表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羅生門怪鬼譚  作者: 夏川凪
第一鐘 京都六歌死闘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/51

第27話  影法師

【登場人物紹介】

不知火綾麿しらぬいあやまろ━━━━

 従三位じゅさんみ中将ちゅうじょう不知火しらぬい流という恐るべき剣の使い手。謎の妖刀『村雨むらさめ』を時の帝から拝領し、御所警備の西番を任されている。江戸の徳川政権を何故か激しく憎んでいて、鎌足かまたりたち御庭番衆の援軍を快く思ってはいない。


伊賀の鎌足かまたり━━━━

 江戸城の公儀御庭番こうぎおにわばん伊賀組の小頭こがしらの女忍。伊賀流鎖鎌の使い手。幻斎げんさいに授けられた、七十年前に鬼を滅した伝説の刀『鬼切丸おにきりまる』を手に、鬼が現れた京都御所に援軍として派遣される。裏では朝廷側の探索の密命も帯びる。


甚左じんざ━━━━

 伊賀組の中忍。江戸から京都へ派遣された四人の忍のうちの一人。鎌足かまたりの京都での補佐役を務め、鎌足かまたりからの信頼も厚い。剣の腕も立ち、いつも優しい人格者。


 ━━━━「⋯⋯⋯⋯溝鼠どぶねずみって、綾麿あいつが言うんだよ? どう思う? 誰でも絶対に頭にこない?」


「⋯⋯はは、それはとんだ災難でしたな」


 鎌足かまたり甚左じんざは、帰路を並んで歩いていた。

 江戸を発ってから、甚左じんざとじっくりと会話ができる”二人きり“になれたのは、この時が初めてだった。

 いつも鎌足かまたり甚左じんざの傍には、平次へいじ大吾だいごが居たからだ。


「⋯⋯その村雨むさらめという刀は、それほどまでに妖しい力を⋯⋯鬼を斬る力を、放っているように見えましたか」


「うん。あんな綾麿やつには勿体無いくらいの名刀だよ、あれは。鬼切丸おにきりまると同じ、鬼を斬る刀⋯⋯。見たのはさやとかつかだけなのに、何て言うか⋯⋯、心と身体の全てが吸い込まれそうになっちゃったもの」


「⋯⋯とりこになった、⋯⋯ということですか?」


「そう、それ。そんな感じ」


「⋯⋯鬼を斬る刀か。⋯⋯⋯⋯これは御報告せねば」


「うん、百地翁ももち様に報告しないと。京都の様子も伝えないとだし、宿に戻ったら手紙でもしたためようかな。⋯⋯あ、そうそう、そう言えば綾麿あいつ百地翁ももち様が生きてるって知ったら、途端に笑顔を見せてさ。⋯⋯それだけじゃないよ、どうやら百地翁ももち様に会いたいみたいなんだ。おかしいよね? 絶対に接点なんて無いはずなのに⋯⋯、公家に知り合いが居るなんて聞いたことも無いよ」


「⋯⋯そうなのですか、⋯⋯ふむ、何故なぜでしょう? ⋯⋯やはりその綾麿おとこ、気になる、⋯⋯本当に、蒼鬼あおおに⋯⋯なのかもしれませんな」



 綾麿あやまろ追跡へと向かう平次へいじ大吾だいごを見送ってから、鎌足かまたりの胸にはずっと、得体の知れないざわめきが付きまとっていた。

 それは不安か、心配か、それとも命令を下した後悔か。

 その正体がいずれにしても、心に巣食っている不穏な暗い念を払拭ふっしょくするために、鎌足かまたりは隣の甚左じんざにひたすら話しかけ続けていた。


「⋯⋯でさ、それに、おかしいって言ったら、東番の警備の場所もだよ。内外全域を守りながら、肝心要の帝の寝所は一切立ち入り禁止なんだって。⋯⋯羅生門らしょうもんはいつ何処どこで現れるか分からないのにさ。⋯⋯羅生門が帝の寝所の中とか近くに現れたらどうするつもりなんだろう、全く⋯⋯、意味が分からないや」


