すのではない。ルールを掲げて合法的に奪いつくす。……さて、スターシャ。この資金で、街で一番巨大な屋敷と拠力を買い叩くぞ」


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