第77話 断罪
【登場人物紹介】
不知火綾麿━━━━
従三位中将。帝と日本を守る『六歌戦』の一人。謎の妖刀『村雨』を時の帝から拝領し、御所警備の西番を任されている。村雨の真刃と鞘刃を使った不知火二刀流の使い手。江戸徳川政権を激しく憎み、鎌足を快く思っていない。昨晩起きた蒼鬼と紅鬼の御所侵攻を退ける。
伊賀の鎌足━━━━
江戸城の公儀御庭番伊賀組の小頭の女忍。伊賀流鎖鎌の使い手。七十年前に鬼を滅した伝説の刀『鬼切丸』を手に、鬼が現れた京都に援軍として派遣される。しかし裏では極秘に朝廷の探索の密命も帯びる。昨晩起きた蒼鬼と紅鬼の京都御所襲撃を何とか退けたのだが⋯⋯。
樋ノ口麒麟━━━━
従四位下少将。白鞘の模造刀を手にする少年公家。天舞と呼ばれる剣技を操り、御所警備の北番と南番を務める。性格は執念深く自己中心的。人によって態度ががらりと変わる。些細な出来事から生じていた鎌足との確執は、鬼の御所襲撃をきっかけに更に深いものとなる。
近衛兼季━━━━
従二位大将。武官最高位の大将として、清涼殿だけを警備する御帝親衛隊を指揮する。鞍馬一刀流の使い手で、性格はおおらかで実直。鎌足にも親しみを見せる。
━━━━紫宸殿、八つ時、未の刻。
“明日”を議論し、”昨日“の鎌足の東番警備の是非も問う、緊急の会合が今まさに開かれようとしていた。
鎌足は紫宸殿に入ってからずっと低頭していた。
浴びせられる視線は、どれも冷ややかだった。
広い紫宸殿内はまだ冬の趣が残る。
額からは床の冷たさと共に、居並ぶ人の冷たさまでが伝わってくるようだった。
長い沈黙を破り、鎌足は凍えた額をゆっくりと上げていく。
⋯⋯紫宸殿で鎌足が帝に謁見したのは、僅か一昨日前のことだった。
二日も経たずに開かれたこの会合の席。
目の前には再び錚々たる顔ぶれが並んでいた。
まずは正面の上座。
二重の御簾の先には、昨夜の鬼の襲撃の難を逃れた帝の朧気な影が在った。
しかし今日も今日とて、下座からはその姿を見ることはできない。
今日もまた鎌足に少し遅れて現れた帝の動きや佇まいは、一昨日と全く同様だったからだ。
二重の御簾での視覚の遮断は勿論、紫宸殿に入る移動の姿すら屏風の衝立で見えないようにしている。
御簾の先の帝の影は今、ただ黙して座していた。
そして今日もまた、そんな帝をこの紫宸殿まで案内してきたのだろう。
帝と共に現れたのは、武官の長でもあり、昨日の死闘を生き延びた近衛大将兼季だった。
兼季はこの緊急会合の責任者としての立場も兼ねているのか、今日も帝の御簾のすぐ脇に腰を下ろしていた。
昨夜の大惨事や怪我の面影を残すように、その額や両腕には多数の包帯が巻き付けてある。
そしてこれからの会合の重々しさを予言するように、その表情は険しいものだった。
そして帝の座る上座左右には、所用で欠席となったらしい関白の代わりに左大臣と右大臣が鎮座し、また一段下りた左右には、左に大納言を筆頭として、相当に高い位の文官の公家たちが座している。
ただ大納言のすぐ隣の二席は空席だった。
その空席は、葬魂の術を仕掛けた蒼鬼の侵入を受け、無残にも殺された中納言と少納言の二席と思われた。
その人間二人分の空間の存在が、昨日の大惨事の哀愁と現実感を更に際立たせていた。
そしてその二段目にあたる高官の席、大納言の正面。
鎌足から見て右側に並んで控えている公家の列の先頭には、鎌足がよく見知った顔が二つあった。
狩衣ではなく、儀礼用の衣である黒の束帯を珍しく纏った、武官の二人⋯⋯。
⋯⋯不知火中将綾麿と、樋ノ口少将麒麟。
昨夜の事情を知る当事者でもあったためか。
一昨日は欠席していた彼等二人も、今回の緊急会合には出席していた。
服装が狩衣ではない点以外、何ら昨日までと変わらない無表情で冷静な綾麿とは違って、麒麟は左目に血を滲ませた包帯を巻いていた。
その包帯周辺の目元や頬や顎は、昨日の蒼鋼鬼の拳と鎌足の鎖分銅から受けた傷痕がまだ生々しく残り、痛々しい腫れや青痣も相当に目立っている。
しかし大怪我を負っているものの、麒麟の機嫌はすこぶる良さそうだった。