「⋯⋯地獄からの近道。それができたら楽なんですけどね。羅生門らしょうもんの横道━━邪道じゃどうは、一度その場所へ行ったことのある鬼がいないと開かないんですよ」


「⋯⋯へ?」


「あぁ、いえいえ、こちらの話、⋯⋯そんな理由があるのではないか、と思っただけで。⋯⋯はは、根拠の無い当てずっぽうな推理でしたな、⋯⋯あ」


 大通りの脇に佇む小さな観音堂の前で、甚左じんざが不意に立ち止まった。


「⋯⋯あぁ、たぶん、これだこれだ、この観音かんのん像だ。小頭こがしら? 見てください、あの正門の門番が小頭こがしらを待つ間に教えてくれたんですが、観音堂かんのんどうの隣から延びているこの横道は、何でも宿へと繋がる近道らしいですよ。⋯⋯かなり遅くなってしまったので、今日は此方こちらの道を通りませぬか」


「⋯⋯近道かぁ、そうだね、通ってみようか」



 昨日今日と歩き慣れた大通りを左へと曲がり、二人は観音堂かんのんどうの横の藪道やぶみちを抜けていく。



 その先には鎌足かまたりが初めて見る京都のもう一つの顔⋯⋯さびれた民家が点々と立ち並ぶ、まるで小さな廃村のような裏路地があった。

 道は思いのほか広い。

 しかし広さゆえに、寂しさもその分、増していた。

 そんな寂しい夜道を、甚左じんざを先頭、その後ろに鎌足かまたりが続き、二人はゆっくりと歩いていく。


 人気の少なかった日没の大通り以上に、この場所はときが止まったように静かな道だった。

 煌々とした満月の光が、通りの両端のすたれた家々を照らす。


 人気ひとけは、まるで無い。


 何かの災害や疫病の名残りなのか。

 それとも鬼の実害が残した痕跡の一つなのか。


「この道は旧道で、今は廃屋はいおくが多いそうで。⋯⋯まあ、元々あまり人は住んで居なかったらしいですがね」 

 

