第4話
アリスが考えた作戦というのはある種単純なものだった。石板がある場所を中心にそこに据えられるようなものがないか三人でくまなく捜索するということだ。
石板が台座であると仮定した場合、そこにはめる何かがあることは確かでそれが何かしらのはずみで取れて近くに散らばっているという可能性は否定できない。一応、この周辺について捜索をしたのかとアスタに尋ねてみたが、彼女はこの石板そのもの以外は調査していないとのことなのでまったく意味がないということにはならないだろう。最も、ここに収めるべきものがあるとして、それが必ずしもこの周辺にあるとは限らないのだが……とにかく、この石板の正体がわからない以上はできる限りのことはやってみようというのがアリスの考えだ。
「それにしても、何も見つからないな……」
調査を開始して半日。現状だけで言えば石板の周囲の捜索というのは残念ながら無駄に終わりそうだ。というのも、この石板に収めるべきものがあるどころか、この石板に関して何かしら手掛かりになるようなものが全く見つからないのだ。
通常、こういった遺跡は昔の人類が何かしらの意図をもって作ったものであり、その意図をくみ取らせるために何かしらの但し書きが有ったり、今回のような石板であれば、それの使い方を示唆するようなモノが近くにある場合が多い。しかし、今回の石板は山の中に堂々と存在しているだけでその近くに魔力を感じるモノが全くない上に、石板はただそこに存在しているだけで、この石板が何に使えるのかというヒントが全くと言っていいほどない。こうなって来るとこの石板についてどのような目的をもって作られたものなのかという結果を見出すのはほぼほぼ不可能だということになってきてしまう。
その後もアリスたちはもう半日をかけて捜索をしたが、ヒントというほどのヒントは得られずに一日は終わって行った。
*
周囲を捜索し始めて三日目の夜。アリスたちは焚火を囲んで今後の作戦について会議をしていた。とはいっても、アリスの中ではこの石板の調査についてはちゃんと調べると夏休みが終わってしまいそうなのでいったんはあきらめるという方向で話を進めているため、今回の依頼の落としどころについての話に内容は集中している。
「ふむ。アリス教授をもってダメとなるとどうしようもないな」
アスタはそう言って小さくため息をつく。彼女としても一研究家としてこの石板についてはしっかりと調査したいというのが本音なのだろう。
「まぁ私としても不本意だがね。学生の夏休みが終わるころには学校にいなければならないからな。仮にマリーをここに置いて行ったとしても、革新的な発見でもない限りはこの石板について謎が解き明かされることはないだろうしな」
アリスは遠回しに助手のマリーを置いて帰ることはないぞと言いながら今回の依頼について総括をする。
「……確かにそれはそうかもしれないな。今回はあきらめるとしよう。ただし、この石板について何かヒントを得られたときは共有してほしい」
「それはもちろんだ。一応、話せる範囲での話だったらという前提はあるがね」
アリスは何となく最初に考えていた、この石板が例の聖書がらみだった場合のことを考えて予防線を張りながら話を進める。
「あぁもちろん。何かしらの事情で人に話せないような内容だったらそれを無理に聞き出そうなどとはしないさ」
「そう言ってもらえると助かるよ。さて、今日のところは……というよりは今回の調査はここまでにして、明日は下山をしようか」
「はい。わかりました」
「うむ。そうしよう」
アリスたちはその会話の後、焚火の灯を消してそれぞれのテントの中へと入る。
「……まったく。マーガレットは今頃どこで何をしているんだろうな」
聖書の件と言えば、自分の愛弟子であるマーガレットのことが頭に思い浮かぶ。おそらく、連絡がないということはそれなりにうまくやっているのだろう。アリスはそう考えながらテントの中に用意してあった寝袋に身を包み目を閉じた。