紫宸殿に鎌足が入ってきてからは、鎌足をずっと鋭く睨み付けながら、愉しそうに時折にやにやと蔑んだ笑みも浮かべている。
上から目線なのは麒麟だけではない。
この十人程の高官の席から更に一段下がった三段目。
下座の左右には、今日も顔に白粉を塗りたくった宰相以下の立場の公家たちが、位階や役職に応じて左右に連なっていた。
その下座に座る文官の公家たちのほぼ全員が今、紫宸殿の中央で畏まる鎌足に向けて、余裕と圧の籠もった権力者特有の睨みを効かせていたのだ。
一方の鎌足はと言うと、男装の羽織袴ではなく、女性として忍として、普段の”ありのまま“の女忍装束姿だった。
ただし鎖鎌も鬼切丸も、密かに懐に残していた手裏剣までも、武器の何もかもを紫宸殿の入口で預けていた。
即ち今日は完全に丸腰の状態だった。
忍ならば、何かの武器を常に身体や衣服に仕込む。
そんな伊賀に伝わる生存のための習わしをも全て捨て去り、今の鎌足はただ純粋に謝罪の気持ちと、一つの強い覚悟をもってこの場に臨んでいた。
忍装束の上に纏う、礼儀用の純白の羽織。
それこそが鎌足なりの謝罪。
全ての咎を甘んじて受ける。
覚悟の死装束だった━━━━。
━━━━「⋯⋯関白殿以外は高位の皆、全員揃いましたな。⋯⋯それでは。各々方よ、早速本題へと入らせて頂こう」
兼季の開式の辞の直後だった。
紫宸殿にどんよりと漂う淀んだ空気を破り、誰よりも真っ先に重い口を開いた者が居た。
下座の更に一番奥。
頭を上げたばかりの鎌足だった。
「⋯⋯大将様!」
その一言は力強かった。
名前を呼ばれた兼季の方が逆にたじろいだ程だった。
左大臣他その場に居並ぶ公家たちも全員が、この鎌足の声に反応する。
自分を真っすぐに見つめる鎌足。
その熱く煌めく瞳を見つめ返しながら、兼季はゆっくりと頷き返した。
(⋯⋯ありがとうございます。⋯⋯大将様)
⋯⋯そして鎌足は帝と兼季の無事を喜ぶ挨拶に始まり、居並ぶ公家たち一人一人に直接話しかけるように、今の想いを力強く真摯に“言葉”に変えていった。
公家たちの誰もがその言葉に耳を傾けていた。
そして綾麿と兼季を除き、そのほとんど誰もが鎌足を嘲り笑い、全ての言葉を否定するように厳しい表情を浮かべていた。
公家たちの思考は共通していた。
(⋯⋯江戸の忍上がりが。何を偉そうに畏まった仮初めの言葉を。ほほほ⋯⋯笑わせてくれるのう)
(⋯⋯この女子忍、そこなきつい顔とは裏腹に、胸の内は弱々しく泣き喚いているに違いない、ほほほ)
(⋯⋯綺麗事を並べても、どうせ最後は命乞いじゃろう。ほれ、はよう、命乞いをしてみせよ。ほうれ)
(⋯⋯ほほほ。決して許してなるものか。この場に下賤な女忍を許すような、物好きは誰一人も居らぬわ)
(⋯⋯大将殿、左大臣殿、右大臣殿とて、麿たち高官全員の反対を前にしては、どんなに命乞いをしようが首を縦には振れぬわ。⋯⋯ほほほ。死に晒すでおじゃる)
そんな公家たちの邪な好奇の視線を一身に浴びながら、鎌足は最後に一際力強く、こう締め括った。
「⋯⋯此度の東番の失態、清涼殿に鬼の侵入を許してしまった事実を筆頭に、起こった惨事の全てはこの私、東番を差配していた鎌足の責任。⋯⋯真に、真に申し訳ありませんでした。よっていかなる処遇も甘んじてお受け致します。どうぞ何なりと私に罰をお与えください」
それは一点の曇りもない澄んだ声。
凛とした言葉だった。
自らの罪を認める。
咎人として全ての裁決を受け入れる。
鎌足は自らそう断言したのだ。
これには鎌足が命乞いをするものとばかり思っていた公家たちからは、一斉にどよめきが起きた。
自分の耳がおかしくなったかと疑い、小指で耳を穿る者たちも多数見られるくらいだった。
そんな公家たちの動揺の波を余所に、鎌足は真っすぐに御簾の先の帝を見つめていた。
決して揺るがない覚悟を秘め、この場に臨んでいる。
言葉を始めから末まで、何ら変わることのない鎌足の瞳の煌めきが、その覚悟の強さを如実に物語っていた。
「⋯⋯⋯⋯」
綾麿は鎌足の目に浮かぶ覚悟の中に、既に“死”の匂いを感じ取っていた。