 前を行く甚左じんざがぼそりと呟く。


 華やかで賑やかな寺院や店通りは多々あるものの、それはあくまで表の京都。

 たった一歩道を違えると、こうした物悲しいさびれた場所もまた普通に存在しているのが、鬼にしいたげられ混迷している今の京都の本当の姿なのかもしれない。



 二人は先へと進んでいく。

 過去に何か悲しい出来事があったのだろうか、道の両端には一定の距離を置いて供養の灯籠とうろうが立ち並び、ほのかに蝋燭ろうそくの灯火が揺らめいている場所へと出た。

 道の左右の端に点々と見える燈籠とうろうあかりが、何とも物悲しくも幻想的に見える。


 初めて通る道のため、鎌足かまたりは今、自分が京都の何処どこに居るのか分からない。

 宿に近づいているのかすらも分からない。

 甚左じんざの得た情報によると、このさびれた道をもう少し進めば、また大通りへと抜け、宿のすぐ近くに出るという事だった。


「⋯⋯さあ小頭こがしら、急ぎましょう。今頃はきっと、宿の女将おかみが私たちのために腕を奮った、あったかい夕餉ゆうげが用意されていますよ」


「⋯⋯あ、うん」



 慣れない道を先導して前を歩く甚左じんざ、後ろに続く鎌足かまたり


 陽はとっくに沈み、暗い夜道。

 日中までとはいかないものの、明るい満月の光と供養の灯籠とうろうの火に照らされた、二人の足元からは長い影が伸びていた。



 ⋯⋯その時。

 突然その一つに怪異が起きた。



 甚左じんざの影が一瞬だけ蝋燭ろうそく灯火ともしびの様に揺らめくと、影の背丈が、ゆっくりと長く長く伸びていったのだ。


 明らかに月や光、雲が生み出した悪戯いたずらではない。

 その怪異に一切の音は無く、甚左じんざの背中を見ながら歩く鎌足かまたりは、足元の甚左じんざの影に起きたこの異変には、全く気付いていなかった。


 影は縦に伸びきると、続けて横にも膨らんでいく。

 そしてあっという間に、歩く鎌足かまたりの影の全てを、すっぽりと覆い被してしまう程の異様な大きさにまでに膨れ上がっていた。

 今、鎌足かまたりの足元に広がるのは、上に立つ者や置く物を全て吸い込もうとするような、巨大な円形の深い闇。


 もしも周りに平次へいじ大吾だいごが居たならば、二人のうちどちらかはこの異変に気づき、鎌足かまたりに急を告げる声を掛けていたかもしれない。

 しかし今、このさびれた通りに人影は、鎌足かまたり甚左じんざ⋯⋯この二人だけだった。



 ⋯⋯誰も邪魔する者は居ない⋯⋯



 その事実を知ってか知らずか、影は更に変化した。

 影の中から姿を見せたのは、無数の刃。

 鎌足かまたりをぐるりと取り囲むように、影のふちに沿って、数え切れない程の刃がゆっくりと邪悪な鈍光ひかりを覗かせていく。


 影が”口“だとしたら、それはまさに“牙”だった。


 円状となったその牙の群れは、一つ一つが徐々に影から盛り上がり、不気味に夜の空へと伸びていった。



 一寸、

 ⋯⋯二寸。

 ⋯⋯⋯⋯三寸。

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯そして四寸。



 鎌足かまたりに気付かれることを警戒するように、少しずつ少しずつ伸びていく無数の牙。


 伸びた牙が月明かりに反射する。


 それは、牙ではなく⋯⋯



 ⋯⋯針だった。



 それは例えるなら、狂気の歯を持った怪魚が、影の池から大きな口を開き、人を飲み込もうと襲いかかる⋯⋯、そんな様相を呈していた。

 いつの間にか鎌足かまたりの足元は、無数の針の群れに取り囲まれていた。


 全ての針が、一斉にきらめく。


 針の長さがどれも五寸(※15cm)を越え、六寸にまで達しようかとした時。



 ⋯⋯鎌足かまたりにとって二つの幸運が起きた。



 鎌足かまたりはまだ心にくすぶり続ける胸騒ぎから、いつもより少しうつむき気味で歩いていた。

 心に不安も無く、いつもの四人で和気あいあいと歩いていたならば、前を向いていたり隣の者に話しかけたりして、決して下は向いていなかっただろう。

 これが第一の幸運。


 第二の幸運は、たまたま雲が晴れて、月の明かりの輝きが増したことだった。

 前を歩く甚左じんざの背中、その腰あたりに視界があった鎌足かまたりは、視界の片隅に、月明かりに照らされて光る⋯⋯“何か”の存在を感じることができた。


「⋯⋯ん? 何か、光っ⋯⋯」


 鎌足かまたり)が何気無く、その光の出所を辿った、その瞬間⋯⋯。


 鎌足かまたりの足元を取り囲んだ影から現れた無数の刃は、一斉に三尺(※約90cm)程にまで急激に伸び、四方八方から鎌足を串刺しにしようと、その凶暴な牙を剥いていた。


「⋯⋯ッ!?」


 忍として鍛え上げられてきた敏捷性しゅんびんせいが活きる。

 鎌足かまたり)は瞬時に、くうへ飛び上がった。


 ⋯⋯針の牙が、鎌足かまたり草履ぞうりの裏をかすめる。



 ガシャャャャャャャー━━━⋯⋯⋯⋯⋯⋯



 無数の刃がぶつかる甲高い衝撃音が鳴り響いた。

 その音の出所でどころを、宙を舞う鎌足かまたりが目で追う。

 ほんのついさっきまで鎌足かまたりが居た場所⋯⋯其処そこには、まるで獲物を捕らえることが出来なかった猟の鉄罠のように、剣山のような無数の針の固まりが、地に激しく食い込んでいた。


 すぐ脇の土塀どべいの上に飛び乗って難を逃れた鎌足かまたりは、この唐突に目の前に起こった針の襲撃、そしてこの世のものとは思えない異様な光景に我が目を疑った。


(⋯⋯ッ! こ、これは! な、何が起きたんだ!? 少なくとも人間の仕業じゃないッ! ⋯⋯ま、まさか、⋯⋯鬼か!?)


 あと一瞬、ほんの一秒、気づくのが遅れていたら、きっとこの針の剣山けんざんに挟まれ、全身を突き刺されていただろう。


(⋯⋯あ、危なかった、⋯⋯くっ、くそっ)


 鎌足かまたりはすぐさま辺りにも目を配る。

 そんな鎌足かまたりの目に⋯⋯、甚左じんざが映った。

 すぐ背後で起こったこの怪異に全く気付いていないのか。

 剥き出しになった針山の牙のすぐ傍で、まだ鎌足かまたりを先導しているように怪異に背を向けたまま、じっと立ち止まっていた。


「⋯⋯ッ、甚左じんざ! 敵襲だ!! ⋯⋯鬼だ!!」


 鎌足かまたりが渾身の声で呼びかけても、反応が無い。


「⋯⋯!? 甚左じんざ! どうした! 気付いていないのか!? 聞こえていないのか!? ⋯⋯後ろだッ!」


 声を張り上げて叫んでも、一向に反応も返事も無い。

 居ても立ってもいられず、地上に降りる危険すら顧みずに、鎌足かまたり土塀どべいから飛び降りた。


「⋯⋯ッ! おい! 甚左じんざ! はや⋯⋯」 


 そして地を跳ねるようにして甚左じんざに近寄って、怪異を挟んで背後から呼び掛けた時だった。 


 鎌足かまたりを再びの怪異が襲った。


 鎌足かまたりに背を向けたまま、甚左じんざの首だけが動く。


 ⋯⋯ゆっくりと。

 ⋯⋯みしみしと。

 

 嫌な音を立てながら、鎌足かまたりの方へと向きを変えていったのだ。


 鎌足かまたりを振り向くように、真横を向いた首⋯⋯。


 ⋯⋯しかしその首は止まること無く、あり得ない角度で曲がり続けた。


 鎌足の位置からは、最初は右頬と右目、右耳しか見えなかった甚左じんざの顔。

 その顔が、今は鼻の形全て見え、左頬や左目までが見えていた。


 ⋯⋯そして首は、真後ろの鎌足かまたりの方を完全に向いて、背中に付いた甚左じんざの顔は、にたりと不気味な笑みを浮かべた。


「⋯⋯⋯ふふふふふふふふふふふふふふふふ」


「⋯⋯ッ!? ⋯⋯う、⋯⋯じ、じ、甚左じんざ⋯⋯」


 その余りもの驚愕の情景に、鎌足かまたりの身体は小刻みに震え出し、額からは生温い汗が滴った。

 驚きとおののきで舌まで麻痺したのか、

 甚左じんざの名を辿々しく呟く他は、上手く言葉が出てこない。

 あの江戸での蒼鬼あおおにとの遭遇を超える、今だかつてない衝撃が鎌足かまたりを襲っていた。



 笑う甚左じんざの目は、死んでいた。



 ⋯⋯だが甚左じんざの口は、動いていた。



《よくぞ身共みどもの必殺の針『影牙かげきば』をかわした。この男よりは格段に腕は立つな。⋯⋯のう? 江戸よりの援軍、伊賀の忍━━鎌足かまたりよ》


「⋯⋯ッ!?」



 その声は、甚左じんざでは無かった。



《事の成り行きでこの甚左じんざと申す者の命及び身体と魂、既に奪い申した。葬魂そうこんを解き、もとの身体に戻るにあたり、この男の体、声、技、記憶、全てもはや用無しゆえ、汚いむくろはお返し致す。そして⋯⋯、この身共みどもの真の姿も開帳かいちょう致そう、とくとあがたてまつられよ》


 その言葉が終わるやいなや、甚左じんざの胸から腹にかけて縦に裂け目が入り、その裂け目からひびが割れていく。


 そしてまるで身体の内側から何かの殻を破るように、その裂け目から二本の腕が飛び出した。

 二本の腕が甚左じんざの裂けた皮膚を掴み、扉を開けるように裂け目を開いていく。

 そして甚左じんざの中から、身をかがめた人間━━得体の知れない何者かが、鎌足かまたりの眼前に飛び出してきた。


 ⋯⋯それは托鉢笠たくはつがさを被った、雲水うんすい姿の男だった。


 その謎の雲水うんすいは、小さな肉塊にくかいと血をほとばしらせ、飛び出した勢いのまま降り立った地を蹴ると、手にした“何か”を振りかざし、鎌足かまたりに向けて不意打ちの一撃を見舞ってきた。