(⋯⋯こやつ、死ぬ気だな。鬼を相手にあれ程までに命を燃やしながら、人や公家が相手では戦うことすら忘れ、簡単に命を捨て、はや生きる屍と化す、か。⋯⋯相変わらず愚かな奴だ)
綾麿は視線を徐に下げると、深い溜め息を吐いた。
そしてたった一言、心の中で呟いた。
(⋯⋯つまらぬ)
覚悟を伝え終えた鎌足に、まず真っ先に話かけたのは上座の兼季だった。
「⋯⋯か、鎌足殿よ、そう結を急く必要はない。昨日起こった鬼の襲撃の事実確認と、新たな人事を含めたこれからの当御所の再建について、たった今から皆で話合うのだ。よいな、自身を軽んじた発言はならぬ」
兼季は鎌足の覚悟の言葉を一旦打ち消すように、左から右へと居並ぶ公家たちを見渡しながら問いかけた。
「⋯⋯ま、まず、そうだ、今の鎌足殿の件から、話し合おうと思う。そうでなければ鎌足殿の心も落ち着けまい。⋯⋯各々方、昨日の鬼襲撃と御所損壊の一件につき、東番頭鎌足殿の責任を問うべきか否かを⋯⋯」
兼季の言葉が言い終わるか否か、だった。
真っ先に麒麟が軽快に口を開いた。
「⋯⋯大将殿! この伊賀の鎌足と申す者、全くの期待外れ。実力に乏しいこと甚だしく、鬼に後れを取り、多くの大切な同胞を死に至らしめました。そればかりか、朱の大鳥居を含む由緒正しき御所を、これ程までに激しく損壊させたのもまた、この馬鹿の責任。⋯⋯その咎は明白。よって罰は免れ得ないでしょう!」
その麒麟の言葉に、公家たちからは一斉に感嘆と同調が含んだ吐息が漏れた。
(正にその通り⋯⋯)(憎たらしい、咎人じゃ⋯⋯)(悪い悪い女子じゃ⋯⋯)
そんな公家たちの声無き声が、紫宸殿内に木霊する。
この麒麟の容赦の無い追及に、鎌足と綾麿、そして兼季の反応は三者三様だった。
鎌足は少しだけ俯きながら目を細めていた。
そしてこの麒麟の棘だらけの辛辣な言葉を、ただ黙って聞いていた。
(⋯⋯っ、麒麟。少なくとも御前は絶対にそう言うだろうな、って思っていたよ⋯⋯)
「⋯⋯へへへ、ざまあみろ」
そんなほくそ笑む麒麟の隣に座している綾麿は、麒麟とは目も合わさることもなく淡々と呟いた。
「麒麟よ⋯⋯、麿の記憶違いか? 確か一昨日の夕刻は、鎌足の剣の腕を褒めてはいなかったか?」
「⋯⋯あ、う、⋯⋯い、いえ、あ、あれはですね、⋯⋯そう、お世辞ですよ、お世辞、社交辞令ってやつです」
麒麟があたふたと慌てながら適当に誤魔化す一方。
このままの流れでは、鎌足が咎人であることを前提として、会合が進んでしまうからだろう。
兼季だけは見るからに困惑していた。
「⋯⋯しかし少将よ。見よ。鎌足殿はこんなに傷つきながらも全力で鬼と戦い、最後は鬼たちを撃退したのだぞ? 内裏には”厳罰を課すべし“という厳しい見方や意見が出ているのは百も承知だが、警備兵や下官の者たちからは、鎌足殿への同情の声も多数上がっているのだ」
「⋯⋯多数の同情の声? ⋯⋯ですか? おかしいなあ。私の耳には一つも入ってきていませんねぇ」
「⋯⋯それに大将の私としても、御帝親衛隊を総員失った上に、倒壊に巻き込まれ不覚にも気を失ってしまい、最後の戦いには参加できなかったのだ。力及ばなかったのは鎌足殿もこの私も同じ事。また私も含め皆の命が有るのも、鎌足殿の活躍あってこそだ。⋯⋯鎌足殿に関しては、私はひたすらに感謝の念しか無い。此度の一件、全くもって咎には当たらぬと思っているくらいなのだ」
麒麟は兼季の言葉に即座に反応した。
立ち上がり仰々しく手を広げ、荒れ果てた御所の方を指差し、身振り手振りまで加えながら、予てから図っていたように振る舞った。
「お言葉ですが、大将殿は甘すぎませんか? それに勘違いしないでください。何も馬鹿女殿憎しではありません。私も心を鬼にして言っているのです。⋯⋯この御所の惨状を見てください、涙に暮れる死んだ仲間たちの家族、そして破壊され尽くした御所の有り様、消えた大鳥居。考えるだけで、⋯⋯もう、涙が出てきます」
麒麟は最後は束帯の袖を腫れた左目に当て、涙まで流していた。
いや、実際には泣いていない。
正面に近い位置から見える鎌足には分かっていた。
袖と手の隙間から覗く麒麟の口元は笑っている。
それは明らかに“泣いたふり”。
三文役者の芝居だった。
(わざとらしい⋯⋯)
麒麟のあからさまな仰々しい演技に、鎌足はただ顔を顰めて呆れ果てるしかなかった。
そんな麒麟の演技を純粋に信じきっているのか、それとも公家たちも演技で同調しているのか。
すすり泣きか嘘泣きか分からない公家たちの嗚咽が無数に聞こえる中、麒麟の下手な芝居を見破っている者が、もう一人だけ居た。
綾麿がまた小さく呟く。
「麒麟よ⋯⋯、感動の名演技だな。だが麿の記憶が確かなら、大鳥居が倒壊した原因はそなたでは無かったか? 二つの爆発や鎌足への罪の追及のお陰で、大鳥居の件を上手くうやむやに出来て良かったな」
「⋯⋯え? ⋯⋯あ、⋯⋯いえ。お、⋯⋯大鳥居なんて、登ったかなぁ? ⋯⋯ち、中将様ぁ、ほら、ほらっ、この通り、頭を打って昨日から記憶が曖昧で⋯⋯」
麒麟が左のこめかみを指差しながら苦笑いする。
綾麿はそれ以上、何も言葉を返さなかった。
「⋯⋯っ、ならば少将よ。鎌足殿には、どんな罰が適切だと思うのだ? 何か考えがあるのか?」
場の空気を見かねた兼季が、困り顔で麒麟に問いかける。
この問いかけに麒麟の口角が今日一番に邪悪に歪み、そして吊り上がる。
麒麟はこの時を待っていた。
即答だった。
「真に残念ですが、⋯⋯死罪、しかないと思われます」
「⋯⋯なっ!?」
兼季が絶句する。
⋯⋯死罪。
その言葉に紫宸殿内が一気にざわついた。
(死罪じゃ⋯⋯)(死罪じゃ⋯⋯)(死罪じゃ⋯⋯)
”まさか“や”驚き“といったざわめきではない。
やっとその言葉が出たか。
そんな感嘆や安堵のざわめきに近かった。
白粉の公家たちの不気味すぎる列に、無数のお歯黒が妖しくちらつく。
公家たちの口角もまた上がっていた。
そして麒麟の真似をして袖を目蓋に当て、何度も何度も頷く公家たちも多数見られた。
「⋯⋯し、死罪!? ⋯⋯ま、待て、少将。いくら落命した者が多く、御所の損傷も甚大とは言え、それはあんまりではないか!? これだけ御所と帝に尽力しながら死罪とは⋯⋯!」
「⋯⋯ん、いや、でもしかし、清涼殿に鬼たちの侵入を許した場合は”死罪“。決まりでもそうなっていますよ。御所の規律の順守も私たちの大事な責務かと?」
「⋯⋯た、確かに一理はあるが。⋯⋯し、しかしだ、⋯⋯こんな無慈悲なことを通しては!? ⋯⋯っ、此処に居る皆も、少将と同じ意見なのか!?」
兼季は狼狽しながら、何かの救いを探すように公家たち全員を改めて見渡した。
兼季の目に映る、白塗と歯黒の公家たち。
そのほぼ全員が深く頷いていた。
「⋯⋯なッ!? ⋯⋯か、花山左大臣殿、⋯⋯久我右大臣殿、そして早良大納言殿、皆様のお考えは!?」
この場に参加している公家たちの中で、位階最上位となる三人。
この三人の救いの手、即ち鶴の一声が、兼季にとっての最後の頼みの綱だったのかもしれない。
上座の左大臣たち三人は、その場で顔を見合わせた。
そして三者同様に頷きながら、花山左大臣が三人の意見を代弁した。
「御所の破壊された惨状、甚大な数の落命者、中納言殿らの暗殺⋯⋯、昨日起こった事は我々三人もまた帝同様に非常に心を痛めておる。そして我々の意見は、皆の意見を尊重することで既に一致しておる。此処に居る皆が死をやむを得ずと言うのであれば、致した方なかろう。その少将の申す通り、御所の決まりもまた重要じゃ。例外を作るべきではない」
「そ、そんな⋯⋯」
一縷の望みは絶たれた。
兼季が悔しそうに歯を食いしばる。
そして鎌足と目を合わすと、申し訳なさそうにがっくりと項垂れた。
自分を最後まで気にかけ、助けようとしてくれている。
そんな兼季に鎌足は優しく微笑みかけると、深く一礼して応えた。
(こんな私のために⋯⋯。大将殿、本当に心から感謝致します、ありがとうございました)
そんな二人の姿を鼻で笑いながら、麒麟は鼻息も荒く勢い付いていた。
無理もない。