「⋯⋯なッ!? くっ⋯⋯」


 鎌足かまたりの眼前に迫る、棒のような長い新たな影。


 鎌足かまたりは危機一髪、その不意打ちを後方回転しながら避け、飛び退いた。


「⋯⋯おのれッ! 蒼鬼あおおにかッ!?」


 着地した鎌足かまたりは、影から身を隠すように身を屈め片膝をつき、攻撃を仕掛けてきた謎の雲水うんすいを鋭く睨みつけた。



 棒のように見えた長い影。

 その正体は、仏僧が使う俗に錫杖しゃくじょうと言われる、先端に金色のしゃくが付いた杖だった。


《⋯⋯蒼鬼あおおにだと? ⋯⋯ふふふ、あのような愚鈍ぐどんな連中と一緒にされては、地獄にその名をとどろかせる身共みどもの名が泣くわ》


 夜の闇に鈍く光を放つ、その不気味な錫杖しゃくじょうを垂直に地に立て、その先端で地を思い切り突いた。


「うッ⋯⋯!?」

 

 この謎の雲水うんすいの怒りが、錫杖しゃくじょうから大地に伝わり、しゃくの金色の輪同士がぶつかる凛とした音が鳴り響く。

 本来は魂を浄化するべき聖なる音も、今はただ人の煩悩ぼんのうを増幅させるような、邪悪な音色に聞こえてならない。

 その狂気の音の威嚇に、鎌足かまたりは思わず足がすくみ、身体が強張こわばった。

 音が鳴り止むと共に、謎の奇怪な雲水うんすいの男は、托鉢笠たくはつがさの紐をゆっくりと外していく。

 

 托鉢笠たくはつがさを外した男の顔は⋯⋯、頭には布を巻き、高僧のように威厳と風格と美しさに満ちている反面、僧らしからぬ謎の紋様の入れ墨が、眉間や頬や目の下など所々に入っていた。

 一見すれば、異風の美しき高僧。

 ⋯⋯しかし確実に人間には無いものが、その顔にはあった。


 額には二本の角。

 鎌足かまたりを睨みつける銀色の瞳。

 

 そしてその銀色の瞳を宿すのは、明らかに人とは思えない薄っすらとあかく染まった目。



 ⋯⋯雲水うんすいの男は、鬼。



 ⋯⋯しかも、紅鬼あかおにだった。

 


「⋯⋯ッ! ⋯⋯な!? お、鬼⋯⋯、だが、蒼鬼あおおにじゃない!? ⋯⋯あかの鬼⋯⋯!?」



 雲水うんすいの男は托鉢笠たくはつがさを再びゆっくりと被り、その禍々しい銀色の瞳を笠の下から覗かせ、紅に染まるまなこをぎらつかせた。



《⋯⋯身共みどもの名は紅鬼あかおに軍が一人、紅影鬼こうえいき。⋯⋯江戸からの援軍、御庭番衆おにわばんしゅう小頭こがしら鎌足かまたり甚左じんざとやらに続いて、その力が如何いかなものかを見せてもらおう。⋯⋯我が影法師かげぼうしの針地獄、その身体でとくと味わうがよい。⋯⋯今宵、身共みどもが、御主を地獄のふち案内あない致す》━━━━。

 



昨日は別アプリの声劇版投稿と連動して、本来は2話分の文量を1話に合算した特別長編投稿の予定でしたが、あまりにも長かったため笑、分割しての投稿になりました。今回の後編も楽しんで頂けたら幸いです。

第27話、最後までお読み頂きありがとうございました。

創作の励みになるので、ブックマーク、評価、感想等、お待ちしています!

改稿履歴は全て誤字脱字等の訂正です。内容は全く変わっていませんので御安心ください♪

次回第28話「紅影鬼」は2月22日の昼頃公開予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
月の解説ありがとうございます!☆ 細かな描写等わからない時もあるのでこのように小説の解説もまじえて下さると読み手としてもなんと!お優しい小説✮*。゜と思い電子書籍ならではの良さなのかなと思いましたꕤ୭…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