日本の位で帝、関白に次ぐ左大臣から目の前で直々に同調の言葉を得たのである。
調子に乗らない理由が無かった。
麒麟は湧き上がる興奮を我慢しながら、顔の緩みも必死に抑え、高らかに意気揚々と更なる声を上げた。
「⋯⋯これで文句無し、決まりですね! ⋯⋯ならば、刑罰に関してこの私から一つ提案が⋯⋯!」
鎌足や綾麿、この場に居る誰もが麒麟に視線を送る。
全員の熱い視線を受ける中、仁王立ちの麒麟が次に口にしたのは、兼季ですら想像できず、鎌足ですら覚悟の範囲内に入れていなかった、残虐な悪魔の提案だった。
「⋯⋯この者は武士に非ず、伊賀の忍。切腹など以ての外。これ程の大きな咎、ありふれた処刑方法では見合わないでしょう。よって長らく禁忌とされていた、鋸挽きの刑からの⋯⋯、牛裂きの刑と致しましょう! 皆々様方! 如何ですかぁ! 名案でしょう!」
紫宸殿内に再びざわめきが走る。
まるで見世物の山場を迎えたように、公家たちの興奮は最高潮にまで達していた。
(鋸挽きじゃ)(牛裂きじゃ)(ばらばらじゃ⋯⋯)
公家たちの愉しそうに口ずさむ声。
隣同士でひそひそ話しあう声が漏れ聞こえる。
「⋯⋯ッ!!」
流石の鎌足もこの麒麟の発言には動揺を隠せない。
自分の手足を見つめながら、意識が白く遠ざかっていくのを感じずにはいられなかった。
生唾を飲み込む。
口の中が一気に乾いた。
そして次には全身を震えが襲う。
(あまりにも残虐のため何十年も前に禁忌になっていた刑罰を⋯⋯今、私に? そんな⋯⋯、そんな⋯⋯)
鋸挽きの刑。
それは罪人をすぐには殺さず、切断までしないように少しずつ首や手足を切り刻み苦しませる、非情な刑であった。
麒麟の提案では更にその後、四頭ないし五頭の牛と、斬り刻んで脆くなった首や四肢を縄で頑丈に縛りつけ、その牛を合図と共に四方から五方へと走らせて、罪人の身体を一気にばらばらに引き裂く⋯⋯。
それが俗に言われる、牛裂きの刑。
上手く四肢が千切れればまだ救いはあるが、関節が伸びきり、一向に切れないまま牛に引かれ続ける、そんな恐ろしい状況も何度も起きていたらしい。
まるで二度も刑と激痛を受けるような、想像しただけでも身の毛もよだつ、恐ろしい複合罰だった。
紫宸殿内は既に、奇しくも土産物の牛⋯⋯”赤べこ“の大量の置き場のようになっていた。
牛の玩具のように何度も何度も首を縦に振る公家たちの姿が、鎌足の位置からも大勢確認できる。
「⋯⋯ちょっと待て、待たれよ、各々方。⋯⋯少将よ、流石にそれはあまりにも、⋯⋯あまりにも重すぎはしないか!?」
兼季も明らかに動揺していた。
即座に異を唱える。
しかしその兼季言葉に対しては、麒麟の提案の時とは打って変わって、公家たちからの反応は冷ややかそのものだった。
首振りの玩具が壊れたのか。
首を激しく横に振ったり、笏を横に振ったり、否定する姿が目立った。
公家たちの心の声が伝染する。
(⋯⋯よくよく見ればあの女忍、なかなかどうして可愛らしい顔や声をしておじゃる。⋯⋯おほほ、よきじゃ)
(⋯⋯鋸挽きに牛裂き、か。⋯⋯ほほほ。あのおぼこな顔がどのように苦痛に歪むか。⋯⋯ほほ、愉しみじゃ)
(⋯⋯これはよき見世物。⋯⋯最前の席で見るに値する余興じゃ。⋯⋯ほほほ。あの顔も手も足も全てぷっつんばらばらじゃ。ほほほほほ)
「⋯⋯ッ!!」
覚悟を決めていた鎌足と言えども、流石に無意識に麒麟を睨み付けていた。
鎌足の殺気を帯びた視線に麒麟も気付く。
そしてまた鼻で笑った。
「⋯⋯ふんっ、くたばれ」
鎌足を表向きは平静を装っていた。
しかしその内心ではこれ以上は無い程に麒麟を心の底から罵倒し、軽蔑していた。
(⋯⋯ぐ、⋯⋯っ、⋯⋯麒麟め)
「⋯⋯ん、その視線、態度⋯⋯、何ですか。どうぞ何なりと罰を⋯⋯と、先程自身で言っていたのでは? その舌の根が乾かない内にそんなに激しく睨むなんて。⋯⋯ああ、恐い恐い。⋯⋯馬鹿女殿? 鋸挽きからの牛裂きの罪、潔く受けてはどうですか。御所はまた建てれば取り返しがつくけど、命はそうはいかない。馬鹿女の主な罪は、暗殺の手引きと警備兵殺し。その二つの咎はとてつもなく重い。一つじゃあ釣り合いが取れませんよ。二つの厳罰を受けて、さも当然なのでは?」
「⋯⋯ッ!?」
自ら口にした“どんな罰も受ける”という言葉。
そして口達者な麒麟と、そんな麒麟を後押しするこの場の空気。
ぐうの音も出なかった。
鎌足に反論の余地はまるで残されてはいなかった。
鎌足は床に両掌を突いて、がっくりと項垂れた。
この流れを一声で吹き飛ばす程の絶大な力を持つ、肝心の帝はこの間、どうしていたか。
⋯⋯初手から相変わらず黙ったままだった。
御簾の先に少しだけ影は揺らめいているものの、この陰惨な会話に口を挟むどころかまるで動く気配も無い。
もう一人、麒麟の隣の綾麿も依然として表情を変えていなかった。
そして正面を向いたまま、麒麟だけに聞こえる声でまた一言呟いた。
「麒麟よ⋯⋯、警備兵を殺すのは大きな罪だが、御所はまだ取り返しがつく、と言ったか。鎌足追及のどさくさに紛れ、建屋や“大鳥居”の倒壊は大きな罪では無い。そう皆の心に上手く刷り込む事が出来て良かったな」
「⋯⋯は? ⋯⋯あ⋯⋯、あ、いえ、⋯⋯命は何よりも大事ですから。私や中将様が帝や御所を必死に護るのも、突き詰めれば皆の平和のため、一つ一つの人々の命を守るためですからね。いやあ、人の命は大事だなあ」
頭を掻きながら笑顔で適当に答える麒麟を、呟いた当の綾麿は見向きもしない。
この時、綾麿は鎌足だけを見つめていた。
その瞳に映る鎌足は、今にも泣き出しそうな表情で俯いていた。
もはや何を語ろうが訴えようが、一旦傾いたこの流れが変わることは無い。
あまりもの衝撃的な厳罰。
既に死を受け入れていたことも、鎌足の正常な思考を止める原因にもなっていた。
意気消沈した鎌足の乾いた唇が、思考を無視してゆっくりと開いていく。
「⋯⋯わ、わかりました。その罰も謹んで受け⋯⋯」
そしてこの恐ろしい刑罰を受諾する。
そんな言葉を呟きそうになった⋯⋯。
⋯⋯その時だった。
閉ざされていた重厚な紫宸殿の扉が、突然に音を立てて開く。
そして一人の官吏の男が、慌てて駆け込んできた。
「⋯⋯会合中失礼ッ! 大将殿に火急の知らせ!」
鎌足の唇が止まった。
一体何事か、また鬼でも現れたのか。
蒼鬼か、それとも紅鬼か。
明らかに緊迫感を漂わせたその一言に、場の空気も一気に凍り付いた。
官吏は全員に向かって深々と頭を下げると、公家たちの背後の壁際を通り、上座の兼季の元へと早足で歩み寄っていく。
男は兼季の耳に口を寄せ、そっと何かを告げた。
そして再び兼季と全員に頭を下げると、足早に紫宸殿を後にしていった。
(⋯⋯火急の知らせ? ⋯⋯な、何が起きたんだ?)
不思議な顔を浮かべているのは鎌足だけではない。
全員の視線が今、麒麟から兼季へと移っていた。
視線の的となった兼季は苦々しい表情を浮かべて身体を震わせながら、その場に立ち尽くしていた。
そして暫くの沈黙の後、ようやく言葉を絞り出した。
「⋯⋯重傷だった警備兵。その一名の容態が急変し、つい今しがた亡くなったそうだ」
(⋯⋯っ!)
鬼ではなかった。
その場に安堵の溜め息が充満した。
しかし兼季の次に続いた言葉は、鎌足に雷のような衝撃を与えるには十分すぎる内容だった。
「⋯⋯目の辺りを網の目のように抉られ、激しく負傷していた若い警備兵だが、どうやら今日になって傷が悪化したらしい。⋯⋯残念だが、これで犠牲者の数は八十七名になった」
⋯⋯目の辺り。
⋯⋯網の目。
⋯⋯抉られる。
幾つかの断片的な言葉に、鎌足は息を呑んだ。
その傷に心当たりがあったからだ。
鎌足の脳裏に、蒼鋼鬼を斃した後、笑顔で鎌足を讃えてくれた三人の警備兵の姿が浮かぶ。
そして鎌足と共に清涼殿に向かおうとしていた際。
突然の凶刃を振りかざしたのは⋯⋯。
⋯⋯麒麟だった。
麒麟の天舞の剣技で傷つけられ、その場に倒れた三人の警備兵たち。
その内の一人は両掌で顔を覆っていた。
その指の間から覗く顔面は、焼けた網目を押しつけられたようだった。
(⋯⋯あの時の警備兵、だ)
鎌足は確信していた。
(⋯⋯ッ!?)
鎌足が握り拳を作る。
鎌足は勢いよく麒麟の方を振り返ると、立ったまま呑気にあくびをしている麒麟を激しく鋭く睨み付けた。
「⋯⋯んん? ⋯⋯あーん? 何だよ、へへ」
麒麟はそんな鎌足の視線に気付いても、まるで相手にしない。
もしかしたらあの傷付けた警備兵の事すら、今はもはや記憶の片隅にも無いのかもしれない。
相変わらずにやにやと、勝ち誇った笑みを浮かべ続けている。
両膝の握り拳を震わせながら、鎌足は必死に怒りを堪えていた。
今しがた麒麟が言い放った言葉。
”警備兵殺し、その罪は重い“。
この言葉を麒麟が口にすることが、どうしても許せなかった。
鎌足の心の中で何かが弾けた。
その表情はみるみるうちに憤怒に塗れた、女修羅のように変わっていく。
(⋯⋯最期は心穏やかに。大人しく罪を受け入れ、死を覚悟していた。⋯⋯が、麒麟だけは、あいつだけはやっぱり許せない。絶対に許せない。何の罪もない警備兵を死に至らしめておいて⋯⋯、何の罪も受けないなんて⋯⋯、許せない。そんなの、絶対に許せるもんか!!)
一方の麒麟は今が我が世の春。
我が覇道を行く、だった。
ひとしきり鎌足を蔑み笑った後、左大臣たちの方へ颯爽と向き直る。
そしてにっこりと微笑んだ。
それはいつもの裏表。
位階の高い者、権力者だけに見せる麒麟の表の従順な顔だった。
勝負を決める最後の一手。
それは鎌足の罪罰を強引に確定させるだけ。
麒麟は紫宸殿内に残響が残るほどの張った声で、鎌足の罪状を改めて高らかに告げた。
「江戸御庭番衆、小頭、鎌足。鋸挽きの刑及び牛裂きの刑に処す! 執行は本日暮れ五つ、四条河原にて!」
その断罪の声はすこぶる上機嫌で、流暢だった。
まだ先程から続く演技の最中の気分なのか。
完全に悦に入っていた。
「⋯⋯主な罪状は、中納言殿と小納言殿の暗殺を防げなかったどころか、あろうことか下手人の伊賀者の仲間を御所内に招き入れた、その管理不行き届き。⋯⋯そしてそんな不埒な伊賀者たち二名を除く、八十五名もの文官や警備兵たちの命を奪った番頭としての怠慢⋯⋯」
⋯⋯その時だった。
「⋯⋯違う! 八十五名じゃない! 八十四名だ!」
抑えきれない怒りが言葉に変わる。
会合が始まって初めて、鎌足が声を荒げ、麒麟の声を遮った。
それはただ怒りに任せた大声ではなく、毅然とした凛々しさも持ち合わせていた。
しかし公家たちの殆どが、この鎌足の言葉の裏に隠されている真の心には気付かない。
(⋯⋯おぉ? 今更何じゃ。ははぁん⋯⋯、おほほほ。さては、やせ我慢もいよいよ限界でおじゃるかや)
(⋯⋯遂に出たでおじゃる。⋯⋯か弱き女子の”助けてたもれ“、が。⋯⋯ふほほほほ)
(⋯⋯ほほほ。⋯⋯何や、その声だけは凛々しうても、その中身は自己保身かや? 笑わせてくれるわ)
(⋯⋯やはり命乞いじゃ。何とまあ諦めが悪い女子よ)
鎌足が罪を逃れるため、何かの言い訳を始めるはず。
その思い込みに囚われて、ほぼ全員がやれやれといった気怠い表情と薄ら笑みを見せていた。
しかし麒麟だけは神妙な面持ちへと変わっていた。
この時の鎌足の瞳に、何か自身にとって災いとなるような、そんな“物の怪”の類の念を、ぞわぞわと垣間見たような気がしたからだった。
鎌足の次の言葉。
それを一言も聞き漏らさずに受け止めようと、兼季は鎌足を見つめて真剣な表情を崩さない。
綾麿は鎌足と隣の麒麟に交互に視線を送りながら、何かを見定めようとしていた。
麒麟の明らかな表情の変化。
兼季の警備兵の死の報告を境に、様子が一変した鎌足。
麒麟を睨む鎌足の鋭い眼光に、昨夜の庭園で起きた残像の断片を見ていた。
(⋯⋯抉られた傷、か)
綾麿は最後に隣の麒麟に目を向けた後、ゆっくりと帝の御簾に目を送った。
鎌足と麒麟。
二人の確執などまるで気にも留めていないのか。
御簾の先の帝は、依然として”黙して語らず“を貫いていた。
(⋯⋯醜き人の世。⋯⋯見ざる、言わざる、聞かざる。⋯⋯それでよいのです。帝よ)
心の中で呟いた綾麿は、何かを考え込むようにゆっくりと目を閉じた。
(⋯⋯さて、麒麟め)
そんな綾麿の隣では、麒麟の脳裏に昨日の鎌足と警備兵の姿がようやく蘇っていた。
鎌足との昨日の戦闘時に交わした会話。
そしてつい口にしてしまった、本音の言葉も蘇る。
⋯⋯⋯⋯(「⋯⋯中将が本当に死んだのなら、むしろ俺にとっては願ったり叶ったりなんだ!」)
(「⋯⋯はぁ!? な、な⋯⋯」)
(「中将が消えれば、俺の地位は守れるかもしれねえ。しかも中将の座まで空くじゃねえか!」)
(「⋯⋯な、な、⋯⋯何だって!? 聞き捨てならないッ! 殉死者を愚弄するのかッ!?」)
(「⋯⋯ふん、それに此処だけの話だが、帝の命なんぞもどうでもいいんだ。⋯⋯俺の出世の邪魔になるなら、帝だろうが六歌戦だろうが、誰だって斬り刻むさ!」)
(「⋯⋯なッ? お、御前! ⋯⋯今の言葉は、帝に対して、いや日本に対して、間違いなく反逆罪だぞ!? ⋯⋯先程の警備兵への暴挙と合わせて、絶対に公の場で断罪してやるからな!!」)
(「断罪だぁ? はっ、清涼殿に鬼の侵入を許した、とか言ってたなあ! なら御前はもう死罪確定じゃねえか! 死んでどうやって断罪するんだ!? え!?」)
(「⋯⋯うっ」)
(「それに御前はな、死罪になるよりも先⋯⋯、そう、たった今、此処で俺に殺されて死ぬんだ。もう一度聞くぞ、どう断罪するんだ? え? 出来るものならやってみろよ! 首を晒された刑場で口だけ動かすのか!?」)
(「⋯⋯う、う、うう」)⋯⋯⋯⋯
━━絶対に公の場で断罪してやるからな━━
(⋯⋯ッ!! 馬鹿女、まさか!?)
真っすぐに、ただひたすら純粋に。
自分を睨み続ける鎌足の瞳。
その瞳の中に潜んだ、燃え滾る”何か“。
その”意味“に勘付いた麒麟の顔が一気に曇っていく。
鎌足は帝の御簾に視線を移した。
「⋯⋯忍は元来、影に生きる草の者。表舞台には出ずに生き、日陰で死んでいくが宿命。よって平次と大吾は昨夜の死者には含めなくても構いません。⋯⋯とすれば、犠牲者の数は八十五名。⋯⋯しかし」
⋯⋯そして、自身の正義を貫いた。
「⋯⋯うち一名を除く、八十四名に対する罪は甘んじて受けましょう。私の亡骸や首や四肢は、四条河原に晒されてもいい。⋯⋯ただ、⋯⋯今しがた亡くなった一人は、私は断じて決して殺していないッ!」
初めて鎌足が罪を否定する言葉だった。
その大胆な一言に公家たちの間にどよめきが起きた。
つい今しがたまで上機嫌だった麒麟の顔が、何かに怯えるような弱々しい表情に変わっていく。
「⋯⋯そして私はその真犯人を知っています。目撃者も二人居ますが、真犯人からの報復を恐れ、きっと何も言えないでしょう。⋯⋯私は既に死んだ身。⋯⋯ですが死人にもちゃんと真実を語る口は有るのです」
目を閉じていた綾麿はゆっくりと目を開けると、隣の麒麟に目を流した。
麒麟はただわなわなと身体を震わせていた。
「⋯⋯お、おい、⋯⋯や、やめ、⋯⋯やめろ、⋯⋯み、道連れに⋯⋯す⋯⋯、るな、⋯⋯ば、ばか」
兼季が身を乗り出す。
「⋯⋯鎌足殿、⋯⋯真犯人を知っている、だと!? ⋯⋯警備兵を殺めたのは鬼ではないと言うのか!? ⋯⋯誰だ、その者は!? その名は!?」
鎌足がゆっくりと、視線を右に流していく。
その場にいる全員が、無言でその視線を追った。
鎌足の視線の先には。
⋯⋯怯える麒麟の姿が在った。
「⋯⋯ひいっ。ぱ、ばかっ、⋯⋯み、見るな、こっち。⋯⋯ちが、ちが⋯⋯っ、⋯⋯あ、ああ、こっち、見⋯⋯るなぁ」
そんなじたばたする麒麟の身体を貫くように、鎌足の言葉の刃は抜き放たれた。
そして麒麟ごと紫宸殿の不穏な空気を斬り裂いた。
「⋯⋯この場をお借りして、私は断罪する! ⋯⋯鬼にも劣る極悪人、樋ノ口少将麒麟。⋯⋯御前が犯した警備兵殺害、六歌戦への侮辱、そして帝への反逆! ⋯⋯その許されざる罪の重さを!」━━━━。
第77話も最後までお読み頂きありがとうございました。
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次回第78話は、7月8日〜9日頃に投稿予定です。
【改稿履歴】
改稿履歴は全て誤字脱字等や細部表現の訂正です。
過去話も誤字脱字を見つけ次第、訂正しています。
内容は全く変わっていませんので御安心ください。
(いつもたくさんの誤字脱字ばかりで、すみません)




